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2011/02/28
- 「熱傷を湿潤治療している医師」に,札幌市中央区の宮の森記念病院 外科・消化器内科/真崎茂法先生にもご参加いただきました。ありがとうございます。
- 「熱傷:全症例(?)の治療経過」に症例を追加しました。
- 先日の鳥取県から受診されたヤケドの子供さんの親御さんから写真添付のメールをいただきましたが,わずか3日で目に見えて上皮化が進行していました。また鳥取の〇〇大学病院皮膚科にいる時には痛がって歩こうともしなかったのに,プラスモイストで処置するようにしたら2日後には普通に歩き始めたそうです。よかった,よかった。
ちなみに,ご両親が主治医に「湿潤治療をしてくれないか」と申し出たところ,「そんな治療は駄目だ。湿潤治療では治らない。素人がプロの治療に口出しするな」と言われたそうです。
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- 本屋さんで見つけて面白そうだったので買ったのが,『食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む 』(光文社新書)だ。光文社新書には一群の「絵画で読み解く〇〇」というシリーズ(?)があるが,その一冊という感じである(多分,このシリーズを担当している編集者が同じ人なんじゃないかと思います)。このシリーズ(?)には大体ハズレはないが,これは「当たり」の一冊であった。要するに,西洋絵画を「食」という一点で縦断的に俯瞰すると何が見えてくるか,という本なのだが,非常に面白かった。
例えば,イエスが弟子たちに「このパンは私の肉体であり,このワインは私の血だ」と説明する有名なシーンで,なぜ「パンとワイン」なのか,なぜ肉や魚でなくパン,ビールでなくワインなのだろうか。実は,パンとワインが選ばれたのには必然性があったのだ。
同様に,16世紀のフランドル派の絵画で静物画が好んで描かれたが,果物ばかりで野菜がほとんど描かれなかったのはなぜかとか,西洋絵画に登場する人物はなぜ特定の物(例:ペテロは鍵,パウロは剣,ヴィーナスはリンゴ)を持っているのかとか,どのページを開いてもいろいろな知識が詰まっている楽しい本である。
- 上記の本でもそうだが,西洋史を勉強していくと必ずキリスト教にぶつかってしまう。というか,キリスト教を抜きにした西洋文明という概念そのものが成立しない。文学史も音楽史も絵画史も,科学史も医学史もどこかで必ずキリスト教の考え方と接触し,それを知らなければ理解できない部分を含んでいる。多分,西洋文明の根底にキリスト教の考え方(=思考パターン)が食い込んでいるため,キリスト教の知識なしには理解できない部分が西洋文明にあるのだろうと思う。
そして,キリスト教を自分なりに理解しようとすると,「そもそも一神教とはなぜそのような発想をし,考え方をするのか」という問題にぶつかってしまう。つまり,上記のキリスト教問題は一神教問題と表裏一体である。
問題は,「一神教とは何か」という分析や研究が非常に難しい点にある。問題は次の2点かと思われる。
- 多神教は野蛮で未開な宗教である,という考え方がある。
- 研究対象になるような大規模・広範囲な一神教はユダヤ教,キリスト教,イスラム教の3つしかないからだ。つまり n = 3 の世界である。しかも,キリスト教もイスラム教も経典という点ではユダヤ教経典(=旧約聖書)に立脚しているのだ。つまり問題は限りなく n = 1 に近づいてしまう。
もともと社会科学とは再現性がない現象を研究対象にしているが,一神教の場合,再現性もなければ分析対象は n = 1 なのである。
これは要するに,モンシロチョウ1種類(・・・あるいは,せいぜい3種類のシロチョウ)だけを研究して,「昆虫とは何か,節足動物とは何か」を研究しているような状態だ。
このため,一神教の研究は自己模倣に陥りやすいし,「Aが正しいのはBが正しいからであり,Bが正しいことはAが正しいことで証明される」という論理に陥りがちである。これは, n = 1 であるために「自己の正しさを自己の正しさで証明するしかない」ためだと思う。
- 今回のニュージーランド地震の被害中心地クライストチャーチは美しい歴史的な街並みが有名なところらしい。レンガ造りなどの古い建物が残っているということはもともと,大きな地震がそれほど多くなかったのだろう。大きな地震がそれまでに起きていたら,もうとっくに崩れて新しい建物に立て直しているはずだ。そうでなかったからこそ,古い建物が現在まで残っているのだろう。
・・・というわけで,「古い美しい街並みの街は予想外の災害に弱い」と一般化できそうである。
2011/02/25
- 昨日,骨髄炎についてちょっと書きましたが,考えれば考えるほど,骨髄炎関連の「骨髄炎ワールド」は混沌としていることがわかります。例えば「慢性骨髄炎」については次のような感じです。
- 慢性骨髄炎という診断はほんとうに正しいのか?
- そもそも,慢性骨髄炎という病態は実在するのか?
- 慢性骨髄炎の診断基準は間違っていないか?
- 骨髄炎が必要以上に怖がられていないか? 実態以上に過大評価されていないか?
- 「慢性骨髄炎は難治性」というのはそもそも,治療が間違っていたり,病態分析そのものが間違っているための結果ではないか?
- 「オオカミは恐ろしい」という言い伝えはあるが,「こういう動物がオオカミだ」という基準が実はバラバラ,なんてことではなのか。「オオカミが来た」と騒いでいて,よく見たらタヌキやネコだった,なんてことはないのか。
- 昨日,佐賀記念病院外科部長の牧先生が見学にみえられました(偶然にも,九州からの見学が2日続きました)。毎週木曜日恒例の「褥瘡回診」も見てもらいましたが,「こういう簡単で効果的な方法にできたら,病院にとっても大きなメリットになりますね」と感動されていました。牧先生の感想です。
- 深い褥瘡も全身状態が極めて悪い患者さんの褥瘡もどれもとてもきれい。
- ごく軽度の発赤程度の褥瘡まできちんと看護師が把握しているのがすごい。
- 全ての病棟で褥瘡治療の方法が統一され,治療法を皆が理解し,治療法に対する疑問がない。だから,褥瘡治療に関して議論・討論する必要もない。治療法として完成されている。
- 治療効果が誰の目にも明らかなので,治療に不安がない。
- 「発赤があればフィルム。それ以外はOpWT」とシンプルなので,治療を間違えようがない。専門知識も要らない。しかも金も手間もかからない。
- 逆に「褥瘡治療命」という医者や看護師には受け入れられませんね,簡単すぎて。
- 脱力系・ゴミ箱行き系ゾンビ映画,としか評価の言葉がない《ZVC ゾンビVS.チアガール ZOMBIE CHEERLEADING CAMP》をレビューしちゃいました。ホラー映画なのに怖くなく,ゾンビ映画なのにメイクは杜撰,ホラー映画なのに美少女は出ない,エロくもない・・・というないないづくしのゾンビ映画です。唯一凄いのは,オリジナルの音声をまるっきり無視しまくった日本語吹き替えだけでした。ある意味これは衝撃的・・・ってか?
- 【惑星形成の3つの定説,見直し迫る】
どのようにして私たちの太陽系ができたのかについての標準モデルがあり,それにより,50億年前の原始太陽の誕生から8つの惑星(内側に岩石タイプの小さな惑星が幾つかあり,その外側に巨大ガス惑星を取り囲んでいる)の誕生までの過程を理論的に説明できるようになりました。ほぼこれで完璧だろうという精緻な理論です。
ところが,太陽以外の恒星の周りを回る惑星が発見されるにつれ,その「太陽系形成に関する標準理論」が全く通用しない惑星ばかり見つかってきたのです。なぜそういう「常識はずれの惑星」ばかりなのか,それについての記事です。
理由は多分次のいずれかでしょう。
- 太陽系の惑星の構成が実は宇宙全体では特殊であって標準的ではない。だから,太陽系を元に組み立てた理論が通用しない。
- 見つかっている惑星は巨大ガス惑星ばかりで,しかも真円でない軌道を回っているものが多いのは,そもそもそういう惑星が発見されやすいからではないか(恒星のわずかな光度の変化などで惑星の存在を推理していくしかないから)。
- 仮に,巨大ガス惑星の内側に岩石タイプの惑星があったとしても,サイズが小さいために発見されにくい。
いずれにしても,私たちが考え出した「太陽系形成標準理論」は太陽系しか知らない状態で作ったものです。n = 1 という状態で理論を組み立てざるを得なかったのです。何しろ,太陽に一番近い恒星ですら4光年以上離れていますから,理論形成の参考にしようにもモデルにできるものは太陽系しかないわけです。
これは例えて言えば,昆虫といえばモンシロチョウしか見つかっていない段階で,昆虫学を作るようなものです。モンシロチョウしか昆虫がいなければ「昆虫とは3つの体節に分かれ,4つの白い大きな羽と6本の足を持つ生物である」というのが標準理論になります。しかしその後,他の蝶や蛾が見つかり,それどころかカブトムシやバッタなどモンシロチョウとは似ても似つかぬ昆虫まで見つかってしまったらどうなるか・・・というのが,現在の惑星学の現状でしょう。
- 私の外来を見学されたことがある先生方はご存知と思いますが,外来では子供の患者さんに塗り絵をあげています。「くまのプーさん」,「ディズニーのプリンセス」,「クレヨンしんちゃん」,「ゴセイジャー」,「ドラゴンボール」,「ポケモン」,「シナモンロール」,「おじゃる丸」,「きかんしゃトーマス」,「ケロロ軍曹」など,2歳から8歳くらいまでの患者さんにこれくらいの種類を提供したらどれか一つにはジャストミートするだろう,というラインナップを揃えています(ちなみに,「ゴセイジャー」の後継番組「ゴーカイジャー」の塗り絵はまだ公式サイトにはアップされていません)。
例えば「ゴセイジャー」にはレッド,ブルー,ピンク,ブラック,イエローの5人がいますから,ゴセイジャー大好き4歳児は「この前はレッドだったから今度はイエローが欲しい!」となり,病院に来るのが楽しみになるようです(もちろん,治療そのものが痛くないから,というのも重要ね)。そして何より,自分が大好きなキャラクターの塗り絵を貰って,嫌な気分になる子どもはいないはずです。いわゆる「患者サービス」ってやつです。
ちなみに,塗り絵を渡すときは必ず,「兄弟は何人?」と尋ねることにしています。帰宅して,兄弟で喧嘩の種にならないよう,兄弟の人数分を渡すためです。
これらの塗り絵,実はただなんですよ。なぜかというと,それぞれの公式サイトから無料でダウンロードできるからです。もちろん,キャラクターによってはなかなか見つけにくい場所に置いてあることもありますが,ちょっと手間をかけるといろいろ見つけられます。例えば,「ゴセイジャー」の塗り絵はここからダウンロードできます。
2011/02/24
- 6月29日(水)に上尾市整形外科医会で講演することが決まりました。
- 先日,ちょっと紹介した『日本人の坐り方』(集英社新書)についてのレビューを追加。
- 昨日は2名の見学者がいらっしゃいました。以前に一度見学にいらっしゃったことがある堺整形外科医院の堺先生とその同僚の武田先生です。
堺先生たちとはいろいろな話をしましたが,その中で「骨髄炎という病名を見ると整形外科医は思考停止しちゃうんだ。骨髄炎は恐ろしい,骨髄炎だけは避けなければいけない・・・という考えが刷り込まれていて,そこから一歩も動けなくなってしまう」という話が面白かったです。いわば「骨髄炎の呪縛」です。
「長年,整形外科医をしていると,この呪縛が強いんだよ」と話されていました。
- 外傷治療や熱傷治療では感染が起きているかどうかが重要で,その際,炎症所見(痛みと発赤),特に疼痛の有無で判断すべきであることはこれまで何度も説明してきた。
これはこれでいいのだが,問題が一つある。疼痛という症状は患者本人にしかわからないものだ,という点である。つまり痛みは,体温とか白血球数とかCRPのように数値で示すことができないし,どのくらい痛いのかを定量化することもできないのだ。これでは「科学的治療」と言えなくなってしまう。
しかし,その数値化も定量化もできない「痛み」に対し,ベクトルという概念を導入(・・・ちょっと大袈裟)すると問題はかなり解決する。それは,「昨日より痛いですか? 痛くないですか?」という質問だ。これで「痛みの絶対値」はわからなくても「痛みの変化(=ベクトルの向き)」がわかるからだ。
もしも「昨日より痛くないです。昨日よりは楽になりました」と答えてくれたら心配はない。治療はうまく行っていると判断していい。しかし,「昨日より痛いです」とか「昨日とあまり変わっていません」と患者さんが答えたらヤバい。それは,治療が奏功せずどこかに感染巣が残っていることを意味するからだ。
もちろん,「昨日の痛みよりひどくなったか,楽になったか」も所詮は患者本人にしかわからないものだが,それでも「痛みを数値化」するよりははるかに正確な情報が得られるのは確かだ。「今日の朝の温度は何度か?」と問われても答えられないが,「昨日と今日ではどちらが暖かいか?」と問われればほとんどの人が正確に答えられるはずだ。人間は絶対値はわからなくても,変化はわかるのだ。これは,絶対音感がない人でも,二つの音の高低は聞き分けられるのと同じだ。
2011/02/23
- 講演用のスライドをマイナーバージョンアップしました。最新版は2月22日作成のもので,「手荒れの治療」などをちょっと修正し,写真を追加しました。ご覧になりたい方は本名,所属を明記してメールでご連絡下さい。
なお,以前ダウンロードしたことがある方は同じアドレスからダウンロードできますのでご利用下さい。
- 情けなくなるほど緊迫感のない鮫パニック映画,《ジョーズ・イン・ツナミ Malibu Shark Attack》を紹介。タイトルのまんま,津波が起こってサメが襲ってくるだけの映画です。
- 昨日,このコーナーで「Google Mapのリンクが長すぎる」と書きましたが,さすがはGoogle,これでは長すぎると思ったのか,短縮リンクの機能もあるようです。「Google MapのLabs」です。ただ現時点では,実験的な機能ということらしく,ちょっと見つけにくいところにあります。
- 「ミニエッセイ」をちょっとだけ更新。
- 「戦争を始めるのは簡単だ。難しいのは戦争のおさめ方,止め方だ」という言葉があったように思う。戦争を始めるには適当な口実さえあればいい。口実がなければ難癖をつけるだけでもいい。要するに,戦争を始めるのに理由なんていらないのだ。難しいのは,一旦振り上げた拳の引っ込め方,拳の落とし所である。
同様に,国家や体制を転覆・破壊するのは簡単だが,その後に安定した国家や社会体制を作るのは難しい。へたをすると,壊しただけで終わってしまい,混乱しか残らない。今回のエジプトやリビアで軍事独裁政権を倒すことが目的ならいいが,真の問題はその後に生じるのだ。
「革命」とは何か? それは多分,「社会や国家の基本体制,基本システムが根底から変わること」として,それほど間違っていないだろう。その意味ではフランス革命は「革命」だったし,イラン革命も「革命」だった。同様に戦国時代から江戸時代の変化も「革命」だし,江戸時代から明治の変化も「革命」だった。それらは「社会のあり方,社会の運営システム」という全ての根底にあるものが一挙に変わり,新しいシステムと入れ替わったからだ。
翻って,今回の「ジャスミン革命」,「エジプト革命」は本当の「革命」なのだろうか。これらは現時点ではあたかも市民革命の体をなしているが,下手をすると「軍事独裁体制を打破して,別の軍部指導国家へ」という変化になりかねず,この場合は体制の変化はなく単にトップの首をすげ替えただけに終わってしまう。その場合は革命でなく軍事クーデターと呼ぶべきだろう。
今回,争乱が起きている中近東から北アフリカの国の国家体制は,王制であったり軍事独裁制であったりするが,その本質は「一族重用政治・部族重用国家」である。そしてそれは,本質的に「国境」という意識が希薄にならざるを得ない砂漠地域では避けられないものではないかと思う。国家を構成する要素が「国民」ではなく「部族」だからだ。つまり,その「部族」が文字通りの部族であれば王制になるし,「軍隊=疑似的部族」とすれば軍事独裁制も同じ範疇に入ることになる。
もちろん,民主主義体制の国が作れればいいが(・・・と書いたが,民主主義というシステム,民主主義が最善の政治システムとする考え方すらパラダイムに過ぎないのではないか,という気さえする),全くのゼロから民主主義国家を作ることは多分不可能だろう。民主主義というシステムを起動させるためには,その前段階が必要だからだ。
私の予想では,中近東や北アフリカの今回の「革命」の結果,国家権力を握るのは軍部かイスラム原理主義勢力のいずれかだと思う。私の脳味噌では,それ以外の選択肢を思いつかないのだ。この予想が外れることを祈るばかりだ。
- 【最大産油国サウジアラビアが抱える爆弾】
サウジアラビアはもちろんスンニ派が多数を占め,アルサウド王家を支える軍も警察も政府もスンニ派で固めています。しかし,産油地帯ではシーア派が多く,彼らが王家に対する不満を爆発させたら・・・という記事です。
イスラム教に全く縁のない人間には,スンニ派もシーア派も同じ神様を信じているのになぜ血を血で洗う抗争を続けているのか理解しにくいところで,スンニ派とシーア派についての教科書の説明(四代目カリフのアリーがどうたら,こうたら・・・というやつね)を読んでも,だからそれがどうしたんだよ,とチンプンカンプンです。
そういうわけで,私の解釈。多分,あまり間違ってはいないと思いますが,間違っていたらごめん。
スンニ派とシーア派の違いとは極論すると,ペルシャ民族(=イラン人)とアラブ民族の民族抗争みたいなものです。アラブの民が信じるのがスンニ,ペルシャの民が信じるのがシーアです(ちなみに,「ペルシャのシはシーアのシ」と覚えると一生忘れません)。そのため現在でも,イランではシーア派が絶対多数であり,それ以外のアラブ民族(=大雑把に言えば,アラビア半島に暮らしている人たち)はスンニ派が多数を占めています。
歴史的に,ペルシャ民族は「俺達は栄光のペルシャ文化を持つ栄光の民族だぜ」と威張り,「アラブなんて荒くれ者の野蛮人」と見ていました。逆に,アラブの民はペルシャの民を,「何かというと昔のことを持ち出す,いけ好かないスカした野郎」と見ているわけですね。
そんな中でスンナ(=開祖ムハマンドの言行録。「これをしろ,これはするな」ってなことが書いてあるらしい)を絶対視してこれを厳密に守ろうと主張する「スンニ派」がアラブの間で広まったらしいです。「スンナを信じるスンニ派」ですね。それに対し,ペルシャの民は「元々,俺達の国で始まったイスラム教なのに,アラブの野郎どもがスンナの通りに行動せよ,なんてバカな言いやがっている。俺達エリートはそんなバカな教えは信じないもんね」と新しい宗派としてシーア派が誕生しました(・・・こういうのを観てきたような嘘,といいます。鵜呑みにしないでね)。
こういうわけで,シーア派は物事を現実的に解決しようとし,スンニ派はスンナを見て問題を解決しようとします。つまり,シーア派にとってはスンニ派はカルト宗教だし,スンニ派からみるとシーア派は原理原則を守らないいい加減な宗教ということになります。同じアラーの神を奉じている以上,お互いは不倶戴天の敵となるわけです。
・・・というふうに私は解釈していますが,あくまでも私の解釈ですので,鵜呑みにしないでね。
2011/02/22
- 「外傷を湿潤治療している医師」,「熱傷を湿潤治療している医師」に,岐阜県関市の岡田医院/岡田洋介先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 「プラスモイストP取り扱い薬局一覧」に,新潟市の新光調剤薬局を追加しました。
- なんと昨日,鳥取県から3歳の熱傷患者さんが受診されました。先週,熱い味噌汁で前腕と大腿に熱傷。直ちに〇〇大学病院を受診し,皮膚科で治療を受けていたようです。しかし,処置のたびに我が子が泣き叫び,ガーゼを剥がすたびに出血する様子を見てご両親は,「こういう治療は間違っている。こんな治療が正しい訳がない。こんな治療から子どもを守らなければいけない!」と〇〇大学病院の治療に疑問を持ち,ネットで検索してはるばる当科を受診されたそうです。
そして診察しましたが,ガーゼがベッタリとくっついていて剥がすだけでも大騒ぎだし,剥がすと出血します。これが自分の子どもなら泣くしかないです。
で,いつものようにプラスモイストで被覆したら,ほどなく泣き止みました。「痛い?」と聞くと「痛くない」とのことで泣かずに答えてくれました。よかったです。
それにしても,鳥取県の〇〇大学附属病院皮膚科のお医者様,こんな治療をしているとどんどん患者さんが逃げちゃうよ。お医者様の古い説明を鵜呑みにする無知な患者さんばかりでなくなったんだよ。患者さんは必死に勉強して,世の中にははるかに良い治療があることを知っているんだよ。
な~んて思っていたら,午後には福島県いわき市の〇〇病院形成外科から熱傷の乳児が逃げてきました。この病院からもよく患者さんが逃げて来ますね。案の定,軟膏ガーゼの治療でしたが,主治医はご両親に「ガーゼは死んだ皮膚がくっついて除去できるから早く治ります。湿潤療法では駄目!」と説明していたそうです。ご両親はこの説明を聞いて,「ガーゼに死んだ皮膚がくっつく? こいつ,アホか? こんなバカなことを言う医者は信用おけない!」と見切りをつけて,県境を越えて受診されたそうです。素人から「この医者,アホじゃないか?」と呆れられるお医者様,ご愁傷さまでございます。
いずれにしても,お医者様が勉強をせずに古い知識にこだわっている隙に,素人がはるか先を走っている時代になりつつあります。時代の変化に気がついていないのは熱傷専門家を自認するお医者様だけです。
- こういう「不勉強な熱傷専門医」に引導を渡すべく書いた『熱傷治療裏マニュアル』ですが,粛々と出版に向けて作業が進んでいます。ついさっき,出版社から表紙のデザインのゲラが到着しましたが,クールで格好いい表紙になっています。乞う,ご期待!
- このサイトの「外傷を湿潤治療している医師」や「プラスモイストP取り扱い薬局一覧」では病院や薬局の位置を地図表示していますが,最近,Google MapからYahoo! Mapに順次切り替えています。もちろん,Google Mapの方が機能が豊富でストリートビューも楽しめるのですが,肝心の薬局や病院の位置が分かりにくいからです。
例えば,石岡第一病院をそれぞれで検索するとデフォルトで下記のように表示されます。病院がどこにあるかYahoo! Mapでは一目でわかるのに,Google Mapではどこが病院かわかりません。おまけに,Yahoo! Mapは地図の拡大・縮小の方法は一目瞭然なのに,Google Mapではどうやったら縮小・拡大できるのか地図のどこを見てもわかりません。つまり,Google Mapは「使い方が分かっている人にしか使えない/初心者に不親切な」仕様になっています。
- Yahoo! Map
- Google Map
そしてホームページを作成する側としても,GoogleよりYahoo!の方がメリットがあります。地図へのリンク情報がYahoo!の方がはるかにコンパクトなのです。例えば上記の石岡第一病院の地図へのリンク情報は次のようになります。
- Yahoo! Map・・・http://yj.pn/ji6soU
- Google Map・・・http://maps.google.co.jp/maps?hl=ja&q=%E7%9F%B3%E5%B2%A1%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%97%85%E9%99%A2&ie=UTF8&hq=%E7%9F%B3%E5%B2%A1%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%97%85%E9%99%A2&hnear=%E7%9F%B3%E5%B2%A1%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%97%85%E9%99%A2&ll=36.207022,140.293264&spn=0.032412,0.062742&z=14&brcurrent=3,0x6022168e8c660885:0xb6c455f21786f9d0,0
つまり,同じ位置を表示するのにYahoo!は19バイトで済むのに,Googleでは322バイトも必要です。1つとか2つの地図とリンクさせるのなら大した違いではありませんが,「湿潤治療医師リスト」のようにHTMLファイル内に500箇所以上の地図情報とリンクさせる場合,これは無視できない違いとなります(昔,プログラミングを趣味としていたので,コードサイズを可能なかぎり小さく,速く動くようにするのが三度の飯より好きでした)。
- 【まるでトースターみたいなSDカードリーダー】
デジカメやスマホの記録メディアといえばSDカードかmicroSDカードが主流ですが,複数枚のカードを持っていてパソコンにコピーする必要があるなら,これはかなり便利だと思います。なによりサイズがコンパクトです。
2011/02/21
- 「熱傷:全症例(?)の治療経過」に症例を追加しました。
- 外来に82歳の新患患者さんが受診されました。名前を呼んだらスタスタ歩いて入ってきたため「指でも怪我したのかな?」と思っていたら,実は左足背全体のヤケド! しかも1週間前に受傷!? 話を聞いたら次のような経緯でした。
以前から新聞やテレビで「ラップでヤケドが治療できる」って知っていたんで,ラップを張ってみたらすぐに痛みがなくなり,歩けるようになったんで自宅で様子を見ていたんじゃ。もちろん,痛くないから他の病院には行ってない。でも,一度見てもらった方が安心できるんで来てみたんじゃよ。
というわけで,残っていた水疱膜を除去してプラスモイストを貼付して治療終了。〇〇皮膚科の先生よりよほど理解力のある80代のじいちゃんでした。お見事!
- 久しぶりに拙書,『傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)』が増刷となりました。これで11刷かな?
- 雑誌,「COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2011年 03月号」に『“つぶやき”では革命は起こせない』という刺激的な記事があった。「エジプト革命はTwitter革命だ!」,「チュニジア革命はFacebook革命だ」とSNSが礼賛されているこの時期にである。
記事では,1960年にアメリカ南部で起きた人種差別への抗議運動(グリーンズボロ運動)がどのように起きて広がっていったのかを詳細に説明している。具体的には,4人の黒人学生の静かな行動で始まり,1ヶ月足らずで南部全体に広がり,7万人の学生がそれに参加したという。もちろん,インターネットもTwitterもない時代だが,情報は瞬く間に広まったらしい。最初の4人の行動を支持して運動に参加した学生たちは,いずれも個人的に彼らをよく知っていて彼らを信頼している学生たちだった。
2009年のモルドバ共和国での共産党政権に対する市民デモは1万人規模になり,それは「世界初のTwitter革命」と喧伝され,アメリカ国務省の元高官はGoogleやFacebookがスポンサーを務める講演会で「あなた方が私たち全員にとって最大の希望です」と最大の賛辞を述べた。しかし,モルドバ国内ではこの「Twitter賛美」に対し疑問の声が上がったそうだ。革命当時のモルドバ国内でTwitterのアカウントを持っている人がほとんどいなかったからだ。
そのモルドバの活動の数ヵ月後,イランのテヘランに運動は飛び火し,学生の抗議活動が起こり,これもアメリカのマスコミは「Twitter革命」と大々的に取り上げた。しかしこれについても,「西側ジャーナリストは単に,#iranelectionのハッシュタグがついた英語のTwittに目を通しただけで,イランで抗議活動を組織する人がTwitterを使うとしたら,ペルシャ語でTwittするだろう,ということに西側ジャーナリストは誰も気がつかなかったようだ」と相手にされていない。ジャーナリストを含め人間とは「情報を集めやすいところから,都合の良い情報だけを選択して集める」習性があるらしい。
COURRiERの記事は,「SNSは弱いつながりの力を引き出すことに威力を持つ。しかし,弱い絆からハイリスクの社会運動が生まれることはほとんどない」,「強力な組織力を持つ社会的権威に立ち向かうためには,組織の構造はヒエラルキー型でなければいけない」と結論づけている。SNSに多大な幻想を持つ人には不愉快な結論だろうが,私はこれは正しいと思っている。烏合の衆は烏合の衆以上にはなり得ないのだ。身の危険を顧みずに行動する強力なリーダーシップを持つ者とそれを強烈に支持する数人の同調者がいなければ,集団はいくら大きくなっても寄り合い所帯でしかない。それは,今回のエジプト革命でも証明されている。ここでは,身柄を拘束され,身の危険を犯してまで先頭に立って情報を流し続けて一人の男(Googleの社員らしい)が必要だったのだ。
ここでふと,物理学を思い出す。宇宙レベルから量子レベルまで,この世に存在する「力」は4つしかない。重力,電磁気力,強い相互作用,弱い相互作用の4つだ。これはもしかしたら,国家レベル,地方レベル,個人レベルの力に当て嵌めることができるような気がする。重力は国家レベル,電磁気力は地域レベル,そして個人レベルの力が強い相互作用と弱い相互作用というわけだ(・・・もちろん,これはあくまでもアナロジー,論理のお遊びであって,実際の関係では引力と斥力の両方があるけどね)。
個人間には弱い相互作用と強い相互作用がある。SNSが作り出す「人と人とのつながり」は前者だが,革命(=自分の命の危険を顧みずに行う変革活動)を起こすのは後者である。
革命というのは,「同志」に自分の命を預けなければできないことである。そして,仲間の身に危険が及んだ時,己の身を危険に晒しても守ってくれるのが同志だ。少なくとも私はそう思っている。少なくとも私は,ネットで情報を右から左に流しているだけの人に自分の命は預けたくない。古風な考えかもしれないが,革命を起こすとはそういう同志なしにはなしえない事だと思う(・・・Twitter信者は納得しないだろうが・・・)。
- その「COURRiER」3月号にあった小さな囲み記事。
インドで最も裕福な資産家10人の純資産のGDPに対する割合は12%
10人で12%って,どんだけすごい国内経済格差なんでしょうか。
- 【われわれの中にある「相撲的なるもの」】
詳しくは小田島さんの文章を読んでいただければわかりますが,「相撲はスポーツなんだから八百長は絶対あってはならない」という考えも,「相撲は神事・興業なんだから事前の打ち合わせがあるのは当たり前。八百長と考えるほうがおかしい」という考えも,要は「その時の日本社会の常識次第」なんですね。そしてその「常識」の根底にあるのは「なんとなく格好いい・なんとなく格好悪い」という感覚です。
もしも一般の人が「勝ち負けをカネで買うのは格好悪いことだ」と考えるようになったら,それは「将来力士を目指す人の常識」になり,そういう常識を持った人が力士になればやがて,力士同士で勝敗をカネで買おうとしても応じない相手が次第に増えていき,いつの間にか相撲の世界全体が変わります。
逆に,「カネで勝敗を買うのは相撲だから当たり前」と考える一般の人が多ければ,現在のシステムを変える必要はないし,理事長がいくら音頭をとっても相撲界の体質が変わりません。
「タバコを吸う姿は格好よくて女にモテる」と思う人が多ければ,タバコがいかに健康に悪いかを教育しても喫煙者は減りません。多少健康に悪くても格好よくてモテるほうがいいからです。しかし,「喫煙するのはなんとなくダサくて格好悪くて,なんとなく女性にモテないようだ」という考えが多数派になれば,中学生・高校生の喫煙率は減ります(実際,高校生の喫煙率は年々減っている)。中高生男子の大多数にとってそれは大問題だからです。
要するに,相撲にしても喫煙にしても,趨勢を決めるのは「世代交代による意識の変化」です。
- たまたま新刊書コーナーで見つけて読んでみて結構面白かったのが,「日本人の坐り方」 (集英社新書)です。そうか,江戸時代の武士達は主君を待つ間はヤンキー座りをしていたのか。茶会の席の正式な姿勢は胡坐であって,正坐ではなかったんだ。しかも,正坐が広まったのには江戸時代の反物の規格変更があったのか。
何事も研究を極めると面白いよ,という良い見本のような本です。
- 最近覚えた知識。下図は「衝突する銀河」をハッブル宇宙望遠鏡が撮影した写真です。このような銀河の衝突は珍しいことではなく,宇宙を眺めるとたくさん見つかります。また,太陽系が含まれる天の川銀河も50億年くらい経つとアンドロメダ銀河と衝突するんだそうです。
それを知ったとき,「そのころ私は生きていないけど,もしも銀河同士が衝突したら星と星同士が衝突したりして地獄の大惨事なんだろうな」って勝手に想像していたんですが,実はこれは大間違いなんだそうですね。銀河が衝突しても双方の銀河を構成する星同士が衝突するのは極めてまれなんだそうです。これでまた一つ,賢くなりました。
2011/02/18
- 4月28日(木)に第2回プラズマ医療・健康産業シンポジウムで講演することが決まりました。産業技術総合研究所の関係者と理工系の研究者が集うシンポジウムとのことです。こういう「ガチ理工系」の専門の人と会話するのはとても勉強になります。
- 講演用のスライドをマイナーバージョンアップしました。最新版は2月17日作成のもので,擦過創・挫創の治療のフローチャートを修正しました。ご覧になりたい方は本名,所属を明記してメールでご連絡下さい。
なお,以前ダウンロードしたことがある方は同じアドレスからダウンロードできますのでご利用下さい。
- 有名アメコミを元に作られた映画,《ウォッチメン》を紹介。多分,原作のコミックを知らないと全く理解できない作品です。ちなみに,私は原作を知らずに予備知識ゼロで観ましたが,映画の内容が全く理解できなかったです。
というわけで,この映画は原作コミックとペアでなければ意味がなく,映画単体として成立していない映画ではないかと思います。
- 「ティファールのパチもんの電気ケトル」を買っちゃいました。ティファールに比べるとお値段半分,容量も半分で,一人暮らしにはこれで十分という感じです。
- 【ソニーのAndroid 3.0タブレットは " S1 ",9.4型でQriocityやプレイステーション対応】
雨後の筍の如く増殖しているAndroidタブレットですが,これまた「さすがソニー」という感じのデザインで,そこらの「これってiPadのパチもん?」とは一線を画しているようです。
2011/02/17
- 『生命の跳躍――進化の10大発明』の書評を追加。
- ある獣医さんからのメール。
カミさんがライブハウスに行っていて,何かの拍子に指先から出血・・・。
店の女の子が,「いいのあるわよ」って,キズパワーパッドを。
するとカウンターのお客さんから,「それだったらワセリン塗って寝ときゃ治るよ」と言われたそうです。
なんか,普通の日常会話ですね。素人さんたちがこんな会話をするようになってきたようです。
- 【鳩山前首相:「抑止力は方便」発言 首相「認識違う」--衆院予算委】
ルーピー鳩山の面目躍如,ってか? まさに,「自分の家に爆弾を仕掛ける自爆テロ犯」としかいいようがありません。何より,なぜこのタイミングでこれを言ったのかもわからないし,なぜこのタイミングだったのかも全く分かりません。というか,これを言わなければいけない事情がルーピーちゃんにあったようにも思えません。
それにしてもこのルーピーちゃん,何度同じ間違いをすれば気が済むんでしょうか? まぁ,そこがルーピーちゃんのルーピーちゃんたる所以ですけどね。
- 【メール復元できない携帯は?】
そうか,日本特有のガラパゴス携帯はデータを復旧しにくいのか。確かに,ファイル形式が非公開で機種ごとに異なっているのであれば,消去データの復活は難しそうです。
これはちょうど,ルポや書院などのワープロが一世を風靡していた時代と同じ構図ですね。当時,ルポで作った文章は書院や文豪では読めなかったし,文豪のフロッピーディスクをパソコンで読もうと思っても読めなかったと記憶しています。中には「2インチ・フロッピー(だったと思う)」という超特殊なフロッピーにデータを保存する機種まであり(私,使ってました),そのフロッピーを読み込めるワープロはそれ1機種だけ,なんてのもあり,「フロッピーでデータを共有」なんて意識はさらさらない時代でございました。まさに「データは目の前のフロッピーに入っているのに,そのデータが読み込めない」なんて日常茶飯事でした。
逆に,スマートフォンはパソコンに近い汎用ファイル形式を採用しているために消去データを復旧させるのも難しくないようです。
そういうわけで,あとで復元されると困るメールをやりとりするならスマホでなくガラケーの方が安全のようです。
- 【売れないDVD 洋画は4分の1に 地デジに画質負け】
「洋画DVD(販売用)に至っては5年前の4分の1」というのは目を覆わんばかりの惨状と言っていいでしょう。しかもレンタルも落ち込んでいるし,頼みのブルーレイディスクも思ったほど売れておらず,映像ソフトの2割にも達していないそうです。
「地デジになってDVDより高品質の映画がテレビで見られるから」と説明していますが,これは果たして正しいのでしょうか。私は単に「映画DVDを買うなんてお金の無駄」という「画像データの化けの皮」が剥がれたためじゃないかと思います。「画質がいいからその映画を所有したくなる」わけでなく,それを繰り返し鑑賞したくて購入・所有するからです。
数年前から,書店やコンビニで映画DVDが格安で売られていて,「おお,これは昔見て感動した映画だよ」と簡単に買えるようになったんですが,実際に買ってみると,一度見たらそれで十分だということに購入者が気がついてしまったのではないか,と思うのです。
私は年に100本ほどの映画DVDをレンタルで見ていて,それをDivXファイルで保存していますが(1TBのハードディスクは映画ファイル保存用となっています),実は,繰り返して観た映画はほとんどありません。2度,3度と繰り返してみたものもありますが,それはお気に入りのシーンを見るためで他のシーンは全部すっ飛ばしてみています。
ところが,これは映像に特有の現象で,音楽の場合には通して聴きます。映像のないCDは何度も繰り返し聴くのに,その演奏の様子が見られるDVDは繰り返し見ないんですよ。オペラと違って,器楽曲の鑑賞に映像は要らないようなのです。
そういえば,良い小説は何度も繰り返して読んでも飽きないのに,その小説が映画化されると1回見ただけで満足してしまうというのは,なぜなんでしょうかね。
2011/02/16
- 「ミニエッセイ」をちょっとだけ更新。
- 下腿潰瘍の患者さんが受診されました。前日,某皮膚科医院を受診したのですが,彼の話を聞いて,笑ってしまいました。
水ぶくれみたいなのができたんで皮膚科に行ったんですが,医者は,低温ヤケドかヤケドだ,って言うんですよ。でも私,湯たんぽは使っていないし電子カーペットの上にも寝ていないし,全然覚えがないんで,ヤケドではないと思うですが,と答えたんですが,医者は「これはヤケドに決まっている」の一点張り。そして,ヤケドだからと白い軟膏(ゲーベンでした)を塗っておしまい。
私の言うことを一言も聞かないし,私の言うことを信用しないんだよ。まるで嘘つき扱いなんだよね。こんな医者に金を払うのが情けなくなって,こっちの病院に来てみたんだ。
なるほどなぁ,これじゃ客(=患者)は怒るよな。医者なんて所詮は客商売に過ぎないんだから,客を嘘つき呼ばわりしちゃダメだと思うぞ。
この患者さんの潰瘍,どう見てもヤケドには見えないんですが,それでも「これはヤケドに決まっている」と言いはる皮膚科のお医者様,いい根性をしているなぁ。見方を変えれば「信念を持って治療にあたっている」とも言えるけどね。
- 「気道熱傷」という言葉がある。もちろん,医学の専門用語だ。昔からこの言葉に違和感を感じてきた。だって,気道はヤケドしていないんだもの。
気道熱傷とは通常,「火事の煙を吸い込む」=「気道熱傷」と診断される(少なくとも私はそう習ってきた)。だが,これまでそういう「気道熱傷」の患者さんを多数見てきたが,ほとんどは「顔にちょっと水ぶくれがあり,鼻毛の一部にススが付いている」程度の患者なのである。こういう状態の患者の「気道」はヤケドしているのだろうか?
もしも本当に,気道(=上気道,中気道,下気道)に熱が及んでいるとしたら,顔も鼻も丸焼けになっているはずであり,「顔は水ぶくれ程度だが,中咽頭に熱が加わってヤケド」ということは,物理的に絶対にあり得ないはずなのだ。つまり,こういう顔面熱傷患者では,気道への熱による損傷は起きていないと考えるのが妥当だ。
では「気道熱傷」とは一体何なのか。それは物体の燃焼によって発生する化学物質や有害ガス,ススによる気管支炎,肺炎である。つまり,熱による損傷ではなく,化学物質などにより起きた炎症であり,熱傷(=外科的外傷)ではなく気管支や肺の化学物質による炎症(=内科疾患)なのである。
そういうわけで私は,陥入爪(爪が湾曲しているから炎症が起こるのでなく,深爪するから炎症が起きている)と同様,気道熱傷という病名は医学界から追放すべきだと思う。ともすれば,病名は治療法や治療法の選択に強く影響を与え,場合によっては治療法の選択を誤る(例:陥入爪という病名だから,爪の湾曲を治療しなければいけないと考える)原因となるからだ。
- 【NEC「LifeTouch NOTE NA75W/1A」 ~モバイルギアの再来!?キーボード搭載Android端末】
往年の名器,モバギがAndroid PCとして帰ってきました。タッチタイピングが十分にできるキーボードを備え,軽く,ACアダプタを持ち歩かなくても1日使え,文章作成に十分な広さの画面を持っている,という,一日中文章を書いている人間にとってはまさに「これこれ! こうういうのを待っていたんだよ」という機種です。しかも,Android末端ですから高速ネット接続ができ,ネットでデータを検索しながら文章を書いていくことができ,この点では古き良きモバギを凌駕しています。
ただ,同様の機種であった NTT docomo の sigmarion シリーズやキングジムのポメラの愛好家からすると,700gという重量は重いし(何しろ,11インチワイド液晶の Vaio X は重さ760gである),16ミリのキーピッチを確保するために搭載できるキーの数が81個と少なくなり,標準配列でなくなったというのは残念です(私はファイル名にアンダーバーをよく使うので,このキーが変なところにあると困っちゃう。このLifeTouchのアンダーバーのキーはまさに「変な位置」にある)。また,液晶は7インチなのに,筐体の横幅は10インチワイド液晶ノートパソコンの横幅とあまり変わりません(液晶の両脇がかなり空いているため)。
個人的には,キーピッチを14ミリにしてキーの数を増やすか(sigmarionを使っていた経験からいえば14ミリでもタッチタイピング可能),筐体の横幅をもう少し狭くして欲しかったです。あるいはsigmarionの14ミリキーボードはそのままにして液晶を7インチにする(これはサイズ的に可能)というのもありです。あるいは,IBM時代のThinkpadのバタフライ・キーボード(あれは本当に素晴らしかった)と7インチ液晶とAndroid OSを組み合わせるというのも面白いですよね。これなら液晶は7インチのままで16ミリキーピッチのフルキーボードが搭載できます。
2011/02/15
- 昨日から今日まで,岡山大学の江原先生が見学に見えられています。いろいろな症例をお見せできてよかったです。
ちなみに,「岡山生まれ,岡山育ち」ということでしたので,このサイトを教えたところ,ウケまくりでした。
- アメリカの小都市の小さな宝石店で起きた強盗事件から,現代アメリカの闇を抉り出す重厚なサスペンス映画,《その土曜日,7時58分》を紹介。細部にまで目が行き届いた見事な作品です。
- 昨日,モモヒキ(股引)を履くべきかと書いたところ,数人の方から「私は50歳を過ぎてモモヒキ・デビューしました。暖かくていいです。年寄りなんですから寒さを感じたら無理しないほうがいいです」というメールをいただきました。また,「ユニクロの〇〇がいいです」と商品名も教えていただきました。
茨城は昨日夕方から雪が降り続いていて,雪国のような寒さです。私もそろそろモモヒキ・デビューかな,とちょっと弱気になっている今日この頃です。
- そういえば,大昔に経験した例。これがちょっと面白いです。患者さんはノンプロの野球の選手で手のひらの慢性的な痛みで受診され,レントゲン検査で有鈎骨骨折,つまり有鈎突起の骨折と診断されました。骨片が遊離していて機能していないだろうということで,骨片切除し,それによって痛みは消失しました。
その数年後,この患者さんがたまたま別の用件で受診され,一緒に手のレントゲン写真を撮ってみたのですが,なんと完全な有鈎突起が写っていたのです。つまり,有鈎骨の再生ですね。
有鈎骨の突起は手根管という強靭な靭帯の付着部です。骨折して遊離した骨片は除去しましたが,靭帯の付着部はその近辺に残っていたと思われます。そして,力が加わるたびにそれに対抗するように残存した有鈎骨が次第に肥大し,最終的にそれが元々の「有鈎骨の突起」として復活したんでしょう。靭帯が要求する強度に最も適した形が「突起」の形状だったと思われます。
手のひらの小さな骨の小さな突起の話ですが,生物の体って臨機応変なんだなぁ,どんな小さな構造物にも合理的な意味があるんだなぁ,と感動したことを覚えています。
- 【進化論揺らぐ? カエルの下の歯が復活】
非常に興味深い記事ですが,あたかも「進化論は間違いである証拠発見!」のようなタイトルはちょっと大袈裟。要するに,「もともとカエルの先祖は下顎に歯があったが,その後歯を失った。しかし南アメリカで下顎の歯を復活させたアマガエルが1種類見つかった。これは,“進化の過程で失った形質が復活することがない”というドロの法則に反する」という内容です。
私見では,「ドロの法則」は確かにこれまで知られている生物の世界では「法則」のように見えるが,実は経験則,つまり「ドロの仮説」に過ぎなかった,というだけのことだと思います。実際,記事の中でも「一旦失われたものが復活」した例は紹介されています。
また,カエルはかつて下顎に歯を形成する遺伝子を持っていたわけで,その遺伝子を失ったわけではないし,生活環境により「下顎の歯」が必要になればその歯を復活させるか,復活できなければ周囲の組織を寄せ集めて歯らしき組織を作ります。生きていくことがカエルにとって一番大事であって,「ドロの法則」なんて知ったこっちゃないからです。「ドロの法則を守るために歯は諦めよう」なんて考えていたら絶滅しちゃいます。
2011/02/14
- 「下腿複雑骨折術後に金属が露出したのに,保存的に完治した症例」を提示。2年間にわたり,瘻孔からは膿が出ましたが,局所の炎症症状はなく,毎日ナイロン糸でドレナージをしていたら自然に治っちゃいました。抗生剤も投与しなかったし,普通にお風呂にはいっていましたが,それでも感染しないんですね。
- 「傷口から膿が出て変な臭いがします。これって化膿ですか?」という質問に回答しました。
- 先週,「79歳,Ⅲ度熱傷,30%」の近況を出したところ,ある先生から次のようなメールをいただきました。
当院に熱湯によるヤケドで,皮膚移植された若い女性がリハビリで通ってきていますが,瘢痕拘縮あり,関節拘縮あり,かゆみありで大変なようです。
まさにこのメールのとおりで,皮膚移植をするとその後に色々なトラブルが起こります。しかし,かゆみも瘢痕拘縮も,実は「消毒して軟膏ガーゼ,治らなければ植皮」という治療方針が起こした「医原性合併症」です。皮膚移植をしない熱傷治療に切り替えれば,そのようなトラブルはほとんどなくなります。
- 『生命の跳躍――進化の10大発明』をついに読破。本当に面白かったです。筋肉運動の驚きの起源,脳と意識と量子理論(量子のコヒーレント)の関係,後肢で立ち上がった獣弓類(恐竜)がペルム紀大絶滅後に繁栄できた理由と当時の地球環境など,どのページを開いても思わず唸ってしまう広大無辺な情報が詰まっていて,しかもそれらの情報が鋭く精緻な考察の元に縦横無尽につながっていきます。その様は「知の殿堂」呼ぶにふさわしい威容を誇っています。
ちなみに,本書の内容を覚えるために要点を書き写していったら,全角文字で23,000字を超してしまいました(・・・原稿用紙60枚の「要約」ってあり?)。現在,その要約を読み直し,レビューを書こうと思っているところです。そのうち,公開しますね。
- 【円周率5兆けた計算,ギネスも認めた 長野の会社員】
円周率限定とはいえ,「世界最大のスーパーコンピュータを凌駕する自作コンピュータ」というのが最高に格好いいです。この方のホームページは多分ここ。円周率の計算方法と数字が並んでいる格好いいページです。
ちなみに,使用したパソコンは自作でスペックは次のとおり。メモリ 96GBとHDD 39TBというのがちょっと普通じゃありませんが,それ以外は普通という感じです。組み上げるのに要した費用はトータルで150万円ですから,世界最高性能のスパコン(1億5000万円くらい?)の1/100と超格安です。また,この計算をするために電気代が月に2万円かかったそうですが,スパコンを動かすのに電気料金に比べれば微々たるものでしょう。
- プロセッサ:2 x Intel Xeon X5680 @ 3.33 GHz
- メモリ:96 GB DDR3 @ 1066 MHz - (12 x 8 GB - 6 channels) - Samsung (M393B1K70BH1)
- マザーボード:Asus Z8PE-D12
- ハードディスク:
- 1 TB SATA II (Boot drive) - Hitachi (HDS721010CLA332)
- 3 x 2 TB SATA II (Store Pi Output) - Seagate (ST32000542AS)
- 16 x 2 TB SATA II (Computation) - Seagate (ST32000641AS)
- Raidコントローラ:2 x LSI MegaRaid SAS 9260-8i
- OS:Windows Server 2008 R2 Enterprise x64
- 【サムスン Galaxy Tab 10.1正式発表:Tegra 2・Android 3.0・重さ599g】
iPadと同サイズの液晶ながら,iPadより軽くて薄いところがナイス! どうせ持ち運んで使うんですから,少しでも薄く少しでも軽いほうがいいに決まっています。
- 【<鳥インフル>ハヤブサから簡易検査で陽性反応 長崎・諫早】
鳥に県境という概念はないし,渡り鳥には国境はありません。いわば究極のグローバル化,グローバル化の大先輩です。しかも,鳥の種類により鳥インフルエンザに感染しても症状がほとんど出ないものもいます。そういう鳥をターゲットに定めたウイルスを防げるのか,私にはよくわかりません。
- あと数ヶ月で54歳になりますが,最近,昔より寒さが応えるようになったなぁ,と感じることがあります。私は物心着いた頃から真冬の秋田でもスラックス(というか,ジーンズ)の下はパンツ一枚,つまり大腿も下腿も素肌に直接ジーンズ,という服装で暮らしてきました。小学生の頃は親に無理やりモモヒキをはかされていたような記憶がありますが(何しろ,45年前の冬の秋田の田舎ってのはハンパなく寒かったのだよ),それが心底嫌でした。別にモモヒキなんてはかなくても寒くないし,はいたらかえって動きにくいからです。そんなわけで今年の冬も,下半身は素肌にジーンズで歩いているわけですね。
昔はこれで別段不都合はなかったのですが,最近,「そういえば,腰から下がちょっと寒いかなぁ?」と感じるようになりました。まさに,物心ついてから初めての感覚です。
問題は,ジーンズと下着の間に身につけるものにどういう衣類があって,どこで買えばいいのか,全然知識がないことなんですね。第一,ジーンズはけっこうきっちり目のため,その下に何か余分に身につける余裕はなさそうなんですよ。ということは,ジーンズを買い換える? ううむ,それも面倒だな。第一,そうこうしているうちに寒さも峠を越しちゃうだろうし・・・。でも,来年はもっと寒さが身に染みるんだろうなぁ。
それにしても,北関東以北の50代半ばの男性の皆様って,スラックスの下には何か履いているもんですか?
2011/02/10
- 「79歳,30%,Ⅲ度熱傷のおじいちゃん」ファンの皆様,お待たせいたしました。2ヶ月ぶりに受診されました。受傷後545日目ですが殆どの部分で上皮化が得られ,潰瘍が残っているのは上腕,肘部,膝蓋部のみとなりました。もちろん,肘関節,膝関節,足関節に関節拘縮も瘢痕拘縮もなく,自宅では杖なしで歩いています。診察室でもベッドから支えなしに軽やかに立ち上がってくれました。すごいぞ,じいちゃん!
- 「アパルトヘイト下のヨハネスブルク上空に巨大なUFOが舞い降りたが,その中にいたのは飢餓寸前のエイリアンだった・・・」という奇想天外なSF映画,《第9地区》をレビュー。これは本当に面白くて感動的でした。
特に,出世しか頭になくて,差別意識の塊で,臭いものに蓋をするのが何より得意なヘタレ主人公が,エイリアン親子を助けるためにパワード・スーツに身を固め,降り注ぐ砲撃の前に仁王立ちになるシーンには涙,涙!
- 昨日(2月9日)の「笑っていいとも」で,森田豊先生(前にネプチューンの番組でご一緒させていただきました)が「すりむき傷は消毒してはいけない」と話していた・・・と教えていただきました。それにしても,昼にテレビを付けている日本人の半数が見ているであろう国民的バラエティ番組で取り上げてもらうとは! 森田先生,ありがとうございます。
- ある獣医さんから次のようなメールをいただきました。
「ペットとの快適な暮らし方」と題して市民向けに講演することになっていますが,その中で先生の『傷はぜったい消毒するな』を紹介させていただきます。昨年も講演したのですが,最近は大半の人はすでに知っているようです。一般の人がこれだけ知っているのに外傷や熱傷治療の専門家たちが実践しないというのはなんだかなーと思っています。
そういえば,あるクリニックの看護師さんも
最近,患者さんが自分でラップを張ってくる人が増えましたね。でも,うちの先生,未だに消毒しています。
と話していました。
というわけで,素人は既に動き出しているのに,プロ(=医者)だけがその動きに気づいていない,動きについて来れないで取り残されている,専門家を自認しているから動くに動けない,ということになっています。まさに,私が想定している「パラダイムシフト前夜」の様相を呈しているようです。
- 【地下水汚染に苦しむ中国】
これまで何度か,中国の経済成長のネックは水問題と今後急速に進行する高齢化問題だろうと予想してきましたが,どうやら,地下水汚染はさらに輪をかけて深刻なようです。中国各地では汚染地下水による健康被害がかなり起きているようですが,汚染された水系をもとに戻すのは地表水より地下水のほうがはるかに難しく,深層地下水の汚染は根本的解決法がないも同然です。
- 【チョコで "おちょこ" を作ったよ】
とんでもなく完成度の高い「チョコ製おちょこ」です。しかも,シリコン臭くてお酒が美味しくなかった,というオチまで付いています。
2011/02/09
- 【「外傷を湿潤治療している医師」を受診したのにガーゼを当てられました。おかしくないですか?】という質問への回答です。要するに,いまだ時代は過渡期だということです。過渡期にはさまざまなタイプの医者が混在します。そして,世代交代が終われば治療の混乱はなくなります。
- Audio Technicaのノイズキャンセリングイヤフォンを買っちゃいました。飛行機や新幹線の機内でNCオンにするとやはり全然違います。
- 「ミニエッセイ」をちょっとだけ更新。
- 『週刊とりあたまニュース 最強コンビ結成!編』(西原理恵子/佐藤優,新潮社)の面白さは無類です。「犯罪者と脱税者」という二人に事前の打ち合わせなしに一つの「お題」を出し,一人は文章を書き,一人は漫画を書く,という週刊新潮の企画です。そのお題は,例えばオバマ大統領だったり裁判員制度だったりエコポイントだったりと多彩ですが,佐藤さんが持ち前の情報収集能力を駆使して分かりやすく説明するのに対し,サイバラは「オイオイ,ここでそれを持ち出すかよ」というぶっ飛びネタをぶつけてきます。このあたりは,サイバラとコウタリの伝説的コラボ『恨ミシュラン』を彷彿とさせるものです。それにしても,「金正男」で新宿二丁目ネタをぶつけてくるサイバラはすごい。
- 【世界初の2画面タッチAndroid携帯 京セラEcho 発表,960 x 800 タブレットモードに変形】
そのうち,どこかがダブル画面のスマートフォンを出すんじゃないだろうかと思っていましたが,京セラが出しましたね。こういうギミック,見ているだけで楽しいです。
- 【ますます空港セキュリティーチェックが厳しくなってる本当の理由...驚くべき爆破テロの隠し手口アラカルト!】
テロリストの皆様の創意工夫をご堪能ください。いやはや,人間の想像力と技術力というのはすごいです。取り締まる側ももちろん,対策を日々進化させていくわけですが,どうしたって対策のほうが後手後手に回ります。こういう開発競争は常に「仕掛ける側」が有利ですから,どんなテロ対策を取ってもそれをすり抜けるテロの手段が開発されます。
もうこうなると発想を転換して,「航空機テロをしてもテロリスト側にメリットがない」とか,「航空機テロを考えるテロリストがいない社会にする」とか,そういう方向に行くしかないような気がします。「原因があって結果があるのなら,原因をまず除去するのが先決」と考えるならこれしかありません。もちろん,現時点では非現実的な解法ですが・・・。
2011/02/08
- 講演用のスライドをマイナーバージョンアップしました。最新版は2月7日作成のものです。ご覧になりたい方は本名,所属を明記してメールでご連絡下さい。
なお,以前ダウンロードしたことがある方は同じアドレスからダウンロードできますのでご利用下さい。
- 「日本医事新報」2月5日号に『創傷治療の諸外国の現状』が掲載されました。好き勝手なことを書き散らしましたので,ご笑覧下さい。
- 映画,《ヒトラーの贋札》を紹介。第二次大戦中のドイツが敵国イギリスとアメリカの最高精度の偽札を作ってそれぞれの国で流通させて経済を混乱させる,という計画を立て,通貨偽造役に強制収容所のユダヤ人に抜擢した・・・という歴史秘話を元にしたサスペンス映画です。非常に面白いのですが,前半と後半で物語の視点が変わっていて,ちょっと変な感じです。
- たまたま怪我で受診した子供のお母さんが「花粉症がひどい」と話されたので,「白色ワセリンを鼻孔の入り口と目の周りに塗るだけで,花粉症が軽くなるみたいですよ。ダメもとでやってみたら」と教えてあげたら著効したそうです。
鼻孔から吸い込まれた花粉がワセリンにくっついてしまってそこでブロックされるためのようです。
- 【Facebookの25万人を無断使用した「出会い系サイト」】
よく,「クラウドのサーバに情報を預けるのは安全だ。それはタンス預金より銀行預金のほうが安全なのと同じだ」という説明がなされますが,これは間違っているような気がします。預けた情報と預けたお金は根本的に違っているからです。
私のお金とあなたのお金を一つの袋に入れるとどれがあなたのお金か分からなくなりますが,私の情報とあなたの情報を一つのサーバに入れても私の情報は私の情報,あなたの情報はあなたの情報であって区別できます。だから,銀行の金庫から金が盗まれても私のお金が盗まれたことになりませんが,サーバから盗まれた情報は間違い無く私の情報なのです。銀行が強盗被害にあっても個人に損害は生じませんが,情報が盗まれた場合,損害は確実に個人が被ります。そして,「絶対に泥棒に入られない建物はない」のと同じで,盗もうという意思があれば盗めない情報はありません。
2011/02/07
- 低温熱傷の治療フローチャートに続き,熱傷治療のフローチャートも作ってみました。
- 4月18日(月)に東邦大学薬学部で特別講義をすることになりました。
- 「熱傷を湿潤治療している医師」に,大阪狭山市の森田クリニック/森田美佳先生にもご参加いただきました。ありがとうございます。
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,福岡市南区の堺整形外科医院 福岡スポーツクリニック/堺研二先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。ちなみに,堺先生は先週,わざわざ福岡から見学に来られていました。
- 以前からちょっと宣伝していた『熱傷“裏”マニュアル(仮題)』ですが,販売開始は3月10日目ころになりそうです。「大学病院,熱傷センターで皮膚移植が必要と言われた症例の分析」なんていう章があったりします。形成外科の教授や偉い先生方,怒るだろうなぁ。大学形成外科では禁書,焚書扱いだろうなぁ。
でも,世の中は形成外科の医者より形成外科でない医者のほうが圧倒的多数なんですね。この本を読んで,「ヤケドって大変だと思っていたら,そうでもないんみたいだな」と,それまで熱傷なんて治療したことがない医者の50~100人に1人が熱傷治療を始めたら,あっという間に形成外科の医者の数を上回っちゃいますよね。
- 週末の島根への往復の飛行機の機内で「ニューズウィーク日本語版 2月9日号」と「WEDGE 2月号」を読んでいました。記事も読み応えがありましたが,記事の中に書かれていた何気ないデータが面白いかったです。それをピックアップしておきます。
- ロシアは先進国で唯一,平均寿命が過去半世紀の間に低下し続けている国家だ。戦争状態にないのに大幅な人口減少が起きている唯一の国でもある。現在のロシアの15歳以下の少年の寿命は,ソマリアの15歳の少年の寿命より短い。死因は心血管疾患やエイズの他,暴力,自己,自殺,毒物(主にアルコール)が目立つ。
- 世界の首相の月給(単位はドル)。
- リー・シェンロン(シンガポール):2,180,000
- オバマ(アメリカ):400,000
- サルコジ(フランス):320,000
- メルケル(ドイツ):300,000
- キャメロン(イギリス):230,000
- プーチン(ロシア):120,000
- ユドヨノ(インドネシア):120,000
- 胡錦濤(中国):10,000
- カルザイ(アフガニスタン):6,300
- ネタニヤフ(イスラエル):4,200
- シン(インド):4,100
ちなみに,シンガポールでは汚職防止のために公務員給与が高く設定されているためのようです。それにしても,激務と思われるイスラエルの首相の月給が34万円というのはちょっと気の毒かも。
- 中国のステルス戦闘機「殲20」のステルス技術は米軍のひと世代前のレベル。試験飛行で15分飛べたこととステルス機能には関連性なし,との声が。
- 「日本では阿部,福田,麻生,鳩山(・・・そして恐らく菅)と1年毎に国のトップが交代していて,これは政情不安のアフリカの国でもありえない事態。普通ならクーデターが起きるか暴動が起きて,行政が麻痺するはず。それなのに日本の行政サービスは淡々と,以前と変わらずに仕事を続け,国は安定している。どうすればこんなに強固なシステムが作れるのか」と,在日各国大使館の業務担当者から驚嘆の声が!
- 私は高校卒業まで秋田で暮らし,医者になってからも数年間,横手市(秋田有数の豪雪地帯)で暮らしたことがあるので知っているが,雪の凄さは半端ないのである。量もすごいが重さがすごいのだ。日本海側の雪は湿って重いからだ。このような雪はスコップで持ち上げようとすると「腰にくる」。そういう重い雪が地表一面を覆っているのである。
昨年末からそういう雪が毎日毎日,降り続いているのだ(先週始めから雪は降り止んだが)。自然災害という意味では,いわば台風が毎日吹き荒れているようなものだ。私は18歳の時に秋田を離れて仙台(=寒いけど雪は降らない・積もらない)で暮らすようになったが,もう二度と秋田には帰りたくないな,あの雪はゴメンだなと思ったものだ。
さて,雪が屋根に積もれば降ろさないと家が潰れるし,道路に積もったらその雪をどこかにやらないと交通がストップする。だから除雪する必要があるが,雪は次から次へと降ってくるから,雪が降る限り除雪に終わりはない。これが「一回きりの災害」と違うところだ。そういうわけで,日本海側の東北各県では除雪のための予算が既に尽きてしまったそうだ。
こういう現状を別の面からみるとどうなるか。多分,「広い面積に人々が暮らす」,「市域の拡大こそが市の目的」という現在のシステムが雪国では破綻寸前だ,ということではないかと思う。
戦後の日本の都市が一貫して目指したのは「都市の拡大」だった。都市が拡大すれば人口が増え,人口が増えれば税収が増えるからだ。だから,大都市も地方都市も小都市も地域の拡大を目指した。しかしこれは,人口増大を前提にしたシステムだったのだ。
そして日本は「人口が増えない」時代に突入したわけだが,それでも都市は「拡大こそ命」の考えを改められなかった。宅地を広げたほうが税制上有利になるシステムが健在だったからだ。その結果どうなったか。どの都市も「広い面積に人がパラパラ暮らす」ところばかりになってしまった。実際,地方各都市はどれも「人口集中地域は拡大したが,人口密度はどの地域でも減少」しているのだ。
その結果,市の仕事であるインフラ整備(市道の整備,除雪,ガスや水道の維持・整備など)が維持できなくなった。広い面積に市域が拡大してしまったためだ。その象徴の一つが,「今年の除雪費が既に底をついてしまった!」という豪雪地帯各都市の悲鳴なのだと思う。
何しろ雪は,その地域にまんべんなく降るのだ。雪に埋もれるのは,その地域全体なのだ。人が密集する部分にもパラパラ住む部分にも例外なく雪は降るのだ。これが台風や洪水といった災害との違いである。つまり,今年の「除雪費がもうない!」という理由は「豪雪だったから」+「市域が広がったから」という混合なのだと思う。今年の豪雪がいつまで続くのか,来年も再来年も同じようになるのかはわからないが,人間の居住パターン(=市域の拡大こそが善,という地方自治体の論理)が変わらない限り,恐らく同じことが繰り返されるだろうと思う。そしてこの「都市インフラが整備できない」というのは豪雪地帯の都市だけでなく,やがて日本全体の地方都市で起こるはずだ。人口が減少するために税収が減り,広い市域全体の生活インフラを維持・整備することがやがて不可能になるからだ。
これに対する対策は一つしかない。「広い面積にパラパラと人が住む」ことを止めるしかない。つまり,市域の拡大を制限し,縮小する方向に舵を切らない限り,問題は解決しないと思う。
2011/02/04
- 講演用のスライドをバージョンアップしました。最新版は2月2日作成のものです。ご覧になりたい方は本名,所属を明記してメールでご連絡下さい。
なお,以前ダウンロードしたことがある方は同じアドレスからダウンロードできますのでご利用下さい。
- 世の中の「反湿潤治療」の形成外科の先生方,熱傷専門家の先生方に,患者さんが「自分のヤケドも同じ方法でなぜ治してくれないのか? なぜ治せないのか?」と質問すると,彼らは決まって「湿潤治療? 知っているけど,あれは軽いヤケドばかりだ。だから,あなたのような重傷のヤケドには効かない。あなたのヤケドは皮膚移植しないと治らない」と説明するのが通例のようだ(・・・ちなみに,こういう説明をした医者の個人名を把握しています)。
今回は,この「軽いヤケド」問題を取り上げることにしよう。
このサイトで提示している熱傷症例は確かに軽いものが多い。それは二つの理由が考えられる。
- そもそも熱傷患者の大半は小範囲熱傷であり,15%以上の熱傷は実際はそれほど多くない。
- 熱傷センターでもなく,大学病院でもなく,形成外科医が一人しかいない病院にそもそも広範囲熱傷は運ばれない。
大学病院や熱傷センターでだけ仕事をしていると,世の中の熱傷患者はすべて重傷熱傷,広範囲熱傷だけと錯覚してしまうが,市中病院の外来に出てみるとわかるが,熱傷患者のほとんどは熱傷面積2%以下であり,10%を越える熱傷は非常に少ないのだ。
つまり,市中病院の医者は軽傷熱傷・小範囲熱傷が治療できれば,熱傷患者の9割以上(・・・というか恐らく95%以上)を治療できたことになるのだ。患者の9割以上が治療できるなら,常識的に意味合いでは「完璧な治療」の範疇にはいる。
そして,小範囲の熱傷がきちんと治療できるようになれば,中範囲熱傷も広範囲熱傷もその延長線上に過ぎず,なにも特殊な知識も技術もいらない(それがなぜかは,近々出版予定の拙書『熱傷マニュアル(仮題)』で詳しく説明してある)。逆に言えば,小範囲の熱傷もろくに治療できない医者に,広範囲熱傷の治療ができるわけがないのである。要するに,熱傷治療の基本は「小範囲熱傷の局所治療がきちんとできる」ことであり,「広範囲重傷熱傷の全身管理ができる」ことではないのである。
なぜこんなことを書くかというと,「広範囲熱傷,重傷熱傷」と騒いでいる先生ほど,小範囲熱傷の治療がまるでできていないからである。これはこのサイトの「熱傷症例のすべて」を見るとよくわかるはずだ。大学病院や熱傷センターで「これはⅢ度熱傷で植皮しないと治らない」と言われた症例に限って,小範囲でⅡ度熱傷でない軽傷熱傷ばかりだからだ。こんな「小範囲・Ⅱ度熱傷」もろくに治せない・診断もできていない医者に,広範囲熱傷を治せるはずはないと考える方が自然ではないだろうか。
別にケンカを売るわけではないが,こういう「軽症熱傷の診断・治療はできないが,広範囲Ⅲ度熱傷の治療はできている」と主張する医者は要するに,「足し算(=小範囲の軽傷熱傷の治療)はできないが,微積分(=広範囲重傷熱傷の治療)はできる」と言っているのと同じではないかと思うのだ。常識的に考えれば,「足し算ができないのに微積はできる? オイオイ,それってお笑いネタか?」と思わないだろうか? やはり,微積に挑戦する前に,まず足し算・引き算を間違いなくできるように勉強したほうがいいんじゃないか,と私は思うのだ。
・・・というわけで,「足し算や引き算はできないが,微積分の計算ならできるんだ!」という形成外科・熱傷治療専門の先生方からの反論,心からお待ち申し上げております。
- 「ミニエッセイ」をちょっとだけ更新。
- すみません,またもやクズホラー映画を紹介しちゃいます。今度は《CE4 エイリアン・アブダクション "Night Skies"》です。箸にも棒にも使え棒にも爪楊枝にもならない映画でした。
- 来週月曜日に発売されるのが「3Dギアキューブ」(タカラトミーアーツ)です。どうやら,あのルービックキューブを彷彿とさせる複雑回転系立体パズルのようでして,難易度的には「難易度は非常に高いが,世界最高難易度と言われるルービックキューブに比べるとほんのちょっとだけ易しい」ものらしいです。動画で見るとその複雑な動きにクラクラしてきます。
2011/02/03
- 季節柄,低温熱傷が増えてきましたので,「低温熱傷:治療フローチャート」を作ってみました。
以前,プログラミングをするのが趣味の一つだったこともあり,こういうフローチャートを作るのは大好きです。ちなみに,私が一番最初に原稿料をもらったのはパソコン雑誌からの依頼記事でした。
- 「保健教材ニュース(小学校向け)」に『うるおい治療 傷は,かわかさないで治す』が掲載されました。学校の保健室に貼ってある壁新聞ですね。
全国の小中学生は保健室に行くたびにこの新聞を目にし,そのうちの何人かは医学を目指すはずです。そして「傷の消毒・感染予防には消毒」を最初から知らない医者が生まれます。パラダイムシフトにはこのような世代交代が必要です。
- 昨日は茨城県桜川市の関根先生,福岡市の堺整形外科医院の堺先生が見学に見えられました。
- 【八百長疑惑 事実なら厳重処分】
両国方面からぼやき声が聞こえてきました。一部聞き取りにくいところがありましたので,正確な内容ではないことをお断りしておきます。
相撲と言ったって所詮は興行,商売です。ガチンコでぶつかったら怪我しちゃって,相撲どころでなくなること,皆さん,ご存知でしょう? 相撲を15日間見たいんだったら,八百長だ,慣れ合いだなんて言わないでくださいよ。相撲は私たちにとっては職業,つまり飯の種です。怪我をしたら私らは飯が食えなくなるんですよ。常識で判断してくださいよ。
大体,柔道にしてもボクシングにしても体重制でしょう? 格闘技では体重が大きくものを言うからです。重いのと軽いのがぶつかったら,ほとんど重い方が勝つのが格闘技です。だから,よりガチンコ度の高いボクシングでは細かく階級を分けているんです。それなのに,相撲は無差別級で体重が倍以上違う力士がぶつかり合うことだってあるのですよ。それで,体重が軽い力士も重い力士も同じような勝ち星を挙げているんですから,「何かある」のは当たり前,暗黙の了解です。それを口に出さないのが日本の伝統ってやつでしょう? それを八百長だなんていうのは野暮ですよ。
あーあ,それにしても,なんで明治時代に「相撲は国技だ。格式だ」なんて言っちゃたんだろうね。国技なんて柔道に押し付けて,相撲は興行です,伝統芸能です,って言っちゃえばよかったんだよ。それなのに,自分から「相撲は国技」なんて言ったもんだから,そのあとの俺達が苦労するんだよ。いい迷惑だよ。
相撲協会も,もう法人なんてやめちゃって株式会社スモーとかにしちゃったほうがいいよ。そうすれば誰からも文句を言われないよね。
2011/02/02
- 【エジプト革命はアメリカのせい? おびえるイスラエル,笑いが止まらぬイラン】
現在進行形のエジプト革命についての分析記事です。要約すると次のようになるのかな?
- エジプトは人口8200万人で,アラブ世界の人口の1/3を占める。毎年150万人の人口増加があり,人口の4割は18歳未満と若い国だが,若年失業率が高い。
- エジプト大統領制は任期制限のない終身大統領であり,国会議員として立候補できるのは事実上与党だけ。国会の野党議員は5%未満。大統領の権限は極めて強く,行政,立法,司法・国軍のすべてを自由にできる。地方自治体の長の任命・罷免もできる。いわば「何でもやり放題」。
- ムバラク政権は30年続いているが,これまで副大統領を置いたことはなく,後継者もいない。これまで後継者と目されていた息子も大統領夫人も国外逃亡した。従って,「ムバラク失脚後のエジプト」の構図を誰も描けないでいる。
- これはイスラエルにとっては危機的状況になるかも。エジプトは従来,アラブ世界における最大の親米(=親イスラエル)・反イラン主義をとっている国家だった。ムバラク失脚は時間の問題だが,失脚後に親米・親イスラエルでない人物がエジプトを率いる可能性がある。レバノンの親米政権も崩壊したばかりであり,ヨルダンに政変が起こればイスラエルを囲む国全てが反イスラエル国家になる可能性が強い。
- 今後,同様の問題(独裁,貧困,アルジャジーラ拠点・・・)に直面している国々(サウジアラビア,モロッコ,ヨルダン,イエメンなど)に革命が波及する可能性がある。
- 親米国家が次々に崩壊する事態はイランにとっては「この世の春」だが,そのイランですらこの「革命」から無縁であることは難しいかもしれない。
- 産油国での政情不安は原油価格の上昇をもたらし,おそらく世界規模での影響を及ぼすだろう。
現時点(2月1日夜9時)では,エジプト国軍司令官はマスコミに対し,「市民に対し発砲することはしない」と明言しているようだ。これが正しいとすれば,ムバラク大統領は国軍への統帥権を失ったのかもしれない。これまでの世界の歴史が教えるところでは,「独裁政権の崩壊は,軍の離反から始まる」である。
この状況に,最も頭を抱えているのはイスラエルでありアメリカだろう。今回の革命がたとえ親米政権の崩壊であったとしてもそれは民主主義革命であり,「民主主義を世界に広める(=押し付ける)ことがアメリカの大義」である以上,それを力で押さえつけるわけにはいかないだろう。いわば,アメリカ最大の輸出品となった「ネット技術,民主主義」がはからずもアメリカの頭痛の種になってしまったようだ。
先日(1月31日),このコーナーで「先進企業の2代目への継承問題」についてちょっと書いたが,ムバラク政権はまさに「悪い見本」になりそうだ。カリスマ社長も独裁大統領も,自分が死んだ後の会社・国家なんて考えたくもないし,想像すらしていないのだろう。
- 【「ネット遮断」に対抗する方法】
そのエジプトで起きているのが「政府によるネット遮断」です。こういう場合でも,あの昔懐かしいRS-232C接続のモデムは使えるそうです。
- 【小沢元代表起訴 首相,招致に前向き 衆院予算委】
・・・というような世界規模での変動が起ころうとしている中で,日本の政治はあまりにも牧歌的です。コップの中の嵐,という言葉はこういう時に使えばいいのかな?
- 【従業員「手で確認,普段もせず」コースター事故】
施設側の安全管理マニュアルのチェック項目に「手で確認」と書かれていたはずですが,それが何を目的にしたチェック項目なのか,どういう場合を想定したチェック項目なのかが次第に忘れられ,やがてチェックは儀式化し,何のためのチェックだったのかも忘れられます。なぜかというと,チェックを怠っても事故は起こらないからです。そして,儀式化して形だけのチェックが続いたある日,大事故が起こります。
このような「安全管理の儀式化」はどの分野でも起こりうるものでしょう。
- 人生設計という言葉がある。医者だったら例えば,40歳までに開業しようとか,大学に残って50歳頃までに教授になれるように頑張ろうとか,大学医局から派遣された病院で定年まで勤めようとか,そういう「予測できる自分の未来の姿」である。医者だったら40歳くらいになったら,自分の将来の姿はかなりの精度で見渡せるのではないだろうか。
しかし私の場合,幸か不幸か湿潤治療を勝手に始めてしまったばかりに,50代半ばになろうとしているのに,人生設計ができなくなってしまった。つまり,10年後の自分がどこでどういう仕事をしているのか,まるっきり予測がつかなくなってしまったのだ。自分が創り出した湿潤治療なのに,いつの間にか「治療に人間が振り回されている/治療が人生のご主人様」ということになってしまった。
湿潤治療に没頭してしまった結果,「外傷患者だけ治療する医者/形成外科医なのに形成外科の手術をしない医者」になってしまったが,これで医者として食っていけるのかがまず不安だった。駄目ならどうしようと,毎日不安だった(何しろそういう医者の前例がないから,予測が全く立たなかった)。それでもなんとか,「手術をしない形成外科医」でも食っていけるようになったが,いつの間にか53歳になってしまい,今更開業する年齢ではなくなった。
となると,勤務医という選択肢しか残っていないが,その場合は「一人外来」をするしかないから(医者が二人必要なくらいの仕事量はないから),後進を育てて仕事を任せて楽をする,ということは無理そうだ。そうなると,仕事量は定年まで減らないことになってしまう。臨床現場で患者を治療するのは大好きだし,外来を毎日するのは苦ではないが,これがあと10年続くとなるとちょっと考えてしまう。
しかも,さまざまな外傷・熱傷だけでなく,一部(?)の皮膚疾患まで治療のターゲットとなってしまい,今後さらに治療の適用範囲が広がる可能性もでてきてしまった。つまり,治療対象が広がるにつれて未知のトラブルにも見舞われるだろうから,それらへの対処法を見つける役目も私だろう。つまり,医者を辞めるまで臨床現場を離れるわけにはいかないようだ。繰り返すが,湿潤治療が私のご主人様なのである。
それにしても,50代半ばになろうとしている医者なのに,人生の先行きがこんなに見えない事態になろうとは想像していなかったな。
2011/02/01
- 昨日から今日まで,国立がん研究センター東病院の北田先生が見学に見えられています。
なぜか今月から来月にかけて,外来は見学ラッシュです。
- 「ミニエッセイ」をちょっとだけ更新。
- 巨大彗星が地球をかすめて行ったら巨大エネルギーをカリブ海に放出して巨大ハリケーンが生まれ,そのハリケーンがアメリカを襲うとアメリカ壊滅じゃん,それじゃ困るよね,ということで,アメリカ軍が秘密裏に開発した「ハリケーン発生装置」を使って,巨大ハリケーンを消滅させる・・・という,「何だ,そりゃ?」系映画,《テンペスト 旋風の破壊神 "Maximum Velocity"》を紹介。
もうちょっとセットとCGにお金をかけて,もうちょっと脚本作りに時間をかけ,もうちょっと科学を勉強し,もうちょっとランクが上の俳優さんを使っていれば,もうちょっとマシな映画になったかもしれません。
- 私の弟が高校生の頃(・・・と言っても,もう20年以上前である)に作った小話の一つが「メンデルとグレーテル」である。もう,作った本人も忘れているかもしれないが,忘却するにはちょっと惜しいネタなので,さらにネタを追加してまとめてみた。・・・とは言っても,後半になるほど「無理しているなぁ」感が漂ってしまった。こりゃ,笑えないよな。
- 【メンデルとグレーテル】
メンデルとグレーテルは仲のよい兄妹でしたが,家が貧しかったため森の中に捨てられます。でも,帰ってくる時の道しるべになるようにと兄のメンデルはポケットにあったエンドウ豆を道ばたに落としました。兄妹は魔女にだまされてお菓子の家に連れて行かれたりしましたが,何とか魔女を倒し,家に帰ることができました。
その時,兄のメンデルが巻いたエンドウの種が発芽し,実を付けていました。そしてメンデルは「黄色の丸:緑の丸:黄色のしわ:緑のしわ」=「9:3:3:1」であることを発見しました。
- 【ヘンデルとグレーテル】
ヘンデルとグレーテルは仲のよい兄妹でしたが,家が貧しかったため森の中に捨てられます。でも,帰ってくる時の道しるべになるようにと兄のヘンデルはポケットにあったカエルの卵を道ばたの水たまりに落としました。兄妹は魔女にだまされてお菓子の家に連れて行かれたりしましたが,何とか魔女を倒し,家に帰ることができました。
その時,あのカエルの卵はすでに孵っていて道ばたの沼でオタマジャクシになっていました。そのオタマジャクシを五線譜に書き留めると美しい曲になり,ヘンデルは「水上の音楽」と名付けてジョージ4世に献呈しました。
- 【ハムテルとグレーテル】
ハムテルとグレーテルは仲のよい兄妹でしたが,家が貧しかったため森の中に捨てられます。でも,帰ってくる時の道しるべになるようにと兄のハムテルはポケットにあった「ジュウイ」の種を道ばたに落としました。兄妹は魔女にだまされてお菓子の家に連れて行かれたりしましたが,何とか魔女を倒し,家に帰ることができました。
家に帰ったハムテルは種から生まれた多くの「獣医の卵」たちに囲まれて楽しい学生生活を送りました。
- 【ヘーゲルとグレーテル】
ヘーゲルとグレーテルは仲のよい兄妹でしたが,家が貧しかったため森の中に捨てられます。でも,帰ってくる時の道しるべになるようにと兄のヘーゲルはポケットにあった「ドイツ・カンネンテツガク」の種を道ばたに落としました。兄妹は魔女にだまされてお菓子の家に連れて行かれたりしましたが,何とか魔女を倒し,家に帰ることができました。
そしてヘーゲルは道ばたにローゼンクランツ,ヘニング,マルクス,エンゲルスという名前の弟子たちが生まれたことを知り,ヘーゲル学派と呼ばれました。
- 【ゲーデルとグレーテル】
ゲーデルとグレーテルは仲のよい兄妹でしたが,家が貧しかったため森の中に捨てられます。でも,帰ってくる時の道しるべになるようにと兄のゲーデルはポケットにあった「メタ・スウガク」の種を道ばたに落としました。兄妹は魔女に騙されてお菓子の家に連れて行かれたりしましたが,何とか魔女を倒し,家に帰ることができました。
そしてゲーデルの蒔いた「メタ・スウガク」の種からは大きな木が育っていて,不完全性定理という花が咲いていました。
- 【メーテルとグレーテル】
メーテルとグレーテルが銀河鉄道に乗る話を作ろうとしましたが,肝心の『銀河鉄道999』を全然知らないので,ここでおしまい!
- 【長友に人生を見る】
以前から,さまざまな予想を的中させてきたBOZZですが,「長友が10人いればワールドカップは間違いなく優勝する」と以前書いた文章を証明するような結果になりました。
「私は長友でいたい。誰も見ていない時こそ踏ん張る。苦しい時に,一歩でも前へ」という言葉がいい。
- 【乾き物入り焼きオニギリを作ろう】
ワインバーでツマミとして出された「ブルーチーズ入り焼きおにぎり」が絶品の美味しさだったことから,さまざまな酒の肴の入った焼きおにぎり作りに挑戦しています。さきイカ,チーカマ,カルパス,焼きホタテ貝ひも,スルメ,チーズ鱈,柿ピーの面々ですが,さて結果はいかに。
それにしても,ブルーチーズ入り焼きおにぎり,ちょっと美味しそうです。