新しい創傷治療:踏み切り

《踏み切り "Fingerprints"★★★(2006年,アメリカ)


 2006年公開だけど,一昔前のホラー映画を彷彿とさせる落ち着いた雰囲気のオカルト・ホラー映画。ストーリーは結構緻密に練られているし,スラッシャーシーンはそこそこ血みどろだし,幽霊さんも登場するし,何より主人公の女子高生がすごくかわいいです。派手さはないけど,見ても損した気分にはならないくらいには面白いかな?


 舞台はテキサス州のエメラルドという田舎町。この町は1957年に小学校のスクールバスが踏切で電車と衝突するという凄惨な事故が起き,バスの子供たち全員が死亡するという事件があった。「スクールバスの悲劇」事件である。そのため,「その事故現場の踏切の手前で車を止めてギアをニュートラルに入れると車が自然に動き出す。そして車の後部の窓には子供たちの指紋(fingerprint)がついている。子供たちの霊が車を押して動かすのだ」という都市伝説があった。

 そして50年後,高校生姉妹のメラニー(リー・パイプス)と姉(クリスティン・カヴァラリ)が車でその踏切を通り,姉は妹にその都市伝説を教え,本当に車が動くかどうか車を止めてみようと言うが,この時,メラニーは線路の上に白いワンピースを着た10歳くらいの少女が立っていることに気がつく。だが少女はかき消すように姿を消す。

 実はメラニーの一家はそれまでカリフォルニアに住んでいたが,そこで,メラニーはボーイフレンドと一緒にヘロインを吸い,彼氏がオーバードーズで死亡し,メラニー自身も死の淵を彷徨ったという過去があった。娘がドラッグを断ち切るためのリハビリ施設に入っている最中に一家はカリフォルニアからエメラルドに引越し,施設から出てきた妹を姉が迎えに行ったのだった。そしてメラニーは久しぶりに両親と再会するが,父は以前と変わりなく優しかったが,なぜか母親はメラニーに冷たくあたり,娘を信用しようとはしなかった。

 やがて彼女は高校に復帰し,優しいボーイフレンドもできるが,彼女の前には何度も「白い服の少女」が現れ不思議な出来事が続くが,周囲からは「またドラッグでもやってお化けでも見てんじゃないの?」と相手にされず,それどころか自宅にやってきた学校カウンセラーは母親から「この子はドラッグで頭がおかしいから」と丸め込まれてしまう。

 しかし,その「白い服の少女」が自分に何かを伝えたがっていると確信したメラニーは50年前の「スクールバス事件」の真相に迫っていき,一歩一歩,真相に近づいていくが・・・という映画でございます。


 前半は完全なオカルトスリラー,オカルトホラー・モードですが,後半になるといきなり,シリアルキラーもの,スラッシャー系ホラー映画に変貌します。まぁ,見ている分にはテンポがいいので,あれよあれよとストーリーが進むため(途中でちょっと中だるみする部分があるけど),あまり違和感はありません。ただ,全体像がわかってしまうと,あのシリアルキラーがなぜあのカップルを殺したのか,なぜメラニーの姉まで狙うのか・・・などの理由が最後までわかりません。というか,シリアルキラーが登場する必然性があまりないため(もちろん,スラッシャーシーンは映像的には美味しいけどね),どうせなら前半のオカルトホラー,オカルト都市伝説映画のまま最後まで通してもよかったような気がします。

 映画の最後の方で「スクールバス事件」の真相が明かされます。さすがにそのネタバレはしないでおきますが,最初のほうから何度も登場する「線路を潰して高速道路に」という50年来の都市開発計画が絡んでいるんだ,ってことくらいは書いといてもいいでしょう。それを推し進めようとする市長さん一派と,それに反対しようとする一派(?)の対立があの悲劇を引き起こしたわけね。このあたりの説明は十分に納得できます。問題があるとすれば,「スクールバス事件」の生き残り(?)がなぜシリアルキラーになったのかという理由が全く不明なこと。やはり,事件の真相はこのままにしといて,シリアルキラーを登場させずに物語を進めた方がすっきりした気がします。

 それと,「スクールバス事件」の真相がわかってしまうと,「車のギアをニュートラルに入れるとひとりでに走りだし,子供の指紋が・・・」という意味がわからなくなります。だって,子供たちは〇〇で死んじゃったわけですから,彼らの霊が車を押して動かす意味がありません。ここは完全に脚本のミスじゃないでしょうか。それと,子供たちの幽霊さんたちが▲▲に復讐するのはいいとしても,なぜ50年後,という疑問は残ります。▲▲さんはそれまで普通に暮らしていたわけですから,いつでも復讐できたような気が・・・。


 ヒロイン役のリー・パイプスちゃん,可愛いっすよ。どこかのレビューサイトに「不二家のペコちゃんに似ている」と言及されていましたが,まさに言い得て妙です。やはりホラー映画のヒロインはこのくらい可愛くないとダメですなぁ。しかも,シリアルキラーに捕らえられても反撃のチャンスを逃さないし,最期まで諦めません。根性の塊です。ホラー映画のヒロインはこうでないとダメですね。ちなみに,メラニーちゃんのお姉ちゃんもスラリとした美女で,こちらも眼福です。ホラー映画には美女が似合います。

 それにしても,メラニーのママさん,なんでこんなに彼女に冷たいんでしょうか。途中から明らかに精神異常モードに入ってます。それに対し,パパは優しくニコニコしているだけで何考えているかわからないし・・・。というわけで,この映画の唯一の不満は,シリアルキラーさんが最後までママを殺さなかったことです。普通なら一番最初に殺すべきですよ。もちろん,エピローグで彼女のその後が明かされますが,もうちょっと早めに殺してほしかったです。

 そういえば,学校カウンセラー役でこの手のB級映画常連のルー・ダイアモンド・フィリップスさんが登場しますが,この人も何で登場したのかいまいち意味不明,というか,このカウンセラー役は不要だったような気がします。しかも,大した役割じゃなかったしね。


 というわけで,いろいろ穴はありますが,基本的には手堅く作られたホラー系スリラー映画ですから,暇つぶしにはいいと思います。

(2011/10/18)

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