2011/03/31
【反原発と推進派、二項対立が生んだ巨大リスク/ジャーナリズム、調停役として機能せず】
反原発派と原発推進派がそれぞれの立場に固執し,宗教論争を繰り返すうちに妥協点という現実解を探る方向性が閉ざされ,その結果として福島の狭い区域内に幾つもの原子力発電所が作られるに至ったこと,そして,原発は安全という建前があるためにより安全な新型炉に転換できなかった様子などが見事に解き明かされていきます。まさにゲーム理論の「囚人のジレンマ」そのものです。
どうやら,今年大学を卒業して茨城県内の某病院に初期研修医として赴任予定の5人のうち数人が「茨城みたいな危険なところで仕事をしたくない」と拒否しているみたいです。同様の話は茨城県内の複数の病院からも聞こえてきます。多分,「福島から放射能が飛んでくる茨城の病院で働くなんて馬鹿じゃないの?」と考えているんでしょうね。
でもね,私らはそういう病院で毎日働いているんだよ。だって,患者さんが治療を待っているんだもの。患者さんがいる限り医者が必要なんだもの。それに,ここはまだ全く危険じゃないし,患者さんは普通に生活しているんだもの。
「そんなやせ我慢をすることないじゃないの?」って言われるかもしれないけど,そういうやせ我慢をみんなが少しずつすることで,この社会は維持されているような気がするんだ。
とりあえず,医学知識を豊富に持っている(はずの)若い医者が非科学的な風評に惑わされてどうする,お前らの科学知識ってその程度か,とおじさんは言いたいな。
ちなみに茨城県の病院では,4月から赴任予定の医者が一族郎党の反対にあって来れなくなった,ということも起きています。これも一種の風評被害ってやつだな。
東京電力の社長様,ついにご病気になられたようでご入院。もちろん,本当に体調がわるいのだろうと思いますが,傍目からみると「自分だけ安全な病室に隠れようとした」わけですから,こういう社長の姿を見た社員の皆さん,士気が下がるだろうなぁ,と思います。少なくとも,「社長が病気で入院したんだってさ。俺たち,社長の分まで頑張ってやるぜ」と燃える社員はいないような気がします。
普通なら,「社長,体調が悪いようですから病院で静養なさったほうがいいです」と部下に言われたとしても,「バカを言うな! 社員が危険な現場で身の危険も顧みずに仕事をしているのに,私が安穏として休めるわけないだろう。社員全員が戻ってくるまで会社を守るのが私の役目だ! 俺が敵前逃亡してどうする!」って一喝するのが社長じゃないかと思うんだけど・・・。
【燃料電池、停電時使えず…太陽光も発電量不足】
エネファーム(家庭用燃料電池)も家庭用太陽光発電も停電時にはほとんど役に立たないようです。前者はそもそも電気が来ていないと動かないし,後者は発電容量が小さいからです。多分,ローソクとか登山用ガスコンロとコッヘルのほうが余程役に立ちそうです。
2011/03/30
【東電“白旗”仏に泣きついた…「統制不能」原発先進国へ支援要請】
3.11後の原発事故の直後,海外から「原発事故対策,協力しまっせ」という申し出があったにもかかわらず,「こちらには専門家が沢山いますから足りてま~す。協力,要らないっす」と申し出を断ったバカがどっかの国の政府と電力会社にいたそうです。このバカども,さんざん事態を悪化させておいて,自分たちでどうにもならないところまで追い詰められて,今度は海外に丸投げするつもりじゃないっすか?
「日本人ってすげえよ。この危機にあっても毅然と冷静に行動しているぜ。マジ,ハンパねえよ」という国民への賞賛の声はどんどん上がっているのに,「日本国政府と東電,マジ,馬鹿じゃね?」という声が日増しに強くなっていっているような印象です。
【財源確保に「たばこと酒」の増税を/年間1兆5000億円近くを捻出できる試算】
復興のためとあらば,私,毎日頑張ってお酒を飲んじゃうよ。
【「もう限界」「一時帰宅を」原発避難の首長らが窮状訴え】
「戦争を始めるのは簡単だ。難しいのは戦争をどう終結させるかだ」という言葉があります。同じことが災害の避難指示にも言えるかもしれません。「避難命令を出すのは簡単だが,避難命令の解除をするのが難しい」のです。
危険と安全は対立概念ですが,二項対立するものではなく,「危険でなければ安全」とはなりません。「危険100%で安全0%」と「危険0%で安全100%」の間には無数の移行段階があります。難しいのはどの段階で「安全宣言」を出すかです。「危険度0%」というのは現実的にありえない状態だからです。従って,安全宣言をするとしても危険度0%の状態ではなく,現実的にはある程度の危険性込みで安全宣言を出すしかありません。
地震直後,薬の流通がストップした時期があり,この時「薬の処方は2週間を上限とする」としました。薬剤がいつ入ってくるかわからなかったからです。
この時,「この際,不要な処方薬を切ったり,整理すべきではないか」とう声が上がりましたが,そうこうしているうちに薬の流通が復活し,4週間処方ができるようになり,「処方薬の整理」は立ち消えになったようです。
震災直後のような薬剤の流通がストップした状態にでもならないと,「習慣的に同じ処方を何年も続けているけど,実はいらない薬があるんだよね」ということに気がつかなかったかもしれないし,絶好の機会だったかもしれません。
昨日夜,牛乳を買おうかと近くのスーパーに行ってみました。牛乳コーナーはほとんど空っぽでしたが,2本だけ残っていたんですよ。見ると「低脂肪乳」ですが,こんな状態でも売れ残っているなんて,ちょっと不憫でした。もちろん買って帰りました。
【東日本大震災:常磐線・土浦-勝田間、31日に運転再開 時期を前倒し】
当初,4月中の運転再開すら危ぶまれていたJR常磐線ですが,明日,復旧の予定とのことです。すごいぞ,JR東日本。これで何とか,週末には石岡を脱出して東京に行けるか?
2011/03/29
【菅首相が4月2日陸前高田へ】
菅さん,ヘリコプターで陸前高田を訪問なさるそうです。いよっ,でました,お得意のパフォーマンス!
でも,あんたが行くより,あんたと随行員の体重分の物資をヘリで積んで運んだほうが余程意味があると思うよ。迎える方も迷惑に思っているので,現場の邪魔だけはしないように!!
【「君はまだ、東京でやせ我慢しているのか」】
「早く中国に帰ってこい。東京は危険だ。日本にいたら命が危ない」という中国からの呼びかけに対し,「東京では安全な粉ミルクが手に入るが,中国ではそれが手に入らない。中国より東京のほうがはるかに安全で社会も安定している」と反論!
【東日本大震災:福島第1原発事故 枝野官房長官、一時帰宅認めず】
医学的に考えれば「60代以上の人は帰宅してもいい」じゃないでしょうか。このくらいの放射線量だったら,まずほとんど健康被害はないし,たとえガンが発生するとしても数十年後ですから事実上,ガンはほとんど発生しません。
【「放射線の健康被害ほぼない」-国立がん研究センターが見解】
国立がんセンター,発表するのが遅すぎます。もっと早く発表しなさい。
私が20代の頃に夢中になって読んだのがローレンス・サンダースの連作警察小説『7つの大罪』シリーズだった。ディレイニー警察署長を主人公とする作品で,キリスト教の説く「人間を罪に誘う7つの欲望(暴食,色欲,強欲,憂鬱,憤怒,怠惰,虚飾,傲慢)」をテーマに年に1作づつ発表されたが,5作目で最後となったと記憶している。どれも大作であり,重厚な語り口が魅力的な作品だった。
その第4作目か第5作目に,主人公が部下のブーン警部に署長昇進試験についてアドバイスするシーンがあった(とは言っても,なにぶんこの小説を読んだのは30年近く前なので,記憶はちょっとあやふやだが)。ディレイニーは「警察署の前で数百人のデモ隊が騒いでいる。警察署長である君はどう行動すべきか,という問題が手を変え品を変えて出題される。君はここでどう答える?」とブーンに質問するのだが,正解は何だろうか?
正解は「部下を呼び出し,あのデモ隊をとっとと追っ払えと命令する」である。つまり,「部下に具体的な細々とした指示を出す」は不正解なのである。要するにこのこの設問は「騒乱をどうやっておさめるか?」を質問しているのでなく,「警察署長の仕事と警部の仕事の違いが分かっているか?」を問うているのである。
最高責任者は問題解決のための方向性(・・・ここでは「デモ隊を解散させて追っ払う」)をまず最初に決め,それを部下に伝え,具体的方法は部下(現場)に任せるべきなのである。細々とした解決法をチマチマと部下に命じるのは責任者の仕事ではなく,そこら辺がわかっていない警部は昇進試験に受からないのである。
菅総理の様子を見ていて,不意に思い出したのがこのディレイニーのエピソードだった。菅さんは絶対にこの質問の意味が分からないだろうし,まず間違いなく試験に落っこちると思う。
というか,首相資格試験,大臣資格試験,国会議員資格試験をすべきじゃないかと思う。でないと,無能な首相と無能な大臣と無能な国会議員が排除できないし,国会議員とはどういう仕事をするのかがわかっていない議員ばかり増えてしまう。
以前,講演会後の懇親会で,研修医に「リーダーとは何か?」と質問を頂いたことがあります。酔っ払いながら,私がひねり出した答えは「進むべき方向を決める。そのための具体的な方法については部下に一任し,口出ししない。成功したら部下の功績にする。失敗したら自分が責任を負う」だったと思います。すごく格好いい答えですが,なんのことはない,上記のディレイニー署長の受け売りだったんですね。ううむ,ちょっと恥ずかしいなぁ。
あの研修医,この文章に気がつかないでいてほしいなぁ・・・。
電気って便利なんだけどすごく不便なエネルギーだなとつくづく思う。今日使わなかった電力を翌日まわす,ということができないからだ。これが灯油やガソリンだったら,きょう使わなかった分は明日使えるが,電気の場合,「昼に節電した分を夜に使う」ことはできないし,「今年の夏の電力不足に備えて,今のうちから節電して貯めておく」ことはできないのだ。夏は夏で節電しないといけないし,冬は冬で節電するしかない。電気は使わなかった分は無駄に捨てられるだけだ。要するにこれは「寝溜め,食い溜めはできない」のと同じである。
電気を簡単に貯めておける技術があれば問題は簡単に解決する。家庭で使う1週間分の電力を灯油缶くらいのボックスに入れておけて,いつでも自由に使えるようになったらエネルギー問題は一挙に解決だ。原子力発電所は要らなくなるし,節電した分は翌日の余裕に回せるようになる。
人間が電気を使い始めて200年くらい経つのに,これだけができていない。
2011/03/28
【「アメリカに放射能が来る」世界で吹き荒れるパニック報道】
「トウキョウはゴーストタウンに」って,どこの国の話だよ。ヨウ化カリウム,お前ら要らねえだろ。アメリカ人,バカですか?
【日本に地震があったなんて信じられない…海外で絶賛されていた道路の復旧スピード】
少しでもいいニュースを見つけるようにしないと,やってられないよ。世界中の人達,もっと俺たちを褒めてください。
【放射性物質の基準「厳格さ求めすぎ」】
"All or Nothing" の発想では多分,放射能問題は解決できません。人間が死んでもいいから基準を守ろう,なんて発想はもう捨てましょう。もっと高い自然放射線レベルの地域で暮らしていて天寿を全うしている人が世界中に沢山いるんですから。
2011/03/27
【牧野の公開用日誌】
と思っていたら,半減期53分のヨウ素134が大量に検出されています。要するに,「今も原発内で作られている」ということになります。ということは・・・!
【武田邦彦(中部大学)】
いわゆる「原発推進派御用学者」でもなければ,「反原発のために恐怖を煽るのを仕事にしている学者・ジャーナリスト」でもない,普通の研究者の真っ当なブログのようです。それによると放射性物質による放射能は,とのことで,第1段階はすでに終わっていて,現在は第2段階?
- できた瞬間から4日目までに1/1,000になる
- 4日前から4ヶ月の間に、さらに1/10になる
- 4ヶ月から後はあまり変わらない
ちなみに,私の知人は「半減期は大学の講義に出席する学生と同じ」と説明しています。その心は
- 4月当初は全員出席し,席も満杯
- 5月の連休を過ぎる頃から急激に出席者が減り(この「急激に減少」というのがミソ)
- 夏休み直前には4月当初の半分になり(=これが「半減期」)
- その後は減り方は少なくなって受講する学生の顔ぶれは固定し,年度末までゼロになることはない
さっき,「福島などの東北は地域が区切られていて,放射能の量は原発からの距離では決まらない」と書きましたが,このあたりの感覚は実際に住んでみないとわからないと思います。特に,のっぺりとした関東平野(何しろ,標高800m足らずの筑波山が唯一の山です)では川が唯一の地域の自然境界ですから,関東平野にしか暮らしたことがない人(例:政府のお偉方。一部の放射線研究者)は「山で地区ごとに狭く区切られていて,それが自然の障壁になっている」ことは理解しにくいかもしれません。
3月24日のこのコーナーで「ベクレルとシーベルト」について書きましたが,「ピアノ馬鹿」時代からの知人から,こんな風に例えては,とメールをいただきました。そしてピアノ曲は次のように分類できます。
- ベクレルの値は「単位時間あたりの音の数」
- シーベルトの値は演奏の難しさ(弾きにくさ)
ううむ。ピアノ馬鹿にしか通用しない例えだな。
- ベクレル値もシーベルト値も低い ⇒バイエル練習曲集
- ベクレル値は高いがシーベルト値は低い ⇒バダジェフスカの「乙女の祈り」
- ベクレル値は低いがシーベルト値が高い ⇒「ゴドフスキーが左手用に編曲したショパンのエチュード Op.25-4」
- ベクレル値もシーベルト値も高い ⇒ソラブジの曲
ちなみに,もうちょっと一般的な喩えとしてはというのもありかな? 食材が多いから美味い料理になるわけでもないし,食材が少ないから不味い料理になるわけでもありません。
- ベクレルの値は「料理の食材の数」
- シーベルトの値は「それで作った料理の味」
もう15年来のメル友である福島県の生物の先生から怒りのメール! 普段,冷静沈着な文面で正確な情報を伝えてくれる彼がこれほど怒りを顕にしているのは初めてです。その一部を抜粋させていただきます。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ さて、政府にはもともと期待はしてないものの、ここ数日の福島県への対応には頭に来ています。政府というよりも、助言している「専門家」と呼ばれる人々への怒りです。
まず法規上の問題。
福島の放射線量は「科学的」には多くの地域で問題のないレベルです。今後も、原発で悪い方の新展開がない限り、徐々に減ってゆくでしょう。しかし、現行の法律上、現在の放射線レベルでは、基準値(1ヶ月あたり)を余裕で超えています。本来、会津の一部を除き、今のレベルでは福島県全域を「放射線管理区域」にしなければいけないはずです。そうしないと法律違法です。健康被害がなくても福島県の中通り以西はすべて基準を上回っているのだから、最低でも県民全員にフィルムバッジ(被曝の積算量を測るもの)をつけなければならない。そうしないと違法です。もちろん,何十万人にフィルムバッジを与え、記録をつけるなんて現実的ではないのは確かですが,都合が悪くなると法律を持ち出し,都合がいいところだけ法律違反ですか?
現在の放射線は管理されている宣言でないため,厚労省と文科省が「緊急時における暫定の一般人への被曝基準」を早急に示すべきなのにそれはしない。「緊急時だから、このまま曖昧にして、なかったことにするのかな」と思っていたら、いきなり厚生労働省が食品に対する非常に厳しい放射性物質汚染に関する「暫定」の基準を出してきたではありませんか!「暫定」ですよ、「暫定」。しかも、農水省にも何の相談もなく。「人間よりも食品かよ!」というのが正直な感想です。食品は猶予期間があるけど、そこに暮らす人は、ずっとそこにいる訳ですよ。
そしてとどめは「30キロ圏内の住民は自主的に退避を」。人の生活・生命をもてあそぶにも程があるというものです!
すでに各地点での放射線量のデータはかなり蓄積されている訳で、どの地区を優先させ、どのように避難させるかなんて科学的に決められます。
当然、30キロ圏外だって、かなり線量の高い地域があります。そこも自主判断ですかね。昭和合併前の市町村の区画は、ほぼ地形にそった境界線になっていて、特に阿武隈山地は境界になります。その集落区画で見れば、地勢状、なぜそこのが線量が高いのかもわかります。
ついでにいえば、レントゲン1回分とかCT一回分とかいう表現も即やめて欲しい。たしかに数値的には正しいかもしれませんが、医療放射線の被曝というのは利益とリスクの天秤にかけて利益が大幅に上回る事を前提に、管理された環境で行うものであって、意味もなく日常的に無意味に被曝するのとでは全く意味が違う。出しても、せいぜい、ラドン温泉くらいにして欲しいところです。
それにしても、福島の人々、本当に我慢強いです。地震・津波・原発・風評の4連発なのに発狂もせず暴動も起こさず、粛々と日々を送っています。ガソリンの気の遠くなるような列にも、極寒の中、暖房もつけずに、車内泊り込みで黙々と並んでいます。とりあえず、日本国民ができることは、政府が作り出す福島の風評に惑わされずに、自分の頭で冷静に考えて行動することです。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
いずれにしても,「半径20キロ,30キロ」と放射状に区切るのはおかしいです。放射能は電磁波ではありません。山を越えるためには強い風の助けがいるし,雨が降れば地表に降ってきます。東北地方は隣村に行くのに山を越えていかなければいけないのですが,放射能も同じで山を越えないと隣村に行けないのです。
だから,放射能の強さは距離ではなく,山脈などの存在が大きく関与し,それはそのまま,旧市町村の地区区分に一致します。そして福島では,山(山脈)が各地区の境界となっていることが多いです。だから,避難勧告を出すにしても単純に距離で決めるのでなく,「〇〇市の▲▲地区は避難したほうがいいが,同じ市の◇◇地区は安全」となます。
でないと,30キロ圏外で基準値以上の放射線が検出されれば,今度は40キロ,50キロと拡大するしかなくなります。
2011/03/25
本日午後,「週刊朝日」の取材がありました。4月中の発売の号に掲載予定とのことです。
13日から毎日,ほぼリアルタイム更新を続けてきましたが,さすがに疲れてきました。明日と明後日は,ちょっとペースダウンして,大きな事件とかがあった場合にのみ更新の予定です。とんでもない大事件が起きないことを祈るばかりです。
β線熱傷について,ある皮膚科の先生からメールをいただきました。
以前,皮膚の悪性リンパ腫の患者さんで以前全身のベータ線照射を行ったことがあります。確か1回2~3グレイ程度照射していたように記憶しています。1グレイはおおよそ1シーベルトに相当しますので、2グレイだとしても2000ミリシーベルト程度に相当すると思われます。しかし,皮膚には全く影響はなく、発赤すら生じませんでした。
もし、今回の被曝で熱傷を生じたとすれば、それ以上のエネルギーを受けたと言うことになるように思います。(報道されている)線量計の180ミリシーベルトが確かなら熱傷はおそらく生じないでしょうし、熱傷が生じたとすれば線量は局所的には2000ミリシーベルトを大きく超えているはずです。
今回の事故でいろいろ調べていますが、人間は意外に放射線に強そうですね。数年前のことですが、顔の皮膚がんのおばあちゃん、放射線治療を行い寛解しましたが、トータル45グレイのX線照射を行っています。もちろん局所であり比較にはなりませんが、105歳までお元気でした。
【東京停電と、先送りされてきた「周波数変換問題」】
西日本は60Hz,東日本は50Hzと交流の周波数が異なっていますが,なんでこんなけったいなことになったのかが歴史的経緯で説明され,それが現在の電力不足にどう関わっているかを解き明かしていきます。一つの国内で周波数が異なっていた国はありますが,現在では国内は同一周波数に統一されているのに,日本だけは100年以上前のシステムが修正されずに現在にいたっています。第二次大戦直後という周波数統一の絶好の機会があったのに,戦後の復興が急速に進んだのが仇になったとか。
【いまわれわれに力をくれる言葉とは】
「大丈夫?」っていうと「大丈夫」っていう。
「漏れてない?」っていうと「漏れてない」っていう。
「安全?」っていうと「安全」っていう。
そうして、あとでこわくなって
「でも本当はちょっと漏れてる?」っていうと「ちょっと漏れてる」っていう。
こだまでしょうか?
いいえ、枝野です。
地震があろうとなかろうと発生するのが低温熱傷です。今日も2月下旬に湯たんぽで低温熱傷した人からメールで相談を受けました。こんな経過です。
[低温やけどに気がついて皮膚科を受診]⇒[軟膏を処方され,毎日消毒するように説明を受ける]⇒[1週間後に受診し,別の軟膏処方]⇒[さらに1週間後に受診して壊死していたため,壊死組織除去]⇒[脂肪が見えているので大きな病院紹介]⇒[脂肪まで見えているので皮膚は再生しない。皮膚移植しないと助からないと説明を受ける]・・・
それに対する私の回答です。ここまでアドバイスすれば大丈夫かな?
低温熱傷は脂肪が見えていようと骨が見えていようと治ります。ただ,治療日数がちょっとかかるだけ(通常3ヶ月くらい)で,手術も入院も不要です。
今時「深い低温熱傷は手術しなければいけない」なんて古臭いことを言っているのは正しい知識のない大学病院と総合病院の形成外科医,皮膚科医くらいのものでしょう。
- 実際の治療例
- 治療をしてくれる医者・・・彼らに片っ端から直接電話をしてみて,快く対応してくれる医者なら何とかしてくれるはず
- 素人でも治療できます。患部を水道水で洗って(「放射線汚染された水道水」で洗っても大丈夫!),その後はプラスモイストP(より安価なのはプラスモイストTOP)を毎日交換するだけですから。
- プラスモイストについて
- それでも値段が高いという場合は「ゴミ袋と紙おむつ」でも治療可能・・・このページの最初の方にあります
久しぶりに「ネットでレンタル,ポストに返却」のDMM.comからレンタルDVDが届きました。「3.11」の震災以来初めての郵送配達です。2週間ぶりに「外の空気」に触れた感じです。
ちなみに届いたDVDは《ザ・ムーン》と《U.M.A. ライジング》です。片方は「こんなの,借りるほうが悪いよ」というくらい低レベルのクズ映画のようですし,もう片方は「感動的科学ドキュメンタリー映画」らしいです。
昨日も震度4~5弱クラスの余震が数回ありましたが,震度4くらいだと「おっ,また揺れてますな」と話題にすらなりません。夜も多少の揺れでは目も覚まさなくなりました。適応力とも鈍感力とも言います。
昨日,福島原発事故で作業中の方数名がβ線被爆による熱傷を受傷し,福島県立医科大学に運ばれたそうです。β線による熱傷って通常の熱傷のような表層熱傷なんでしょうか,それとも低温熱傷のようなタイプなんでしょうか。いずれにしても,「消毒とゲーベンクリーム,創面の乾燥の維持による感染予防」では損傷を受けた皮膚はさらに損傷されますから,そういう治療をされないことを祈るばかりです。
2011/03/24
【水道水もこれで大丈夫!汲み置いてペット水で割れば規制値以下】
基準値の倍以上なら,倍に薄めれば基準値になります。ナイス! こんな簡単な解決法に気がつかないなんて,馬鹿だなぁ>自分
ある方から「火力発電の稼働率は全国で約45%とのことです。つまり、火力発電の稼働率を65%にすれば、全ての原子力発電所分を補うことができます」と教えていただきました。さらに付け加えると,全国の水力発電所の稼働率は25%程度とか。つまり,「原子力発電所をフル稼働させるために,水力発電所と火力発電所を休ませている」わけですね。
原子力発電は一旦稼動してしまうと経済的なんですが,廃棄物の処理やら老朽施設の解体やらまで考えると,とんでもなく高上りな発電方法です。税金でも投入してもらわなければ経済的にはとても引き合いません。
このあたりは,アメリカの「トウモロコシによるバイオエタノール」に似ています。トウモロコシからエタノールを作るためには,得られるエタノール以上の石油を使います(・・・ちなみに,それがわかっていてもアメリカがトウモロコシ方式を推進したのは,遺伝子組み換えトウモロコシが売れないために余っちゃったから・・・という指摘もあったりして・・・)。
しかも,原子力発電所は一旦稼動してしまうと,出力の微調整が原理的に難しいらしいです。そのため,夜間には電力が無駄になってしまいます。それで「エコキュートで夜間にお湯が沸かせます」というインチキを考え出し,大々的に売りだしんじゃないの,という指摘もあります。
【大槻教授が放射能汚染騒ぎに反論! 「出荷停止のもの、私が食べます」】
大槻先生,私も食べますから,私の分の「放射能ホウレン草」を残しておいてください。茨城産のホウレン草,美味しいですよ。
【シーベルト(Sv)とベクレル(Bq)】
ここ10日ほど,連日「ミリシーベルト,マイクロシーベルト」という単位が連呼されましたが,昨日の水道水ではベクレルという単位が登場しました。私も実はよく知らなかったので調べてみたら,ベクレルは放射能の量,シーベルトは生体に対する影響の強さも加味した放射線の強さ,ということです。これでもよくわからないですね。その点,上記の東北電力のサイトではとても分かりやすく説明しています。お金で言えば「硬貨の数がベクレル」,「硬貨の合計金額がシーベルト」なんだそうです。つまり,「人間が3人」という数え方がベクレル,「3人の合計体重」がシーベルトですね(・・・多分)。
【電力消費のピークシフトについて考える】
ご存知のように,東京電力は現状ではフル稼働したとしても最大で5,000万kWしか発電できず,一方,昨年の需要のピーク3日間の消費電力は5,961万kWでしたから,どう計算しても1,000万kW足りない計算になります。それに対し,計画停電で何とかやりくりしようとしているわけです。しかし,実際に足りなくなるのは猛暑の日中であり,企業の活動が終わる夜間の電力需要は落ち着きます。ということは,一律のエネルギー消費抑制(省電力)ではなく,ピーク電力の削減だけすればいいはず,というのがこの記事の主張です。
しかも,使わなかった電力を貯めておける訳でないため,夜間に省電力する必要もなし。夜に明かりを点けるとは非国民だ,というのも的外れ。不要な省電力をするのでなく,ピーク電力を下げる方向の努力をすればいい,というこの主張は読んでいて元気が出てきませんか?
ちなみに,現在の日本の総発電量のうち,原子力発電所によるものが全体の3割を占めているそうです。原発なんかやめてしまえ,という声に従ってすべて廃炉にすると,電力は現在の7割しか供給できなくなります。それはちょうど,1985年当時の全国の消費電力と同じなんだとか。つまり,1985年当時に戻れば,電力が7割減でも暮らしていけることになります。
というわけで,1985年の頃を振り返ると,あの頃の仙台での賃貸マンションやアパートでエアコンが付いているところはなかったと記憶しています。また,当時のパソコンはNECの9801-Mや9801-VMあたりを使っていましたが,それはあくまでも大学の医局で使うもので,個人でパソコンを所有している医者はまだかなり少なかったと思います(ちなみに,私が初めてパソコンを買ったのは1989年で98ノートが発売された時です。医者が自分の机にノートパソコンを置いて使うようになったのは多分その数年後です)。スーパーファミコンが発売され,同時に「スーパーマリオ」が発売されるのが1990年ですから,1985年当時は「テレビの前に座って終日ゲーム三昧」なんてこともできなかったし,テレビは「一家に一台」の時代でした。
ま,その頃に戻ればいいわけね。
【オール電化住宅、普及裏目…原発2基分の消費増】
というわけで,東京電力のホームページを見たら,さすがにまずいと思ったのか,オール電化の宣伝ページは原発事故のお詫びの文面だけになっていました。電気が来なければオール電化住宅の生活ってどうなるのかを載せるべきじゃないでしょうか。
とは言っても,見られないのはトップページだけで,「オール電化ってとっても便利でエコなのよ。さあ,みんなでオール電化の素晴らしい世界にいらっしゃい!」というページはしっかりと残っておりますから,騒ぎが収まったら,またオール電化普及に邁進するつもりなんでしょう。
ちなみに中部電力のホームページでは,しっかりと「オール電化って素晴らしい!」と宣伝しております。中部電力は原発分の電力を消費してもらうためにオール電化を推進しているのでしょう・・・多分。
昨日から騒動が続いている「浄水場から基準値以上の放射性物質が・・・」問題だが,スーパーでミネラルウォーターを大量に買い込んでいる人がテレビのインタビューに,「健康を守るためですから安全な水を選びます」という風に答えていた。体に悪いものは入れたくない,健康に悪いものは全て排除したい,という考えはわかるが,これを突き詰めると最後は「健康を守るためなら死んでも構わない。体に悪い物を体に入れるくらいなら餓死した方がマシ」というあたりに行き着いてしまうんじゃないだろうか。
水道から基準の2倍のヨウ素131が・・・といったところで,水道水をバケツ何杯も飲むわけじゃないし,茨城産のホウレン草から基準以上のヨウ素131が・・・といったところで,ホウレン草を洗面器一杯分食うわけでもない。放射能の害は放射性物質の濃度の問題でなく摂取量(と蓄積量)の問題である。ましてや大人がいくら食べようと短期的には何の害もないし,たとえ数十年後に病気になったとしてもその頃には自然死している人が圧倒的多数である。
ちなみに,北京のスーパーの店頭からニンニクが姿を消し,ニンニクの奪い合いになっているという噂もある。「ニンニク=毒消し」⇒「放射能の毒も消す」と考えて,日本の放射能にニンニクで対抗しよう,と考えているらしい。その北京から100キロ離れた村の深刻な環境汚染は気にせず,2000キロ離れた福島からの放射能を恐れているらしい。日本で起きている農産物+水道水パニックと中国のニンニクパニック,実は五十歩百歩じゃないかと思う。
放射線の人体への被害を調べていくと,実はよくわかっていないことが多いようだ。大量の放射線の被曝は要するに瞬間最大風速みたいなものだが,これはヒロシマナガサキの調査やその他の原発事故などでかなり分かっている。
わかっていないのは微量の放射性物質による長期被爆である。つまり,「基準の倍の放射性物質が検出された水道水を乳児が1年間飲んで,その後何が起こるのか」については実は何もわかっていないようだ。「小児が被爆すると甲状腺癌が増えるようだ」というのが確実に存在する唯一の証拠ではなかったかと思う。もちろん,何かの突発的事故で被爆した人たちを一生にわたって観察すれば「本当は何も起きなかった,害はなかった/実は○%の人に健康被害が出た」というのが証明できるのだが,何しろ何か起きたとしてもそれは数十年後である。研究者が一生かけて追いかけても結果が出る前に研究者の方が先に死ぬ確率が高い。だから,研究する人は多分いない。自分が生きているうちに結果が出ないことが予想されることを研究をするほど暇ではないからだ。
というわけで,「政府の定めた基準なのだから,科学的に根拠があるものだろう」とはならないらしい。
たまには地震と関係の無い話題。
ブラウザのFirefoxがようやく4.0にバージョンアップされましたので,早速ダウンロードしてセットアップ。
スピードアップに関しては,私のノートパソコンでは体感できるほどではないようです。一番目を引く変化はデザインが極めてシンプルになり,いい意味でも悪い意味でもGoogle Chromeそっくりになったことですね。タイトルバーで右クリックすると昔風のデザインにできますが,Chrome同様,何の予備知識もなくこのブラウザを触った人は,何をどうしたらいいのかわからないだろうな,という感じです。Chromeのいいところを真似するのはいいけど,悪いところ(使い方が分かっている人にしか使えない)は真似してほしくなかったです。
それと右クリックでリンクを開く際,「リンクを新しいタブで開く」と「リンクを新しいウィンドウで開く」の上下の位置が逆になったため,タブで開いたつもりでウィンドウが開いてしまい,ちょっとイライラします。マウスの右ボタンと左ボタンの機能が突然入れ替わったらこんなイラつきを覚えるんだろうな,なんて思ったりします。まぁ,慣れの問題なんだけどね。
2011/03/23
【東京の浄水場から放射性ヨウ素検出 乳児の基準値2倍超 「飲用控えて」】
「乳児の基準を越えている」なら「乳児に飲ませないように」,あるいはヨウ素131の作用を最大限に考えるとしても「13歳未満は飲用を控えるように」だけでいいはずです。でも,この報道が流れたら・・・。
前にも書きましたが,このような問題について「安全か危険,どっちなの?」,「安全と言い切れないということは危険なんですね?」という二元論的な考え方をしては駄目なんですが,「放射能が含まれている! 安全ではない。飲んだら病気になる!」というように「黒でなければ白」的に考えてしまうとパニックになるだけです。
「褥瘡のラップ療法」の鳥谷部先生があるメーリングリストで「ペットシーツは超便利。被災地で活躍!」と書いておられました。
- レギュラーサイズ:お尻ふき,体拭きに便利。体拭きの場合は個人専用で使えば,乾かせば数回使えます。オムツの代用としても有用。
- スーパーワイドサイズ:シーツとして使えます。濡れた布団の上に敷くとサラッとして快適!
【ヨウ化カリウムへの信仰/そして30km圏内のエビデンス】
池田マーシー先生が「ヨウ化カリウムを飲めば安全,30キロ圏内は危ない」という通説に対し,EBMの立場から「エビデンスないよ」と鋭く指摘しています。何より,プルトニウム239の半減期は2万4000年なのに長崎の農産物は風評被害にあっていません。それなのに,半減期8日のヨウ素131がちょっと付いているだけの野菜はメタミドホス餃子より危険物扱い!
【サービス業を破綻から救え/「消費の自粛」という第4の災害】
こちら被災地では食料品とかガソリンとか,生きて行くのに必要なものを購入するのに精一杯で(・・・というか,商品そのものを見つけるのが大変だったりします),消費どころの騒ぎではありませんが,だからといって日本全体が自粛ムードになるのは困ります。バカ騒ぎをしたり余計な消費をする必要はないけれど,日常的な消費はどんどんしてもらわないと経済がまわりません。
日本から外国人が続々と逃げ出しています。「何だよ,お前らだけさっさと逃げ出して」という気もしますが,これって何かに似ているなと思ったら,現在のリビアの状況と多分同じでしょう(・・・多分,だけどね)。
正確なことはわかりませんが,恐らくリビアでは在留邦人を含め多くの外国人が脱出しているはずです。極めて危険な状況だからです。危険な状況だから逃げ出す,という意味では,日本から在留外国人が逃げ出すのは同じです。
しかし,リビアにいる人間が全員避難しているかというとそうではなく,リビア人はリビア国内の移動はしても,リビア国内に留まっているはずです。そして,彼らは可能な限りリビア国内で生きて行くことを選択するはずです。これは,成田空港,関西国際空港から外国人が続々と脱出しているのに,私たち日本人はこれまでと変わらずに職場に出勤して,いつも通りに仕事をしているのと同じです。
では,日本脱出する外国人は危険を察知して逃げ出しているのに,日本から逃げ出さない日本人は危険を察知できない鈍感人間だから逃げ出さないのか・・・というとそうではないでしょう。同様に,リビア国内に留まっているリビア人は危険でないと判断したからリビアから脱出しないわけではありません。
日本(あるいはリビア)から脱出している人たちは「簡単に逃げ出せる人,脱出先の当てがある人」です。皮膚の細菌で言えば(人間を細菌にたとえてすまん!),常在菌(=皮膚の上でしか生活できない)が日本人(リビア人),通過菌(=皮膚が本来の生存の場ではない)は日本やリビアに暮らす外国人です。だから,通過菌は本来の生存場所でないから簡単に脱出できます。脱出することによるリスクと脱出しないで留まることによるリスクを秤にかけて前者を選んだわけですが,通過菌にとっては前者のリスクはほぼゼロだからです。
現在,福島県から住民の脱出が続いていますが,脱出できたから安心かというとそうではないはずです。むしろ,「住居はどうなる,仕事はあるのか,子供の学校はどうなるのか・・・」と不安だらけでしょう。進むも地獄,止まるも地獄という状況です。つまり,被災地に留まるリスク,被災地から脱出してそれまでの生活を捨てるリスクのどちらを選ぶかという二者択一ですが,どちらのリスクの大きさも大して違いはないのです。そして,リスク・ゼロという選択肢はありません。
実は,自宅アパートに何本もの開封していないお茶ペットボトルがあります。いずれも,震災直後に断水して自分の飲み水は自分で確保するしかなかった時期に買い込んだものです。それから数日後に水道が復旧したため,これらのお茶は開封せずに済みました。恐らく,断水がさらに数日続いていたら,このお茶は命をつなぐ糧になってくれたでしょう。その意味では,これらのペットボトルが手元にあることで安心感が得られました。
ですが,これらのペットボトルのお茶が結局必要なかったというのも事実です(・・・もちろん,結果論だけどね)。これから類推すると,全国各地で非被災地でパニック心理から購入した食料品や日用品のかなりのもので結局使われないで終わるものがかなり多いんだろうな,なんて思ったりします。
それにしても,このペットボトルのお茶をどうやって消費するかです。普段,ペットボトルのお茶はあまり飲まないからです。被災地(・・・こちらも被災地だけどね)に送るったって数本じゃしょうがないしなぁ・・・。
さて,石岡市ですが,ガソリンの供給が全く改善していません。並んでも買えない状態です。一方,南隣の土浦市ではガソリンスタンドで並ばずに買える状態なんだそうです。わずかな距離ですが,その距離による格差が埋まりません。
昨日も,連休明けのために患者が殺到するんだろうなと思っていたら,大した数ではありませんでした。ガソリンがないため病院に通院できないためと思われます。このままでは「ガソリンの切れ目が命の切れ目」になりかねません。
2011/03/22
【避難生活でのおむつと生理の対処】
スーパーのレジ袋と古いタオルなどで赤ちゃんのオムツや生理用品を作る方法。
【不評「エーシー」CM―小倉智昭「こんな使い方どう?」すぐやれ提案】
あの鬱陶しいコマーシャルに対し,小倉さんがナイス提案。すぐにでも実行して欲しいです。
【プレート説は地震の原因を十分には説明できない】
現在の地震発生のメカニズムに関する理論としては,プレートテクトニクスによる地殻の移動でひずみが生じ,それが溜まったエネルギーが放出され・・・というのが定説ですが,それに対し,「熱で膨張した岩盤が割れることで地震が起こる」という「熱移送説」という新しい理論です。これまでプレートテクトニクスにより説明できなかったさまざまな現象(今回の地震がまさにそうです)が説明できるのが魅力です。
それと同時に,プレートテクトニクス説を自明の理,常識中の常識として無批判に受け入れることの怖さに気付かされます。
【福島原発風評被害とヒロシマ】
私の本の挿絵を書いてくれているイラストレーター,CHIMAさんの旦那様のブログ。ご両親が爆心地から1.8kmという至近距離で被爆されたそうですが,ご両親ともに長寿で元気なんだそうです。そして,広島の原爆による惨状が分かってから「広島には今後100年は人も住めず,草木も生えないだろう」と言われていましたが,その予想も見事に外れました。
知人から教えてもらったデータです。要するに,人間にしろ動植物にしろ,放射線被曝によるDNA損傷を修復する能力を持っていて,その修復能力は非常に頑強であり,その修復能力を上回って被爆した場合にのみ障害が発生する・・・というだけのことです。半減期8日のヨウ素131くらいで大騒ぎするな,ってことです。
- 中沢啓治さん(漫画『はだしのゲン』の作者。爆心地を「裸足」で1週間以上歩きまわっていたそうです)は現在72歳でご存命です。
- 伊福部昭さん(作曲家。映画「ゴジラ」の音楽を作ったことで有名)は戦時中,放射線による飛行機用木材強化の研究をしていて,その後,重い放射線障害となりましたが(多分,数百ミリシーベルトの放射線を連日防護服もなしに浴びていたんでしょう),91歳でお亡くなりになる直前まで,精力的な作曲活動をしていました。
- 放射線の発見者,キュリー夫人(マリー・キュリー)は防護服も着ずに素手で鉱石からラジウム濃縮作業を毎日していました。彼女は66歳で亡くなりましたが,死因は第一次大戦中の医療法X線撮影に使った高濃度ラドンによる再生不良性貧血で,ラジウムによる被爆で死んだわけではないそうです。
【地震予知連絡会議】
さて,地震予知といえば地震予知連です。今回の大震災について事前に予知できなかった訳ですが,予知連がこれについて「予知できなくてすまん!」と謝罪しているかと思ってみたら,何にもなし! それどころか,公式ホームページの最終更新は「平成23年2月18日」でストップ。地震を予知するためにこれだけの予算を貰っておきながら,マグニチュード9.0,震度7の大地震すら予知できなかったの? それとも「今回の地震はマグニチュードも震度も小さすぎた。マグニチュード10,震度8の地震なら予知できたんだけどなぁ。もっと地震が大きければバッチリだったのに惜しかったなぁ」とでも言い訳するつもりなんでしょうか。
科学者として恥を知れ,国から予算を貰っておきながらこの失態,反省しろと言いたいです。というか,こんな役に立たない組織,さっさと潰すべきです。過去最大級の地震も予知できないようなボンクラ地震研究組織,要らないです。こんなクズ研究機関に公費を支出する必要はありません。地震予知連は資産を売却して被災地に寄付し,被災地にお詫び行脚すべきです。それが常識というもんじゃないですか?
なお,世界の地震学者の間では「地震発生を予知できるわけがない」というのが常識です。破壊現象には再現性がないからです。
地震予知といえば,「大気イオン地震予測研究会」というNPO組織はホームページで「地震を予知できず,ごめんなさい」と素直に反省しています。地震予知連のクズどもはこのNPOの爪の垢を煎じて飲みなさい。
とは言っても,このNPOが主張する「大気イオンの変動で地震発生を予測」というのは,たとえこの理論が正しいとしても直下型地震にしか意味がなく,海底で起こる今回の地震では全く無効。海底で起きたイオンの変化は海水で吸収されちゃって大気に出ませんから,ちょっと考えればわかります。このNPO組織,理論のの矛盾点に早く気がついてください。
とりあえず現時点で確実に言えるのは,今後日本で原子力発電所は新たに作れないだろう,ということです。そして,老朽化した原発の稼働を続けることも難しくなるでしょう。つまり,福島原発が使えなくなった分,新たに火力・水力発電所を増設しない限り,電力は恒常的に不足することになります。
今年の夏が例年通りに猛暑続きだったら,福島原発のない東京電力の発電量では,東京都内の冷房をまかなうだけの電力はありません。しかもその猛暑は早ければ3ヶ月後に確実にやってきます。そして多分,「冷房は28℃にしましょう」くらいでは追いつかないくらいの電力不足になるはずです。
一体どうなるんでしょうか?
それにしても,みずほ銀行のトラブルは発生から1週間かかって,本日午後にようやく復旧するようです。この銀行は複数の銀行が合併してできましたが,その時点でもシステム統合に手間取った経緯がありますから,基本システムに最初から無理があったんだろうかと疑ってしまいます。今回の「地震・津波・原発事故」がなければ,連日トップニュースだったはずです。恐らく,「地震が起きてよかったァ」と思っているんじゃないでしょうか。
復旧に1週間もかかるような危ない銀行,少なくとも私は金を預けたくないです。
そういえば先週,病院の給食を通じて職員に牛乳の販売があったんですが,申し込みの際にある先生が「いつ,牛乳が買えるかわからないから,1リットル牛乳3本」と申し込もうとして,まわりの先生に「オイオイ,3本あっても最後の1本は期限切れになるよ。一人暮らしなんだから1本ずつでいいよ」と説得されるということがありました。この「いつ買えるかわからないから買えるだけ買っておく」という心理が,「心配だから普段より多めにモノを購入」⇒「店頭にモノがない」という現象を生み出すのかな,なんて思ってしまいました。
毎日の更新を心がけていますが,自宅でのネット接続がちょっと不安定なため,朝の更新時刻は7時過ぎになります。早起きして当サイトを御覧の皆様,すまん,すまん。
2011/03/21
【毎日かあさん:震災】
最後から2こまめの自衛官のおっちゃんのセリフが重く,かっこいいです。
【「津波は天罰」と受け取られる詩掲載 シー・シェパード代表に猛烈な批判】
シー・シェパード代表によると,「日本人は鯨を捕って海の神様の逆鱗に触れ,怒った神は津波を起こし,鯨を食う日本人を罰したのだ」という風にしか読めないナイスな詩を発表されました。ちなみに,メンバーの6人はこの津波の時に岩手県大槌町でイルカ調査をしていて被災し,日本人に助けられたそうです。恩を仇で返すクズ野郎とはワトソンくん,君のようなヤツのことを言うんじゃないか。
【問題のホウレンソウは食べるとやばいものなのか】
要するに,たいしたことはない,安全だよ,ということですね。
朝から冷たい雨です。茨城でもかなり寒いのですから,岩手・宮城の沿岸部の寒さはひどいはずです。地球温暖化,どこにいっちゃったの? 地球温暖化,頑張れ! 多少暑くても人が死ぬことはありませんが,ちょっと寒いだけで人は呆気なく死にます。ちょっと体力が弱っているだけで寒さは命を奪います。
なんてことを書きながら,贅沢な望みを書いたりします。本屋さんに行きたいです。新刊書や専門書が所狭しと並べられている本屋さんに行って,本を手にとって見るだけでもいいです。気分は「ルーベンスの絵を一目でいいから見たいネロ少年」です。
ちなみに,茨城県に対するamazonと楽天の配送がようやく再開されたみたいです。
石岡市でのガソリン事情,全く改善していないようです。「ガソリン,手に入った?」が挨拶がわりになっています。道を走っている車は少ないですが,スピードを出す車もなく,多くの車が制限速度40キロをきちんと守っているように見えます。貴重なガソリンを浪費しないように経済的運転を遵守しているのでしょう。
【高エネルギー加速器研究機構(KEK)/KEKにおける環境放射線の測定結果について】
3月18日のデータによると,「検出された主要な核種はヨウ素131(半減期8.02日),テルル132(半減期3.204 日)およびその娘核種のヨウ素132(半減期2.295 時間)である」となっています。どれも半減期が数日程度ですから問題はほとんどないはずです。茨城県産のほうれん草から検出されたのはヨウ素131ですから,1週間で放射線量は半分になります。
とは言っても,すでに【茨城ホウレンソウ撤去の動き】ですから,放射能集団ヒステリーに近い過剰拒否反応が起きています。まさに風評被害です。
そこでお願いですが,この撤去された茨城ホウレンソウ,是非私に下さい。洗えば安全に食べられる野菜ですから捨てるなんて勿体ないです。食べ物を粗末にしたらバチがあたります。
それから,この騒動が治まったら茨城県知事はテレビに出て山盛りのほうれん草を食べて牛級を飲むパフォーマンスをして欲しいです。普段,仕事をしていないんだから・・・。ちなみに菅総理がこれをすると「管さんが食べているのはカイワレ大根かしら」と間違われますので止めてください。
2011/03/20
【http://jun-makino.sakura.ne.jp/articles/future_sc/note098.html】
スパコンの専門の方が,既知の事実と物理法則から数値シミュレーションしてみた結果とのことです。
何が実際に起きているのかがわからないし,テレビ報道は同じ情報を垂れ流すだけだし(・・・ということは情報源が同じということでしょうね),政治的意図から独立した純粋に科学的な情報・データが乏しい中,こういう情報は助かります。
以前から時々メールのやり取りをしている高校の生物の先生から「安全と危険。放射線による人体への作用」についてのメールをいただきました。結局,「それって完全に安全ですか? 危険性はゼロじゃないんですか?」という善悪二元論的な「安全・危険二元論」で考えてしまうからおかしくなるんでしょう。これは要するに「あなたの体重は20キロですか,80キロですか?」と質問するようなものです。放射線による人体への影響も "All or Nothing" で考えても駄目です。
とりあえず,することがないのでハードディスクに入れといた超バカバカしい映画でも観るとしますか。《ストリートファイター2050》とか《ザ・アビス 首都沈没》とか。こんなの観る奴いるか,というレベルの映画みたいです。
テレビの番組がようやく通常編成になりました。やはり,いくら被災地で暮らしている人間でも,テレビをつけると被災現場からのレポートばかりというのでは気が滅入ってきます。苦しい時だからこそ,笑いが必要になります。とても笑えないような状況であればあるほど,無理やりにでも笑って生きて行くしかありません。被災地だからこそバカバカしいバラエティ番組も必要です。
それにしても,コマーシャルが自粛モードとなっているのか,どのチャンネルを回しても(・・・チャンネルを回すというのも死語かな?),ACジャパン(旧公共広告機構)の品行方正生的真面目的道徳一路なものばかりで鬱陶しいです。少なくとも私は,いつもの馬鹿馬鹿しいコマーシャルでいいと思います。
と思っていたら,やはり抗議殺到だったようです。⇒【「ACジャパン(旧公共広告機構)」が謝罪文を掲載,CM大量放送で視聴者から抗議が殺到】
地震直後から数日間,食べ物といえばおにぎりとカップ麺とお菓子だけでした。もちろん,それしか食べるものがなかったし,食べられるだけ幸せと思っていましたが,このような「炭水化物と脂質」だけの食事は体にこたえます。
やはり,「人間はパン(とおにぎりとカップ麺とお菓子)のみにて生(いくる)にあらず」のようです。
そういえば,こちらのアパートの近くで屋根にブルーシートを掛けている家が目につきますし,ブルーシートが売り切れているそうです。屋根瓦が地震で落ちて屋根が壊れてしまった家が少なからずあるからです。そういえば,「地震で屋根から瓦が落ちてきて頭を怪我した」という患者さんも結構いました。屋根瓦は大地震の際は凶器に変身します。
【家にあるものでOK!生理ナプキンの作り方】
とりあえず私には必要ない情報ですが,こういうTipsが好きなのでのリンクしておきます。
【セは3・29開幕に延期 延長戦はなし】
野球をやるなとはいいません。野球やるなら人様に迷惑をかけずにやれと・・・。
2011/03/19
【ビール成分に放射線防護効果を確認/放医研・東京理科大の研究チームがヒトの血液細胞とマウス実験で実証/放射線防護効果は最大34%にも】
さあこれで,毎日ビールを飲む口実ができました。
昨日書きましたが,宮城・岩手・福島の惨状の影に隠れて,茨城県は「陸の孤島」と化しています。それなのに,茨城県知事は声明を出すでもなく,マスコミに救援を訴えるでもなく,全く活動していないようにしか見えません(・・・この人がマスコミに出たのは14日の「茨城県知事,計画停電は被災地外すよう要請 首相と東電に」というニュースが最後です)。
ちなみにこの橋本知事さんは2009年の知事選で5期目に突入した「全国の都道府県知事で最多選者」というタイトルホルダーです。「さすがは,茨城空港をあの時期に作っちゃうノホホンとした知事さんは,大災害になって県民が困窮している状態になってもノホホンとしているなぁ。動かざること山の如しだな」・・・という地元民の声多数あり。
「地震保険,全然意味ないよ。一部損壊だと5%しか出ないんじゃ,保険を払っても無駄,無駄」・・・という人が周囲に多いです。いざ地震が起きて家が壊れたというのに支払われる金額が少な過ぎます。
さあ,今日もボチボチいくか。せっかくの3連休ですが,石岡から外に出られそうにないため,病院でグダグダしようと思います。
【福島原発の放射能を理解する】
UCSBのスライド(もっとも客観的と思われる福島原発の現状と放射能の危険を啓蒙したもの)の日本語訳を,理論物理学の若手が訳したものです。なるほど,そういう事かととてもわかりやすいです。
全然わかんないよぉ~,という人は,高校物理と高校化学を勉強し直そうね。
ちなみに,病院の看護師さんに放射能の人体被害について説明しようとすると,シーベルト,ミリシーベルト,マイクロシーベルトの単位の関係(マイクロはミリの1/1,000ってやつね)が全然頭に入っていない人が少なからずいたりして,ちょっとビックリ。そうか,君たちは「ゆとりっ子」だったか。
2011/03/18
【“忘れ去られた”被災地から悲鳴「茨城は陸の孤島に…」】
宮城,岩手,福島の被害がものすごすぎて,すっかり霞んでしまい,報道すらされていないのが茨城県ですが,電気・水道・ガスが全く復旧していない地域がまだまだかなりあります。また,交通網も寸断されたままです(だから私も動けません)。
実は茨城県は,独自テレビ局を持っていない唯一の(?)県ですが,それも災いしているのかもしれません。
【単3電池から単1電池を作る方法】
単3乾電池ならたくさんあるんだけど,単1,単2乾電池が見つからない,という非常時に使えるTips。頭いいです。
【放射線 動揺広がる】
少なくとも,被爆してからガンが発生するまでに数十年かかると言われていますので,高齢者は被爆によるガンが発生する頃には自然死する確率がはるかに高いです。無理をして他県に移動させる必要があったのか,ちょっと疑問です。現に移動先でお亡くなりになっている人が結構出ていますから。
- 1日20本のタバコを1年間吸い続けた人の発ガンの確率は,70~280 mSv(ミリシーベルト) の放射線被ばくに相当
- 1日1本を1年間吸っているだけで,10 mSv 以上の被曝に相当
- 胸部CTスキャン ⇒6.9mSv
ちなみに,石岡市内でも3つくらいのガソリンスタンドが開いているそうです。土浦市内ではガソリンはそれなりに手に入るようです。
一方で,茨城県内で水がまだ出ていないところがかなりあります。風呂にも入れず,洗濯もできません。
【原発事故直後,日本政府が米の支援申し入れ断る】
これが本当だとすると,最初の原発での事故以降の事態は明らかに「人災」だったことになります。
【巨人・渡辺会長25日開幕を厳命!】
東京電力にお願いします。東京ドームと読売新聞本社と日テレの送電を停止していいです。この勘違い・高慢ジジイに電力を送るなんて惜しいです。
【東日本大地震,予想外の場所で起きた】
確実に言えるのは,地震についても日本列島についても地球についても人類はほとんど何も知らなかったのだ,ということだけのようです。たかだか1000年間の記録しかなく,ほんの表面から観測したデータしかないのに,それらを分析して「地震について熟知していたつもり」になっていただけかもしれません。
18日朝の石岡は氷点下の寒さです。部屋でファンヒーターのスイッチを入れてもなかなか暖まりません。茨城でこれなのですから,宮城,岩手の海岸沿いはどれほどの寒さなのでしょうか。
常磐線(上野⇒水戸⇒仙台)はようやく土浦(石岡市の南隣の市)までなんとか開通したようです。石岡駅と土浦駅の間は電車で15分足らずで,普通なら「車でちょっと土浦まで行って常磐線で上野へ」となる距離ですが,ガソリン入手困難のため車が動きません。
明日からの3連休,石岡から出られそうにありません。行くところもないため,確実にネットに繋がる医局にこもり,カップ麺をすすることになりそうです。
漫画家の西村しのぶ先生(以前,「RUSH」という作品で湿潤治療を紹介いただいております)から心のこもった陣中見舞いメールをいただきました。ありがとうございます。ご自身も阪神淡路大震災の被災経験がおありとのことです。
2011/03/17
昨日,「茨城県内のオートクレーブ,8割破損」と書きましたが,早速,茨城県常陸大宮市の鍼灸師の方から「鍼灸院では小型のオートクレーブを日常的に使っていて,小型のためか破損を免れているようです。どうしてもオートクレーブが必要という場合には,近くの鍼灸院に連絡すれば貸してくれるかもしれません」と,連絡をいただきました。 ⇒茨城県鍼灸マッサージ師会 会員治療院一覧
「そういえば,リビアのカダフィさん,どうなったんだろうね。まだ頑張っているの?」。「そういえば,大相撲の八百長,ってのもあったな」。「鳥インフルエンザってどうなったの?」。「上野のパンダが公開されても当分,見に行けないよね」。
以上,「中東革命が大昔に感じられる」医者が集う医局での雑談でした。
【欧米各国に広がる退避の動き…米は80km圏外】
1ヶ月くらい前から足のⅢ度熱傷で当科に通院治療をしていたベトナムのタム君の一家も,明日,日本を離れるそうです。2週間分くらいのプラスモイストを渡し,その後はラップで治療してもらうこととしてお父さんに治療法を指導。各国の方々,続々と日本から脱出しています。
プラスモイストの瑞光メディカルより次のような連絡をいただきました。
- 今回の地震で医療支援に出向かれる医師・看護師・薬剤師の方でプラスモイストを持参するので必要という場合は,瑞光メディカルから提供しますのでご連絡下さい。
- 連絡先
- 瑞光メディカル 販売管理部 災害支援係
- 電話:072-653-8877
- メール:plus_moist@zuiko.co.jp
その瑞光メディカルから「関西でも,一部ドラッグストアーの棚から紙おむつやトイレットペーパーが無くなり始めています」という教えていただきました。とりあえず,非被災地,非災害地の皆様,パニックになって物を買い占めないでください。
【米メディアが見た東日本巨大地震】
アメリカのメディアが「(日本国政府の対応は後手後手だけど)個々の日本人はすげえよ。こんなに素晴しい国民だったのか」と賞賛しまくりです。読めば多少でも気持ちが良くなります。
ワシントン・ポストも原発事故に対し, "If the Japanese can't build a safe reactor, who can?"(もし日本人が安全な原子炉を造れないのなら,いったい誰が造れるのか)と冷静に分析しています。
病院隣のセブンイレブンに少量ながらもサンドイッチ入荷! 野菜サンドがうまい!
地震が起きたのが先週金曜日の午後ですから,今日で6日目になります。しかし,感覚的には10日以上経っているような感じです。曜日のメリハリがない生活が続き,おまけに,この生活がいつまで続くのか,いつになったら終わるのかという見通しが立たないためでしょうね。
さて,大地震から6日目に入ったわけですが,いまだに被災地に救援物資が届いていないというのは先進国としては恥ずかしくないでしょうか。国土が狭いのですから,道路が駄目ならヘリコプターで運んで被災地に落とす方式で救援物資を直接届けられるはずです。各県で保有しているヘリコプターなどをかき集めたら50機や100機くらいになりますよね。
それにしても,この記事に来てからの「真冬並みの寒気団と降雪」はあまりに無情。こういう時に,何より優先的に灯油と毛布,衣服,食料品を岩手,宮城の孤立被災地に届けるのが政府の仕事だろうと思います。でないと死者が増えるばかりです。何とか津波から助かったと思ったら,避難所で凍死,ではあまりに悲しすぎます。菅総理,そのあたりがわかっていないんじゃないだろうか。
東北地方,北関東地方は基本的に車社会,つまり,個々の人間がそれぞれの目的地に個人が所有する車を運転して出かけることで成り立っている社会です。それは,「ガソリンがふんだんにあり,いくらでも手に入る」ということを暗黙の了解事項にしていたのです。だから,ガソリンが手には入らなくなるだけで,その地域の全てのシステムは崩壊寸前になったのでしょう。
日本国内で産出しない物質(=石油,ガソリン)が常に潤沢に容易に入手できる,というのはやはり不自然だったような気がします。社会の基盤とするにはあまりに脆弱な前提でした。
そういうわけで,普段なら電車で1時間で行ける東京の上野が,今はすごく遠いというか,辿りつけないくらい遠いです。容易に行けないという意味では,東京はコートジボワールや南極やノボシビルスクと同じくらい遠いです。
いつも夕食を食べている居酒屋さんは月曜日からお店を開いていて,限定メニューながら温かい食事が食べられ,助かりました。石岡市内の居酒屋さんもお店を再開するところが増えてきたようですが,食材の調達が大変なようです。
2011/03/16
なんと,茨城県内にあるオートクレーブの8割が壊れて使えなくなり,メーカーに修理を頼んでもガソリンがなくて茨城に来られず,いつになったら使えるようになるのか目処も立たない状況だとか。
オートクレーブは滅菌危機としてはオールドタイプですが,病棟や手術室で器具をちょっと滅菌するのには一番手軽ですから,これが使えないとなると日常業務に支障が出る部署も多いと思います。
医療系のメーリングリストに宮城や岩手の被災地入りした先生方からの報告が続々と届いていますが,ガソリン不足が問題の根源にあることが報告されています。茨城県の県立中央病院,土浦協同病院(ともに常磐線沿線の中核病院)でも同様の問題が起きていて,薬もなければ職員も出勤できない,という状態のようです。
- ガソリンがないため患者が病院を受診できない。そのため,患者数はそれほど多くない。
- 病院職員,医師,看護師も車が動かせないので出勤できず,出勤した職員はそのまま泊まりこみで仕事を続け,疲弊しきっている。自宅に戻る手段がない。
- 薬品や物品が来ない。在庫が底を尽きそう。治療しようにも治療手段がなくなりかけている。
- 物流がストップしているため,食料も水も届かない。
【Google,計画停電の情報や自動車の通行実績をマップ化】
これは便利ですね。さすがはGoogle!⇒自動車の通行実績
【破局は避けられるか――福島原発事故の真相】
広瀬隆氏の詳細な分析です。背筋が凍りつくような内容です。これって本当?
病院の診療体制は通常通りに戻りますが,ディスポのシリンジが不足しそうなので血液検査などでできないものがあるようです。また,処方薬も2週間分が上限となります。
一方で,ガソリンが手に入らないと通院できない,という患者さんが次第に増えてきました。
昨日,ようやく病院内の水道が使えるようになりましたが,まだ「飲んじゃ駄目だよ」レベルの水質です。間違って飲んだら病院に行けばいいのかな?
福島原発,危機的状況。まだ漏れ出した放射線の量は日常被爆量程度のようですが,最悪の事態も考慮しておいたほうが・・・という感じです。というわけで,もしもの時はイソジンガーグルを飲むしかないかな,なんて話題になり(イソジンガーグル飲用の適否については諸説あり,医学的には推奨されていません),早速,一人の医者が飲んでみましたが,よほど希釈しなければ飲み込めないシロモノとのことです。やはり飲んじゃ駄目ですね。
こういう状況に置かれると,物事について落ち着いて考える,ということができなくなります。つまり,論理的に思考するとか,論理的な文章を書くとか,そっち方面に頭が働きません。頭に浮かぶのは「また晩ご飯はおにぎりだけか」とか,「どのトイレが使えるんだっけ?」とか,「このペットボトルのお茶,まだ飲めるんだろうか?」とか,生命維持に最低限必要なことばかりです。
というわけで,人類が食っていくのに必死でなくてもよくなった時にテツガクなんてのが脳味噌に浮かんだことがわかります。
昨日,病院から歩いていける範囲の居酒屋が開いていることが判明し,数人の先生方とそのお店に行ってみました。「できるものはこれだけです」という限定メニューですが,久しぶりの生ビールや枝豆は「世の中にはこんなに美味いものがあるのか」と感動するほど美味でした。
しかし,店内は私たち一組だけでした。ガソリンが入手困難なため,そもそも店まで来れる客がいないのでしょう。貴重なガソリンを不要不急の飲食に使ってたまるか,ガソリンは生き延びるための必要物資だ,ってことでしょう。
2011/03/15
宮城,岩手,福島原発の報道に隠れて茨城県の被災情報がマスコミに報道されることはほとんどありませんが,実は,断水している世帯が一番多いのは宮城でも岩手でもなく茨城だったりします。
福島原発がとんでもないことになっていますが,原子力は人間が完全に制御できていない技術であることを改めて浮き彫りにしました。火力発電や水力発電と違い,原子力発電は一旦暴走すると制御が極めて困難です。そして,事故が起きたときの被害は火力発電所の比ではありません。
これは,時速40キロまでなら街中を安全に運転できるが,400km/hrの速度では安全に運転(制御)できないようなものかもしれません。それなのに,「原理上は400km/hrまで出る車が作れる」という理由で作ってしまい,「作った以上走らせないわけにはいかない」と公道を走らせているような感じかもしれません。
【水やガソリン…首都圏で買いだめ 被災地に届かぬ恐れ】
とりあえず,被災地以外の方はパニックにならないでほしいです。首都圏での買いだめは,私たち,被災地の人間の首を絞める行為です。
2年前に治療した果物屋のおじいちゃんから大きなイチゴをいただきました。八百屋のじいちゃん,後光がさして見えました。久しぶりの新鮮な果物を医局で分け合って食べております。
【「津波は天罰」=石原都知事「我欲を洗い落とす必要」】
天罰とは悪事に対する自然の報いのことを言います。石原都知事は宮城県,岩手県,福島県,茨城県の人間は悪事をしたから報いを受けたのだと言っています。この暴言ジジイに天罰を与えて下さるよう,「天罰担当神様」に被災地を代表してお願い申し上げます。
本日(3月15日)の石岡第一病院の外来体制にリンクしました。なお,本日の「計画停電」の12:20~16:00の範囲に含まれていますので,もしかしたら午後の外来はできないかもしれません。
ガソリンが全く足りていません。これまで自宅から車で着ていた先生方の車もそろそろ最後のガソリンになりそう,とのことで,これは他の職員でも共通しています。このままだと,徒歩か自転車で病院に来れる職員だけで診療を続けるしかなくなります。
それにしても,昨夜の計画停電って一体何だったんでしょうか? 別に停電して欲しいわけじゃないけど,こっちはそれなりに対応するんだから,やるならやる,やらないならやらないと早めに正確な情報を流して欲しいです。でないと,その地域内の人が食料や水の買いだめに走り,本当に食料・水が足りていない地域でさらにそれらが不足することになります。
2011/03/14
治療機材も次第に底を尽きつつあります。注射用のディスポシリンジ,処置用手袋があと数日でなくなってしまうとか。水道がきていないため,縫合に使った器材の洗浄ができず,縫合セットもなくなりそう。そうなったらスキン・ステープラーか?
「3月11日の地震で足にヤケドしたけど,自宅でラップを巻いていました」という患者さんが受診されました。「前から知っていたんでラップを巻いておいたけど,痛くなくなって助かった」とのことです。
ちなみに,15:20からの計画停電で19:00まで停電の予定。「こんな,水も碌にないところなんて電気はそんなに使ってないって。電力需要を抑えるためなら,もっと別のところを止めて欲しい」,「また,電気も水もない生活に逆戻りかよ」という声が多数あがっています。
「地震当日に膝を切っちゃったけど,キズパワーパッドを貼っておきました。ちょっと見てください」という患者さんが受診。創部は深いけど特に問題なし。
せっかく病院に電気が復活したばかりなのに,本日午後,東京電力の「計画停電」でまた停電! 東京電力に占める福島原発の役割の大きさがわかります。ま,いきなり停電よりはマシと考えるしかなさそうです。それにしても,発表から実施までの時間が短すぎます。
昨日,同じ医局の先生がバイクを飛ばして,柏市まで「買出し旅行」にでかけてくれましたが,食料品は全く買えず,緊急時に必要な日用品も全く店頭になく,「豊富にあるのは酒だけ!」ということでした。そして,「どこに行っても長蛇の列でガソリンが買えねぇ!」と悲鳴を上げていました。食料品にしろガソリンにしろ,物資の流通がストップしている感じです。そして,「計画停電」で食料や水が豊富にあるところでも買いだめが起こるでしょうし,その結果,食料などが不足しているところがさらに不足するということにならないことを祈るばかりです。
いずれにしても,医局にストックしてある食料品と飲料水が底を尽くのは時間の問題。でも,メタボ体型医者が多い医局ですから,みんなでダイエットするのも悪くないか,と考えるしかありません。
そういえば,この昨日診察した熱傷や外傷の患者さんに「明日も来たほうがいいと思います」と聞くと,「ガソリンが手に入れば来られると思いますが」と仰られる人が多かったです。たしかに,患者さんの多くが自家用車での受診(=徒歩での受診は到底不可能)ですから,[ガソリンが手に入らない]⇒[病院を受診できない]⇒[必要な治療が受けられない]となってしまいます。
そういえば,近くのコンビニで本日発売の「週刊アスキー」が普通に売られていました。ただし,食品の棚は空っぽ。
2011/03/13
とりあえず,13:00過ぎに電気は復旧! 一挙に文明開化,電気ってこんなに明るいの? という感じでちょっと感動! しかし,水道がまだ復旧していないため,明日の外来は休診で,私の外来では急患のみ受け付け,という予定です。
そういえば,ある若手女性医師が「頭が洗えなくてベトベトしてだめ。早く洗いたい!」と言っていましたが,私はもともと,「シャンプーレス・温水のみで洗髪」生活なのでそういうストレスはほとんどありません。ガーゼを少量の水で濡らして頭皮をこするようにするだけでサッパリすることを発見しました。災害時にも強いぞ,シャンプーレス・温水洗髪!
熱傷患者さん,裂創や挫創の患者さんが結構受診されています。処置が簡単で処置材料もほとんど要らず,薬剤も使わないので治療自体には困っていません。湿潤治療で良かった!
とりあえず,目の前にやるべき仕事があると気が紛れ,気分的に楽です。
近隣地域を含め,ガソリンが手に入らないようです。水道が復旧するのは2週間後とか・・・。
こういう状況にもかかわらず,職場放棄をする職員が一人もないというのがすごいです。物理的に来れない人を除き,日勤の職員は全員来ていて,手持ちの手段で何とかしようと工夫しあっています。日本人の底力,ってやつでしょう。海外経験のある先生が一言,「これが〇〇国だったらもうそこらで略奪が起こっているよ」。
先週金曜日午後の地震は凄まじかったです。私は地震発生の1時間前に石岡駅に到着て午後の診察を初めて数人というところで,地震が発生。このくらいなら大丈夫かなと思って悠然と構えていたら,どんどん揺れが大きくなり,しかもいつまでたっても治まりません。皆で病院の外に避難しましたが,時間を置かずに何度か余震が続きました。
結局,石岡市はその直後から停電と断水になり現在も続いています。アパート一人暮らしの私は真っ暗なアパートに戻ってもどうしようもないので,病院に寝泊りしています。病院なら非常用電源がまだ死んでいないし,何とかネットも使えるからです。
それにしても,災害発生からまだ2晩が過ぎたところですが,もう何日も経っているような錯覚にとらわれます。
せめて電気と水道だけでも復旧して欲しいです。
ちなみに,病院には医者も看護師もたくさんいるのですが,何しろ電気と水道が来ていないため,できることは限られています。「上から物が落ちてきて頭に当たったんです。心配なので検査してください」という患者さんが多いですが,レントゲンが撮れないと説明してもなかなか納得してくれない人がいます。「ここに明かりが付いているからレントゲンくらい撮れるだろう」と思われちゃうんですね。
改めて,電気と水道をふんだんに使うことで成り立っているのが現代の病院なんだなぁ,と思い知らされています。
同じ大地震と言っても,阪神淡路と今回の地震+津波ではちょっと様相が異なるかもしれません。
阪神淡路は狭い面積に集中的に被害がありましたが,今回の地震+津波は極めて広い範囲に起きていて,しかも東北地方の太平洋側で人口が集中しているのは仙台と盛岡だけで,それ以外は「広い面積に少人数ずつパラパラと分散」です。
つまり,仙台と盛岡に災害拠点を設けたとしても,そこと末端の各被災地を繋ぐ交通手段も移動手段もありません。救援の医者が災害拠点となる病院に集まったとしても,肝心の患者がその拠点病院にたどり着けてないはずです。阪神淡路は被災範囲が狭いために歩いても病院に受診できましたが,今回の震災ではそれは無理です。
また,各被災地(例:陸前高田,南三陸町)にしても「広い面積にパラパラ人が住んでいる」ことは変わりありません。つまり,各被災地の病院に応援医師が辿りつけたとしても,そこに医療を必要とする患者が集まっているわけではないはずです。要するに,救援物資や救援医療チームを拠点に集中的に投資しても効果はあまり高くないかもしれません。
多分,これが宮城,岩手の被災地の問題点でしょう。
とりあえず,水と電気と食料さえあれば健康人が病気になることは滅多にありませんが,この3つが「広い地域に分散している今回の地震の各被災地」にないものです。何はなくても,まずこの3つが欲しいです。
2011/03/11
2011/03/10
一番大きのは200cm2,つまり,20×10cmですから,せいぜいA5サイズです。A5の皮膚を移植すると20,150点=20万円になるわけですね。
- 25平方センチメートル未満・・・3,330点
- 25平方センチメートル~100平方センチメートル・・・4,590点
- 100平方センチメートル~200平方センチメートル・・・6,660点
- 200平方センチメートル以上・・・20,150点
皮膚移植術が他のどんな手術と同じくらいのお値段か,よくわかると思います。
- 虫垂切除術(膿瘍形成あり)・・・8,880点
- アキレス腱断裂手術・・・8,710点
- 大腿骨骨折の観血的手術・・・14,470点
- 乳ガン手術での「乳房切除+腋窩郭清なし」・・・20,000点
- ペースメーカー埋め込み術・・・13,800点
- 胆嚢摘出術(開腹)・・・19,760点
2011/03/09
いろいろな診療科について知っている先生ですから,大学病院形成外科での熱傷治療の異常さとその問題点を的確に指摘していますね。
- 最初から形成外科に入局し,他の診療科を知らない先生が多く,この医局の方針が絶対正しいと考える若い医者が多い。他の考え方もあるんじゃないか,と説明しても全く話が通じない。
- 熱傷治療については「とにかく植皮」という方針しかない。あと1週間くらいで治りそうな熱傷に対しても植皮している。しかも,それに対して誰も疑問を抱かない。
- 熱傷患者が入院すると,その時点でいつ植皮手術するかというスケジュールが決まり,植皮を中心に治療をしているだけ。
- 植皮をしない熱傷治療,という概念自体が医局に存在しない。若い医者は,植皮をしないと熱傷は治らない,熱傷は植皮をして治すもの,と信じ込んでいる。
- 植皮術の点数が高いことにビックリ! こんな簡単な手術なのになんでこんなに高いんですかね。これでは,「熱傷には植皮をしろ。植皮しないと儲からないよ」とお上が指導しているようなものだ。
2011/03/08
2011/03/07
2011/03/04
2011/03/03
2011/03/02
今から10年ほど前,それまで務めていた山形の病院を辞める際,ある被覆材メーカーのプロパーさんが送別会を開いてくれることになった。「どこかご希望のお店はありますか?」と尋ねられた私は迷わず,「《カレーと吟醸酒の店》の日本酒コースがいい」と伝えた。私が週に2回ほど食べに行くお店で,4人がけのテーブルが3つくらい,あとはカウンター席だけという感じだった。ちなみにこんなのがあります。高いです。
この店について説明しようとすると長くなるので先を急ぐが(・・・急ぐ必要もないけどさ),この店のマスターは「首吊り」という製法の日本酒(発酵した日本酒のもろみを酒袋に入れて酒袋の口を縛ってそれを天井から吊るして自然落下させ,「しずく」を集めて造った酒。この方法だと,一般的に行われているもろみに圧力をかけて酒をとる方法と違い,雑味が混入しないで非常にクリアなすっきりした日本酒本来の風味がはっきり出る。ただし手間がかかりすぎ,とんでもなく高価になるのが唯一の欠点)のコレクターとして有名だった。
「首吊り」は高価で私には手が出なかったが,マスターおすすめの酒は手頃な値段なのにどれもとても美味しかった。そういうマスターが選んだ日本酒4種類と,その酒に合う肴をおまかせで出してくれるのが「日本酒コース」である。もう二度と山形に来ることはないだろうと思い,この店を選ばせてもらった。
送別会当日,プロパーさん3人と私はテーブルについた。最初は檜の一合升に入った淡麗辛口な酒と刺身盛り合わせだったと思う。最初の一合はあっという間に空になり,次の酒になった。飲み口がやや濃厚になったが,酒と肴の相性は絶妙だった。その後,芳醇でさらに濃い口の3番目の酒と揚げ物の組み合わせになった。酒が淡麗辛口から濃厚甘口に変化するとともに,酒の肴の味付けは濃くなり量は控え目になったのがわかった。そして,最後の4品目の日本酒が運ばれた。びっくりするほど芳醇な美酒だったが,もうこの頃になると,酒に弱いプロパーさんは顔が真っ赤になり,ちょっと辛そうだった。
これで本来の「日本酒コース」は終了のはずだったが,マスターはニコニコしながら一合升4個を運んできて,「これはお店からのサービスです。是非,飲んでみてください」と言うではないか。とは言うものの,すでに全員,四合飲んでいて,二人は「もう飲めません」状態だった。しかし,マスターの「是非,香りだけでも楽しんでください」という言葉に,口を付けてみた。
その酒を口にした瞬間,驚愕した。何だ,この香りは! 何だこの旨さは! 今まで飲んだ美酒と次元が違う味わいの深さだ! こんな日本酒,飲んだことがない!
ベロンベロンの四人組が,緩めたネクタイを締め直して,この酒を飲んだ。そしてマスターは「これが日本酒の最高峰,首吊りです」と種明かしをしてくれ,4つの小さな皿を持ってきた。そして,「この酒に合う肴はちょっと思いつきません。これに合うのはこの塩しかないと思います」と言った。「首吊りと最高の塩の組み合わせ」はまさに夢のようなだった。
この宴会からもう10年近く経っているため記憶が美化されている可能性はあるが,あの夜,4人の酔っぱらいがネクタイを締め直して「首吊り」を飲んだことだけは今でもはっきりと憶えている。
【菊姫 黒吟】菊姫・吟の更に上滴り落ちる日本酒の髄贈り物に最適です。720ML【あす楽対応_関... |
2011/03/01
ピアノグローブ |