久しぶりに「あまりのつまらなさと訳のわからなさに,最後まで観られなかった」クズ映画・カス映画です。これまで幾多のクズ映画,カス・ゾンビ映画を観てきましたが,これはその中でも最悪クラス・最底辺レベルですね。これよりひどい映画となると,ちょっと思い出せません。何というか,「映画と呼べるシロモノの最低ライン」にすら達していないのですよ。「学生が学園祭のために作った映画レベル」という表現がありますが,これはその学生レベルより悪いっすよ。
舞台は2001年3月のドイツのどっか。街のチンピラどもが集まってある建物でパーティーの真っ最中。ところがその建物に謎のタンクがあり,そこから漏れ出した緑色の液体を浴びたチンピラさんたちが次々とゾンビに変身し,襲いかかってくるのです。もちろんチンピラさんたちですから銃を常に携帯してて,ゾンビ君たちをバシバシ撃ち殺します。
で,異常事態発生という連絡が製薬メーカーに入ります。ここで不老長寿の薬を開発していたんですが,その薬を使ったマウスが凶暴になっちゃったため,こりゃ使えねぇ,ってんでタンクに保管しておいたのですじゃ。で,チンピラたちと薬品メーカーの研究者たちが協力してゾンビ拡散を防ごうとしますが,時すでに遅しでゾンビたちは街に溢れかえっていて・・・という映画のようです。
これまで,《パキスタン・ゾンビ》とか《ギリシャ・ゾンビ》などのご当地ものゾンビ映画を紹介してきましたが,この《ジャーマン》に比べると格段に出来がよかったというか,しっかりした映画になっていたということがわかります。というか,《パキスタン》や《ギリシャ》をこの映画に比べることは失礼というものです。
なぜかというと,本当に取り柄が一つもないからです。どんなクズ映画,カス映画でも一つくらいは取り柄があるものですが(例:ヒロイン役が美形だ/ナイスバディで脱ぎっぷりがいい/ヒーローがイケメン/風景だけはきれい・・・),この映画には本当に取り柄が皆無なのです。
まず,ストーリーがマジで訳がわかりません。一応,上記のようにまとめてみましたが,本当にこういうストーリーを映画監督が考えていたかどうかは実はよくわからないんですよ。各シーンも意味不明の部分が多いし,画面転換が唐突で前後関係が意味不明だからです。一応,チンピラたちが研究者と組んでゾンビ拡散を防ぐ,というのは正しいと思うのですが,なぜチンピラ連中が街を守るために戦うのか意味が分かりません。チンピラならチンピラらしく,いい子チャンぶらずに無頼の徒としてヤンチャな行動をとってほしいものです。
それと,「街中にゾンビの群が」と言っている割には,出てくるゾンビ君は多くありません。せいぜい,一場面に5人くらいです。多分,5人のゾンビ係がメイクを変えて出ているだけでしょうね。ゾンビ映画なんですから,最低でも10人は出てくれないと困ります。
映像のショボさも悲惨です。一昔前の家庭用ハンディカムの画質がこのくらいでしたね。悲しくなるくらい画像が荒いです。もしもこの映画DVDをごらんになる場合には,640×480ドットくらいのちっちゃい画面で観た方がいいでしょう。
それに輪をかけて音楽がダメ。大昔,テクノポップと呼んでいた時代があったねぇ,という感じの単調な音楽だったり,戦闘シーンではここぞとばかりにデスメタル調のロックがうるさく鳴ります。効果音も1960年代の映画みたいですごく懐かしいです。
では,ゾンビ映画なんだから「内臓グチャグチャ」シーンはどうかというと,これまでひどいもんです。ドイツのホラー映画というと一般的には,気合いの入りまくったゴアシーンが名物でして,この映画でもちょっとグロいシーンはあり,グチャグチャシーンもあるにはあるのですが,映像が余りにもショボいために「これは一体何が映っているんだろう? これは体のどっかの部分だろうか,それとも別のものなんだろうか?」と目を凝らしてみても判別できません。人体パーツなんだか生ゴミなんだかわかりません。
それと,この映画には「お笑い」の要素が皆無です。ゾンビ映画やホラー映画ってのはどっかに笑いの部分があるものですよね。恐怖の裏返しとしての笑い,ってやつです。そういうシーンに作り手のセンスが表れるし,ストーリーの緩急の間が生まれ,単調さを防ぎます。笑いがあるからこそ恐怖シーンが生きてきます。ところが,この映画にはそういう「笑えるシーン」が全くありません。爪の垢ほどもありません。だから,流れが単調で眠気を催します。このあたりにも作り手側のセンスのなさが表れています。
と言うわけで,多分,映画作りの基本もわかっていない,あるいは映画ってどういうものかがわかっていない監督たちが,その場の勢いで2日くらいで作っちゃったと思われるクズ・カス映画です。クズ映画道を極めたい,世の中にあるクズ映画をすべて自分の目で見てみたい,という使命感をもち,クズ映画と聞くと観たいという気分が押さえられない衝動を持った人のみご覧ください。ただし,観たら絶対に後悔することだけはお約束しておきます。
(2011/10/04)