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2010/02/26
- 共立女子大から連絡が入りました。同大学の入試問題に『傷はぜったい消毒するな』 (光文社新書)の一部を使用したが,今後,問題集として収録するにあたり許諾を求めたい,という内容の電話でした。
本当に入試問題に使っちゃったんですか?! こんな文章でいいんですか?
- 【ホンダのコンセプト電気3輪車『3R-C』】
ムチャクチャ格好いい電気3輪車です。
- 【生命の可能性がある土星衛星:「ホットスポット」の分析】
以前にも紹介したように,地球最古の生命体LUCAは真正細菌と古細菌共通の祖先で,海底の熱水噴出孔周辺の泥の中で誕生し,「熱と水と有機物」のみが必要だったと考えられています。そこで,木星の衛星エウロパは以前から注目されていましたが,最近,土星の衛星エンケラドスもその候補として注目されています。巨大惑星である土星からの潮汐力がエンケラドス内部で熱を生み出し,それが生命を生み出す原動力になっているのでは,というのがこの記事です。
- 【惑星の大気を“食べる”恒星】
最近,太陽系以外での「惑星を持つ恒星」が次々と見つかっていますが,その多くは“ホットジュピター”と呼ばれる「木星より巨大で,恒星に近い軌道を周回」するものです。このホットジュピター型の惑星についての新たな知見がこの記事です。
恒星についてはいろいろなことがわかってきましたが,この記事を読むと,惑星についてはまだまだわかっていないことばかりなんだな,ということがわかります。それ自身が光を発しない惑星を測定すること自体が難しいわけですけどね。
- 【120周年「ヱビス」が巻き返し プレミアム・モルツと攻防激化】
私は,ビールを飲み始めた頃から「ヱビス派」です。「ビールと言えば米・コーンスターチ混ぜビール」が常識だった昭和の御代からただひたすら麦芽100%ビールを作り続け,ドイツに輸出しても「ビール」の名前で販売できる唯一のビールを作り続けたのがヱビスビール(後にサッポロビールに九州される)だったからです。
「米・コーンスターチ混入ビール」全盛の世にあって,値段も高いヱビスビールは苦戦を続けます。それでも,本物のビールを飲みたいと渇望する飲んべえに支持され,ヱビスビールは細々と,しかしゆっくりと確実に販路を広げ,やがて「麦芽100%ビール」というニッチを確立しました。長年,ヱビスビールを支持して買い続けたファンとしては,テレビコマーシャルにヱビスビールが登場した日は忘れられない一日でした。ついにヱビスもコマーシャルするくらいメジャーになったんだ,と感動したことを覚えています。
そして,麦芽100%ビールが商売になるとわかって参入したのがサントリーであり,投入されたのが「ザ・プレミアム・モルツ」です(・・・私の理解では・・・)。勝てるとわかってから参入したようなものです。
だから私は,プレミアム・モルツは美味しいかもしれませんが飲もうと思いません。ヱビスビールの苦難の道を知っているからです。安全な道を行く企業より,道なき道を先頭に立って切り開いた企業の方がすごいと思うからです。
これは,アップルやソニー,ビクターやパナソニックのポータブルオーディオプレーヤー(MP3プレーヤー)を,私は絶対に買わないのと同じです。MP3プレーヤーの代名詞がiPodであることが許せないのです。
以前にも書きましたが,CreativeやiRiverなどの台湾や韓国のミニ・新興メーカーがMP3プレーヤーを開発,販売しましたが,当時のそれらはオモチャ同然,海の物とも山の物ともつかぬ中途半端な商品でした。しかし,このオモチャが指し示す将来の可能性に賭けて,この商品がよりよいものになることを信じてごく一握りのユーザーはこのオモチャを買い続けました。
128MBしか容量がなくCD2枚分のデータも入らないプレーヤーもあったし,ポータブルCDプレーヤーよりはるかに重くてでかいMP3プレーヤーもありました(私,どっちも買っちゃいました)。内蔵メモリを持たずコンパクトフラッシュカードに曲データを保存する形式なのに,純正品のCFカードしか受け付けず他社製品のCFを絶対に読み込まないMP3プレーヤーもありました。その純正品のCFがまた高いのなんのって・・・。もちろん,私は買いましたよ・・・泣く泣く・・・。おまけに1ヶ月で壊れやがって・・・。
まさに百鬼夜行の状態でしたが,ユーザーは,そうやってゆっくりと成長していくMP3プレーヤーという商品の成長を楽しみながら見守っていたと思います。そしてMP3プレーヤーは次第に,「普通の家電商品」として受け入れられるようになってきました。中小企業が苦労の末に,MP3プレーヤーという「マニア向けのニッチ商品」を「普通の商品」にまで育て上げたようなものです。
そこで満を持して,巨大メーカーのアップルとソニーが参入します。MP3プレーヤーは商売になるとわかったからです。小規模メーカーが苦労して見つけ出し,努力して作り上げたニッチを,大企業が横取りしたようなものです。小規模メーカーの弱点である「どんくさいデザイン・操作性の悪さ」という欠点を巧みにつき,アップルは瞬く間にMP3プーレーヤーのトップメーカーになりました。見事な戦略です。儲かるメーカーとはこういうものでしょう。
だからこそ私は,iPodは絶対に買いません。CreativeやiRiverなどの,道なき道を切り開いてきたメーカーを応援したいからです。私にとっての悪夢は,これらの有機ある先発メーカーが潰れ,デジタルオーディオプレイヤー市場をアップルが独占する日が来ることです。
- 【子供にも1票で「シルバー民主主義」は変えられる? 「機会費用」「デーメニ投票法」で考える政策の高齢者バイアス】
少子高齢化が進めば国が潰れるのは目に見えているのに,政治家たちがそれに対して行動を起こそうとしないのは,「老人は票を持っている,子どもは票を持っていない」からです。高齢者対策は票に結びつきますが,子供向けの対策は票になりません。
私は以前から「子供の数に応じて親の投票数を増やす」という方法を提案していますが,いかがでしょうか。もちろん,無茶な方法だということは百も承知していますが,このくらい無茶なことを考えない限り,この国はどうにもならなくなるんじゃないでしょうか。
- 【CMはカツラーを惑わせる「いたずらな悪女」か】
あの衝撃的なカツラのコマーシャルを見て,「これって要するに接着剤でくっつけているだけなんだよね。これって何日も張り続けるのかなぁ? だとしたら,カツラの下はムレムレになるよな。夏だったら汗疹と膿痂疹で一杯になるんじゃないの?」と不思議に思っていましたが,どうやら実態はこうだったようです。やっぱりそうか。「何日も皮膚に張り続けても皮膚に障害・トラブルは起こりません」という物質は,理論的に絶対に作れません。
2010/02/25
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,兵庫県小野市の岡田整形外科/岡田勝先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 5月26日(水)に埼玉県越谷市医師会で講演することがほぼ決まりました。
- 『傷はぜったい消毒するな』 (光文社新書)の増刷が決まりました。お陰さまで第9刷になります。
- ちょっと怖いけどラストは感動的,というのが《519号室》というホラー映画です。佳作と言っていいでしょう。
- 【「永遠に残るデータの恐怖」とその対策】
フロッピーディスクがようやく標準装備された頃からコンピュータを仕事に使ってきた世代,という立場から「コンピュータのデータ」ということをちょっと振り返ってみました。
最初期の頃,個人のデータを保存するのは大変でした。フロッピーディスクはあるものの,ソフトごとにディスクを替えたりしていくうちに,「あのデータはどのディスクに入れたんだっけ?」ということになり,いつの間にか行方不明に,なんてことは日常茶飯事でした。もちろん,ハードディスクはありましたが,個人が気軽に買えるお値段ではなかったんですね。
一番最初に買ったノートパソコンはもちろんフロッピーディスクのみという機種で,ハードディスクが登載されたノートパソコンを手にいれたのは結構あとだったと記憶しています。ようやく,データをどんどん溜め込める時代が到来したわけですが,それでも「あのデータ,どこに入れたんだっけ?」状態に変化はなく(OSの検索機能が貧弱だったので,人間の記憶に頼っての「検索」が必須だったんだよ),おまけに,使っているワープロソフト(「松」です。いいソフトでした)やデータベースソフト(dBASE III。インタプリタ言語が使えて自由にプログラミングできたっけ)そのものがなくなったりしたため,「データはあるのにソフトが無いから読めない」なんてこともよくありました。あの頃は,データはいずれ読めなくなるもの,というのが常識だったんじゃないでしょうか。
それを劇的に変えたのがGoogleの登場でした。Googleが自動的に集めたWEB上のデータは,Google社の巨大ハードディスクに溜め込まれていつまでも残っていて,いつでも検索・利用できるようになってしまったんですね。
というわけで,この論文が取り上げる本が書かれたわけでしょう。過去のデータには「忘れたくないデータ」もありますが,一方で「早く忘れてしまいたい,なかった事にしたいデータ」もあるからです。ところが,Googleは「忘れて欲しいこと」と「忘れたくないこと」の区別をしているわけではありません。ここに問題があります。
- 【『奇蹟の画家』の絵を買った人々に何が起こったか ~「情熱大陸」ではわからない石井一男の評伝】
とてもいい評論です。この人の絵が見てみたいです。
- 【ばっちりくっつきます】
ご存知,朝のNHKニュースのおもしろコーナー「まちかど情報室」で今日,取り上げられていたのが「くっつける商品」。どれもちょっと便利そう。2番目の結露対策スプレー,買ってみようかな。
- 最近やたらとUSBから充電するポータブル機器が増えてきました。それでなくてもUSB接続の外部ドライブなどが多いため,USB端子はいつも不足しています。
そんな時に「あったら便利」なのが,「AC電源から直接USB充電できるチャージャー」です。以前から2つのUSB端子を備えたものがありましたが,今度は4つです。
2010/02/24
- 【マングース北上危ぐ 鹿児島市で確認8か月 70匹捕獲 専門家「本土の環境に適応か」 侵入経緯不明のまま】
これまで,もともと南国の生物であるマングースは鹿児島の「寒さ」では繁殖できないと考えられていましたが,どうやら,寒さに耐えるために大型化することで適応しているようだ,という記事です。大型化すると体積当たりの体表面積の割合が小さくなり,体表から熱が逃げるのを抑えることができるからです。ちなみに,「寒冷地の動物は大型化し,熱帯では小型化する」をベルクソンの法則と言います。
外来生物の問題は人間の経済活動に伴って発生したものです。本来の動物は移動できる範囲と移動手段の制限から,海や高山帯などの障壁を越えることができません。だから種の分離が起こります。しかし,人間が長距離・高速移動の手段を発達させ,広範囲で活動するようになると,それにともなって本来移動できない生物も移動してしまいます。その結果,在来種を圧倒して増えたり,在来種との交雑が起こります。
外来生物の問題とは,経済のグローバル化の必然の結果といえます。
- 【コンパクトフラッシュ規格Rev 5.0公開、最大容量144ペタバイト】
SDカードの普及に押されて,最近ちょっと元気がないのがコンパクトフラッシュですが(メモリースティックはもっと元気がないけど・・・),いつの間にかCFの容量が驚きの144ペタバイトにまで拡張されるんだとか。私が使っている外付けHDDは1TBですが,その100倍以上の容量がCF1枚に収まっちゃうというのですから,すごいです。
SDカードを見慣れてしまうと,たまにCFを見ると「こんなに大きくて分厚かったんだ」とビックリしてしまいますが,踏んでも壊れそうにない頑丈さと端子が外から見えないことによる安心感はSDカードの比ではありません。
- 【サンディスクも 64GB SDXCカード発売、実売 350ドル】
そのSDカードの新規格であるSDXCで64GBのものが販売開始となりました。これまでのSDHCでは32GBが最大で,今回のものは容量が2倍になりましたが,まだまだ値段が高いです。32GBのSDカードがが7000円前後で買えるのに,64GBはその5倍以上ですから費用対効果が悪すぎます。
私はUSBメモリもSDカードも32GBの物を使っていますが,64GBのUSBメモリがもうちょっと安くなったら買い時かなと,上海問屋をチェックしています。
- 【大人が「ローセキ」で遊ぶためには】
ローセキ,覚えてますよ。昭和30年代を秋田県の田舎で過ごした私には,とても懐かしく,あの書き心地が蘇ってきます。
というわけで,ローセキを手に入れてしまった中年男は「ローセキで書いてみたい。でも,公共物に書いたら落書きであり犯罪だ。でも,これで描いてみたいんだよね」・・・という逡巡の末,なんと,セメントをこね始めるのです。この怒涛の展開がすごいです。セメントをこねる作業が楽しそうです。なんだか,東急ハンズでセメントを買っちゃおうかな,という気分になってしまいます。
- 【帰化でもダメ、外国力士「1部屋1人」徹底通達】
日本相撲協会は一体何をどうしたいんでしょうか。恐らく協会の本音は「相撲を潰すわけにはいかない。しかし,力士の数を日本人だけでまかなうには絶対数が少ないし,日本人横綱もいない。相撲という興行を成り立たせるためには強い外国人力士が絶対に必要だな。でも,外国人力士ばかりになっては相撲の伝統が維持できないよ。相撲の伝統を維持するためには外国人力士を入れない方がいいに決まっている。でも,日本人力士だけでは相撲の興行を維持できないんじゃないか。興行を維持するためには外国人力士が必要なんだよね。でも,外国人力士ばかりでは・・・」
と,本音と建前を堂々巡りしているだけじゃないでしょう。
現状を正確に分析すると
- 日本人は相撲は依然として好きだし,相撲の伝統は大切に思っている
- しかし,日本人の若者で力士になりたいと思っている人間はとても少ない。
- だが,外国の若者には相撲に興味をもち力士になりたいと考えている人間が結構いる。
と,こういう事になっているはずです。となれば,道は二つしかありません。
- 外国人力士を入れずに日本人しか力士になれないと決め,それで相撲が衰退してもそれは仕方が無いと諦める。
- 外国人力士を入れて相撲を維持するが,日本の伝統を彼らに押し付けることはしない。相撲もこれからはグローバル化しなければ生き残れない時代なのだと諦める。
この二つです。これ以外の解決法はありません。
結局,相撲協会は「相撲を維持するためには外国人力士に頼るしかないが,本音では外国人力士に入ってもらいたくない」と言っているだけで,こういうのを自家撞着といいます。
相撲業界を潰したくなかったら,相撲協会は腹をくくるしかありません。どっちつかずの態度を続ける限り,「朝青龍の悲劇」を繰り返すだけです。
- 病院機能評価をしている財団法人日本医療機能評価機構,ご存知のとおり,典型的な天下り機関です。民主党の「事業仕分け」の対象にして欲しくないですか?
本気で病院を評価するんだったら,ミシュランみたいに正体を隠して自腹で病院を受診し,受付の態度はどうか,検査の流れはスムーズか,医者の説明はどうか,看護師の態度はどうか,安全面の配慮はどうか・・・を評価して発表すべきですよ。それもしないで,病院が提出した書類の厚さだけで病院を評価するだけの天下り機関なんて要らなくないですか?
みんなで民主党の事業仕分けチームに進言しませんか?
2010/02/23
- 全く面識のない,メールのやり取りをしたこともない千葉市在住の滝さんという方から「いつもサイトを参考にさせて頂いております。お礼と言ってはなんですが,熱傷治療特集の雑誌を送ります」と,雑誌「救急・集中治療」2004年6月号『最新の熱傷診療』と,暇なときに読んでみて,と2冊の小説文庫本が送られてきました。見ず知らずの相手に決して安価でない専門雑誌を送っていただき,ご厚情に感謝いたします。
メールアドレスも不明のため,お礼のメールも書けません。この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
- 【ゲンタシン軟膏を傷に塗るのはどうでしょうか?】という質問への回答を追加しました。
- 顔面の擦過創の小学校1年生がご両親と一緒に受診されました。学校で転倒したようです。それで湿潤治療の説明をしようとしたら「ラップにワセリンを塗ってする傷の治療ですよね」っていうんですよ。それで,いつも渡している傷の治療の資料を渡そうとしたら,患者さんが「このプリント,学校でもらいました」,そしてお母さんも「ああ,このプリントですか,家にありますよ」とのことでした。
石岡市での湿潤治療の普及度,結構いいです。
- クズ・ゲロ映画の見本のような最悪映画,《SHOCKER ショッカー》を見ちゃいました。みんな,こんなの見ちゃダメだぞ!
- 糖尿病を操るイルカ、人間に応用可能か
人類に次いで体重比で大きな脳を持つ動物といえばイルカです。一方,脳は体内においてグルコースの最大の消費地です。そしてイルカは「2型糖尿病(=肥満による糖尿病)」もちのようです。となると,イルカはどうやって糖尿病が発症しないように制御しているんだろうか,という疑問がわきますが,それに対する一つの回答がこの記事です。
とはいっても,グルコースをほとんど含まない食事をしているイルカと,グルコースを好きなだけ摂取できる人間様では全く話が違っているし,大脳におけるグルコースの役割が人間とイルカで一致しているかどうかも不明なわけです。というわけで,どう考えても「人間に応用可能か」とは言えないような気がします。
- 金総書記の「献身」アピール=住民不満かわす狙いか-北朝鮮紙
乾坤一擲のデノミも失敗し,作物の収穫も年々悪化し,それでもまだなお,将軍様は偉大な指導者,将軍様は自分たちのために獅子奮迅の活躍をしてくださっている,と宣伝するしかないお笑い国家ですが,さすがにここまで来ると笑うに笑えません。
この記事を読んで,20年ほど前のジョークを思い出してしまいました。
国連会議場でいきなり北朝鮮代表が発言し,「人類最初のアダムとイブは北朝鮮で生まれたことを認めよ」,主張した。
それに対し,イギリスの代表はにこやかにこう答えた。「裸同然で着るものもなく食べるものもないのに,自分たちは天国に暮らしていると信じている。まさにアダムとイブそのものである」と。
- 「青色吐息」 福島空港のせつない現状
福島空港は,私がまだ利用したことのない空港の一つです。福島県は東京から中途半端な位置にあるし,新幹線駅も二つ(福島,郡山)あるため,飛行機で福島入りする必要性がありません。そんなわけで,今後も福島空港に降り立つことはまずないだろうな,という感じです。
記事を読んでいると平成5年度に30万人弱だった乗降客数は順調に伸び、11年度は過去最高の約75万7千人に達した。(中略)需要予測では、22年度で158万人に膨らむはずだった。
という試算にそもそも無理があったことは明らかです。多分,「6年間で2.5倍に増えたから,10年後には現在の2倍に増えてます」と計算しちゃったんだろうな。
でも,「年間158万人」=「1日あたり4300人が飛行機に乗り降りする」ことを意味するんですよね。福島県の人口が204万人ですから「県民の470人に1人が,毎日必ず福島空港を利用」しなければ達成できない数字なんですよ。というか,JR福島駅の年間の乗降客が147万人ですからそれより多くなければ「年間158万人」にはならないんですね。
こんないい加減な試算を信じてお付き合いしてきたのがJALだったわけか・・・。
2010/02/22
- 細菌と人間の関係,創感染について考える上で,サイズの違いについて考えてみるのはとても重要じゃないかと思っています。
細菌のサイズはだいたい1ミクロン(1/1000mm)前後です。ということは,直径1mmの血液滴は細菌にとっては体長の1000倍のサイズです。つまり,これを人間に当てはめると直径1500m,つまり直径1.5kmの水の塊になります。長さ1.5km,深さ1.5kmの水なんて想像できない巨大さじゃないでしょうか。水溜りなんてものではなく,恐ろしく深い湖ですね。しかもここに溜まっているのは血液という栄養豊富な液体なのです。数百人が一生暮らせるな,という気がします。
同じように「破れた熱傷水疱の中にちょっぴり水疱液が残っている」状態だって,人間にとっては「ちょっぴり」の水疱液ですが,細菌にとっては「巨大な栄養スープ」なんですね。
たとえば人間の目には太さ0.01mmの銅線が落ちていたとしても見つけられませんが,細菌にとっては体の10倍の太さ,つまり人間にたとえると直径15メートルの巨木みたいなものです。ここに直径2メートルくらいの穴が空いていて中に栄養のある水が溜まっていたらしばらく暮らせるはずです。
同様に,人間の目には0.01mmの隙間があっても見分けられませんが,細菌にとっては15mの隙間が開いているようなものです。0.001mmの隙間でも1.5mの隙間ですから楽々通れます。ということは,「滅菌したフィルムでCVカテーテル刺入部を閉鎖して細菌の侵入を防ぎます」なんていう説明が嘘だらけであることがわかります。人間にとっては「密封」でも,細菌にとっては「隙間だらけ」だからです。
では,壊死組織は細菌にとってどのくらいのサイズなのか,尿道カテーテルの場合はどうなのか,胸腔カテーテル刺入部はどうなのか・・・と考えてみるといろいろなことが見えてきます。
- 「熱傷“裏”マニュアル」執筆のために,今まで撮りためた熱傷症例の写真をまとめていますが,普通の熱傷が300例,低温熱傷が80例もあるので,取捨選択するまでが大変な作業になりそうです。
ちなみに,一般の熱傷に対して低温熱傷の写真が多いのは,一般熱傷の軽症例は写真を撮らないけれど,低温熱傷は「患者が来たらとりあえず撮影」しているからですね。恐らく,80例もの低温熱傷の最初から最後まで観察した医者って,世界中でもあまりいないかも知れません。
- 「微生物ミュージアム」の傑作9選:画像ギャラリー
どれも美しい画像です。また,さまざまな共生の姿が見られる点でも興味深いものがあります。それにしても,たった1000個の細胞なのにこんなに複雑な形態を作り上げているヒルガタワムシがなんだかすごいです。
- ペリーがパワポで提案書を持ってきたら
これはすごい! あのペリーがパワーポイントで「開国の提案書」を作ったらこうなるんじゃないか,という大真面目なお笑い記事です。
・・・というわけで,戯れに作ってみました。
- クフ王,家臣団の「先代の王に習うべき」とのパワポでのプレゼンを受け,ピラミッド建設計画着工にゴーサイン。莫大な建造費と玄室維持費に早くも異論続出。次回の「事業仕分け」で廃止となる可能性も。
- 司馬遷,歴史書編纂の必要性をパワポ資料をもとに武帝様にプレゼン。書名は“史記”となる模様。一部に,武帝様の神格化との懸念も。
- ホメロス氏,オデュッセイアの全体の構想をパワポファイルでギリシャ市民に公開。5年ぶりの新作にポリス市民大興奮! 発売前からベストセラーの予感!
- 蘇我入鹿氏,大化の改新建議書を提出するも受理されず。入鹿氏,クーデターも辞せずとの強硬姿勢を! 朝廷側のパワーポイントのバージョンが古く,建議書が開けなかった模様。
- 源義経氏がパワポで“ひよどり越え奇襲作戦”を兄頼朝にプレゼン。頼朝氏,評価するもあまりに大胆な作戦に難色。
- 将軍家綱,生類憐れみの令をパワポ・ファイルで発表。“海狼”と名乗る外様大名より鯨だけ特別扱いせよとの異論も
- ジェファーソン氏,アメリカ独立宣言をパワポ・ファイルでフランクリン氏に提出。フランクリン氏は受け入れを示唆。奴隷制度はひとまず維持の方向で双方が決着。
- ベートーヴェン氏,独唱と合唱つきの交響曲構想をパワポで発表。シラー氏の歌詞にゲルマン魂が炸裂! 第3楽章が長すぎて退屈,という声にベートーヴェン氏は“ゲルマン民族なら我慢しろ!”と一喝!
- ドストエフスキー氏,ある一家の親殺し事件を小説化する計画を発表。パワポで公開された小説の構想に対しこの一家の長男と噂されるドミトリー氏は,私はあの時父親の家にいなかった,と反論。三男のアレクセイ氏は長男の証言を支持。一方,次男のイワン氏は証言拒否。この家の家政婦は「家政婦は見た」とマスコミ相手に証言。疑惑深まる一家に一体に何が!?
- 土佐出身の坂本龍馬氏,池田屋襲撃の計画を記したパワポ・データを事前に入手するもガセネタと無視。わしは大丈夫じゃき,と相手にせず。
ううむ,ツマラン物を書いてしまった。
- 自民が派閥解消検討=再生アピール、異論も
派閥が悪だ,派閥をなくせばいい,という発想はおかしいです。派閥が悪いのでなく,派閥で何をするか,派閥は何のために存在するか,を問うべきです。
派閥を率いたことがない人間に党を率いられるわけがないと思います。学級委員長をしたことがない人に生徒会長ができるか,ということです。
2010/02/19
- 「78歳,広範3度熱傷」の2月15日の状態です。部位別の経過はこちらです。
現在,在宅治療中ですが,状態は極めて良好で食欲も旺盛です。創処置も簡単なため,家族にもあまり負担にはなっていない様です。
- 「小学保健ニュース」2月28日号に『外傷の湿潤治療 ー湿潤治療の実際ー』が掲載されました。
- 「プラスモイストP取り扱い薬局一覧」に,新潟県南魚沼市の齋藤記念病院 売店を追加しました。
- 電子レンジ+チョコで「光の速度」を確認する実験
光の速度を測定するといったらマイケルソン・モーリーの歴史的実験じゃないですか。なんとその光の速度をチョコレートと電子レンジで測定しちゃおうという実験です。しかも,かなり正確に測定できているんですよ。
- 昨日,朝起きたら茨城県の平野では珍しい積雪。しかも午前中ずっと,降り続いておりました。雪国生まれ,雪国育ちの東北人の私としては,「うぬ,このくらいの雪は雪とは呼べぬわ! 主を呼べい!」と海原雄山口調になってしまいますが,こうやって写真で見ると,雪国そのものですね。
そして,病院の駐車場をみたらツグミ(ですよね)とスズメとセキレイがいて,必死に何かをついばんでいるじゃありませんか。ツグミといったらもちろん,「とりぱんのつぐみん」です。「とりぱん」大好き人間なもんで,思わず,腐りかけのりんごの皮をあげたくなりました。
2010/02/18
- マイケル・ケインとジュード・ロウがスクリーン上で火花を散らす傑作,《スルース【探偵】》を紹介。最後まで先の読めない展開が楽しめました。
- 大規模捕鯨の担い手は,もう民間にはいない ー「小型沿岸」への現実路線が迫られる捕鯨外交
一昨日のこの欄で反捕鯨団体シー・シェパードの問題について取り上げましたが,この記事は日本が南氷洋で調査捕鯨を続ける意味そのものを問いかけたものです。20年前の「調査捕鯨を続けているうちに世界の同意を取り付け,やがて調査捕鯨を商業捕鯨に切り替える」という政策モデルそのものが現実的に破綻している以上,南氷洋ではなく日本沿岸に限定した捕鯨に方向転換すべきだ,と提言しています。
- デジタルメモ「ポメラ」に廉価モデル DM5,約2万円
編集できるファイルのサイズ,日本語辞書のユーザー辞書登録数などは旧モデル(DM10)と同じで,重量をちょっと軽くした「廉価モデル」のようです。DM20を持っていない人なら買っていいかも。
- というわけで,ポメラDM20で本の原稿を執筆中ですが,3月上旬締め切りの依頼原稿が3つ重なってしまったため,なかなか大変です。
2010/02/17
2010/02/16
- 私がちょっぴり出演した1月21日の日本テレビ「おもいッきりDON!」,および1月22日のBS-TBS「健康トリプルアンサー」をDivXファイルに変換しました。この動画ファイルをご覧になりたい方は本名,所属を明記してメールでご連絡下さい。
- 歯科での抜歯後に問題となる "Dry Socket" についての竹内義和先生の治療法です。
- SF映画かと思ったら,愚にもつかないホラー映画だったのが《地球が凍りつく日》です。題名に騙されてレンタルショップで借りちゃダメだよ。
- 自民党が少子化を加速させた ー自民党・野田聖子衆院議員インタビュー
野田聖子さん,すごいことを言っています。少子化についての本質を見据えて発言しています。自民党議員なのに,「自民党が少子化対策の最大の障害」とまで言い切っているのです。
また,「老人には票があるが,子供には票がない。だから老人福祉ばかりで子供は放って置かれた」なんていうあたりは,私の持論と完全に一致しますし,「今の60代,70代のおじさんたちが仰天するようなことをしないと,少子化は止まりません」なんてあたりも,よくわかっているなぁという感じです。
野田聖子議員,自民党ではさぞかし仕事がしにくかったんじゃないでしょうか。
- グリーンピース2被告,初公判で無罪主張
異論は多々あると思うが,捕鯨はそろそろ止めていいんじゃないのと思う。なぜかというと,鯨肉を誰も食べていないからだ。
いつも夕食を食べている居酒屋さんでは鯨の刺身を出しているけど,そのお店でも食べるのは高齢の一人か二人だけで,それ以外では注文する人は全くいないという状態らしい。恐らくこれは,石岡だけの現象でなく,日本全体がそうじゃないだろうか。
また,鯨肉は食べてみると実はそれほど美味いわけではない。少なくとも私は,牛肉や豚肉の方が遙かに美味しいと思っている。私の味覚が日本人標準かどうかは不明だが,世界を敵に回してまで食べたい味ではないのだ。
「鯨を食べるのは日本の伝統」というのが農林水産省の言い分だが,もう既にその伝統は失われているのではないかと思う。もしも南氷洋での捕鯨が世界から認められ,捕鯨を再開したとしても,それで得られた鯨肉は日本国内で消費しきれないと思う。恐らく,学校給食に無理に押し付けでもしない限り,鯨肉は余って処理に困るはずだ。
私は日本全国各地を訪れてその地の料理を食べているが,鯨が主食である地域に行ったことはない。過去には鯨を主な食料源としていた地域があったかも知れないが,少なくとも現代の日本においては鯨は国民食ではなく,なくなっても誰も困らない食材の一つにすぎないのである。
シー・シェパードははっきり言ってエコ・テロ団体である。こんなバカどもに屈するのは悔しい,こんな連中の言いなりになるのはおかしい,というのは感情的にはよくわかる。しかし,誰も食べていない鯨肉を取るためにこんなバカ連中の相手をするのはエネルギーの無駄だと思うのだ。そして何より,南氷洋での捕鯨を日本が中止して一番困るのはシー・シェパードじゃないだろうか。攻撃相手がいなくなったら彼らは存在意義がなくなってしまうからだ。
もちろん,農水省には農水省の意地があり,これまでのいきさつもあると思うが,そろそろ「捕鯨は日本の伝統」という呪縛から解き放たれてもいい時期ではないかと思うがどうだろうか
- 有機ELテレビ,3月で日本撤退 ソニー「需要が一巡」
ソニーの有機ELテレビの薄さは衝撃的でしたが,現時点では「薄くて小さな高価なテレビ」でしかありませんから,売れなかったのも当然のことだったかも知れません。しかも,この商品が売り物としている「薄さ」は横から見た時だけ,「軽さ」は持った時にだけしか実感できず,テレビ番組をみている時には「薄くて軽い」ことはテレビとしてのメリットにならなかったのが問題だったような気がします。
では,「薄くて軽く持ち運べるテレビ」を謳い文句にすればいいかというと,携帯電話(ほとんどの機種でワンセグが見られる)との競争になり,「テレビしか見られない」有機ELテレビでは全く競争になりません。
技術開発とその商品化の問題は難しいです。
2010/02/15
- なんと,素人の方が人体実験! 「悪魔の妄想」というブログですが,カッターで腕に傷をつけて半分を「消毒して乾燥」,半分を「湿潤」にしての比較実験です。ここれぞ科学者魂です。すごいです。
これ以外の記事も読み応え満点です。是非,ご一読を。特に「フラクタルビスケット,ポアソンスパゲッティ」には感動しちゃいました。そうか,スパゲティの長さってポアソン分布するのか。
- 「低温熱傷の治療」についてまとめてみました。デブリードマンの簡単な方法について解説しています。
- 掲示版に「浸出液の組成について」という書き込みがありました。私も以前,疑問に思ってちょっと調べてみたことがありましたが,よくわからないままです。どなたかご存じの方はご教示いただけないでしょうか。
- 『数学10大論争』(ハル・ヘルマン,紀伊國屋書店)ですが,あまりの面白さに1日で完読しました。人間の脳みそってすごいな,こんなところまで論理で追求しちゃうのか・・・と,圧倒されました。いずれ,書評を書こうと思っています。
- 時効停止 ~警視庁の本音
世の中の流れとしては「犯罪に時効なし」の方向に動いていますが,現場の警察官はどう思っているのか,というインタビュー記事です。確かに,捜査する人間の数は決まっているのですから,時効を撤廃すれば未解決事件が次第に積み重なって増加し,結果として1事件あたりの捜査員の数は減少することになります。となると,自主する犯人が多少増える程度かも,というのも頷けます。
2010/02/12
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,大分県大分市のふるしょう医院/古庄康志先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 素晴らしく感動的なダーク・ファンタジー映画,《永遠のこどもたち》を紹介。これは傑作です。
- Skagenの腕時計,買っちゃいました。
- 「孤独死」はそんなに大きな問題か ー「いのちを守りたい」連発への違和感,偽善に惑わされまい
昨日もNHKの21:00からのニュース番組で「孤独死」問題が取り上げられていましたが,一人で誰にも知られずに死ぬことはそんなに悪いことなのかと,以前から違和感を感じていました。そこでこの記事を読み溜飲が下がる思いでした。
人間は一度は必ず死にます。いつ死ぬか,どんな状況で死ぬかは事前に選べませんし決めることもできません。つまり,「死」に関してはあらゆる人間は平等です。どんなに大金持ちでも,どんなに高い地位にある人でも,死の時期を選べないし死の状況も選べません。生きている時は不平等でも,死の間際には全ての人間は平等です。
だから,家族に囲まれて生活している人でも,深夜に心臓が止まれば一人で死ぬしかありません。つまり,孤独死か孤独死でないかは本質的な問題ではありません。
「死」は誰にも平等に訪れ,理想的な死に方なんてありません。多くの人に看取られたから幸せな死に方ということもないし,誰にも看取られなかったからといって不幸な死に方というわけでもないはずです。誰にも看取られなかったから苦しい死に方をしたわけでもなければ,家族に看取られたから死の苦痛がないということもありません。違いは看取る側の感覚の違いです。
「孤独死しないように,生前に多くの人とつながりあいましょう,連絡を取り合いましょう。そうすれば一人で死ぬことはありません」というのは大きなお世話です。「孤独死=不幸」という一方的な価値観を押し付けるなよ,と言いたくなります。
私は自分が孤独死しても構わないと思っています。家族に看取られない死を迎えてもそれは自業自得です。年がら年中,週末には日本の何処かに行っていますから,旅行先のホテルで突然死なんてことが起こることは十分に予測できます。しかし,それがいつかがわからないし,予測もできません。避けることができないから,ジタバタしてもしょうがないのです。
- 地獄デコでバレンタイン
世の中のバレンタイン・チョコ狂騒曲を片手でひねり潰すような(ある意味)すごい企画です。しかも,完成度も高いし・・・。
- 「光合成は量子コンピューティング」:複数箇所に同時存在
素粒子の世界では,私たちの日常世界では想像もできない現象が起こります。私のいい加減な知識によると,人間は二つの場所に同時にいることはできませんが,量子は二つの場所に同時に存在したり,二つの状態を同時に持っています。「量子コヒーレンス」とかいうやつです。
通常,このような現象は素粒子の世界だけで起きている現象であって私たちの日常で起こることはありません。同様に,通常の生命現象はニュートン力学や古典的電磁気学で説明でき,量子力学を持ち出す必要はありません。
ところが,光合成の過程でこの「量子コヒーレンス」が起きている,というのがこの記事で紹介する研究です。ということは,生物を理解しようとするなら量子力学の知識が必要であり,量子力学の考え方を知らなければ理解できない生命現象が起きているということになります。
- 本日朝のNHK「まちかど情報室」で「紫外線で歯ブラシを除菌する器具」という商品を紹介していましたが,これってインチキじゃないですか?
確かに口内細菌が歯ブラシに付着しているんだろうけど,口内細菌は口内だから増殖できますが,口の外では増殖できません。増殖できる環境でないからです。当然,口の外に出した歯ブラシでは口内細菌は増殖できないはずです。まして,歯ブラシの水分は刻々と蒸発します。いかなる細菌でも,水分がなければ増殖は不可能です。
というわけで,紫外線まで持ち出すのは明らかに異常です。よく水洗いして水分を乾燥させるだけで十分です。
でも,こういうインチキ商品って売れるんだよねぇ。「熱さまシート」とか「キズドライ」とか「ヒアルロン酸」とか「コラーゲンたっぷり」とか・・・。
2010/02/10
- 「院内感染を減らすために病院内で手指消毒について調べ,手指消毒を励行するように発表する予定ですが」というご質問をいただきました。それに対する回答です。
- 月曜日から今日まで北海道の町立別海病院の院長,西村先生が外来見学に来ていらっしゃいます。そこで,私がコンピュータヲタクと知り,「吉崎先生という内科医,御存知ですか? 以前,一緒に働いたことがあるんですが」という話になりました。内科医の吉崎先生といえば,わたし的には吉崎栄泰先生しかいません。ご存知,アーカイバソフトLHAの生みの親である天才プログラマです。現在は黒澤病院の院長をされていて,コンピュータ方面のお仕事は長らくされていらっしゃらないようですが,私にとっては憧れの存在です。
あの頃は,今はなき伝説の名パソコン雑誌『The Basic(通称「ざべ」)』にはよくハフマン符号化やLZARI法の解析記事が載っていて,それこそ貪るように読んでいたことを懐かしく思い出しました。
- 今週の「ジャケ買い本」,それが『数学10大論争』(ハル・ヘルマン,紀伊國屋書店)です。「ベルヌーイ vs ベルヌーイ 最高水準の兄弟間の拮抗」なんて帯を見て買わなかったら,「素人数学好き」の名が廃ります。
- メタボ腹囲は科学的根拠なし…線引き困難
最初にメタボリック症候群が提唱されたのは確か,「内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併すると動脈硬化性疾患に罹患する率が高く,その中心が内臓脂肪型肥満である」,という研究が元になっていたと思います。そして,内臓脂肪型肥満かどうかがわかれば,ハイリスクであるということが強く予想できる,となり,それをうけて厚生労働相が音頭をとって「メタボ検診」なるものが始まったわけです。そして,「内臓脂肪型肥満⇒腹部肥満⇒腹囲を測ればいい」となり,腹囲男性85cm,女性90cm以上なんていう診断基準が決まったわけです。
ところが調べてみると,日本国内だけでメタボリック症候群の診断基準がなんと5通りもあるじゃありませんか。それを自分の状態に当てはめてみると判りますが,ある基準では立派なメタボ症候群なのに,別の基準ではメタボ症候群ではないと言うことになることがわかります。おまけにこの5通りの診断基準を見ると,腹囲が必須項目であるものもあれば,必須項目ですらない診断基準すらあるのです。オイオイ,それはないだろうと思いませんか。
これっておかしくないですか?例えば,前腕骨折の診断が5通りあって,ある診断基準によると骨折だが他の診断基準では骨折ではないとなる・・・と,こういうのと同じだからです。
では,どこでボタンを掛け違ったのか。それは「内臓脂肪型肥満⇒腹部肥満⇒腹囲を測ればいい」というそもそもの発想の間違いです。内臓脂肪を測定するのは面倒だから,他の何かで類推できないか,と考えるからおかしくなったのです。これは要するに,脳腫瘍の診断を頭囲を計って診断できないか,血糖値を顔色(明度と彩度)で判断できたらいいのにな,というのと発想が同じです。最初から安易な方向に走ろうとするから,走る方向そのものを見失ってしまうのです。
つまり,内蔵型脂肪が重要ならそれを直接測定すればいいだけなのに,それは面倒だから何かで簡単なもので代用できないかという発想がさもしいのです。こういう手抜き根性からは何も生まれません。生まれるのは混乱と不信です。
- 朝青龍,相撲界について昨日,一昨日と駄文を書いていますが,それに対して「これは,伝統の明文化云々より,彼を横綱にしたことが問題の根本である。彼は単に強いだけで横綱の器ではないし,日本文化も理解していない。そういう男を横綱にすべきでなかったのだ」という反論をいただきました。
歴史的に見てると江戸時代には最高位は大関であり,横綱が番付に登場したのは明治時代になってからです。現在は「大関の位で二場所連続優勝,またはそれに準ずる成績を挙げると横綱審議委員会が推挙し・・・」と制度化されています。しかし,強ければそれでいいのか,横綱とは心技体の全てが抜群に優れているものに限るべきではないか,という意見は常にあり,内館牧子さんは朝青龍が横綱に昇進する際,彼には心技体の心が十分備わっていないと強く反対したらしいです。
しかし私は,強い大関を横綱にするのは当たり前,横綱昇進の基準は勝ち数で単純に決めるべきだと考えます。「いくら強くても人間性が悪いから横綱にしない」というルールにすると相撲界はやがて崩壊するからです。
スポーツや格闘技で「強くても人間が優れていないものは評価しない,弱くても人間性が優れているものが偉いのだ」とするとどうなるでしょうか。
- プロ野球で,オリックスは勝敗数では下位だが,横断歩道でおばあちゃんを助けた選手がいたから優勝とした
- Jリーグで,大分トリニータはチーム成績は下位だったが,人格が優れた選手が多いので来季もJ1になった
要するにこれは,入学試験で「お前は試験は最高点を取っているが,性格が悪いから不合格」というのと同じです。これってどうでしょうか。
なぜこうしてはいけないかというと,点数や勝敗という明確な客観的基準でなく,性格の良さ,目つきの悪さ,人柄の良さ・・・などの主観的な判断が基準になるからです。
客観的な基準があるから人間は努力します。それが最も公平で明快であり,努力の方向性が明確だからです。しかし,主観的基準では人間は努力のしようがありません。Jリーグの優勝が勝敗でなく人格の優れた選手の数で決まるのだったら,選手はだれもサッカーの練習もしなくなり,努力もしなくなります。サッカーの努力が評価されないからです。そしてサッカー界は崩壊します。
大相撲も同じです。心技体なんて実体のないものを基準にし,強くても高い地位に登れない,弱くても性格がよい(=相撲協会に楯突かない)相撲取りだけを高い地位につけるというシステムにすると,相撲を一生懸命に稽古しても意味がなくなります。一生懸命に努力しても高い地位につけないんだったら,力士は努力を止めます。適当に相撲を取り,理事会におもねる力士だけになります。それが出世の道だからです。
だから,最強の男は最高の地位につけるというように評価の基準は単純明快にすべきです。「強さ=勝ち数」という明確な数値で強さを判定し,それによってふさわしい報酬が得られるようにすべきです。もちろん,その数字を基準とすることは妥当か,ということは常に問われ続けなければいけませんが,明確でない基準で評価されるよりは数段マシだし,努力のしがいがあります。
- 今日は10:30まで外来をして,それから11:13石岡駅発の電車に飛び乗って羽田に向かい,福岡に向かいます。そうそう,『数学10大論争』を持って行こうっと。
2010/02/09
2010/02/08
- 「細菌と消毒の関係は理解できたのですが,ノロウイルスやインフルエンザウイルスと消毒の関係はどうなのでしょうか?」という質問をいただきました。それへの回答です。
- 天皇陛下,ノロウイルスに感染…経路は不明
記事によると,感染経路は全く不明とのことです。逆に言えば,天皇陛下ですらウイルスを物理的に遮断することは不可能だったと言うことになります。つまり,感染者との接触を絶ち,手洗いとうがいでウイルス侵入を防ぎ,消毒と滅菌物の使用を徹底し,食べ物に万全の注意を払っても,それでもウイルスは侵入できるのです。
感染対策とは,まずこの事実を認めることから始めるべきではないでしょうか。事実を認めずに仮想事実から対策を構築しても,それは砂上の楼閣に過ぎないはずです。
- インフル予防手洗いで手荒れ
以前から当サイトでは「手洗いのしすぎは手荒れを起こし,その結果として手は黄色ブドウ球菌(MRSA)の巣窟になる」と指摘していますが,まさにその事態になったようです。この「消毒手洗いによる手荒れ」を防ぐ「手洗い前にはワセリンでワックスがけ」しかありませんし,実際にこれで予防できています。
ちなみに,この記事では「症状が軽い場合や予防には,保湿クリームなどの塗布を勧める」とありますが,もちろんこれは逆効果で,保湿クリームを使うと手荒れはさらに悪化します。
- 朝青龍の問題だが,モンゴルでは「朝青龍が大相撲の記録を破りそうになったので,追い出したんだ」とちょっと騒ぎになっているとか。そりゃ,そうだろうな。なんで解雇を迫られたのかは日本人にとっては何となく判るけど,おそらくモンゴルの人たちにはいまいちピンとこないと思う。
ちなみに,朝青龍が本当に一般人に手を出していたら(実はこの点に関しても事実はよくわかっていないみたいだが),その時点で完全にアウトだ。ボクサーにしろレスラーにしろ柔道家にしろ,素人衆相手に力をふるうのは御法度だからだ(多分これは世界共通ルールじゃないだろうか)。
今回の問題はもちろん,朝青龍の個人的キャラの占める部分が大きいけど,外国人力士が増える一方である以上,今後も同様の問題は起きると思う。外国人力士が増えれば増えるほど,文化の衝突は避けられないからだ。稽古をしっかりして相撲の伝統を教え込めば相撲の伝統は守られる,というのは日本文化で生まれ育った人間に対しては有効だが,そうでない人間に対しては通用しないのだ。口伝という形式は情報伝達で最も脆弱なシステムだからだ。この脆弱な情報伝達システムに立脚しているのが「相撲の伝統」ではないだろうか。
ではどうするか。解決策は一つしかない。「相撲の伝統」とされる「暗黙の了解事項」を全て明文化し,相撲部屋への入門時に契約書を交わすしかない。もちろん,英語,ハングル,ロシア語,モンゴル語・・・と各国語バージョンも準備しておくのは当然だろう。何もそこまでしなくてもいい,親方がみっちりと言葉で伝えればいい,という意見もあると思うが,「こういう事をしてはいけない,これをするのはルール違反,ここまでしたら解雇する」と明文化しておかない限り,将来必ず,同様のトラブルが起きるはずだ。
朝青龍問題に怒るモンゴルの人たちには,「今回の朝青龍の退職はモンゴル人だからでなく,このルールを破ったからだ」と明文化したルールを持ち出して説明できれば納得してくれたと思う。
文化とか伝統というやつは恐らく,閉鎖社会でしか維持できないものではないだろうか。
例えば言語を例に取ると,方言同士では同じ日本人同士でも意志の疎通は難しいが(三河弁と土佐弁では会話が成立しないよね),江戸時代では全国各地がその状態で,早い話が山を二つも越したら言葉が通じなかったようだ。山二つ向こうの地域との交流がなければ,そもそも会話をする必要がないし,言葉が通じなくても何の問題もなかったのだ。
しかし,交通が発達して簡単に移動できるようになると,その地方でしか通じない方言しか話せないようでは仕事にならなくなり,共通の言語が必要になる。そして,共通言語の必要度が高まるにつれて,地域限定言語の必要性はどんどん少なくなっていく。要するに,交通の発達は方言を駆逐していくわけだ。一種のグローバル化である。同様に,異なった文化,異なった価値観を持つ人間が暮らす上では,客観的な「明文化された共通のルール」が必要となるのだ。
要するに,日本固有の文化は方言みたいなものであり,相撲界特有の伝統はさらに狭い地域にしか通用しない方言である。その村が孤立しているのならいいが,その他の地域と交流が始まったら方言に固執していてはいけないのである。
2010/02/05
- 少年写真新聞2月18日号に『外傷の基礎知識 ~傷が治る過程~』が掲載されました。
- 来年2月5日の「第12回島根院内感染対策研究会」での講演の詳細が決まりました。
- 伝説のバイオリンの名器がたどる数奇な運命を描いた傑作音楽映画,《レッド・バイオリン》を紹介。とにかく,映画中のバイオリン演奏が鳥肌モノの見事さです。
- 新しい翻訳の可能性 エンターテインメント分野での“ノーベル賞級”の名訳
これまで何度か取り上げてきた翻訳に関する連載の9回目です。今回は,原文(英語)に忠実でありながら,実に自然な日本語に翻訳している例として二つの小説が紹介されています。
とりわけ,私の大好きなマクリーンの『女王陛下のユリシーズ号』(村上博基訳)が取り上げられていて大感激! ヒギンズの『鷲は舞い降りた』と並んで私が最も好きな冒険小説ですが,流麗で見事な文体はまさに,日本の小説家が日本語で書いたかのような完成度の高さに達しています。そして,原文と並べて読むと,ほとんど逐語訳と言っていいほどの正確さで,どれほど原文に忠実に訳しているかがわかります。
それにしても,短い文章を読んだだけで,30年前に読んだだけの『女王陛下のユリシーズ号』の感動が蘇ってきます。もう一度,読み返したい小説です。
- 引退…暴行問題けじめ「自分にとっての運命」
結局,朝青龍にとって相撲界には心から心酔,尊敬できる「品格ある人物」がいなかったということじゃないでしょうか。品格,品格と言われても具体的な人物がいないから,「横綱の品格を持て」と言われても「それってどういう事なの?」状態だったのではないかと・・・。
しかも,貴乃花以降,日本人の横綱はいないし,日本人力士といえば弱っちい大関がいるだけ。部屋の親方といえば「人気はあったけどあまり強くなかった大関」ですから,人生の師とするお手本になるような人物がいなかったわけです。しかも,朝青龍にとって日本といえば相撲界だけです。その相撲界にお手本とすべき人物がいなければ,どうしようもなかったような気がします。
以前紹介した『雷電本紀』(飯嶋和一著,河出文庫)には江戸時代の力士たちの生活がいきいきと描写されていますが,体が大きくて力がある乱暴者集団だったことが判ります。学問もあり人格も優れた力士は極めて少数派であり,人間の性(さが)としてもその方が自然に感じられます(体が大きくて力も強くて喧嘩も強く,それでいて性格は控えめな人格者です,なんてそんなにいませんよね)。たまたま雷電が相撲も強く人柄も良く稽古にも熱心だったため,同門の力士たちは目覚めていきますが,そういう「手本とすべき力士」がいなければ力士たちは怠惰なままだったはずです。当然といえば当然でしょう。
- 造反の安治川親方,退職撤回し相撲協会に残る考え表明
貴乃花親方は「全国の小学校の校庭に土俵を作り,早くから相撲に慣れ親しんでもらって・・・」と考えているみたいだけど,無記名投票の選挙と決めたのに,「自由に投票するなんで非常識だ」というような非常識な世界に自分の子供を進ませようと思う親はいないと思うよ。
2010/02/04
- 石岡第一病院の褥瘡治療チャートです。多分,世界で一番簡単なフローチャートでしょう。
- 米空軍,『PS3』利用で200万ドルのスパコンを開発中
以前から,「スパコンなんてPS3を500台くらい繋げば作れるんじゃないの?」と言われていましたが,実際に2000台のPS3を繋いでスパコンを作る計画のようです。不遇のCellプロセッサもようやく日の目をみることになりそうです。
- ニコン COOLPIX S8000発表,光学10倍ズーム搭載で世界最薄
私が注目したのはお値段です。 800万画素で光学3.6倍ズームのエントリー機がなんと13,000円なんですよ。私ならこの機種で十分だな。お財布にも優しいし・・・。
なにしろ私は,患部の写真しか撮影しないので,200万画素相当の画質で十分なんですよ。ちなみに,現在使っているデジカメは600万画素のものですが,買った直後に1200×900ピクセルに画質を設定し,ずっとその設定で使っています。そろそろバッテリーがヘタッてきていますので,いずれ買い換えないといけないなと思っていたのですが,こういう低機能・低価格のデジカメが発売されるのは嬉しいです。
- 今朝のNHKの「まちかど情報室」で浮かぶおもちゃが取り上げられていました。空中に浮かぶ円盤,そして地球儀です。特に地球儀の方は,宇宙から地球を眺めているような感じで素敵です。これってちょっと欲しいかも。
- 小沢民主が画策する無原則な高速道路整備 ー田中角栄以来の高速道路建設の方程式が復活してしまう
猪瀬直樹さんが危惧するのは,人間小沢一郎の基本がどこにあるのか,どこを向いてあるこうとしているのか,政治とは何だと考えているのか・・・という政治家としての根っこの部分が薄っぺらなものでしかないという点です。
今回の陸山会の問題では小沢一郎さんの気そは見送りになりそうです。私も起訴するのは無理だろうなと思っていました。また,政権交代を起こした手腕も見事だと思います。しかし,そろそろ政治の舞台から降りて欲しいと思います。古い自民党に嫌気がして新しい民主党をえらんだのに,その政党が最も古い利権体質の政治家に牛耳られているのは困るのです。
2010/02/03
- 「外傷を湿潤治療している医師」,「熱傷を湿潤治療している医師」に,島根県出雲市の出雲市立総合医療センター 外科/木谷昭彦先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 検察の「暴発」はあるのか(上)/郷原信郎が読み解く陸山会政治資金問題の本質
小沢問題についての,これまで明らかにされた事実から冷静に分析した記事。いろいろな方面の情報を総合すると,この記事が最も正確ではないかと思っていますが,いかがでしょうか。私個人としては,最も納得できる解説でした。
- 無生殖で 5千万年を生き延びたワムシ
とても面白い記事なのですが,これだけを読んで理解できる人はいないんじゃないでしょうか。なぜかというと,ワムシについての説明がほとんどないからです。
まず,ワムシというのは原生動物(真核生物)のなかの輪形動物であり,そのほとんどの種類は単為生殖,つまり,卵から孵化したものは全てメスになり,それが卵を産み,卵からまたメスが生まれ・・・というのを繰り返しています。
ただし,環境が悪化するとオスが誕生し(ここで減数分裂が行われる),メスとの間で有性生殖をします。そこで生まれた卵はすぐに孵化せず,休眠状態となって環境がよくなるまで眠り,目覚めの時を待ちます。ちなみに,一部のワムシは常に有性生殖をしますが,この記事で問題になっているヒルガタワムシは単為生殖のみでオスが生まれることはありません。ここまでがワムシについての基礎知識です。
一方,原生動物を含むあらゆる真核生物には寄生細菌や共生細菌,そして感染症を起こす細菌が必ずいますが,そのため,感染性細菌に対して宿主は免疫のメカニズムを獲得し発展させました。そして,有性生殖はそれに有利に作用します。有性生殖では必然的に遺伝子のシャッフルが起こるため,多様性が生み出されるというのがその説明です。
ところが,ヒルガタワムシは基本的に単為生殖であり,遺伝子シャッフルは起きず,これは進化論的に不利に働くはずです。「単為生殖しかしないヒルガタワムシがなぜ感染性細菌との戦いで負けていないのか」という疑問が当然湧いてくるが,その疑問に答える研究がこれです・・・というのがこの記事なんですね。
というわけでこの研究ですが,「単為生殖するワムシのごく一部」の生き残り戦略としては納得できるものですが,これは,「世界の一部にしかワムシがいない」世界でなら有効な戦略ですが,「世界中にワムシがい棲息している」現状ではあまり有効な戦略とは思えません。逃走先がワムシの生存に適した環境であるなら,既に別のワムシが棲息している可能性が高いからです。
というわけで,とても面白い論文なんですが,もっと緻密な考察が必要ではないかと思いました。
- 缶切りを使わないで缶詰を開けてみる
1810年(奇しくもショパンが生まれた年ですね)に世界で初めて缶詰が作られましたが,その時点で缶切りはなかったそうです。じゃあ,どうやって缶詰を開けていたのかという疑問が生じます。わからなければ自分でやってみるか,というのがこの実験レポ。なるほど,ベトベトになっちゃうのか。ちなみに後半では,石器時代が打製石器から磨製石器に変化していった理由までわかっちゃいます。
- あかね色の秋田新幹線 「E6系」仕様公開
新しい秋田新幹線は確かに格好いいし最高時速も320km/hrです。しかし,この新幹線が悲しいのは「秋田新幹線だけ」では130km/hr以下でしか走れないことにあります。なぜかというと,秋田新幹線と山形新幹線は在来線の線路を走っている「地べた新幹線,踏切新幹線,単線新幹線」だからです。新型秋田新幹線が最高時速を出せるのは,青森からの新幹線「はやて」と連結してからなんですね。「一人で外に出られるのに,外に出るときはいつも親と一緒」みたいな感じです。
さらに,盛岡から田沢湖線に入るとスピードが半分以下になるだけでなく,途中の無人駅に必ず停車して向こうから走ってきた秋田新幹線が通りすぎるのを待ったりするんですよ。なぜ止まるかって? それはね,単線を走っているからです。おまけに谷底を走っているため,雨が強かったりするとすぐに止まっちゃうし・・・。
それなのに全席指定で,お値段は新幹線なんですよ。でも,ぼったくりバーみたいな新幹線,って言わないでね。
- 外傷性脳損傷14万人 アフガン,イラク派遣の7%
戦争が続けば続くほど軍需産業は肥え太り,軍需産業主導でアメリカ経済が回復するわけね。でも,末端の兵士は使い捨て・・・ってか。
それにしても,イラクに派兵された兵士の14人に1人に脳損傷というのは,恐ろしい数字です。そして,イラク側兵士や住民の脳損傷はそれより多かっただろうと思うと慄然とします。
- 「活字のKindle」vs「マンガのiPad」――電子書籍端末の勝者は?
確かにiPadの大画面は漫画を読むのに最高でしょうね。『ディアスポリス』全巻まとめてダウンロード,なんてのができるんだったら,iPadでもいいな。
- 安治川親方,理事選めぐり退職へ=立浪一門から貴乃花親方に投票-大相撲
「自由に投票できるように無記名投票にするけど,自由に投票したクビ!」という選挙って,前代未聞ですね。もちろん,相撲協会が「自由意志で投票した親方は誰だ」と犯人探しをしたんだろうけど,それだったら選挙なんて要らないじゃん。
こんなことをしなければ,相撲協会も少しは良くなってきたな,と思われていただろうに,相撲協会は最悪の選択をしちゃいました。揃いも揃って低能集団ですな。こんな相撲協会だったら,公益法人の資格を剥奪しちゃえ!
2010/02/02
- 登場人物はどれも魅力的で,しかも元気な爺ちゃん3人組が活躍するという基本的には丁寧で良心的に作られたモンスターパニック映画なんだけど,肝心のモンスターのできがあまりにも悪すぎて・・・という気の毒貧乏映画,《HAKAIJYU 破壊獣》を紹介。金さえかければいい映画になったはずなのに・・・。
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「ぽめらにあん(Pomera愛好家)」にしか意味のない記事を紹介しちゃいます。特にメカ設計の苦労の記事はちょっと感動的。そうか,こういう苦労の末にあの素晴らしいスライド式キーボードができたのか。
この記事を読むと一層,Pomeraがいとおしくなってきます。
- 自分で作れる iPad (※要レゴ)
レゴ使いって,森羅万象,眼に入ったものは全てレゴで作ってしまう人種ですが,なんと原寸大のiPadまで作っちゃうとは! 驚嘆するしかない恐るべき完成度です。
- 「がんばれニッポン」が控えめにした五輪熱
「そういえば,バンクーバーオリンピックって今年だっけ,来年だっけ」なんて思っていたら,あと10日後の2月12日に開幕するんですね。わたしゃ,ビックリしました。とは言っても,いつの間にか知らないうちに大相撲初場所が終わっていた,というのと同じくらいのビックリ度に過ぎませんが・・・。
そういえば私の感覚では,1990年以降の夏季オリンピックと冬季オリンピックは,いつの間にか始まっていていつの間にか終わっていた,という感じで,ワクワク感もなければドキドキ感もありません。私の場合,そもそも関心がないし,おまけに記憶力そのものが減退しているということもありますが,実は2年前の夏季オリンピックがどこで行われたか,4年前の冬季オリンピックの開催地はどこだったかは全く記憶にありません。多分,テレビなどで視聴していたと思うのですが,記憶に残っていないんですよ。
これって私だけかなぁ・・・と思いながら日経BPで見つけたのがこの記事です。やはり,私だけじゃなかったんだとちょっと嬉しくなって取り上げました。
- 駅利用者は警戒せよ! キャリーバッグ衝突事故多発のワケ
私はこのキャリーバッグというやつが大嫌いです。一応持っていますが一度使ったきりで,それ以後は使っていません。ゴロゴロとうるさかったからです。引いている本人は楽かも知れないけど,他人にとっては迷惑極まりないシロモノで,他人が引っ張っているキャリーバッグにぶつかって結構危ない思いをしたことが何度もあります。キャリーバッグを引っ張っているだけで,周囲に配慮ができない無神経な人間に見えます。
- 「10時間も本は読まない」(ジョブズ,iPadのバッテリー駆動時間について)
ジョブスのいいたいこともわかるし,iPadはバッテリー駆動時間に関わらず売れまくるだろうけど,わたし的には,常にバッテリー残量を気にしなければいけないというのはちょっとなぁ,という感じです。「公式発表で10時間」というのは大抵の場合,液晶画面を一番暗くするなどしての値ですから,通常使用では半分程度となるはずです。
2010/02/01
- 5月23日に岡山市で開かれる「第12回 初期研修医のためのセミナー」で講演することが決まりました。
- 譜久山病院のサイトから鳥谷部先生の講演がYouTubeで視聴できるようになりました。
- ある先生から「強皮症の指尖部難治性潰瘍にシルデナフィルが著効した」という連絡をいただき,メールを転載させていただきました。
- パンデミックはでっち上げ?
「新型インフルエンザ蔓延は人類への大いなる脅威である」とさんざん煽っておいて,一体誰が得したんだ? という疑惑がヨーロッパの専門家の間で広がっているようです。この記事ではWHOと製薬メーカーの癒着ではないかと推測していますが,私は以前にも書いたとおり,WHOの体質そのものの問題だと思っています。 根拠となるのは,以前にも紹介したこの記事です。
WHOは感染症対策に予算の3/4を注ぎ込んでいます。しかしこれは,先進国では現状に即していない予算配分です。先進国では感染症による死者は少ないからです。だから,莫大な予算を計上するためには「パンデミックがすぐに起きても不思議ない」という情報を出し続けている必要があるはずです。私がWHOの担当者だったら絶対にそういう情報を流し,感染症対策に金をかけるのは当たり前だ,今から対策をとっておかないととんでもない大惨事になるらしい,という方向に世論を誘導します。要するに,恐怖感を煽って予算の正当性を主張するわけです。
今から10年ほど前でしょうか,「エボラ出血熱で人類は存亡の危機に」という報道があふれていたことを覚えているでしょうか。エボラを題材にしたベストセラー小説もあったし映画も世界各地で作られました。漫画「ゴルゴ13」にもエボラが取り上げられていたくらいです。
それから数年後はマールブルク出血熱騒動です。これも確か,映画になったはずです。そして,SIRS騒動,ニューヨークでの西ナイル熱騒動があり,そして5年ほど前からの「高病原性鳥インフルエンザの人間への感染」騒動があり(あの頃,居酒屋のカウンターで隣の客と鳥インフルエンザが話題になっていたくらいです),そして一昨年からの「恐怖の新型インフルエンザ」です。これらの情報は間違いなく,WHOが意図的に流したものではないかと思っています。なぜなら,エボラや鳥インフルエンザをテーマにした映画ではWHOやCDCの名前が何度も登場し,CDCの担当者が重要な役割を担っていたからからです。WHOがスポンサーか? と思われるほどの露出ぶりでした。
そして,現時点で確かなのは,この「エボラから新型インフルエンザ」の恐怖の予測が全てが空振りだったということです。もちろん,危険性があるから危機感を煽るのは必要かもしれませんが,全戦全敗ではあまりに勝率が悪すぎます。「ナマズによる地震予知」より確度が低いのでは到底科学的とは言えません。
もちろん,今日突然,高病原性鳥インフルエンザがヒトからヒトに感染するタイプに変異し,突如として世界中に蔓延する可能性はゼロではありませんが,それを言ったら何でもありになります。
- わたし的に「いいホテル」というのは,朝起きたらドアの下から新聞がそっと差し入れられている,というホテルです。さらに上のランクは,新聞の種類がリクエストできる,というのがありますが,そこまで行かなくても新聞が入っているだけで「ここはいいホテルだな」って思っちゃいます(もっとすごいサービスってのがあるんでしょうが,泊ったことがないのでどういうサービスなのか想像すらつきません)。
同じ新聞サービスでも,部屋の外のドアノブに新聞を入れたケースがぶら下げられている,というのはちょっとレベルが落ちます。新聞が読めることを内側から察知できないからです。だから,チェックアウトしようとドアを開けて新聞がぶら下がっていることを発見すると,すごく悔しいというか,意味ないよ,って思っちゃいます。
というわけで,一昨日,シェラトン都ホテル大阪に宿泊しましたが,嬉しかったのは,ドアの下に「新聞をドアノブにかけさせていただいております」という紙が入れられていたこと。なるほど,これならドアの外に新聞があることが判ります。ちょっとしたひと手間なんですが,格段にサービスが良くなった気がするんですね。こういうちょっとした工夫がいいです。
- その大阪での講演ですが,看護師さんがとても多い会合のようでしたが,看護師さんばかりの講演と懇親会は非常に苦手です。懇親会で質問する人が周りを取り囲んで質問攻めになるのは嬉しいのですが,質問のレベルが低すぎるというか,「それはさっきも説明しただろ」というものばかりだとさすがにウンザリするんですね。例えば今回も,「アズノール軟膏はどうですか?」,「ヒルドイド軟膏はどうですか?」,「イソジンが駄目ならヒビテンはいいですか?」,「気管切開部の消毒はいらないということですが,PEGの消毒は必要でしょうか?」・・・という質問が延々と続くのです。
こんな質問ばかり続くのでさすがにゲンナリし,「質問をするときは自分なりの答えを出してから,その答えが正しいかどうかを他人に問うべきです。自分の考えなしに質問するのは意味がありません。自分の考えを言わない質問は受け付けません」と宣言。いきなり質問者がいなくなってしまいました。
ちなみに,アズノール軟膏を使っていいか悪いかは,アズノールの主剤であるアズレンの分子構造と分子量がわかれば,答えが出てきます。単純な生物学の問題であり,原理さえわかっていれば他人に質問するまでもないことです。原理がわかっていないから,こういう「個別対応的質問」をするんじゃないでしょうか。
ちなみに,その後数人の先生方とお食事会でしたが,こちらの方は面白かったです。特に歯科の先生が二人いらっしゃったため,口腔内常在菌と歯周ポケットの関係,歯周ポケットは原因なのか結果なのか・・・といった問題について討論できたからです。こういう「討論」は大歓迎です。
以前から思っていることですが,看護師さんは「答えは何ですか?」と質問することが多く,医者は「答えがこうなる理由は何か?」と質問することが多いような印象を持っています。両者は似ているようで全く違います。前者は発展性のない質問,後者は発展性のある質問です。「なぜ」を問わない質問をいくら重ねても,物事は理解できません。
- そういえば,先週金曜日の午後,東海道新幹線が3時間以上ストップしていました。一時,「復旧の見込みはまだ」という報道が続いていたため,かなり心配しましたが,翌日は普通に走り,無事に大阪に到着できました。
各地で講演をするようになって8年になりますが,その間,乗っている電車がストップしたり飛行機が欠航したことは何度かありましたが,いずれの場合も何とか講演開始時間までに講演会場にたどり着くことができ,講演が中止になったことは一度もありません。たぶん,人生の幸運のほとんどをこれで使い果たしているのかも知れません。
- やけど皮膚再生を事業化へ 東海大医学部発のベンチャー「セルバンク」
多分,この商売はうまくいかないと思います。Ⅲ度熱傷はラップやゴミ袋でも治りますが,「セルバンク」ではその10,000倍以上の金をかけないと治らないからです。「100万円かけてもこのくらいしか治らないのなら,100円のゴミ袋の治療でいいや」というのが普通の感覚ですからね。