低温熱傷の治療


 症例は30代男性。10日ほど前に湯たんぽで下腿外側に低温熱傷を受傷。以前から湿潤治療について知っていたため,プラスモイストを購入して貼付し,自宅で様子を見ていたが痛みが出てきたため1月19日に当科を受診。

 なお,低温熱傷では受傷後7〜10日頃に疼痛が出現するのが普通である。理由はこちらを参照して欲しい。逆に言えば,低温熱傷で10日目頃に感染するの自然経過であって,途中の治療が間違っていたからではない。

初診時(1月19日) 切開 アルギン酸塩被覆材貼付

 初診時,全層壊死と創周囲の発赤が認められた。なお,プラスモイストなどで早期から創面の乾燥を防いでいると,全層壊死は固い黒色壊死ではなく,写真のような灰白色〜クリーム色の軟らかい壊死組織になる。
 直ちに,局所麻酔下に壊死の中心部に十字形に切開を入れた。切開はメスでなく18G注射針で行った。壊死組織をすべて除去する必要はなく,中心部に切開が入る程度,表面の硬い組織を切開する程度でよく,出血するような深さまでの切開は必要ない。要するにドレナージができればよい。
 その後,アルギン酸塩被覆材を創面に貼付し,フィルムで密封する。抗生剤は1日程度の投与で十分である。

 メスでなく18G針で切開するのは,メスを準備していない内科クリニックでも18G針なら置いてあるからだ。18Gの注射針はかなり鋭く,壊死組織くらいなら簡単に切開できる。「固いところを通過するまで」針を刺して(これは感触でわかる)壊死組織を持ち上げるようにすると,壊死組織だけ切ることができる。


1月20日 1月28日 2月3日 2月8日

 翌日,痛みは完全になくなった。創周囲の発赤は残っているが,痛みがなければ気にする必要はない。炎症の指標としては痛みは最も鋭敏な指標であり,炎症の診断においては「痛み」がもっとも重要な指標である。発赤の有無で判断すると,炎症の時期を見誤ることになる。

 以後はプラスモイストの貼付・交換のみとし,抗生剤投与もしていない。1月28日までには壊死組織は自然に融解してなくなり,創面は肉芽で平坦になった(1月28日まで創周囲の発赤が残っていることに注目して欲しい。炎症は治まっているのに発赤は持続しているのだ)。「創面が肉芽で平坦」になると,あとは上皮化するのを待つのみであり,この状態から感染を起こすことはほとんどない。

(2010/02/15)

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