2011/10/31
【16:00】【15:00】
- 【「誰か、うちの娘と白血病を宣告された親友がいっしょにいる写真を、フォトショップで加工してくれないかな」】
人の善意って素晴らしいな,と感動します。みんなが想像力と技術の限りを尽くして,二人の子供のために素敵な世界を創り上げています。特に最後の方の「80年後」は涙なしには見られません。
【12:00】
- ちょっと面白い体験をしました。先日の「紫雲膏の人体実験」の実験部位を放置していたら,次第に痛くなってきたため(・・・当たり前だっつうの),数日前からデュオアクティブを貼っています。もちろん,それで痛みがなくなり,順調に上皮化してきたのですが,なぜか昨日から急に同部に痒みが生じてきて,次第に増強。創面を見ても特に変化はなく,ほぼ上皮化している状態です。しかし,あまりに痒みがひどいので,ダメもとでデュオアクティブからプラスモイストに代えてみたら,痒みは一瞬でなくなりました。軟膏は塗布せず,プラスモイストの単独使用です。
痒みの原因は何だったのか,それはデュオアクティブを関係があるのか,なぜプラスモイストに代えたら痒みがなくなったのか,皆目見当がつきません。
ただ,「一つの被覆材を使っていて治癒が遅れたり何かトラブルが起きたら,別の種類の被覆材に代えてみるとなぜかわからないが案外うまく行くことが多い」という私なりの経験則があり,今回もそれは有効でした。人体の創傷治癒の世界にはまだまだわからないことがある,ということだけは確実に言えるようです。
【06:30】
- 【レインコートと傘の夢のコラボレーション!】
これはちょっと便利そう。雨の中のサッカー観戦とかの時に活躍しそうです。
- 【年末商戦に赤信号、タイの洪水でハードディスク不足が深刻化】
タイの大勢の人が大変なことになっているというのに,パソコンの心配をするのは不謹慎ですが,世界中のクリスマス商戦,年末商戦にとてつもない影響が出るのは確実です。この時期を狙って売り出される予定の新製品が次々と販売延期になっています。
私が狙っているUltrabookはHDDでなくてSSDですが,大丈夫かなぁ?
- 「皮膚科の常識・非常識」シリーズに久しぶりに「白癬菌についての疑問」を追加しました。このシリーズ,あと数回続く予定です。
- タイの洪水ですが収束の様子が見えてきません。原因は色々ありますが(タイ北部山間地での大雨,山間地での焼畑農業,植林なしの森林伐採・・・),国土の地形も大きく絡んでいるようです。大河チャオプラヤー川の巨大三角州が国土の多くを占めているからです。
何しろ川の流れがゆったりです。平均流速は赤ちゃんのハイハイくらいで,ゆっくり歩く速度よりさらに遅いそうです。しかも土地の高低差がなく,川が400km流れて100m低くなるだけで(利根川は200kmで200m下る),1kmの高低差がわずか25cmです。しかも海抜0m地帯が広がっていますから川の水だか海の水だか見分けのつかない巨大な汽水湖ができたようなものでしょう。
ほとんど平らな土地に広がった液体を物理的に分離するのは非常に難しい作業です。
- 【M9級予知できず…研究者反省“経験則に依存”】
科学とは本来,「再現性のある現象」を対象に研究するものです。「蛹から蝶が生まれる」現象はほとんど確実に再現性があり(例外は蛹が寄生虫などで死んでいる場合),「夏至のあとは日が短くなる」現象も100%の確率で再現性があり,「質量保存則」は1万回実験を繰り返しても再現性があります。そういう「再現性のある現象」について研究し,その背景にある基本原理を解明することが科学と言えます。
その意味で,地震学は科学といえるかというと,私はこれまで何度も書いたように,地震学は科学ではないと考えます。再現性が極めて低い現象を研究対象にしているからです。
しかも,地震学の盤石の基本理論であるプレートテクトニクス理論も実は間違っているという批判すらあります。仮に「プレート移動で起こる地震がある」のを事実として認めたとしても,それ以外のメカニズムで起こる地震があるのかないのか,それすらわかっていません。この状態を生物学に例えると「4本足の生き物」を一緒くたに扱っているようなもので,両生類も哺乳類も同じ生物種として研究しているようなものです。だから,目の前で何かが起きたとしても,それが何なのか,なぜそれが起きたのかがわかりません。これでは科学と呼べません。
学会では「経験則に依存するしかない地震学には限界が」という声もあったそうですが,経験則しかデータがないのであれば「予知」という言葉を使うべきではありません。「予知」とは高度の再現性が確立している現象にのみ成立するからです。
2011/10/28
【13:40】【09:30】
- 撓骨動脈損傷を伴う前腕裂傷の患者さんが救急車で搬送されてきました。タオルを分厚く当てて包帯で圧迫していますが,タオルからは血がポタポタと垂れ続けていて,全く止血できていないことは明らかでした。
それで,タオルを除去し,出血している部位を指で直接圧迫したらあっさりと止血できました。動脈損傷はピンポイントで出血部位を抑えれば指一本でも簡単に止血できるんですね。
【07:30】
- 週末の移動中などにはスマートフォンでネット接続をしています。GPSで目的地への経路を調べたり,電車乗換を瞬時に教えてくれたり,暇つぶしに動画を見たりと便利なんですが,使っていてちょっとイラつくことがあります。リンク先に飛ぼうとしてタッチしたのに,なぜかその上下のリンクが押されちゃって別のサイトが開いてしまうことです。周りの人に聞いても「あれはイラつくよね」と言っていますので,私だけの現象ではなさそうです。
なぜこうなるかというと,スマートフォンではどの場所がタッチされるかは,実際にタッチするまでわからないからです。パソコンのカーソルのように「今はここにいますよ」という表示がないため,タッチして初めて間違ったボタンを押したことがわかるのです。実際,「ここでマウスが使えたら便利なのに」と思う場面がよくあります。
椅子に座ってスマホでネット閲覧するのなら,「左手にスマホ,右手に小型のブルートゥース・マウス」というスタイルが一番便利じゃないか,なんて思ったりしますが,こればかりはOSの問題なので手も足も出ません。
ちなみにRegzaフォン(Docomo/au)だけはBluetoothのHIDプロファイルに対応しているらしく,簡単にマウスが接続できてマウスのポインタも普通に表示されるそうですし,Windows Phoneは最初からマウスが使えるみたいです。
いずれにしても,スマートフォン,タブレットでは今後,ポインティングデバイスに標準で対応して欲しいです。
【06:30】
- 「ヒビケア軟膏による人体実験」を続けていますが,「塗った直後はすごく痛いが,深い潰瘍を作るほどではない。しかし,塗り続ける限り傷は治りそうにない」というだらだらと低空飛行状態が続いていて,劇的な(?)イベントが起こりません。要するに,せっかく体を張っているのに面白くないんですね。ただただ痛いだけで,画像的においしくありません。
- 「手荒れの治療でワセリンを塗ったあと,ワセリンを拭き取る理由を教えて下さい」という質問に答えました。
- 【幻の大蝶、ブータンで80年ぶり確認 日本の調査隊】
昆虫少年だった私は,このニュースに大興奮! 私レベルの昆虫好きでも名前を知っているくらいの,超ビッグネームの幻の蝶です。優雅に舞う姿は夢のごとく美しく,神々しささえ感じます。
- 【海の最深部で巨大原生動物を発見】
地球の最深部ともいうべき10,600メートルの深海底で発見された,体長10センチの単細胞生物,それがクセノフィオフォラです。深度もすごいけど,体長10センチということにビックリ!
生物は真正細菌,古細菌,真核生物の3つのドメインに大別され,すごく大雑把に言えば,真正細菌と古細菌は「細胞膜でATP産生を行う」ため,細胞のサイズに上限が生じ,ほとんどのものは1ミクロン前後のサイズです。一方の真核生物はATP産生をミトコンドリアが行うためにサイズの制限がなくなり,細胞は巨大化しましたが(真核生物の細胞は一番小さな赤血球でも10ミクロン。細菌が人間サイズだとすると,赤血球はクジラのサイズになる),それでも単独の細胞では巨大化に限界があり,その限界以上に大きくなるためには通常は群体を作るか多細胞化の道をたどっています。単細胞の真核生物がどんなに大きくても数ミリ前後なのはそのためのようです(・・・その後,これは多核細胞ではないか,という指摘をいただきました)。
しかし今回は,一挙に10センチです。1ミリの100倍,体積にすると1万倍(=103)です(単純計算では)。深海というニッチな環境とは言え,そこでは同じくらいのサイズの多細胞生物との競合が起こりますから,単細胞原生動物に有利な条件がその深海底に何かあるとしか考えられませんが,それが何なのか,全く見当がつきません。
- 【球団名に商品名がネックか 横浜の売却問題】
あれっ? 読売ジャイアンツって読売新聞という商品名がついてませんか? それとも,読売ジャイアンツは読売新聞とは全く無関係なんでしょうか。読売ジャイアンツ関連のグッズをエサに読売新聞を売っていたのはどこの会社でしたっけ?
2011/10/27
【13:20】【07:00】
- 【1万年前のトウモロコシでポップコーンを作る】
煮ても焼いても食えそうにない小さく硬いトウモロコシの原種。それをダメ元でポップコーンにしてみたら見事に! そしてこの小さくて固い実しか付けない原種を食用に品種改良していったご先祖様の工夫の歴史に思いを馳せます。いい記事です。
【06:30】
- その声を聞いたものは死ぬ,という伝説の怪物バンシーの恐怖を描くホラー映画,《BANSHEE バンシー》を紹介。いわゆる「褒めどころが一つもない」映画でございました。
- 【Asus ZENBOOK 国内発表、11.6型 Core i7で 8万4800円から。13.3型は1600 x 900】
Asus,キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
13.1インチのUX31にも惹かれるものがありますが,13インチで1600×900ドットは文字が細かすぎて老眼に辛いので,UX21EのSSD 128GBで決まり! しかもお値段は10万円切り! こりゃ,衝動買いでしょう。唯一の不満点はバッテリー駆動時間が5.5時間(・・・ということは普通の使用で3時間?)であることくらいかな?
ちなみに,東芝のUltrabookは11月中旬,AcerのUltrabookも同時期発売予定!
2011/10/26
【13:30】【06:30】
- ヒビケア軟膏を実験部位に塗布していますが,塗布するたびにビリビリするようなひどい痛みがあり,痛みは次第にひどくなってきました。塗布して10分もすると痛みが和らぐのが唯一の救いです。
この痛みに対し,「しみて痛いのは薬が効いてきた証拠。もっと塗って早く治そう」と考える人もいるんでしょうね。良薬口に苦し・・・だと考えて・・・。
- 「ヒビ,アカギレにはヒビケア軟膏」のヒビケアを自腹購入し(15gで1380円という超高価軟膏! 100gで9,200円って大間のマグロ大トロの2倍のお値段でございます),早速いつもの人体実験を開始。
いやはや,痛いのなんのって,塗布した直後からかなり強烈な痛みが生じ,それが10分近く続きます。ヒビケアの基剤についてはネットで調べてもよくわかりませんが,この痛みからすると,基剤はマクロゴールなんでしょうか?
現時点では塗布部位に目立った変化はないので人体実験を続けていますが,ヒビケアを実験部位に塗布するのが憂鬱です。だって,塗ると痛いんだもの。
- 「糖尿病足の角質肥厚」ですが,ある先生から「それは単に,知覚鈍麻があるためじゃないでしょうか?」という指摘をいただきました。なるほど。やはりそれか。
- 【文化功労者に加賀乙彦氏】
数年前,ある出版業界の方から「日本で,医師免許を持っていて本の印税だけで食べているのは,渡辺淳一,加賀乙彦,なだいなだ,北杜夫くらいでしょうね」と教えてもらいました。いずれも,「えっ,この人って医者だったの?」という方々ばかりです。逆に言えば,医者をやりながら小説を書いている,というのでは「印税だけで食えない」のでしょう。
試しにちょっと計算してみるとわかりますが,1,000円の本が1万冊売れると,印税として売上の10%(=100万円)が収入となり,そこから所得税が引かれて手元に入るわけです。つまり,印税だけで年収600万円を確保しようとするなら,1,000円の本が1年間で10万部売れないと駄目ということになります。もちろん,毎年毎年10万部売れないと駄目です。つまり,毎年毎年,10万部売れる本を1冊出版して初めて年収600万生活が確保できます。
これはかなりきついですし,真面目に医者をしている方が余程確実に収入が得られることになります。
- 【「どくとるマンボウ」北杜夫さん死去】
という記事を書いていたら,何と北杜夫さん,ご逝去。享年84。
私が生まれて初めて,自分の意志で決めてお小遣いで買った本は北杜夫さんの『どくとるマンボウ航海記』でした。小学校5年生の頃です。なんて面白い文章なんだろうと,本屋さんで『どくとるマンボウ』の文字を見るたびに購入し,読み耽る毎日でした。そして,文章や表現の面白さの裏にある「何か」を子供なりに感じ取っていました。
今こうやって,文章を書く仕事をするようになった原点の一つは北杜夫さんであり,「心の師匠」の一人です。
合掌!
- 【インドで「いらない子」と名付けられた女の子達が一斉に改名する】
インドの「いらない子」と名付けられた子供たちも可哀想ですが,日本の「誰にも読めないDQNネームちゃん」たちも可哀想です。インドの場合は「いらない子」と読んでもらえますが,日本の「DQNネームちゃん」たちは読んですらもらえないのです。「木星と書いてビーナス」,「宇宙と書いてアース」と読むような非常識ネームをつけられた子供は本当に不憫です。「着てもらえぬセーター」は捨てられますが,「読んでもらえぬ名前」は捨てるわけにいかないのです。
こういうDQN親にDQNネームを付けられた子供たちには,「自分で判断できる年令になったら,まともな名前に改名して良い」という法律を作ってあげないと,インドの「いらない子ちゃん」より可哀想です。
- 「某病院での講演料,18,000円!」ですが,ある看護師さんから【講演依頼.COM】というサイトを教えて頂きました。ここで「ジャンル,予算,性別」などで講師を検索できますが,「30万円以下」が最低ランクになっています。18,000円では検索すらできません。まさに価格破壊です。
ちなみにこの看護師さんから「18,000円で先生の話が聞けるなら,私がポケットマネーを出して呼びます」とのことですが,すみません,もう18,000円では引き受けたくないです。
また,ある全国大会で某有名先生をお呼びしたところ,「18,000円にゼロが2つ付く講師料」だったそうです。何と6桁!
2011/10/25
【16:20】【14:10】
- なんと,栃木県から粉瘤の患者さんが受診されました。粉瘤ですよ,粉瘤! 事情を聞いてみたら,以前からあった粉瘤が腫れて痛くなったため,近くの皮膚科・形成外科クリニックを受診したところ,「炎症が起きているから切開はできない。抗生物質で炎症を抑えてからでないと切開は危険でできない」と説明され,4週間抗生剤を投与されたとのこと。そこでネットを見て県境を超えて茨城の田舎まで受診されたそうです。
早速,速攻で切開して中身を押し出すと皮膜までツルンと出てきて,アルギン酸塩被覆材を詰めて治療終了。5分もかかりません。こんな簡単な治療を受けるために遠くまで来ていただいて,恐縮してしまいました。
それにしても,粉瘤で4週間抗生剤投与というのもすごい話です。
ちなみに「粉瘤は炎症を起こしていると局所麻酔が聞かない」という医者がいますが,これは全くの誤りで,炎症の極期でも局所麻酔はよく効きます。と言うか,炎症の極期ほど手術しやすいです。炎症期に局麻が効かないのは単に「局所麻酔の腕が悪い」だけです。
【10:00】
- さっき,「糖尿病患者の足底の角質が厚いのはなぜ?」と書きましたが,早速ある先生から「角質のターンオーバー遅延が原因」という論文を教えて頂きました。
でも,足底の角質が異常に肥厚している患者さんでも手掌の角質が厚いわけではないし,他の部位の角質も異常には見えません。なぜ足底だけなのか,という疑問は依然として残ります。また,この文献も1991年ですから,もう20年も前のものです。もしかしたら,まだ誰も確かめていない,という可能性があるのかもしれません。
いずれにしても,糖尿病の足に感染が多い原因はこの「過剰角質⇒角質内に水疱(?)形成⇒細菌が侵入して膿瘍化」ではないかと想像しています。もちろん,根拠レスですが。
【06:30】
- 現在,糖尿病性の足底潰瘍の患者さんを数人見ているのですが,全員,足底に厚い角質形成があります。その角質内に水疱(?)ができてそこから膿瘍が・・・というパターンが多い(ような気がする)ので,角質を必ず削るようにしているのですが,なぜ糖尿病の患者さんの足底には,こんなに厚い角質ができるのでしょうか。このメカニズムをご存知のかた,ご教示いただけないでしょうか。
- これは買って便利,というのがスマートフォンのスタンドです。新幹線の車中などでスマートフォンで動画を見る時に便利です。今回買ったのは値段も安く,折り畳めるので財布にも入れられるし,プラスチックなので角度が気に入らなければ切って角度を調節できます。
- 人種の坩堝であるパリ20区にある中学校の国語教師の奮闘を描くヒューマンドラマ,《パリ20区、僕たちのクラス》を紹介。2008年のカンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞したとても評価の高い映画ですが,どうも私の感覚とは相性がよくないようです。
- 「紫雲膏人体実験」についてある「医療は素人」さんから次のようなメールを頂きました。
紫根は染料として使われていたことは知っていました。それで、傷が治っても紫色になってはアザが残っているみたいなので、自分では使う気になれなかったというのが実情です。なるほど,それで「痔には紫雲膏」なんですね。これでまた一つ,賢くなりました。情報,ありがとうございます。
紫根は、ムラサキという植物の根なのですが、ムラサキ科のラテン語名がBoraginaceaeで、これがあの痔の薬のボラギノールの語源だそうです。
- 昨日,「にきび治療で有名な市販薬のプロ●クテ○ブでトラブル?」と書いたところ,早速,「それってプ●アク○ィブですよね。酷い目にあいました」というメールを幾つか頂きました。名前を伏せたのに,●ロア○ティ◆だってわかっちゃったようです。
- 昨日,「講演料 18,000円」という話を書きましたが,一般の相場はどのくらいかというと,5年ほど前,「普通は肩書きで決めていて,教授,病院長クラスで20万円,助教授,診療部長クラスで10万円」と聞いたことがあります。私の場合,教授でも助教授でも診療部長でもないので・・・です。やはり肩書きは重要ですね。
- 【形成過程の真っただ中にある惑星を発見】
恒星系で巨大ガス惑星(太陽系で言えば木星,土星,海王星,天王星)が形成される過程を説明する標準理論を裏付ける形成途上の巨大惑星が見つかった,というニュースです。特筆すべきは太陽系から中心恒星まで450光年という近さと,この恒星が誕生してからまだ200万年しか経過していないということでしょう。これまでも「誕生直後の恒星」は発見されていましたが,これほど近くで見つかったものはあまりないように記憶しています。
なにより「200万年前」というのがすごいです。ヒト亜科とチンパンジー亜科が分かれたのが600万年前,旧石器時代の始まりが200万年前で,アジアでは北京原人やジャワ原人(いずれもホモ・エレクトス)が生きていたのが200万年前なのです。地質学的には「ちょっと前」です。
銀河系外の天文学的発見と,人類史が重なることってあまりないので,つい興奮して取り上げてしまいました。
- 【<大王製紙元会長>父に怒られ20億円を返済】
「地震雷火事親父」という言葉を久しぶりに思い出しました。
- 【柏の高放射線、市有地すべてで線量測定へ】
数字は二種類にわかれます。基数と序数です。基数は「物の数,大小,高低などを表す数字」,序数は「順番を表す数字」です。
基数は「3を4倍すると12」とか,「10cmは5cmの2倍の長さ」とか,「51kgから5kg太ると56kg」というように厳密な大小関係を現します。
一方の序数は順序を表すものですが大小とは無関係です。富士山の3合目は6合目の2倍高いわけではなく,マラソンの1位は2位の人より2倍速いわけではありません。
なぜこんなことを書くかというと,放射能を表す「シーベルト」は基数ではなく序数に近い数字だからです。ベクレルは基数ですが,シーベルトは基数ではないのです。シーベルトを出す元になる数式はICRPが決めていますが,その数式に含まれる係数は数年に一度変わります。だから,10年前のシーベルトの値と,今年のシーベルトの値は比較することすらできません。数字を出す数式の係数が違うからです。
だから,一桁レベルのマイクロシーベルトの大小で一喜一憂するのはおかしいです。そんな厳密な数字ではないのです。「1.25cmと3.00cmでは1.75cm長さが異なる」なんていう数字ではなく,大雑把でどんぶり勘定の数字です。このあたりを無視して,シーベルト値の大小で大騒ぎしても無意味です。マイクロシーベルトのレベルになると,「目安だけどかなり大雑把な目安」程度でしかありません。
2011/10/24
【17:20】【06:30】
- ある先生から「例のにきび治療で有名な市販薬のプロ●クテ○ブなんですが,これで結構トラブルが起きているみたいですよ」という話を聞きましたが,実際のところはどうなんでしょうか。
- 久しぶりに「紫雲膏で人体実験」してみました。1日後にとんでもない激痛が襲い,2日後,創面は恐るべき惨状を呈しました。自分の体での実験ですから自業自得ですが,もしもこれが患者さんの体だったらと思うとゾッとします。しかも,塗布を止めて48時間異常経過しているのに,創面がまだ毒々しい紫色に染まっているのが不気味です。
- テレビを見ていて「ヒビ・アカギレには〇〇軟膏」というCMが気になりました。この軟膏,本当に効くんでしょうか? ううむ,気になります。次なる人体実験のターゲットはこいつにしようかな? 唯一の難点は,この軟膏は自腹購入するのがバカバカしいくらい高価なことです。
- 来月,幾つか講演が入っていますが,そのひとつの主催者から「講演料は18,000円です」と連絡が入りました。もちろん「病院の規定」というやつなんでしょうし,私もお金が欲しくて講演しているわけではないのですが,「お前の講演なんて1時間半で1万8千円の値打ちだ」と評価されたみたいで,ちょっと物悲しい気分になります。
ちなみにこの18,000円という講演料はこれまでで最低金額です。ついにデフレは講演料にまで押し寄せているのでしょうか。今後,これより低い講演料が提示されないことを祈るばかりです。
- 【最下位・福岡が新潟に敗れ3度目のJ2降格】
サッカーのJリーグは本当に厳しいです。どんなに努力しても下位の3チームはJ2に降格してしまいます(もちろん,J2の上位3チームはJ1に昇格できますが・・・)。だから,J1で優勝争いの常連チームであっても,勝てなくなったら容赦なくJ2へ降格です。
その点,プロ野球は甘いです。どれほど負けてもプロ野球リーグの一員であり,成績が悪くても都市対抗野球になるわけではありません。Jリーグの厳しさに比べたらぬるま湯みたいなもんでしょう。
- 【あれ、池の上を泳いでる…これがリアル鯉のぼり】
これはなんとも不思議な動画。なぜ,この水柱に集まるんでしょうか? これだけ集まったら酸素濃度が低くならないんでしょうか? 餌が食べたくなったら下に下がるのかな? こういう自然界ではありえない環境に生物がどう反応するかは「やってみないとわからない」ですね。
ちなみに,鯉はドイツ語でも "Koi" であることを初めて知りました。
2011/10/21
【07:00】【06:30】
- 【一度は食べてみたくなる世界50カ国の朝食をずらりと並べた写真】
豪華な朝食から簡素な朝食まで勢ぞろいで,見ているだけで楽しいです。ちなみに,以前ちょっと紹介した『物語 食の文化 - 美味い話、味な知識』という本によると,一日三食になったのはつい数世紀前からであり,それまでは一日二食が普通だったそうです。
ヨーロッパ圏では二食のうち昼の食事が正餐で夕食は軽かく,15世紀から徐々に朝食が加わって一日三食の風習が広がりますが,あくまでも昼食と夕食に朝食が加わった形であり,昼食のみ豪華で,朝食と夕食は簡素なもので済ませるのが一般的でした。
日本では鎌倉時代まで一日二食で,朝食と夕食を食べていました。一日三食が庶民にまで広がるのは17世紀半ばからで,明暦の大火をきっかけに広く普及します。大火からの復興のために職人は激しい労働をしなければならず,朝食と夕食では体力が持たなくなったからです。かくして日本では,朝食と夕食に昼食が加わることで一日三食になり,現在でも昼食は軽く済ませる風習が続いているわけですね。
』
- あのジョン・レノンには「二人の母」がいた。生みの母と育ての母だ。しかもこの母たちは実の姉妹だった。自分の出生の秘密に苦しみながらも,ロックに目覚めて自己のアイデンティティを確立していく17歳のジョン・レノンを瑞々しく描く佳作映画,《ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ》を紹介。
- 「紫雲膏の人体実験」ですが,創面に固着している紫雲膏を剥がす痛みに耐えかねて,キシロカインゼリーを塗布してから洗い流すことにしました。こうでもしなければ,創面がどういう状態になっているかをデジカメで撮影できないからです。
そこで気が付きました。「紫雲膏の創面破壊作用」は紫雲膏独特の「紫の色素」によるものだということに・・・。この紫色の色素が諸悪の根源じゃないかと思います。
色素はキレート作用でタンパク質に強固に結びつきます(タンパク質に強固に結びつくから,絹糸も木綿も色素で染色できるわけです)。このため,色素の多くは殺菌作用を有します。細菌の細胞壁のタンパク質と結びつき,そのタンパク質を失活させるからです。
つまり,創面に紫雲膏を塗布すると,紫雲膏の紫色の色素は創面のタンパク質(=細胞膜のタンパク質)と結合して,その結果,膜タンパクは機能を失って細胞は破壊されるはずです。これが,今回の実験で確認された「紫色の痂皮」の正体でしょう。
いずれにしても,紫雲膏で浅い傷が深い潰瘍に悪化することは確認できましたので,そろそろ実験は終了として,来週早々にも,証拠の画像とともに「紫雲膏の創面破壊作用」の過程を提示しようと思います。
- ちなみに,漢方治療をしている先生から「紫雲膏が傷を深くすると聞きショックです。安全な漢方の軟膏はどれでしょうか?」というメールをいただきましたが,私は「紫雲膏がダメならワセリンを使えばいいじゃん」と考えます。漢方医だから漢方薬しか使えない,と考えるほうがおかしいです。漢方薬を使うのが治療の目的ではなく,患者を治すのが治療の目的です。その目的のための手段が薬剤です。「漢方医だから治療手段は漢方薬」と治療手段を制限する方がおかしいと思います。
- 【次世代Eee Padは Transformer Prime 、4コアTegra 搭載で8.3mm厚】
「キーボード付きのAndroidタブレット」である Lifetouch Note を使っている側からすると,Android-OSがマウス対応になって欲しいです。マウスが使えないとキーボードはせいぜい,パスワードや検索語句やURLを入力したり,ちょっとした文章を書くのに便利,程度の存在であり,ノートパソコンのような「ネットの情報をコピーして,文章にペーストする」という使い方ができません。もちろん,指先で画面をタッチしても「文章の一部をコピー」できますが,マウスのような繊細な作業は不可能なため作業効率は非常に悪いです。
それと,Android Marketで入手できるファイラーにしてもエディタにしても機能が低すぎるし,使い勝手が悪すぎます。もちろん,搭載メモリの制限のためなんですが,98時代のフリーソフトのファイラーやエディタより低機能で,おまけに直感的なファイル操作ができません。これは多分,Android-OSにしてもiOSにしても,ファイルを直接操作することを想定せずに設計されたためと思われます。そのため,せっかくキーボードがあるのに直感的ファイル操作ができず,いちいち考えながら操作する必要が生じるのでしょう。
というわけで,キーボードを搭載するならOSでマウスに対応して欲しいと切に願います。
2011/10/20
【09:50】【06:30】
- 「紫雲膏による人体実験」の続報です。昨夜,痂皮が剥がれて潰瘍面が露出した部位に塗った紫雲膏が固着しています。洗い落とそうとしましたが,あまりの痛さにすべて落とすことを断念! その上から新たに紫雲膏を塗って実験続行中です。この軟膏の面白いところは,塗った直後は痛くないのに,その後,ジワジワと痛みが発生し,やがて激痛に変わるところです。
ちなみに,この軟膏の効能効果には【ひび、あかぎれ、しもやけ、ただれ、外傷、火傷、痔核による疼痛、肛門裂傷、かぶれ、あせも】と明記されていますので,今日も日本のどこかでこの軟膏をヤケド治療に使われている患者さんいるんだろうなと思うと心が痛みます(実験している足も痛いけど)。
- 昨日,「漢方の超有名軟膏で人体実験中」と書きましたが,実験開始から30時間経過した頃から凄まじい痛みに苛まれています。もう,実験をいつ止めるか,そればかり考えています。この超有名軟膏とは,もうお分かりの通り「紫雲膏」です。この軟膏,激ヤバです。
それと同時に,「紫雲膏はよく効く安全な軟膏です。自分で使ってみても痛くありません」と話す漢方医の先生が多い理由もわかりました。トリックがあったのです。
紫雲膏を浅い傷に塗布すると当初は痛みはほとんどなく,浸出液を固めて痂皮を作るように作用します。そのため,痂皮の下は潰瘍ですが,痂皮に守られた形になり,痛みはほとんどありません。しかし,痂皮がちょっとでも取れてしまうと痂皮の下の潰瘍が直接紫雲膏に接触し,強い痛みが生じます。現在の私はこの痛みに苛まれているわけですね。
つまり,痂皮が取れずに痂皮の下で上皮化が完了すれば「紫雲膏は痛くなく傷を治す素晴らしい軟膏」という評価になりますが,痂皮がちょっとでも取れてしまうと「紫雲膏は最初はいいが,途中からは凄まじく痛くて傷も治らないクズ軟膏」という評価になります。
このあたりのことは,自分の体で実験しないと絶対にわからないことですね。動物実験をいくらしても,その軟膏が痛いか痛くないか,どのくらい痛いのかは動物は教えてくれません。
ちなみに,今回の人体実験に使った紫雲膏は,近くのドラッグストアで自腹で購入しましたが,14gで840円という高級品でした。つまり「100gで6,000円」ということになり,超高級和牛のお値段に匹敵します。
- 普通に暮らしていた常識人がふとしたことから大金を手にしたことから運命が狂っていく・・・という感じのサスペンス映画,《シンプル・プラン》を紹介。とても丁寧に作られたいい映画なんですが,優等生の書いた模範解答みたいな感じで,突き抜けた面白さはありません。まぁ,ないものねだりなんでしょうが・・・。
- 「ミニエッセイ」をちょっとだけ更新。
- 【ギリシャで緊縮策反対の一斉スト始まる デモ隊が警官隊と衝突】
ギリシャは全労働者の24%が公務員です。しかも,公務員給与は民間の1.5倍高いそうです。つい最近まで公務員が何人いるのか,それすらわからなかったという公務員天国です。年金,公務員給与&手当が政府支出の40%を占めるとの調査まであります。まさに公務員の天国です。そして,歴代政権は公務員の支持を取り付けるべく,公務員に甘い政策を維持してきました。まさに,公務員にとってエデンの園です。しかし,国をあげて粉飾決算を続けてきました。これで国家財政が破綻しないわけがありません。
問題(=国家の財政破綻)の原因(=多すぎる公務員)は誰に目にも明らかで,問題の解決法(=公務員の削減と給与削減)も誰が考えてもこれしかないのですが,何しろ公務員とは「公務員であることで生活できる」人間ですから公務員は反対するしかありません。何しろ全労働者の4人に1人が公務員ですから,大規模デモとなります。国家が破綻すれば公務員なんて吹き飛んでしまうんですが,そういう道理は通用しそうにもありません。これがギリシャ一国だけなら「勝手に騒いで国を潰せば」で済むんだけどなぁ・・・。
EUとしては「頼むからEUから出てってくれ!」でしょうね。何しろ,ギリシャは「財政は健全です」と粉飾決算して嘘をついていたからEUに加盟できた,という前科がありますから。
- 【「あの名画」を人間で再現してみた意欲的な写真いろいろ】
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に大笑い。なんで男で再現するの?
2011/10/19
【07:20】【06:30】
- 久しぶりに「人体実験」をしています。今回のターゲットは漢方系の先生から問い合わせの多い「あの超有名軟膏」です。足にガムテープで傷を作り「あの軟膏」を塗っていますが,実験開始から8時間後にシャワーを浴びたんですが,実験部位(=あの軟膏を塗っているところ)だけが痛いです。この軟膏,なんかヤバくね?
- 【日本人のがん“半分は予防可能”
そのうち,癌も克服されて日本人は癌で死ななくなるんでしょう。でも,人間は必ず死にますから,癌が撲滅された世界でも人は何らかの病気で死にます。癌でも死なず,感染症でも死なず,心疾患でも死なず,血管病変でも死なない世界では,人間は何で死ぬんでしょうね。その頃の「主要な死因」は何なんでしょうか。
- 上富良野町立病院の兼古先生から,「専門医からⅢ度熱傷と診断されたⅡ度熱傷の症例」という投稿をいただきました。形成外科医(=熱傷治療の専門医)が患者にⅢ度熱傷だと説明したり,紹介状にはⅡ度熱傷と書いたり,ムチャクチャなことばかりしていた様子がよくわかります。おまけに,患者が退院して他の病院に転院するのを(全力で?)受診するのを阻止しようとしたそうですから,医療倫理に反します。
- 【Asus Eee Pad にAndroid 3.2.1 アップデート、19日正午からFOTA】
私は3週間ほど,「キーボード付きのAndroid Pad」ともいうべきNECの quot;Lifetouch Note" を使っていて,どの程度までノートパソコンの代わりに使えるか実験(?)していますが,「現時点ではノートパソコンの代わりにはならない」というのが結論です。理由は次のとおり。
- すべての操作がキーボードでできず,画面タッチをしなければいけない操作とキーボードでできる操作が混在していて,操作の統一性に欠ける。
- マウスに対応していないため,「ホームページから必要な文章をコピーして,自分のWordファイルに貼り付ける」という当たり前の操作が事実上できない。
- ATOKは使えるがキー・カスタマイズができない。辞書登録などの操作もキーボードだけでできないのでちょっとイライラする。他のIMEもキーボードで使うことを前提にしていないので使いにくい。
- 当たり前といえば当たり前かもしれないが,Windowsの標準的ショートカットキー(例:[Ctrl]+[C]でコピー,[Ctrl]+[V]で貼付け,など)がソフトによって使えたり使えなかったりする。Android OSでは[Menu]キーとの組み合わせでショートカットになるらしいが,ユーザーの利便性を優先させて[Ctrl]キーで統一して欲しかった。
- 基本的にAndroid OSは,既存のデータ(文章,画像,動画,音楽など)を閲覧するのには重宝なOSですが,データを新たに作成・編集するのには不向きなOSかも・・・。
- 【パンダが竹を食べる謎を解明】
竹を主食とする哺乳類は実はパンダだけではありません。マダガスカルの霊長類,ヒロバナジェントルキツネザルやハイイロジェントルキツネザルは竹を主食としていますが,これは例外的な存在で,その他には竹を主食とした生物はいないようです。
そこでパンダですが,竹しか食べていないことは確実ですが,竹の主成分であるセルロースを分解できるのは地球上では細菌だけであるため(草食動物も,草食の軟体動物も,シロアリも,セルロース分解酵素は持っていない),パンダの腸管にはセルロース分解菌が共生・常在しているはずと考えられてきましたが,今回の研究でそれがようやく確認されたようです。
ここでも,「細菌の圧倒的多数は培地で培養できない」という現象が研究を妨げたようです。
ちなみに私のヤマ勘では,「ホモ・サピエンスがパンダを竹食に追い込んだ」とするのはちょっと無理っぽい気がします。
- 【除染基準値超の放射線量検出=船橋市の公園、土を除去―千葉】
国の「年間被ばく線量の1ミリシーベルト」という基準が最初にできてしまったため,東日本全土の表皮を剥ぎ取り,山の木を全て伐採しなければいけない事態に陥りました。安全か安全でないかという議論はどっかに行ってしまい,「年間1ミリシーベルト以上か以下か」ということだけになってしまいました。年間1ミリシーベルトが基準として妥当かという議論もありません。
昨日紹介した記事のように,生物学的・医学的には「月100ミリシーベルト」の基準が妥当です。それより低く基準を設定しても,発がんリスク,健康被害リスクは減らないからです。しかし,国が最初に「年間1ミリシーベルトという非現実的で厳しい基準値」を設定してしまったため,その数値が独り歩きしています。そして,「基準値は絶対に守らなければいけない」という日本人の生真面目さがアダになります。基準値が金科玉条となり,あたかも神のご神託のごとく崇め奉られます。
一旦,基準値を厳しく設定してしまうと,その後,基準値を緩めることは不可能です。基準値を上げると必ず「健康被害があってもいいのか?」と文句が上がるからです。
だから通常は基準値は緩めに設定し,それで健康被害が出たら基準値を上げる,というのが常套手段なんですが,今回の福島原発の場合は,想定しうるもっとも厳しい基準を最初に設定してしまったため,その数値にがんじがらめになり,一歩も動けなくなってしまったと思います。
50年後,人類史上初めて「低線量長期被曝による健康被害の有無」が統計分析に耐える数値となって出るでしょう。その結果,「現実的に守るべき基準値」が明らかになります。少量の放射線量まで生真面目に測定し,それによる影響を50年間を追跡するという貴重な基礎データをとってくれた生真面目な日本人に対し,世界中の研究者が感謝するでしょう。
- 【タイ大洪水、バンコク北部に到達する危険性】
21世紀なのに,人類は洪水に対し「土のうを積み重ねる」以外の対抗策を持っていません。変幻自在に形を変える液体の侵入に対し,「土のうという固体」でしか対抗できないのですから,これは最初から負け戦です。
2011/10/18
【16:00】【10:00】
- 今日もまた,神奈川県から「皮膚移植が必要な熱傷と言われて形成外科に入院していて,今日手術の予定でしたが,本当に手術が必要か一度診てください」という上肢熱傷の患者さんが受診されました。
診察するとほとんどは上皮化寸前の状態で,ごく一部(直径3センチくらい?)が少し深い程度です。どうやらこの3センチの傷に全身麻酔下に植皮をしようとしていたようです。確かに,経営を考えるとどんな小さな面積に対しても皮膚移植したほうが儲かりますけどね(皮膚移植はとても手術点数が高い)・・・。
ちなみに,この患者さんは紹介状を持参して来られましたが,他院で治療を受けられている熱傷患者さんで主治医が紹介状を書いてくれる例は本当に稀です。その点,この主治医の先生は良心的ですね。
【06:30】
- 【日本の「被曝限度」は厳しすぎる 私が「月間100ミリシーベルト」を許容する理由】
日経BPのインタビュー記事ですが,私が日頃放射能について考えていることに極めて近く,全面的に賛成します。もちろん,放射能恐怖症の方,放射能は極微量でも許すマジという主義の人,放射能は微量でも健康被害があると信じている人にとっては,理解し難く許しがたい暴論でしょうが,科学的に理知的に物を考えるとはこういうことだ,というお手本のような論理の組み立て方は読んでいて気持ちがいいです。
この人の下記の著書も読んでみようかと思います。
- 雰囲気はちょっと古めかしいけど,手堅く作られたオカルト系スラッシャー風味のホラー映画,《踏み切り》を紹介。暇つぶしにちょうどいい感じですね。
- なんて文章を書いていたら,bluetooth接続のマウスを落としちゃって,それからマウスカーソルは動くのにクリックしてもどのアイコンも反応しなくなったのです。Windowsのスタートボタンすら無反応。しょうがないので強制終了してセーフモードで再起動をしてみたんですが,それでも症状は変化なし。
こうなると,Windowsの不具合だろうか,Biosのトラブルだろうか,何かの拍子にデバイスドライバのトラブルが起きたのか,ウイルスという可能性もあるかな,どうしてもダメなら買い替えかなぁ,なんて思っていたら,マウスのボタンのトラブルであることが判明し,マウスの買い替えでトラブル解決となりました。
こういう予期せぬトラブルに直面した時,トホホ者(週刊アスキーの人気連載ですね)は重大な原因からチェックし,そうでない人間は「電源ケーブルが抜けていないか,ケーブルの断線ではないか」と基本中の基本から調べるそうです。今回は,早い時期にマウスのトラブルが発見できましたから,トホホ者入りはすんでのところで回避できました。
まぁ,「マウスを落とした直後のトラブルの原因は,マウス自体の故障だ」というだけのことですが,最も単純な原因はなかなか気が付かないものです。
- 【生活に革命を起こしそうな11の便利ガジェット】
今すぐにでも欲しい物が3つあります。皆さんは幾つありますか?
- 【プロスポーツ選手の“年俸バブル”にも世界同時不況で終わりの時が来た!?】
今季,アメリカのNBAは中止の可能性も,というニュースがありましたが,なるほど,こういうことだったんですね。こういう記事を読むと,アメリカンドリームは「経済は常に拡大し,右肩上がりが続くものだ」ということを大前提にしたものであり,同様に,「プロスポーツ選手が稼げるのはせいぜい30代初めまで。だから選手生活の10年間のうちに生涯年収を提供する」という雇用システムも,「経済的にゆとりがある人が大半であり,常に観客がスタジアムを満員にし,テレビ視聴率も高い」ことを前提にして成立していたシステムであることがよくわかります。
選手側からすると「そんな事,聞いてないよ。契約書にそんなことは書いてないよ」でしょうが,何しろ「スポーツで飯が食えることを可能にしたのがアメリカだ」という大前提自体が揺らいでしまった現在,「そもそもプロスポーツって社会に絶対必要なの? 経済的余裕があってこそスポーツ興行が可能じゃないの?」という疑問まで生じてしまうのです。
- それにしても,NHKにとって今年の紅白歌合戦,頭が痛いでしょうね。紅白常連の大物演歌歌手のほぼ全員が暴力団とズブズブの関係だとほとんどの人が知ってしまったからです。しかし,紅白常連の演歌歌手の出演をいきなり取りやめると「彼らは暴力団との関係が密接だった」ことをNHKが公式に認めることになるし,かと言って出演させると今度はマスコミの総攻撃です。もう,二者択一でできない状態です。
- 【インダス川の水をめぐる攻防】
こういう記事を読むと,「インドといえばインダス川,ガンジス川だけど,どっちが西,どっちが東だっけ?」と混乱しますが,受験生時代の私は強引に「ガンジスのガは東(ヒガシ)のガ」と暗記しました。
35年も前のことを不意に思い出すなんて,人間の記憶とは面白いです。
2011/10/17
【15:00】【11:00】
- 昨日から話題にしている「熱傷治療の酢酸鉛!」ですが,処方した医師は茨城県N市でなく,茨城県の県庁所在地水戸市の「〇〇○内科・皮膚科」でした。
酢酸鉛は湿布剤として医療用医薬品として認可はされていますが,アメリカのFDAでは「化粧品に含有させる場合の上限濃度は0.6%」と定められています。また,EUでは酢酸鉛は生殖毒性物質のカテゴリーI(人の生殖,発生毒性と当該物質への暴露との因果関係を確立しうる十分な証拠あり)に分類されていて,化粧品成分としての使用は禁止されています。また,WHOでは酢酸鉛を発癌物質の強さを「5段階評価の上から2番目(=人に対しておそらく発がん効果あり)」に分類しています。
つまり上記のクリニックでは,「傷のない皮膚に塗ってもいけないものを,傷のある皮膚に塗布させている」わけで,これは強力な発癌物質を塗っているのと同じ行為と考えられます。ヤケドの治療に行ったのに発がん物質を塗られて帰ってきたなんて,シャレになりません。
水戸市医師会はこの先生に注意した方がいいと思います。発癌物質を治療に使っていることで患者から告訴されかねません。酢酸鉛が発癌物質であることをこの先生はご存知ないでしょうから(だから処方しているのでしょう),今後もこの先生は処方し続けるはずです。事故が起きてからでは遅いです。
発癌物質を処方されたくないとお考えの水戸市近辺の方,このクリニックの名前が知りたいという方は,メールでご連絡下さい。メールでそっと教えます。
ちなみに,音楽ファン向けのコネタとして,「ベートーヴェンの難聴と酢酸鉛」というネタがあります。この酢酸鉛は甘みを持つため,古代ローマでは甘味料として使用され,その後,ワインの醸造過程で甘みをつけるために加えられていたそうです。ベートーヴェンのワイン好きは有名ですが,彼の遺髪からは通常の100倍の鉛が検出されていて,重傷の鉛中毒であったことが証明されています。30代から彼を悩ました聴覚障害はこの鉛中毒だったと考えられます。
【07:10】
- 【気絶するほど恐ろしい! 北欧の「なまはげ」は大人もビビるレベル】
私は「なまはげ」の秋田県生まれで,「生なまはげ」も見ていますが,この北欧の「クランプス」は鬼なんてもんじゃなくて,マジに化物です。このままでホラー映画の主役に抜擢できそうな迫力です。夜中にこんなのに出会ったら,マジで腰を抜かして座りションベンですぜ。
【06:30】
- 本屋さんで見つけた面白そうな本が『「窓」の思想史: 日本とヨーロッパの建築表象論』 (筑摩選書)です。大概の本はタイトルを見ると内容が推し量れますが,この本は全く予測できません。このタイトルを見ただけで購入を決定。CDの「ジャケ買い」ですね。
- 【「このインパクトはすごい」と驚かれていたPCのデスクトップ画面】
すごいインパクト! くまちゃんバージョンがかわいいです。ちなみに,壁紙はダウンロードできます。
- 先日ちょっと紹介した『天皇はなぜ生物学を研究するのか』という本について本格的にレビュー。知識満載の楽しい本です。
- 先週金曜日に,茨城県の皮膚科医が熱傷患者に「酢酸鉛」を処方し,これを患部に当てるようにと説明した,というびっくり症例を紹介しましたが,ちなみに処方されていた「酢酸鉛」はこれです。【効能・効果】には「表皮に欠損のない打撲」とありますので,どうやらこの皮膚科の先生は「本来ヤケド治療に使ってはいけない薬剤をヤケドの治療に使用した」ことになります。かなりヤバイです。
さらに,いつもの福島県の生物の先生によるとこの酢酸鉛とは次のような物質であり,極めて危険なもののようです。「酢酸鉛」にびっくりです! 実験用の試薬ならともなく、医薬品としてアリなのか。「傷のない打撲」に使ったとしても鉛中毒の危険性があるのですから,「ヤケドの創面」にこいつを塗ったら,遮るものがないので直接体に鉛が入っちゃうんじゃないでしょうか。うわぁ,ヤバそう! 5マイクロシーベルトのラジウムは健康被害はないけど,この酢酸鉛を傷に塗ったら確実に健康被害がありそうです。
高校化学では、酢酸鉛といえば、硫化水素を検出する試薬として有名です。で、その廃液・廃棄物は当然、勝手に捨てたりしてはいけないものです。一般の人が医薬品・化粧品として「鉛」という元素を使用する時代はとっくの昔に終わっているものと思っていました。釣りのおもりでさえ、鉛でなくなりつつある時代に、医薬品でというのが信じられない。
患者さんも調べたように、熱傷には決して使わないような感じですけどね。というか、熱傷に使ったら絶対に駄目でしょう!!下手したら、鉛中毒になりますよ。熱傷の治療で鉛中毒って、それ副作用とは言えないでしょう。患者の利益と不利益のアンバランス、甚だしい。
はっきりいって、「床下からラジウム」よりも驚きました。5μSv/hの放射線よりも、鉛のほうが絶対にヤバイってば。
というわけで,茨城県の県庁所在地M市にお住まいの方でヤケドをしてKクリニックを受診し,酢酸鉛を処方されたらそのクリニックから逃げたほうがいいです。鉛中毒になってからでは遅いっすよ。
- 「ミニエッセイ」をちょっとだけ更新。
- 【OS の世界シェア、Windows 7 が XP を超える】
XPはかなり安定したOSですから,まだかなり使われていると思います。安定して動いているし特に不満もなければ買い換える必要もないというわけでしょう。しかもOSをバージョンアップすると使えなくなったりする周辺機器があったりしますからね。
それにしても,「そんなOS,あったっけ?」扱いのWindows Vistaが不憫です。ユーザー数でVistaがMacOs Xに追い越されるのももはや時間の問題です。
- 【<日本地震学会>「反省」シンポ 地震学者に限界 3割「役に立ってない」】
本来の学問は「役に立っているか?」という疑問すら浮かびません。役に立つ,立たないという次元とは別の存在だからです。役に立とうが立つまいが,真理の探求が科学ですから。
しかし,地震学は自らを「地震予知」という言葉とセットで宣伝(?)してきた過去があります。地震学には実利があると宣伝して多額の予算を獲得してきました。だから,「役に立っているのか?」が問われる事になったのでしょう。「蓄積データが少ないから実際の役に立っていない」という意見が53%を占めているそうですが,蓄積データを集めるためにもっと予算を回せ,と考えているのでしょうか。
私は,蓄積データの多寡の問題ではなく,そもそも予測できるのか,という所が問題だと思っています。「過去のデータを集積して未来を予測する」という地震学会の方法論自体に無理があると思います。原因と結果で言えば,地震は原因でなく結果です。地下深部での「何かの変化」があり,その結果として地震が起きます。だから,「結果である地震」をいくら分析してもあまり意味がありません。
これは肺炎を考えるとわかります。肺炎の原因は細菌,結果が発熱や咳です。では,発熱や咳のパターンを分析すれば肺炎の予後がわかるかというと,そういうことはありません。原因がわからずに結果だけ分析しても意味がありません。地震学がやろうとしていることはまさにこれと同じです。
現状の「原因不明のまま結果だけ分析する学問」のままであれば地震が国未来はありません。現状のままでは地震学は真の科学とは呼べまないと思います。
2011/10/14
【16:10】【09:00】
- 先日,頚部熱傷の患者さんが受診されましたが,近くの皮膚科医院に通院していて「酢酸鉛」を処方され「これを浸したガーゼを2時間ごとに交換するように」と説明を受けたそうです。しかし,ガーゼを交換するたびに傷が白くなり,どうみても深くなっているようにしか見えないため,ネットで「酢酸鉛」を検索して熱傷治療に使われていないことを知り,怖くなって当科を受診されたそうです。
それにしても,医者になってそろそろ30年近い私ですが「酢酸鉛」という薬物,初めて見ました。一般に使われているものなんでしょうか?
【06:30】
- 【世田谷が飯舘村より高いので東京脱出】
さすがのBOZZも今回ばかりはちょっと先走りしちゃったようです。
ちなみに人の方から「先生の予測,バッチリでしたね」,「ビンゴ! というより瓶ですな」とメールをいただいております。今回のラジウム瓶は偶然に見つけることは理論的に不可能なので,それを見つけられるのはここに置いた人だけでないかと・・・。
- 「無名の若手監督が撮影した低予算ゾンビ映画」と来ると十中八九,クズ映画なんですが,今回紹介する《ベルリン・オブ・ザ・デッド》は例外的な傑作です。限られた予算の中でよくぞここまでスリリングな映画を作ったものです。私はこういう映画が大好きです。
- 【ペスト菌、600年前から変化せず】
細菌フェチにとっては驚愕のニュースです。何とペスト菌(Yersinia pestis)は600年前から今日まで,全く遺伝子的変異を見せていないのです。これは通常の細菌学の知識からは理解し難い現象です。なぜなら,細菌はプラスミドやファージの形で外部から遺伝子を取り入れ,変異していくからです。実際,湖沼や土壌からは溶存型DNAが見つかり,それらは遺伝子として機能することがわかっています。つまり,湖沼や湖は細菌にとって「巨大な遺伝子プール」であり,そこから新たな遺伝子を調達しているという考えもあります。高速ネットワークで相互に連絡しあっているクラウド型コンピューティングのようなものです。
しかし一方で,頻繁に変異を繰り返すウイルスにしても細菌にしても,「種の壁」は厳然として存在し,インフルエンザウイルスはいくら変異を繰り返しても狂犬病ウイルスに変化することはないし,大腸菌がβ-プロテオバクテリアに変わることもありません。恐らく,インフルエンザウイルスにはインフルエンザウイルスであるためのアイデンティティがあり,大腸菌には大腸菌であるアイデンティティがあるため,と考えられています。
現代でもペスト菌感染は起きていますが,抗生剤が著効するため,診察した医師が正しく診断すればほぼ確実に治ります。つまり,ペスト菌は抗生剤の猛攻撃を受けているのに変化しようとしない,ということになります。
なぜ,ペスト菌は抗生剤に対して耐性を獲得しないのでしょうか。可能性として私なりに解釈すると,「ペスト毒素を作るゲノムのサイズが大きすぎて,他の基本的代謝システムが必要最低限のものしかなく,新たに抗生剤耐性遺伝子を獲得すると代謝システムそのものが働かなくなるなどの不都合が生じるから」ではないかと思います。要するに,新たな耐性能力を獲得するとペスト菌としてのアイデンティティが保てなくなる,という「遺伝子の極限状態」ではないかと思われます。だから,600年間,変わるに変われなかったのではないでしょうか。
もう一つ可能性があるとすれば,ペスト菌はウェルシュ菌のように必須アミノ酸の代謝系を失っていて,「狩り」をすることでしか増殖できない細菌になってしまった,というものです。つまり,「不完全な代謝系しか持たないから,生存に必要なアミノ酸は外部から調達するしかない/中間宿主を殺してアミノ酸を得るしかない」という生き方です。
いずれにしても,600年間,遺伝子変異がない細菌がいるという事実に大興奮です。「細菌とはどういう生物なのか」を知る上で,大きな手がかりになるような気がします。
- 【原因は放射性ラジウム=原発事故と無関係―世田谷の高放射線量・文科省】
この報道が正しいとすると,昨日の私の予想の「これは人為的な原因じゃないの?」が正解だったことになります(・・・と,自画自賛する)。まぁ,それはどうでもいいですが,次なる疑問が生じます。
- 誰が何のためにラジウム226をそんな所に置いたのか。以前,この家に住んでいた人は放射性物質を扱う人ではなかったようようですから,誰から何らかの意図を持って持ち込んだはずです。
- この場所をピンポイントで見つけられたのはなぜ? 「世田谷中をガイガーカウンターを持って行き当たりばったりに歩いていたら,なんとラジウムの瓶を見つけてしまいました」・・・なんて絶対にありえないです。世田谷区の中で「どこにあるかわからない,一箇所にしか存在しない,数メートルの範囲でしか検出されない放射能」を探すのは不可能です。鳥取砂丘のどこかに置いてある砂金一粒を探すようなものです。
- 【おくやみ:C言語の作者 デニス・リッチー博士】
私は以前,プログラミングを趣味の一つにしていました。最初はBasic準拠のエディタのマクロ言語を習得し,その後,それを足がかりにC言語も覚えました。暇を見てはスクリーンセーバーを作ったり,ゲームを作ったりしていました。あの頃,C言語は私の手足でした。そして,コンピュータの世界は信じられないくらい広大なものであることを教えてくれました。その意味で,この言語は道具であり,同時に師匠でした。
合掌!
2011/10/13
【17:00】【09:45】
- 今年もインフルエンザの予防注射の季節になりましたが,私は毎年,「自分の太ももにズボンの上から直接」刺しています。以前,「インスリンの自己注射は服の上から刺す」という論文を紹介しましたが,言いだしっぺがやってみないと格好悪いよね,ということで自分でズボンの上から刺しています。他の先生の手を煩わせる必要はないし,何より簡単でいいです。
ちなみに注射針は26Gですが,刺す時にチクっとする程度で全く痛くありません。これなら楽勝で自分に注射できます。
【06:30】
- 「乳児期からずっと治らなかったアトピー性皮膚炎の治療例」を追加。
- 【Asusのウルトラブックは ZENBOOK、11.6型 UX21と高解像度 13.3型 UX31】
Asus,キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
先日紹介した東芝のUltrabookに比べると,重量は100g軽くなっています。スペックも「128GB SSD,メモリ4GB,インタフェースは何でもあり」ですから申し分ありません。フォルムも美しいです。しかも予定価格は8万円前後とお買い得。
11月に入ると各社のUltrabookが一斉に店頭に並ぶことになりそうですが,どれを選んだらいいか迷っちゃうよ。困ったなぁ。でも嬉しいなぁ。すごく嬉しいなぁ。
- 【スマートフォンをノート化するモトローラの Lapdock 100】
これは面白い! 要するに,スマートホンとドッキングすると Android Note(10インチ液晶を備えたフルキーボード付きのノートパソコン。ネットブラウジングもオフィスソフトの編集もできる) に変身するガジェットのようです。
- NECのAndroid Note "Lifetouch note" を「いつもの居酒屋さんのカウンタでの文章書き」に使っていますが,とてもいいです。こうなると,「ワンセグチューナーも買っちゃおうかな」,と思ってしまいます。実際,5千円前後の小型チューナーを買えばLifetouch Noteでもワンセグが視聴できます。なら,買っちゃうか?
・・・と,ここで目が覚めました。そもそも,テレビをあまり見ていないからです。テレビは朝夕のニュースをちょっと見るだけでその他の番組は見たことがないし,特に見たい番組があるわけじゃないし・・・。何より,石岡ではワンセグがほとんど入らないため,ワンセグチューナーを買っても無用の長物になるのは火を見るより明らかですね。
- 【世田谷 放射線量下がらず対応検討】
通常,放射能は地表ほど高く,地表から離れると低くなります。ところが,この世田谷の放射能は「路面付近よりも50センチから1メートル離れた場所の方が高い数値が検出されたところもある」ということです。普通はこんなことはないので,なんか変,ちょっと不合理です。
これってもしかしたら,「どこかの誰かが何かの意図を持って放射性物質を持ってきて・・・」という可能性もあり? もちろん,ゲスの勘ぐりですけどね。
2011/10/12
【12:00】【09:40】
- 【哀Phone発売】
ジョブズ尊師,あの世でもヒットを飛ばし続けています。「愛国フォン」,中国はマジで欲しがるでしょうね。
- 【タジキスタン監督「日本はウズベクや北朝鮮と比較にならないほど強い」】
タジキスタンの監督の言葉が素晴らしいです。こういう監督に率いられたチームには強くなってほしいです。
【09:00】
- 下記の「培養表皮移植」の患者さんから,より詳細な情報をいただきましたので修正します。
ヒルドイドは、「順調なら、術3週間後からつけはじめるように」と最初のクリニックで説明を受けました。右頬はトラブルなかったので(3週間後からヒルドイドを)つけたら、すぐその晩から、皮膚が剥離し出血もあり、現在のようなびらんにいたりました。その後,某大学病院では「傷にガーゼ」をつけてくれましたが、それが傷にへばりついて、痛い目にあったので、行くのをやめました。恐るべし,ヒルドイド!
最初の先生はメールで相談に乗ってくれて悪い印象はないのですが,どうやって治療したらいいか困っていらっしゃったようです。
【08:20】
- ズイコウパッド情報です。打撲後血腫で切開してペンローズドレーンを入れることはよくありますが,この創部をズイコウパッドで覆うといいです。血腫は十分に吸収してくれるし,切開創縁にくっつくこともなく,剥がす際に痛みがありません。
【06:30】
- 昨日,『もうダマされないための「科学」講義』という本を紹介し,その冒頭で1枚のグラフを載せましたが,女性の平均寿命と相関する横軸の正解は「1970年から2005年までの日本国内のエアコンの保有台数」です。要するに,「1970年から今日まで,順調に数が増えているもの」ならどれも,女性の平均寿命ときれいに相関するグラフがでっち上げられます。多分,軽自動車の保有台数とか,リモコンの出荷台数とかも「平均寿命ときれいに相関」するはずです。レッツ・エンジョイ,いんちきグラフ。
- 先週から頻繁に,「顔のニキビ跡をきれいにする治療ということで〇〇県まで行って培養表皮移植術を受けたが移植皮膚が全く生着せず,全て剥がれてしまった。手術をした医師に相談しても,この手術で失敗例はないと言われました。何とかならないでしょうか」という悲痛極まりない相談を受けています。
昨日,初めて当科を受診されましたが,私が紹介した医師のもとでプラスモイストで治療し,順調に上皮化が進んでいてひと安心しました。きれいに治ることを祈るばかりです。この患者さんから学んだことです。
- 培養表皮移植を行なっている先生は,移植皮膚が生着しない場合のことまで想定していたのでしょうか。やはり,基本的な創傷治療の方法くらい勉強してから,手術したほうがいいと思います。どんな治療にも失敗はつきものですから,リカバリーショットの打ち方を事前に学んでおくことは絶対に必要だと思います。
- 途方にくれた患者さんはこの医師の出身大学を受診し,ヒルドイドソフトを処方されたそうですが,ヒルドイドをつけた夜から激痛に見まわれ,創部から出血があり使用を止めたそうです。ヒルドイドを傷につけちゃダメですね。
- この医師も次に受診した大学病院の医師も「移植部は石鹸でよく洗うように」と説明していますが,界面活性剤で傷を洗ったら深くなると思わなかったのでしょうか。どうやら,医学は知っていても生物学も化学もご存知ないようです。
- 魔王ルシファーとの契約書にサインした初老の俳優が殺人鬼に変身するスペイン製のホラー映画,《コントラクト》を紹介。
こういう悪魔が登場する映画がホラー映画として成立するためには,「観客が悪魔の実在を信じ,悪魔を本気で怖がっている」ことが必要条件であることがよくわかります。つまり,「悪魔を怖いと考えている人だから悪魔映画は怖い」のですね。逆に言えば,悪魔の存在を信じていない人にとっては怖くないことになります。つまり,特定文化にしか通用しないのが悪魔系ホラー映画です。
- 【ロジクールから iPad 2 用の飛び出す「トランスフォームキーボード」 TK900】
私はiPadを使っていないのでこういう製品はドーデモいいのですが,この2分割ギミックにはちょっとそそられるものがあります。こんな形で変形・合体するのかと,メカフェチにはたまらないものがありますね。
個人的には,Android Padにも対応して欲しいです。
- 【海底地層中に炭素・窒素吸収する微生物】
「約46万年前にできた海底地層中に炭素や窒素を含む化合物を食べて生きている微生物」って,真正細菌ではなくて古細菌かな? 実際,地中世界は細菌の王国であり,地表のすべての生物量よりはるかに多い生物(=細菌)が生活している世界であり,地下10kmまで細菌が生きていて,生命のネットワークを作っていると考えられています。
- 【海江田万里氏で考える、政治家は誰のために仕事をするのか? 】
海江田万里氏の2009年の選挙ポスターのキャッチコピー「政治は生活だ!!」をネタにしています。当時の海江田氏は選挙に落ちて浪人中だったため,このキャッチコピーを素直に読むと,「私は政治でメシを食っている。このままではメシが食えない。なんとか私を当選させて,議員としてメシが食えるようにしてください」という風にしか読めません。つまり,キャッチコピーとしては最悪であり,このポスターを作った海江田氏は言語感覚が悪すぎます。
そして,その後に見事に国会議員に返り咲き,国務大臣となり,更にあと一歩で民主党党首・・・というところまで行ったのですが,彼の言動から判断すると,彼の考える民主主義というのは「長いものに巻かれろ。多数意見には文句を言わない」であるようです。まさに「私にとって政治は職業であり,メシの種」ですね。
- 【横浜でストロンチウム検出 100キロ圏外では初】
放射性物質は単なる分子,原子ですから,単純な物理法則に従って移動します。県境もなければ距離で移動が制限されているわけでもありません。だから「調べれば検出される。調べなければ検出されない」ということになるはずです。問題にすべきはストロンチウムの有無でなく,それがどのくらいのリスクをもたらすか,そのリスクは絶対回避すべきレベルかどうか,だけではないかと思います。
ストロンチウムが存在することは「異常」ですが,「異常だから危険」とはなりません。「異常だが危険性ゼロ」から「異常であり危険性100%」までは連続的に変化します。問題は,現状がその連続線のどこに位置しているかということです。
2011/10/11
【12:00】【06:30】
- 帯状疱疹の患者さんが受診されました。前胸部から背部に至る広範な体水疱形成があり,痛みで数日間眠れなかったそうです。とりあえず,大きな水疱を潰してワセリンを塗布したプラスモイストで患部を覆ってみたところ,痛みが和らぎ,すごく楽になったと感謝されました。
通常,帯状疱疹の痛みは神経痛というように説明されていますが,もしかしたら「神経性の疼痛」+「水疱部(=創面)の乾燥による痛み」という可能性があるのかも,なんて考えてしまいました。
- これまで何度か紹介した『もうダマされないための「科学」講義』について本格的にレビュー。いい本です。
- ズイコウパッドを使ってみたという皮膚科の先生からの連絡です。ご評価いただき,ありがとうございます。
発売直後よりズイコウパッドを使用しています。これは非常に優秀な作品です。特に次の2点に関しては最も有用だと思います。しいて改善点をあげれば、サイズが小型のものができればと思います。
- 感染性粉瘤の切開排膿処置後
- 熱傷初期の浸出液が多いケース
- 何気なく読み始めたのに,すごく面白いのが『天皇はなぜ生物学を研究するのか』 (講談社プラスアルファ新書)です。昭和天皇が刺胞動物のヒドロゾアの研究をし,今上天皇がハゼの研究をしていることは知っていましたが,どうせ暇つぶし程度なんじゃないのって思っていましたが,とんでもないレベルの研究者なんですね。今まで天皇陛下をおみそれいたしておりました。申し訳ありません。そういえば,皇太子殿下は世界各地の水上交通の歴史研究者だし,秋篠宮文仁親王はナマズの研究をしているし,黒田清子さんは山階鳥類研究所で野鳥の研究していました。まさに,科学者一家,生物学者一家です。
問題は,なぜ生物学なのかです。
この問題について膨大な資料を背景に,「そもそもヨーロッパ文明における博物学とは何だったのか」という問題から掘り起こしていくのが本書なんですよ。これが面白いのなんのって,思わず一気読み! ダーウィンの世界一周を可能にしたパトロンの存在,王侯貴族における生物学の位置づけ,国家戦略としての博物学・生物学,ツァイスとライカの由来,サッカーとラグビーと階級社会など,広大無辺な知識の宝庫で読んで飽きません。これはオススメ本です。
- NECのAndroid Note "Lifetouch Note" を持っている人で,DivXの動画ファイル(*.avi)が見られなくて困っている人(・・・って日本全体に何人いるんだろうか?)にしか意味のない情報です。アンドロイド・マーケットから "RockPlayer Lite" という無料ソフトを入れ,「ソフトウェア・デコード」を選択するとバッチリです。
- 【ノーベル経済学賞に米2教授】
いまだに価値がわからないのがノーベル経済学賞です。ノーベル経済学賞は受賞者に経済的恩恵はもたらしていると思いますが,人間社会全体に本当に貢献しているんでしょうか。しかも,経済学賞の受賞者がアメリカに偏っている(過去69人の受賞者のうちアメリカ人は49人!)のはなぜなんでしょうか。アメリカの経済理論が人類の福祉に貢献しているからでしょうか。
上述の『天皇はなぜ生物学を研究するのか』には,「身分や階級を否定して建国したアメリカは,<稼いだ者勝ち>という価値観を拠り所にするようになった。単位時間にいくら稼ぐかが,ピアニスト,画家,企業の価値とみなされた」とありますが,これって案外,正鵠を射ていないでしょうか。そういう<稼いだ者勝ち価値観>の延長線上にあるのがノーベル経済学賞のような気がします。
いずれにしても,「ノーベル経済学賞,ノーベル平和賞は人類の福祉と幸福に本当に貢献しているのか?」を検証すべき時期ではないかと思います。
- 【1台なんと35ドル(約2700円) 超格安のタブレット端末が発売…インド】
タタ自動車の次はタタ・タブレット!?
2700円といえばCD1枚,ハードカバーの本1冊,飲み放題の居酒屋での支払い,ユニクロでシャツと靴下を買った金額・・・くらいじゃないですか。しかも,スペックを見ると必要最低限と言うか,このくらいあったら十分じゃないですか。目の前にこのタブレットがあったら,居酒屋に行ったつもりで買っちゃうな。
- 【映像に合わせて匂いを伝える Smellit】
映画で料理のシーンになると料理の匂いが漂い,美女を抱き寄せるシーンでは彼女の香水と体臭が・・・というのは昔から何度も試作されていますが,いまだに実用化されていません。今回はどうなんでしょうか。
わたし的には,タダならあってもいいけど,金を出してまで買うかと言われるとちょっと微妙かな?
2011/10/07
【12:40】【11:20】
- 【産経新聞の山口組司忍組長インタビューの裏側】
「小沢裁判の真の目的は民主党と指定暴力団の関係をあぶり出すこと」って,マジっすか? 探偵ファイルが「表」に書くってことは余程の確証,動かぬ証拠があるんでしょう。何しろ相手が相手ですから・・・。
【10:00】
- 99歳の両手指の熱傷の初診患者さんが受診されましたが,見るとプラスモイストできちんと処置されています。話を聞いたら,最初は近くの皮膚科で軟膏ガーゼの治療を受けていたようですが,おばあちゃんがヤケドしたと聞いてやって来たお孫さん(以前当科で治療を受けて以来,プラスモイストの大ファン)が,「そんな治療じゃダメ! それじゃ治らないよ」と説明し,プラスモイストで処置をしてくれたんだそうです。
こういう素人がそこらに普通にいるようになったら「軟膏ガーゼ先生」は大変だろうなぁ。
- 【NECのAndroidノートが1万円台! Sony TabletやiPad 2も安い】
私が先週末,アキバのヨドバシカメラセ14,800円で売っているのを見て衝動買いしたのが,ここで取り上げられている NEC の LifeTouch です。1週間使っていますが,有線LANがないことが唯一の不満で,その他はとても満足しています・・・と書いているうちに気が付きました。そうか,院内の有線LANをWiFiルーターでWiFi化しちゃうという手があったな。今度やってみようっと。
【06:30】
- 【下水から作った再生食用油が、国家規格の安全検査にパスした】
以前から中国では「下水道に溜まった油で作った再生食用油」という恐ろしげなものが出回っていると話題になっていましたが,全食用油の2割をこの「再生油」が占めているというのですから,外食をするのも命がけです。原料が下水溝の廃油ですから,発癌物質はあるわ,酸化物や過飽和脂肪酸は含まれているわと有害物質の塊ですから,レストランの油は信用がおけないと,自分で油を持参する客がいるそうです。
この記事の最後は「カネ儲けに走る拝金主義を倫理の道に導く道徳教育の拡充を図り、年少の時期から徳育を推し進めることが望まれる」とありますが,道徳教育で解決するなんてお伽話ですね。多分,中国社会全体が豊かになり,不正な仕事をしなくても普通に暮らせる社会になるしか解決法はないような気がします。
- 以前から「湿潤治療医師」,「熱傷治療医師」,「講演医師」として活躍している西田美穂先生が,福岡市中央区の見寺絢子クリニックに異動されたため,情報を修正しました。
- ある方から次のような質問をいただきました。
先日、マスコミの両論併記について指摘されていましたが,もう一つ大きな問題点が有ると思います。私は次のように回答しました。
学説を紹介するにあたってその学説がどの段階のものなのか素人にはわかりにくい点です。実験結果が得られただけなのか、統計処理を済ませたものなのか、多くの研究者による追試が行われているものなのか、長い期間をかけて疫学的手法でメタ解析が行われたものなのか,はたまた単なる思いつきなのか、見分けがつきません。
科学的確かさがどの程度ある学説なのかを科学報道、医学報道には徹底することが大事なのではないでしょうか。こういうふうに考えてしまうと難しくなっちゃって,面倒くさいから専門家の偉い先生に判断を任せよう,となってしまいます。
でも,ほとんどのデマ情報,インチキ治療,ニセ科学は中学程度の理科の知識があれば見破れます。まして,高校程度の物理学,化学,生物学の知識があればほぼ完璧に見破れます。これらの基礎科学の知識からはずれていたら「ほぼ確実にインチキ」と断言していいと私は考えます。
昔,空中浮揚で有名になったインチキ宗教家がいましたが,それに対し,ちょっとした物理の知識があれば「人間が空に浮くわけねえだろ。バカじゃん。常識で考えろよ!」と言えばよかったのです。それなのに,中学や高校の知識(=基礎科学の常識)を忘れちゃったオバカさんたちがまんまと騙されちゃいました。そのオバカさんには有名大学の理学部卒もいましたが,いくら大学で物理学を学んでも基礎科学の常識を忘れちゃいけません。こういうのを「勉強のできるオバカさん/専門分野はプロだけど常識は一般人以下のお馬鹿さん」と呼びます。
同様に,血液型性格診断も,「水からの伝言」も,マイナスイオンも「バカじゃん! 常識で考えろよ! そんな嘘っぱちに騙される方が悪いよ」でいいのです。
統計処理だ,疫学だというまえに,基礎科学です。簡単な力学,電磁気学,エネルギー保存則,分子と分子の反応様式,細胞学,遺伝学などの初歩の知識さえあれば十分です。力学や電磁気学の基本法則を否定したら宇宙そのものが崩壊するし,細胞学や遺伝学が崩壊したら全生物が消滅します。基礎科学の知識というのはそれくらい強固で正しいものです。ならば,それを真理として設定し,それを判断基準にすればいいのです。要するに「科学の常識」が判断基準です。
- テレビで「福島県の児童は線量計を携帯していて,父兄に放射線量の積算値が報告されるが,数値を見ても意味が分からないため父兄の間に困惑が広がっている」という(ような)ニュースが流れていた。
父兄が困惑するのは当たり前である。数値だけでは意味が無いからだ。例えば「あなたの血液中のナトリウムは138mEq/lでした」と知らされても途方に暮れると思う。数字だけでは正常か異常かわからないからだ。このナトリウムの量は「ナトリウムの正常の値」があってこそ意味を持つのであって,138mEq/lという数値だけ教えてもらっても意味が無いのだ。だから,福島県の子供たちの父兄は途方にくれたのだ。
問題は「放射線の積算値がこの値以上なら危険,これ以下なら安全」というデータがほとんどないに等しい点にある。これまで確かめられた数字はただひとつ,「年間100mSvの被曝で癌発生率が0.5%増加した」という数値だけだったと思う。それ以下では何がどうなるのか,全くわからないのである。核物理学者も放射線医学の専門家も厚労省の役人も知らないのである。
以前にも書いたが,危険性は絶対値でなく相対値である。人間の死因は癌だけではないし,癌の原因は放射能だけではない。いろいろな原因で癌ができ,癌や心臓病や事故で人は死ぬのだ。だから,放射能だけを取り上げてもナンセンスだ。
意味のある値とは「年間〇〇ミリシーベルト被曝は毎日喫煙するのと同じくらいの危険性,年間▲▲ミリシーベルトは毎日飲酒するのと同程度の危険性,年間◇◇ミリシーベルトは毎日高速道路を運転して事故で死ぬの確率と同じくらい」という,他のものと比較しての危険性の度合いだけだと思う。それなら放射能の積算値の数字に意味がある。
- 【スマホを狙う脅威は個人と企業の垣根を越えて急増 モバイルセキュリティを徹底させる「3つのポイント」】
パソコンにウイルス対策ソフトはセキュリティーソフトを入れずに使っている人はほとんどいないと思いますが,スマートホンはではまだまだ意識が低いようです。私はスマホでネット接続を始めたその日に,真っ先にウイルス対策ソフトを入れました。私がウイルス作者だったら絶対に「セキュリティなんて聞いたこともないスマホのユーザー」を狙うからです。
- 【これが若さの秘訣か…100歳のおばあちゃんが誕生日にストリッパーをリクエスト】
沈痛・厳粛なジョブズ追悼記事に埋め尽くされたネット情報の中で,「らばQ」だけはこんなお馬鹿記事を拾っていました。ナイス!
それにしても,100歳になるお婆ちゃんに娘が「何か(冥土の土産に)見たいものないの?」と訊ね,それに「(冥土の土産なら)そりゃあもう,男性ストリッパーよ!」と答えた100歳婆ちゃん,格好良すぎます。
2011/10/06
【16:40】【09:10】
- 【サルでもわかるTPP】
ある医療系のメーリングリストで紹介されていたサイトです。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に大反対の立場からいろいろ述べているんですが,内容はトンデモ系です。都合のいいデータだけを参考にし,すでに科学的に否定されている昔の学説を引っ張り出し,都合の悪いデータは曲解するというよくあるパターンです。
ここでは「第7章 TPPと遺伝子組換え」を取り上げてみようかと思います。なお,参考文献は『もうダマされないための「科学」講義』 (光文社新書),その他です。
- 【みんなが食べているサラダ油、コーン油、キャノーラ油、綿実油などは、ほとんどが遺伝子組換え原料のものであると考えた方がいい。】
これは,分析しても「非遺伝子組み換え作物の油」と「遺伝子組み換え作物の油」が化学的に区別がつかないからです。要するに油としての成分に差はないのです。遺伝子組み換え作物だからといって「特殊な油・体に悪い油」を作るわけではありません。
- 【まるで遺伝子組換え作物が悪くないもの、安全なものだと言わんばかりの言い分だね。】
遺伝子組み換え作物の食品としての安全性は,通常の食品と比べものにならないくらい厳しく調べられています。「遺伝子組換えは危険だ」という声を受けて,遺伝子組換えの安全性評価,環境影響評価のハードルがどんどん厳しくなっているのです。その結果,とんでもない資金と設備と労力が必要となり,小規模会社では開発が不可能となり,モンサントやシンジェンタなどの大資本しか残っていないそうです。
安全性のハードルを普通の食品並みに下げれば,色々な企業も参加できるようになり,健全な競争が生まれるのだが,という意見が専門家から上がっているそうです。
- 【1998年、イギリスのローウェット研究所のパズタイ博士】
これは後に否定された実験ではなかったでしょうか。
- 【(日本では)栽培しても売れる見込みがないからだ。】
これは完全に間違い。そもそも日本は遺伝子組み換え作物市場から相手にされていません。
遺伝子組換え作物は少人数で広大な面積で効率よく単一作物を育てる大規模農家向けの商品で,狭い面積の畑で作物を育てる日本の農業向けの商品ではありません。そもそも遺伝子組み換え作物の種子を売っている企業は日本の農家相手に種子を売ろうなんてほとんど考えていないようです。彼らが相手にしているのは,一人で数百ヘクタールの農場を管理するような農場です。
そういう農場で除草剤耐性作物の種子を撒き,作物と一緒に雑草が生えてある高さになった時に除草剤を散布します。すると雑草だけが死んで作物が残ります。すると後は除草剤を撒く必要がありません。作物が育って葉を広げると地面に光が当たらなくなり,雑草が生えにくくなるからです。だから,除草剤耐性遺伝子を導入した作物にすると除草剤の使用を劇的に減らせ,しかも省力化できるわけです。
- 【隣の畑から遺伝子組換えナタネの花粉が飛んできたら、それを受粉して交雑してしまう可能性が高い。】
2010年に種がこぼれて自生した組み換えナタネがイヌガラシと交雑していることを市民団体が発見して大騒ぎとなり,マスコミも報道しましたが,その後,国立環境研究所で遺伝子解析を行い,交雑体でなかったことが証明されました。しかし,マスコミはその事実を一切報じていません。
マスコミは「危険報道」は大好きですが「安全報道」はほとんどしません。
なお,ここからリンクしているLuna Organic Instituteですが,どうやらマクロビオティックに基づいた健康増進を目指しているようです。しかし,このマクロビオティックというやつがこれまた噴飯物のトンデモお笑い栄養学なんですね。何しろ背景にあるのが「独自の陰陽思想」なんですよ。
上記の本によると,戦前からマクロビオティックによる食事療法を行なっていた医者が,長崎の被爆者に「爆弾には塩がいい。玄米にたくさん塩を付けておにぎりにして食べろ。塩からい味噌汁を毎日飲め」と指導し,それから被爆者の間で味噌,玄米,塩が放射能に効くというデマが広まったそうです。
そういえば,福島原発事故直後の中国で塩は放射線に効くと信じて塩を買い占めた人がいたというお笑いニュースがありましたが,この「放射線には塩」というデマの出所は多分,マイクロビオティックじゃないでしょうか。
【07:50】
- 【前アップルCEO、スティーブ・ジョブズ氏死去】
あまりにも早い死です。まだ56歳! 合掌!
天才ジョブズの強烈な個性に引っ張られてきた「ジョブズあってのアップル」が,「ジョブズなきアップル」でも輝きを保てるのか,まさに正念場でしょう。
- お子さんの指の怪我について病院に問い合わせメールを出された千葉市の鎗田さん,こちらからメールを複数アドレスから出しましたがどちらも届かないようです (MAILER-DAEMON@...)。また,携帯電話にかけても着信拒否の設定になっているのか,連絡の取りようがありません。病院まで直接電話いただけないでしょうか。
【06:30】
- 「にきび跡に対して培養表皮手術を受けましたが、皮膚が生着せずに両頬全てが傷になってしまいました。主治医は石鹸洗浄、ゲンタシン軟膏塗布、ガーゼ保護をするよう説明していますが、まったく治らないどころか悪化しています」という悲惨な相談メールを頂きました。
このメールを読んで気がついたのですが,最近,「傷は石鹸でよく洗うこと!」と指導する医者が多いですね。そのお医者様は熱傷創面も擦過創も石鹸でゴシゴシ洗わないと化膿する,と信じているんでしょうが,全く馬鹿げています。石鹸は界面活性剤であり強力な細胞膜破壊作用を持っています。こんなもので毎日傷をゴシゴシと洗ったら,傷は更に深くなるんじゃないでしょうか。
もしも創周囲の皮膚が機械油とかで汚れているのなら石鹸洗浄は必要ですが,そういう油汚れがなければ石鹸は不要であり,傷の治癒にとってはむしろ有害です。
こんなこと,石鹸とはどういう物質かということをちょっと勉強すれば気が付きそうなものなんですが・・・。
- 「ワインボトル型折り畳み傘」を買っちゃいました。格好良くて便利です。
- 東京で開業している内科クリニックの先生からのメールです。
熱傷の患者さんの最近増えてきたパターンが、来院目的が「処置」というよりは既にご自身でラップやプラスモイストで処置してきて「自分でネットを見てやってみたが、今ひとつこれで正しいのか自信がないので(確認の意味で)みてください」というものです。私の外来でもこういう患者さんは少なくないです。「ネットで見て自分で治療をしています。多分治ってきていると思うんですけど,一度診て欲しくて病院に来ました」という患者さんです。ほとんどの患者さんは正しく治療し,傷も問題なく治っていることが多いです。
診察(?)をしてみると、ほぼ問題なく適切に処置されている方ばかりでした。ちょっとした疑問点にアドバイスをする程度で納得される方々でした。
こういう方を診察していると湿潤療法は確実に広まっているのだなと実感してきます。
それにしても近所の皮膚科は相変わらず軟膏&ガーゼ処置のところが多いようです。
それにしても「近所の皮膚科は相変わらず軟膏ガーゼ処置です」とのが笑えますね。だって,熱傷治療に関する知識は素人より劣っていて,素人より不勉強だからです。市民にこの治療の知識が広く普及した時,こういう「軟膏ガーゼ医者」に患者は治療を求めて受診するんでしょうか?
- さらに,某病院形成外科の先生からのメールです。
私も,小耳症などは医師と患者のギャップは余りに大きいと感じました。術後患者で患側の耳を露出している患者は一人も見たことありません。形成外科医以外にはちょっとわかりにくいと思いますので,ちょっと補足。
最近私が感じているのは縫合創の瘢痕が不自然なのでは?ということです。露出部のほくろやアテローマなどはくりぬいて解放創にした瘢痕の方が自然な気(生物として?)がするのです。きちんと縫った傷って余りに律儀すぎて・・・
分層採皮部などなぜ律儀に長方形にしてしまうのだろう・・・・かっこわるいなあと
まず「小耳症」ですが,これは先天性の耳(外耳)の形成不全です。それに対し,形成外科では患者さんの肋軟骨を3本を取り出して,耳の形に組み立て,それを耳の場所に皮膚の下に埋め込んで耳を作ります。どういう耳ができるか,興味をお持ちの方はGoogleで「小耳症」のイメージ検索をすればすぐに分かります。大学病院の形成外科では普通に行われている手術です。
確かに,手術前の状態からすれば「かなり耳っぽい」ものができますし,大学病院時代の私はそれで満足していましたが,今考えると手術で作った耳は所詮は「イミテーションの耳」であり,「本物の耳」ではないことがわかります。だから「肋軟骨を3本も摘出してこの程度の耳しか作れないんだよな」,という上記の先生の感想は,患者側の立場からすればもまともだと思います。
「きちんと縫った傷って余りに律儀すぎて」というのも,極めて真っ当な患者さん寄りの感覚だと思います。人体には「定規で引いたような直線」の構造物はなく,あるのは「曲線」だけです。これは自分の顔や手を見てみるとよく分かると思います。もちろん,微妙な曲線に傷を縫う技術はありますが,それにしても「自然な曲線」とは微妙に違っている気がします。
「分層採皮部などなぜ律儀に長方形にしてしまうのだろう」というのも鋭いと思います。長方形は人体には絶対にない不自然な形です。不自然だから目立ちます。要するに,形成外科では「目立たない自然な傷跡」でなく「目立つ不自然な傷跡」を残す手術を標準的治療として行なっているわけです。
- 【なぜ宇宙は加速的に膨張しているのか】
今年のノーベル物理学賞関連の解説記事です。私の知識ではとなります。現時点では前者が理論物理,宇宙物理では大勢を占めていて,ノーベル賞選考委員もそれを支持したということでしょう。ちなみに,私個人としては後者の理論のほうが好きです。理論体系がシンプルだからです。
- 「重力理論(=一般相対性理論)が宇宙のどこでも成立する法則だと仮定すると,宇宙の加速度的膨張を説明するためにはダークエネルギーが必要」
- 「相対性理論が宇宙不変の法則でなくある条件下でのみ成立する理論だと仮定すると,宇宙の膨張を説明するのにダークエネルギーは不要」
- 【“17世紀の危機”の原因は小氷期】
これは以前から指摘されていたことですね。ストラディバリウス(1644~1737)のヴァイオリンの音色を後世のヴァイオリン製作者が再現できないのは,ニスの問題ではなく,彼が活躍した17世紀後半はこの「小氷河期」に育った木材が使えたからと考えられています。寒冷だったために木の成長が遅く,そのために硬くしまった木質が得られ,その後の温暖な時代には同じ木材が得られなくなり,ストラディバリウスの音色は再現できなくなったのです。
農業生産量が減少すれば,農産物の物納を基本とする封建制度は維持できません。その結果,社会体制が変化せざるを得なくなります。17世紀ヨーロッパで戦争が続いたのは,封建制度にしがみつこうとする旧体制と,封建制度は維持できないから別の生き残り策を講じなければいけないとする新体制がぶつかった結果でしょう。
2011/10/05
【07:30】【06:30】
- ある形成外科の先生からこんなメールをいただきました。
昨日足背熱傷(受傷後6日)の患者が初診できました。翌日の今日、患者が教えてくれました。このような症例はよくあります。痛みは食欲を奪うんですね。そして,この事実を知らないのは「熱傷専門医と熱傷学会」だけです。彼らは「痛みのない熱傷治療」を経験したことがないから,「ヤケドで痛いのは当たり前」と考え,「痛みで食欲が無いのは当たり前だから点滴しよう」と考えます。そして,熱傷学会のガイドライン治療が痛みの原因だとは微塵も考えません。
「痛みが無くなったのと、急に食欲がでてたくさん食べてしまった。」と
わずか500円玉二枚くらいの面積の二度熱傷が食欲を抑制するのですね。
だから私は「熱傷専門医は熱傷患者の敵」と攻撃しています。何も根拠なしに攻撃しているわけではないのです。
- 「指尖部損傷はここまで再生する」という一例を追加。まぁ,湿潤治療ではこれが普通ですけどね。
- 病院経営者向け雑誌「集中」10月号に『偽医師にご用心! 証明書類は「医師免許証」のみという問題点』という記事が掲載されていた。
医者以外で本物の医師免許証を見たことがある人ってほとんどいないと思う。だから,運転免許証みたいなものに「医師免許証」と書いてあれば,大半の人はそれを医師免許証と思ってしまうんじゃないだろうか。
実物の医師免許証は,見た目も厚さも賞状(B4サイズだったかな? 何しろ私自身,本物を見たのはしばらく前であり,正確に覚えていない)みたいなものである。医籍番号と名前,取得年月日と厚生労働大臣の署名などが入っているだけで,顔写真は貼られていない。つまり,運転免許証とかパスポートのように「本人確認」のための証明書ではないのだ。その意味ではかなりアバウトな証明書であり,社員証よりもルーズだ。何しろ,本人かどうかを確認する手段がないのである。
さらに,新しい病院に就職する際は医師免許証の提出を求められるが,本物でなくコピーを提出すればいいよ,という病院も多いし,しかも本人と証明する写真は添付されていないのだ。日本全体に顔を知られた医者(例:日野原先生とか鎌田實先生とか)以外では,本人と確認する手段はないも同然である。
しかも,この医師免許には更新制度はなく,一度発行された医師免許証は一生にわたり有効である。逆に言えば,数十年前にもらった「賞状」を一生涯にわたり医者個人が保管する必要が生じ,これもまた不便なのである。
欧米諸国のように医師免許を更新制度にするかどうかは別として,せめて医師免許証は「運転免許証サイズ,顔写真入り,ICチップ付き」にして欲しいと,大多数の医者は考えているんじゃないかと思う。
- 【10分で充電完了するドコモ「超速充電バッテリ」】
まだまだ「未来の技術」ですが,明日にでも実現して欲しい技術です。スマートフォンはバシバシ使っていると,あれよあれよという間に電池が減っちゃいますからね。
- 【「ソフトウェア革命」が起きつつある今、日本は「物作り」に執着していてよいのか】
アメリカでは,あれよあれよという間に「モノからソフトウェアへ」の動きが起きている,という記事です。本や新聞がkindleやiPadに駆逐され,DVDレンタルはオンデマンド・ダウンロードサービスに駆逐され,ソニーのプレステと任天堂のWiiはオンラインゲームに駆逐され,ファックスはメール添付ファイルに駆逐され,電話会社はスカイプに駆逐されました。売れている「モノ」は「優れたソフトウェアの付いたモノ」だけです。「モノ作り」専門メーカーが「ソフトウェア専用のモノを作って売る」メーカーに駆逐されています。
医学にはこの動きはどういう形で波及してくるんだろうか,波及しないんだろうか,と考えながら読んでしまいました。
- 昨日,大宮での懇親会のことを書きましたが,参加していただいた『ゴッドハンド輝』の山本航暉先生のブログでもその時の様子が取り上げられています。
- 【実録!有人潜水艇による深海熱水調査の真実】
日経BOでまたまた面白そうな連載が始まりました。私は深海で暮らすチューブワームが大好きで,パソコンの壁紙に使っているんですよ。
2011/10/04
【06:30】
- 「湿潤治療の講演をしている医師」に,神奈川県横浜市の西條クリニック(形成外科)/西條正城先生にも加わって頂きました。ありがとうございます。
- ここまで出来の悪いゾンビ映画もなかったよな,というくらい再底辺レベルのゾンビ映画,《ジャーマン・ゾンビ》を紹介。取り柄が全く一つもないという映画を最後まで見るのは,一種の我慢大会の様相を呈します。
- 【<ノーベル医学生理学賞>米仏の3氏に…免疫の仕組み解明】
iPS細胞の中山教授,今年もまたノーベル医学・生理学賞を逃し,受賞したのは免疫の基礎的研究でした。
ノーベル医学・生理学賞の選考基準についていろいろ調べて見ましたが,論文の引用件数の多さとともに,社会的影響も加味されるようです。それからすると,「iPS細胞は研究は進んでいるが,iPS細胞によって恩恵を受けた(=病気が治った)患者はまだ一人もいない」ということじゃないかと思います。要するに「iPS細胞開発による社会的影響」は現段階では皆無です。その点が今回の受賞者たち(=免疫過程の基礎的解明)との最大の違いかな,という気がします。
また,iPS細胞は癌化という問題もまだクリアできていません。仮に今回ノーベル賞を授与し,その後に臨床応用されてがん患者が多発,なんて事態が起こる可能性が残っています。これもネックでしょうね。
いずれにしても,「iPS細胞による治療技術で多くの患者が命を救われる」までには,まだまだ乗り越えるべき障壁が多いような気がします。
2011/10/03
【13:30】【06:30】
- 今日から明後日までの3日間,大分県の井上先生が見学に見えられています。何と私より年上の61歳で,しかもこれまで内科一筋,勤務医一筋の医者人生を歩んでこられたという先生です。そして,9月に勤務医卒業をして平日に連続して休みが取れるようになり,かねてから考えていた外来見学を思い立たれたそうです。
61歳になって新しい分野の勉強を始めるってすごいことです。
- 「プラスモイストP取り扱い薬局一覧」に,東京都八王子市の野村薬局 大和田店,長崎県五島市の福江薬局を追加しました。
- 10月1日の「湿潤治療に関するセミナー」の懇親会は,ラップ療法の鳥谷部先生,獣医界の湿潤治療トップの山本先生,愛知県の熱傷治療トップの伊藤先生など,豪華な顔ぶれが一同に介しましたが,さらに豪華ゲストとして「少年マガジン」連載中の『ゴッドハンド輝』の山本航暉先生まで参加! 会場は山本先生のサイン会場みたいになってしまいましたが,山本先生は最後まで丁寧にサインしてくださり,一同大興奮。何しろ,一枚一枚に鉛筆で下書きをしてきちんと「輝」の顔を書いてサインを添えてくれるんですよ。山本先生のプロとしての誠実な仕事と人柄に感激しました。
ちなみに,『ゴッドハンド輝』はもうすぐ最終回を迎えます。10年半の長期連載でした。山本航暉先生,長い間ご苦労さまでした。素晴らしい医療漫画,ありがとうございました。
- 10月1日のこのコーナーでマスコミの両論併記の問題を書きましたが,そういえば,某新聞系週刊誌の取材を何度か受けたことを思い出しました。取材にきた記者の方は「両論併記が必要ですから,湿潤治療に反対している人の話も入れます。科学系の記事では両論併記することが決まっていますから」みたいな話をしていたんですね。
両論併記って,たとえば万有引力の法則を紹介する記事を書く時にも「引力の法則を否定する人のコメント」を載せるんでしょうか? あるいはピタゴラスの定理やメンデルの法則を紹介する記事で,それらを否定する人の考えを載せるとか・・・。
このように考えると,「科学系の記事だから全てに両論併記」したら物笑いの種になることは明らかです。だから,メンデルの法則について紹介する時は両論併記しません。つまり,科学系の記事ではすべてに両論併記する,というこの新聞社の考えは全面的に正しいわけではないことになります。つまり,メンデルの法則級に正しさが証明されたものについては両論併記は無意味なんでしょう。
- 大学病院時代の思い出話です。
患者さんは10歳くらいの男の子で,指の怪我の後 の parott-beak deformity という変形(爪がオウムの嘴のように曲がる変形)の治療のため,同じ指から組織移植をして変形を治す手術(reversed-digital arterial flap)をしたわけです。もちろん,手術の方法を決めたのは私ではなく決められた手術をしただけです。手術は無事に終わり,皮弁も生着し,変形も見事に修正できたました。
そして,創部がきれいになった頃,「ほら,きれいになったよ」と指を見せたところ,患者さんが泣き出してしまったのです。そして退院して外来通院になりましたが,親御さんから「子供は手術をした指が変になったと毎日泣いています。指を隠して使わなくなりました」と抗議を受けました。
あの頃は,「手術の方法については術前に十分に説明したし,それに同意したと同意書に署名もしているはずだ。手術だってとてもうまくいったし,変形もきれいに修正できている。それなのに文句を言われてもなぁ」という気分でした。
でも,今になると患者さんの気持ちが痛いほどよくわかります。怪我をする前のきれいな指に戻してくれると思っていたのに,指全体に傷があり,指の形も変だからです。こんな指にする手術なんて,患者さんは全く希望していなかったのです。それなのに,医者は患者の希望を全く無視して,「parott-beak deformity には reversed-digital arterial flap と決まっている」と機械的に治療法を選択のです。そして,「指先のちょっとした変形を治すために,指全体を傷跡にした」のです。だから,患者さんが泣いて当然なんですよ。
あの頃は,こういう当たり前の感覚を忘れて手術していました。要するに,「患者の希望」ではなく「医者の論理(=医者の都合)」で手術方法を決め,そうすることが「患者のための治療」だと勘違いしていたのです。
そういえば,正中顔面裂の患者さんが術後の自分の顔を見て「私,本当に良くなったんでしょうか?」と看護師に言っていたことを後になって知りました。この患者さんのことは今でもはっきりと覚えています。
形成外科の考える「きれい」と患者さんが期待する「きれい」は乖離していることに遅まきながら気がついた私です。いつもながら鈍くて困っちゃいます。
- NECのアンドロイド・ノート,Lifetouch Noteが秋葉原のヨドバシカメラで14,400円とかなりお安くなっていたため,衝動買い。ポイントが4,000点ほど残っていたので実質1万円でゲットしました。アンドロイド・パッド(いわゆる,iPadのパチもん)は雨後の筍のごとく市場に出ていて一部のものはかなり値崩れしていますが,「7インチ液晶のAndroidパッドでフルキーボード付き,しかも700g」と考えるとこのお値段ならお買い得でしょう。
私としては,往年の名機モバイルギアやシグマリオンのように「さっと取り出せて文章が打て,しかもネット接続可能」の後継機種として選んだわけですが,2日間使ってみてかなり満足しています。
とは言っても最初の1日は,アンドロイド・マーケットからダウンロードしたソフトがどこに入っているかがわからなくて途方にくれたり,android-OSのくせのある動きに戸惑ったり(何しろ,ソフトの終了という概念がないに等しい),タッチパネルの反応の重さにちょっと戸惑ったりしましたが,まぁ,そのあたりは慣れの問題ですね。テキストファイル・エディタをインストールしたら,「いつでもどこでも文章書き」が可能になりました。あとは,ATOKのキーカスタマイズができたら文章書きマシンとしては完璧かな,という感じです。
個人的には,キーピッチをsigmarion IIIと同じにして筐体の横幅を狭くし,重量500gくらいでもう5mm筐体が薄くなったら言うことないです。さらに,小さな本体に不釣り合いにでかいACアダプタも何とかして欲しいです。
2011/10/01
【06:30】
- 講演用のスライドをさらにマイナーバージョンアップしました。最新版は9月30日作成です。ご覧になりたい方は本名,所属を明記してメールでご連絡下さい。
なお,以前ダウンロードしたことがある方は同じアドレスからダウンロードできますのでご利用下さい。
- 先日,ちょっと紹介した『もうダマされないための「科学」講義』(光文社新書)はとてもいい本です。「アカデミック・ジャーナリズム」を旗印に集まったグループ「シノドス」のメンバー5人による合作ですが,いずれも鋭く「科学」について考察しています。
例えば「第3章 報道はどのように科学をゆがめるのか」というジャーナリストの松永さんの文章にある「日本のマスメディアがしばしば行う両論併記には問題がある」という指摘は,私はこれまで全く考えていなかった視点でした。
例えば,「遺伝子組換え作物については健康被害の恐れはないという専門家がいる一方,健康被害の危険性を否定できない以上,そのような作物を口に入れるべきではないと警鐘を鳴らす専門家もいる」・・・なんていうマスコミによくある両論併記の記事です。この記事のどこが問題か,お分かりでしょうか。
これを読むと私達は無意識のうちに「遺伝子組み換え作物の危険性があるとする科学者とないと考える科学者の比率は50:50なんだろうな」と考えてしまうのです。しかし,日本の研究者のほとんどは「遺伝子組み換え作物による健康被害なし」ということで意見が一致して,ごく一部の人が「健康被害が起こるかもしれない」と考えているようです。つまり比率としては「安全:危険=999:1」です。しかし,両論併記されてしまうと「50:50」に思ってしまいます。つまり,両論併記は少数派に有利に作用します。少数派が実は正しかった,という場合にはこれでいいのですが,問題は「少数派はトンデモ学者」という場合です。
例えば,現時点では進化論に反対する科学者はいません。これまでに発見された膨大な証拠がそれを証明しています。しかしアメリカには,聖書の記述を根拠に「生物は神様が作ったもので,進化論は間違いだ」と主張する一派がいます。いわゆるインテリジェント・デザイン(ID)です。もちろん,聖書を根拠に科学的に正しいと主張しているわけで,世界中の物笑いの種のトンデモ学説ですが,こういう場合にマスコミは「進化論が正しいとする専門家と,進化論が間違っていて神様が生物を創造したと考える専門家がいます」と両論併記すべきなんでしょうか。
いずれにしても,両論併記の記事は場合によっては「トンデモ学説」にお墨付きを与え,正しい知識の普及を妨げるのです。- そういえば,今日は本サイトの10回目の誕生日です。10年前にこのサイトが産声を上げた時に見始めた研修医がもう10年目の中堅の医者になっているのですから,よくもまぁ,10年間も続けられてきたものだと感慨深いです。
それにしても,個人が運営しているサイトで10年間続いているものって他にどのくらいあるんでしょうか。