新しい創傷治療:ジョーズ・イン・ツナミ

《ジョーズ・イン・ツナミ Malibu Shark Attack★★(2009年,イギリス)


 タイトルのまんま,津波がやってきて鮫が襲ってくる映画で,どうやらテレビ向けに作られた映画のようです・・・というあたりでレビューを書くのをやめようかというくらいショーモナイ映画です。これより出来の悪い鮫映画(例:クズゴミカスアホはいくらでもありますから最底辺レベルというわけではありませんが,かといって見所があるわけではないし,襲ってくる鮫がミツクリザメ(別名:ゴブリンシャーク)だというのが他の鮫パニック映画との唯一の差別点ですね。つまり,この映画からミツクリザメを取ったら何も残りません。

 それと,鮫映画と言えば海,海と言えばビキニのピチピチ・ナイスバディ美女というのが映画作りの常識ですが,この映画のヒロインは見ているのも気の毒なほどのおばちゃんで「ウエストなんて10年くらい前に消失しちゃったわよ」という疲れきった感じが画面からにじみ出ています。おまけに,もう一人の科学者お姉さんも30代半ばにしか見えません。なんでナイスバディのピチピチお姉ちゃんにしなかったんでしょうか。売れ残り熟女女優さんの救済映画なんでしょうか。

 それと,この映画作りのスタッフの津波というものに対する理解が根本的なところで間違っております。多分,津波を一度も見たことがないイギリスのおじさんが作っちゃったんでしょう。ま,この手の間違いは津波パニック映画では珍しくないけどね。


 舞台はアメリカのマリブビーチ。その沖合の海底で地震が起き,当局は巨大な津波の襲来を予測し,警報を出します。

 そして,この地震で深海に暮らすミツクリザメ(数百万年前に絶滅したと思われていたけど,実は深海でひっそりと生き延びていた・・・と映画では嘘の説明をします)の大群が浅瀬を目指して泳ぎだし,海水浴客たちをパクパクと食べ始めます。

 一方,マリブビーチでライフガードをしているのがダグ君とヒロインとなるおばちゃんたちですが,例によって「俺と奴,どっちを選ぶんだ」とか「ハニー,この指輪は君のものさ。結婚してくれ」とか,「あたし,この下はビキニなの。脱がせてくれない?」とか,色情モード一杯でございます。ところがそこに津波警報! ダグ君たちはビーチの海水浴客を何とか駐車場に避難させたものの,なぜか皆さん,海岸に戻ってしまいます。彼らは辛くも監視小屋の逃げ込みますが,そこに高波が襲い,監視小屋は海の中にポツンと取り残されます。また,ヒロインおばちゃんの現恋人が働いている工事現場(?)も津波に襲われ,ここも絶海の孤島状態です。携帯電話も繋がらないため,救援も呼べません。監視小屋にはボートすらありません。

 そんな彼らを血に飢えたミツクリザメ軍団が次々に襲ってきます。彼らは果たして無事に生還できるのだろうか・・・ってな素敵なお話です。


 この映画をみるとミツクリザメをうんと獰猛な鮫で,100万年くらい前に絶滅したと誤解しそうなんで,正しい知識をまとめておきます。

 まず,ミツクリザメの画像はこちら
 ミツクリザメ(学名:Mitsukurina owstoniの名は東京大学三崎臨海実験所の初代所長の箕作教授の名にちなんだもの。体調は最大5メートル。
 頭部に突き出た部分(吻)は軟骨性で柔らかく,内部に電気受容器を備えていて,海底で餌を探すのに使っているらしい。顎は普段折り畳まれていて餌を食べるときにだけ突出するが,主な餌は甲殻類と頭足類と考えられ,人間を襲うことはない。また,体が柔らかく,速く泳げないようだ。
 日本近海の深さ1000メートル以下の深海(駿河湾,相模湾)で捕獲されることが多いが,世界中の深海で見つかっている。しかし,捕獲例が少なく,長期間飼育した例もないため,生態はほとんどわかっていない。


 海底巨大地震による巨大津波が襲う映画としては,非常に小粒です。何しろ舞台は「監視小屋と工事現場の建物」に限られ,外の世界で何が起きているのか全く描かれていないからです。本格的なCGで津波が建物を飲み込んでいく様子を描いて欲しかったなぁ,なんて無理な注文はしませんが,ハリケーンや実際の津波被害を受けた様子を取材したフィルムを拝借するなどして巨大津波の被害の恐ろしさを画像で描くべきだったと思います。

 それと,この映画の作り手は津波のことを知らないんじゃないかと思うのですよ。津波の高波が襲ってくるのはいいとしても,押し寄せた海水はすぐに引きますから,この映画のように一昼夜にわたって監視小屋の周りが海になる,なんてことはないわけです。もちろん,そういうインチキ設定にしとかないと,ミツクリザメ君が監視小屋の中に入り込んでライフガードを襲うという理由が付けられませんから,しょうがないと言えばしょうがないんですが,昭和39年の新潟地震の津波を目の前で見たことがある人間からすると,やはりこれはインチキだよな,って思っちゃいます。

 ちなみに,この映画では監視小屋から400メートル向こうまでがすべて海になってしまうのですから,ライフガードの皆さんが避難させた人たちは絶対に助かってないですよね。

 そうそう,みんなが避難する監視小屋ですが,作りはすごくチャチです。何しろミツクリザメがぶつかっただけで床に大きな穴が開くんですぜ。柱も弱そうだし,この映画の大波を受けたらひとたまりもなくバラバラになるはずです。何しろ,400メートル向こうまで一気に海になるくらいの津波なんですから。

 ちなみに映画の中のニュースでは「津波の波は30メートルにも達し」と言っていましたが,監視小屋を襲った津波は室内に入ってきていませんから,高さはせいぜい2メートルと言うところでしょう。30メートルの波はどこにいったのでしょうか?


 鮫パニック映画と言えば,人が鮫にパクパクされるシーンが見所ですが,この映画はその点は平均点以下です。最初の方のパラセイリングをしている若者が食われちゃうシーンはそこそこなんですが,あとは「海の中に人⇒鮫が近寄ってくる⇒逃げようとする⇒鮫が迫る⇒海が真っ赤になる」という映像の繰り返しになってしまうため,飽きてきます。

 近寄ってくる鮫をチェーンソーで切り刻んで撃退する,というのは鮫映画としては新機軸ですが,画像的に派手さはないため,ラストの対決シーンとしては力不足というか,迫力不足です。もちろん,水中を3次元で移動できるサメをチェーンソーで切れるのかよ,というツッコミは忘れてください。

 それと,建物の中に進入した鮫が人間を襲うため,ワンシーンで襲ってくる鮫は一頭に限られます。そうでなければ鮫を倒せないと言う「大人の事情」があるためですが,この設定も迫力不足となった原因の一つでしょう。


 ヒロインの女性ライフガードを演じるのはペータ・ウィルソンですが,これが生活に疲れた中年女性,という感じがもろで,体型も無惨なものです。もちろん,顔がアップで写るシーンになると,気の毒で目を背けたくなります。昔はこんなんじゃなかったはずなんだけど・・・。ちなみにウィルソンちゃんを巡って二人の男性が争っちゃうわけですが,何でこんなおばちゃん相手に争奪線を繰り広げるんでしょうか。この映画,最大の謎です。

 このウィルソンちゃんに負けず劣らず「気の毒系」なのが,女性海洋学者の女優さん。年齢はウィルソンちゃんよりだいぶ若そうで演技もそれなりにきちんとしていますが,唯一欠けているのは美貌と魅力です。何で,こんなに魅力のない二人を主役に抜擢したんでしょうか。人件費をそこまで切り詰めなければいけなかったんでしょうか。

 ちなみにこの科学者ちゃんは襲ってきた鮫を殺そうとするライフガードを前に,「ミツクリザメは絶滅したと思われている貴重な生物なの。絶対に殺しちゃダメ。生かして持ち帰るべきよ」と演説をぶちます。でもね,ミツクリザメはそこらをウヨウヨ泳いでいるし,本当に絶滅種だったら死体を持ち帰るだけでも十分なんだよね。もちろん,この科学者ちゃんは途中で鮫にパクパク食われます。いい気味です。このシーンを見て,「鯨バカのシー・シェパードの船に鯨が体当たりしてくれないかな? シー・シェパードの馬鹿は鯨に食われたらいいのに」と思う日本人は多いと思います。


 あと,登場人物がバカな行動をするのはパニック映画の定石とはいえ,この映画でもお馬鹿さん行動するの連続には呆れちゃいますね。上記の「ミツクリザメは殺しちゃダメ」発言なんてまだいい方です。

 例えば,主要登場人物で唯一のビキニ巨乳姉ちゃんがバカ丸出し。大腿部を切っちゃって血が止まらないため,ヒロインおばちゃんが「傷を縫うしかないわ」と言っているのに,「医者じゃないのに縫わないで! 訴えてやる。病院に連れていって!」とギャーギャー騒ぐんですよ。こんなバカ,サッサと鮫に喰われちゃえ!

 ちなみにこの傷を見たヒロインおばちゃん,「これは重傷よ。出血が止まらないと死ぬわ」と言っておりますが,大腿外側を5センチくらい切っただけですから軽傷です。この部位には太い血管はないんですけど・・・。


 鮫が出てくる映画なら何でもオッケー,鮫さえ出ているならきれいな若いネエちゃんが出てなくてもオッケー,というコアな鮫映画マニアな方だけご鑑賞ください。

(2011/02/23)

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