写真貼付メールで症例の相談を受けることが多いのですが,写真の撮り方に問題があって患部の状況が伝わらないことが少なくありません。また,多くの人はコンパクトデジカメ(以下,コンデジ)で撮影していますが,コンデジで患部の写真を撮影するには,風景写真の撮影とは全く異なったノウハウが必要になります。以下,私が経験から学んだノウハウです。
・・・とは言っても,カメラに関しては素人の経験則ですので,鵜呑みにしないでね。
【バックに青か緑の布(紙)を置いて撮影する】
これはバックなしの写真とバックありの写真を比べると,その違いは一目瞭然です。形成外科では患部の写真が唯一の治療記録となりますが(この意味で,整形外科のレントゲン写真,脳外科のCT,内科の血液検査所見データと同じです),きちんとバックを置いて撮影したものでなければ一流雑誌の投稿写真としては使えない,という不文律があったくらいです。
バックあり | バックなし |
【体の軸を液晶画面の水平・垂直にきちんと合わせる】
角度を適当に撮影 手全体が写っている |
中指を水平に合わせると 小指が切れてしまう |
【レンズを創面に水平にする】
斜めにすると,傷の大きさ・形が正しく記録できず,資料的な価値がゼロになります。なお,下の写真は私の下腿をマジックで黒く塗ったものですが,「この黒いのは傷なんだな」と脳内変換してください。
レンズが斜めだと 傷の形が円形に映るが |
水平にして撮影すると 実は楕円形だったことがわかる |
【体のどの部分かわかるように撮影する】
写真撮影に慣れていないと,患部のクローズアップの写真を撮るのに夢中になり,後でその写真を見て「これはどこを撮影したんだろうか。どのくらいの大きさの傷だったのだろうか」と途方に暮れることがよくあります。これを避けるためには,例えば仙骨部褥創の場合には,
この写真,どこの傷だっけ? | 下腿の幅の1/5の大きさであることがわかる |
【コンデジで白飛びさせない方法】
白飛びとは接写して白っぽい写真になることで,特に接写してフラッシュを焚くと百発百中,白飛びします。これを避けるには,「2〜3倍拡大モード(望遠モード)にしてカメラを患部から離し,フラッシュを焚く」という方法があります。姑息な方法ですが,白飛びしなくなります。
もちろん,一眼レフにリングストロボをつけて100mmマクロレンズにすれば完璧な接写写真が撮れますので,お金に余裕がある方はこの組み合わせを用意しましょう。
指が白飛び! | 2倍望遠でフラッシュを焚くと 普通の肌の色になる |
【画素数は?】
最近のコンデジは1200〜1400万画素あたりが普通になってきましたが,顔や手の外傷を撮影するためにはオーバースペックです。私の経験では200〜300万画素程度の設定で十分であり,医学書に載せる症例写真なら1600×1200ピクセル程度で十分です(ちなみに,300万画素で2048×1536ピクセル,200万画素で1600×1200ピクセルになります)。
ちなみに私が現在使っているオリンパスのデジカメの設定は300万画素相当の「2048×1536ピクセル」に初期設定していて,画像サイズは620kb前後となり,100枚写しても60MB程度にしかならないようにしています。
ちなみに,症例の相談で写真を相手に送る場合は640×480〜1024×768ピクセル程度で十分で,それ以上高解像にしても意味がありません。少なくとも,1200万画素のデジカメで撮影した症例写真をそのまま添付するのは非常識じゃないかと思います。
【ホームページ,ブログに症例写真を載せる】
ホームページ,ブログに症例の患部写真を載せるなら,400×300ドット以上にする必要はないと思います。私は縦長の写真を載せることが多いですが,ほとんどは縦サイズ300ドット前後です。
ちなみに,写真を横に並べる場合,写真の縦サイズを揃えておくのがコツです。縦のサイズを揃えるときれいに見えます。
(2011/03/22)