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2008/08/29
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,岡山県倉敷市の末長整形外科医院 副院長 末長 敢先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 本日の第2回創傷ケア研究会での講演で使用するスライドを公開します。25分バージョンと短く,熱傷と創感染にターゲットを絞ったものですが,今回はじめて,パラダイムシフトという概念を前面に出したものになっています。
以前,スライドファイルをダウンロードしたことがある方は同じアドレスからダウンロードできます。新たにダウンロードをご希望の方は本名,所属を明記してメールでご連絡下さい。
- 漫才コンビのU字工事って知ってますか? 栃木県丸出しで北関東(茨城県,栃木,群馬)関連ネタでしゃべりまくるコンビです。かなり面白いです。一番下の8月27日の爆笑レッドカーペットで披露されたネタ2本が超ローカルで面白いです。
なお,YouTube画像を保存する際はCraving Explolerが便利です。
2008/08/28
2008/08/27
- 「こんな質問いただきました」に「大学病院でヤケドの治療を受けていますが,毎日医者が変わり,説明も毎回違っていて不安です。どうしたらいいでしょうか」を追加。要するに,大学病院の外来は,外傷患者の治療のための外来ではないということですね。
- 昨日夜のNHKの「クローズアップ現代」は「“グローバル・インフレ”の衝撃~転換する世界経済 日本は~」という内容だった。煎じ詰めると,第二次大戦後の日本は,「安い原材料と燃料を海外から購入し,付加価値の高い工業製品にして高い値段で海外に輸出し,その利益でまた食料と原材料と燃料を買い,さらに付加価値の高い・・・」というサイクルが回っていたが,もう既にそのサイクルは回らなくなってしまった,という内容だった。そして,番組の中でも何度も「これは産業構造のパラダイムシフトです」と,パラダイムシフトという言葉が使われていた。
マスコミが「パラダイムシフト」という言葉を使い始めたということは,既に転換(シフト)はかなり進んでいるということだろう。
2008/08/26
- 現在,光文社新書の原稿執筆中で,ちょうどパラダイムシフトについて書いています。ここでは「パラダイムが安定している時期には専門家が大衆を指導するが,パラダイムシフトが起こり始めると専門家は素人の後塵を拝す」という概念を中心に据えています。専門家は専門家なるが故にパラダイムシフトに対応できないのです。
例えば,大学病院の形成外科や熱傷センターで治療するより,素人が自分で治療したほうがはるかに早く治癒します。日本褥瘡学会のガイドラインどおりに治療するより,素人が穴あきゴミ袋で治療したほうが簡単に治ります。消毒医者に擦りむき傷を治療してもらうとなかなか治りませんが,素人が自分でラップで治療するとすぐに治ります。つまり,「○○治療の専門家」という地位自体の化けの皮がはがされます。
つまり,パラダイムシフトとなる考えが提示されても,それが専門家集団を相手にしているうちは旧パラダイムと並立します。しかし,非専門家(=素人)に知られるようになってくると旧パラダイムは次第に崩壊していきます。パラダイムというエンジンはあるのに燃料がなくなってしまうからです。この「燃料」が何か・・・ということくらいは伏せておきましょう。
- 見事に練り上げられたプロットで観客を翻弄するサスペンス&ラブ・ロマンス映画《dot the i》を紹介。
- 漫画全巻まとめ買い,いわゆる大人買いは大人にしかできない贅沢(無駄使いとも言うけど)ですが,そのためのサイトです。「ゴッドハンド輝」全巻を研修医の勉強用に揃えるかな,なんてときに有用かも。
それにしても,「1,2の三四郎」全20巻で4000円ちょっと,「1,2の三四郎 2」全巻で1800円か・・・。横山光輝の「三国志」全巻とか「宗像教授伝奇考」全巻なんてのも魅力的。
- デイリーポータルZの「食べ納め!コンビニ冷やし中華食べ比べ」。秀逸な記事だ。何より,きちんとした研究レポートになっているのが素晴らしい。
2008/08/25
- 一昨日は東京で開催された第2回へき地・地域医療学会で講演でした。会場は満員状態でいろいろな質問をいただきました。
その後,立食形式の全体懇親会に参加。会に参加した石岡第一病院の職員たちと一緒に食事にぱくつきましたが,何しろ,1平方メートル当たり1.5人という人口密度(実感としてはこのくらいだった)だったため,あっという間に食事がなくなってしまったようです。
今回の講演で唯一残念だったのは,医者と話す機会がほとんどなかったことです。勤務している病院の職員と雑談しているのは疲れなくていいのですが,新しく学ぶことはあまりありません(何しろいつも会っている訳ですから)。また,会場で他院の看護師さん数人から質問を受けましたが,看護師さんの場合,一方的に教えるという感じになって私が得るものはありません。そういう点でちょっと残念でした。
- 光文社新書の原稿もいよいよ「医療に見るパラダイムの構造」に突入。とりあえず原稿用紙25枚分くらいまで完成。
- 毎日のように医療関係者から相談メールをいただきますが,研修医からのメールと看護師さんからのメールに共通していることがあります。「○○について教えてください」という点です。研修医と看護師からはこういうメールばかりです。
常識的に言えば,「○○という問題に対し,私は△△と考えています。これはどうでしょうか?」と質問すべきです。しかし,研修医や看護師からのメールに「私はこの問題に対してこう考えているのですが」という記述があるメールを見たことがありません。知識がないから自分の考えは持たなくていいと考えているのか,自分で考える習慣を持たないから自分の考えを書かないのか,疑問があったら誰かに聞けばいいと考えているからなのでしょうか。
2008/08/22
- 久し振りに講演で使用するスライドをマイナーバージョンアップし,8月21日作成のものが最新バージョンです。以前ダウンロードしたことがある方は同じアドレスからダウンロードできますし,新たにダウンロードをご希望の方は本名,所属を明記してメールでご連絡下さい。
- めっきり涼しくなったね,という朝夕の挨拶が普通に出るほど,茨城の田舎町は暑くないです。今週は毎日のように夕方に雷雨があり,それに合わせて朝夕は気温が下がっています。つい先週まで,タオルケット1枚でも暑苦しかったのに,昨晩などは窓を開けると寒くて眠れない,という感じです。そういえば,アブラゼミの鳴き声もめっきりと減り,昨年は9月を過ぎてもまだ暑かったのと比べると,全くの様変わりです。
ちなみに,日本歴代最高気温40.9℃を記録したのは昨年8月16日の熊谷と多治見ですが,今日の熊谷の最高気温は26℃,岐阜の最高気温は31℃の予想です。
2008/08/21
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,宮城県登米市のわたなべ内科クリニック 渡辺誠悦先生にもご参加いただきました。ありがとうございます。
- 昨日,ガス壊疽についての素朴な疑問を書いたが,そのうち「常在菌だとすると,宿主を死に至らしめるのはなぜなのか」というのは明らかに考え不足だった。この細菌は本来,土壌を生活環境とする腐生菌であるからだ。つまり,Clostridium perfringens は他の生物の死骸や腐敗物を栄養源とする生物だ。
このため,動物の体に入って軟部組織にガス壊疽を発症させ,その結果として大量の壊死組織ができるのは一挙に大量の栄養源を得ることになる。そして,野生動物が死ねば土の上で横たわることになり,土壌中のClostridium perfringens たちにとっては,ガス壊疽で死んだ動物の死骸はそのまますぐに利用できる大量の栄養源となり,ガス壊疽以外で死んだ動物の屍骸のように腐敗して分解するのを待つ必要がない。要するに,土壌中の腐生菌としては,動物に致死性腐敗性の病気を起こすことはきわめて理に適った能力であり戦略といえる。
これが正しいとしても,まだ疑問が残る。なぜ,Clostridium 属以外の嫌気性腐生菌はこのような能力を獲得しなかったのか,という問題だ。他の腐生菌が同じ戦略を選択しなかったのはなぜなのだろうか。
ガス壊疽を起こす細菌群は短期的には大量の組織壊死を起こして生存に有利になったはずだが,そのために何かの能力を失ったのだろうか。ガス壊疽を起こす能力を獲得したことで,長期的に不利になったことでもあったのだろうか。
- 知人のイタリア人ピアニストMarco Falossiさんの楽譜を見ていたら,「○○の形」という曲が3つほどあり,どれも楽譜が面白いので楽譜と音源をまとめて紹介します。
- Figura Sonora "Mozart" : 音源 (1.92 MB),楽譜 (80 KB)
- Figura Sonora "Farfalla" : 音源 (536 KB),楽譜 (64 KB)
- Figura Sonora "Teschio" : 音源 (612 KB),楽譜 (47 KB)
Mozartはそのままで,モーツァルトの横顔を楽譜にして,さらにモーツァルトのパロディーになっています。TeschioとFarfallaの意味がわからなかったら,ネットのイタリア語辞典で探してみてください。ま,楽譜を眺めると大体わかりますけどね。
2008/08/20
- 先日「96歳のスーパーじいちゃん」を紹介しましたが,昨日受診した80歳の男性,85歳女性もなかなかのものでした。治療について説明したら,「この病院でよかったよ。他の病院だったら消毒で痛い思いをしていたんだよね」っていうじゃありませんか。お二人とも話はしっかりしているし,身のこなしもテキパキしています。
こういう人たちと同年代の寝たきりの人たちでは,一体何が違っているんでしょうか。両者を分けたものは何なんでしょうか。
- 今,外陰部のガス壊疽患者さんを治療中なのですが,こういうガス壊疽の患者を見るたびに不思議に思っていることがあります。
- 発赤部を切開すると特有の悪臭があり,黒色の組織が露出するが,あの黒色のものは何なのか? その黒色組織は切開解放後に速やかにクリーム色に変化するが,それはなぜなのか。
- 他の膿瘍に比べ,大量の黒色(クリーム色)の壊死組織が生じるのはなぜなのか。
- 病変はどの組織で一番最初に起きるのか。
- なぜ感染起炎菌(Clostridium perfringens など)は組織内で増殖できたのか。いかに嫌気性菌といえども,スペースがなければ増殖できないはず。
- 外傷が全くないのにガス壊疽が発症する患者がいるが,その場合,起炎菌はどこから侵入したのか。
- ガス壊疽を発症する人としない人を分ける真の因子は何なのか。
- そもそも「Clostridium perfringens はヒトや動物の腸管内に生息する常在菌」と説明されているが,本当に常在菌なのか。
- 常在菌だとすると,宿主を死に至らしめるのはなぜなのか。自分自身の生活(=宿主)の場を失うのは常在菌の戦略としては異常ではないか。
- 局所治療による病態の修飾はないのか。それが病態の解釈を歪めていないのか。
- ガス壊疽発症をドラマだとすると,Clostridium perfringens は脚本家なのか,役者なのか。
2008/08/19
- 1920年前後のアイルランドを舞台に,イギリスからの独立闘争とその後の内戦の悲劇を描いた感動的名作,《麦の穂をゆらす風》について。イギリス人監督,ケン・ローチが自国の汚点とも言うべき事件を真正面から描ききったという事実にまず感動します。
- 週末の大移動のために光文社新書の原稿がちょっと滞っていましたが,いつもの居酒屋さんで夕食をとりながら書き始めました。今度は「医療におけるパラダイムの構図」です。以前からこのサイトでも書いてきたことですが,さすがに本にするのですから生半可なことは書けないし,また内容が広範ですので,どこから書き始めたらいいかまだ迷っています。
そして,「パラダイムとしての医療」という誰も書いていない視点からの論文(?)ですが,これはいわば全くのゼロから論理を組み立てるのと同じで,非常に大変です。雛形として参考にするような思考パターンがどこにもないからです。建築の知識も技術もないのに,一人で家を建てようとしているようなものです。
果たして自分にその能力があるのか,そもそも自分にそういうことを書く資格があるのか,なぜこんな無謀なことをわざわざしているのか,本当に医療はパラダイムなのか,と自問自答しながら文章をまとめようとしています。ちょっと弱気になると,すぐに「風車に立ち向かうドン・キホーテ」気分になってしまいます。
2008/08/18
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,岡山県岡山市の旭クリニック 鳩崎明一先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 「質問」コーナーに「CVカテ刺入部のイソジンゲル塗布について」を追加しました。
- 昨日(8月17日)は広島県尾道市で開かれた中国四国ストーマリハビリテーション研究会で教育講演でした。会場は半分くらいの入りでしたが,通常の同研究会よりはかなり多かったという話でした。質疑応答でも多くの質問をいただきました。
講演後は直ちに広島空港に移動し,14:25のANAで羽田に向かい,石岡に戻ったのは18:26でした。
ちなみに,その前日に広島入りし,夜は8人くらいの先生方と宴会でした。外科の先生中心の宴会でしたが,さまざまな問題について討論が続き面白かったです。
そしてさらに,瀬尾先生(広島で最も早く湿潤治療を行っている先生です)たちと二次会に突入。瀬尾先生とはこれで3度目か4度目の宴会で,気心が知れていますので,とても楽しかったです。遅くまでお付き合いいただき,ありがとうございました。
- というわけで,休みなしで月曜の朝に突入していますが,体の感じは金曜日の朝みたいで,これから1週間が始まるのかと思うと,ちょっと憂鬱です。
2008/08/15
- 各地でさまざまな先生たちを相手に講演をしていると,ある専門分野の専門家ほど,その専門分野での変化に反発するというのは,今も昔も同じ現象だということを今更ながら感じ入ります。これは天動説のアンチテーゼとして地動説が唱えられたとき,天動説の専門家(=当時の天文学の専門家集団)ほど激しく反発し,死ぬまで天動説を説いて回ったのと同じです。天動説は彼らにとってはいわば「飯のタネ」ですから,全力を上げて飯のタネを守ろうとしたのでしょう。
つまり,パラダイムシフトが起きたとき,旧パラダイムの専門家は素人より無知な集団になってしまうのです。熱傷で言えば,湿潤治療が普及してしまえば素人でも熱傷を治療するようになるのに,熱傷治療の専門家は従来の軟膏治療をより強く推奨するという状況になるはずです。
そして,専門家ほど治療手段にこだわりを持っています。形成外科は皮弁手術にこだわりを持ち,皮膚科医は軟膏治療にこだわりを持ち,内視鏡専門医は内視鏡にこだわりを持ちます。
そして形成外科の場合,いつの間にか,皮弁手術をすることが治療の目的になります。要するに手段と目的の取り違えなんですが,皮弁手術に自信があり研究熱心な先生ほど,「皮弁手術することが治療の目的」という錯覚に気がつきにくいような傾向があります。
そして,皮弁手術でなくても治る,なんてことを言われると,このタイプの先生は頭に血が上ります。皮弁手術ができるのにそれをしないのは形成外科の風上にも置けない,なんて猛烈に抗議してきます。別にその先生本人を否定しているのでなく,皮弁手術を否定しているだけなのに,彼にとっては手術は自分の分身みたいなものですから,手術を否定されるのは自分を否定されるのと同じに感じてしまいます。こうなると,冷静な議論すらできなくなります。
もちろんこれは,他の診療科でも同じで,例えば骨頭置換術の名人の先生は「骨頭置換はもういらない」という発言は決して許さないでしょう。
推理小説では「この事件で誰が一番利益を得るのか」が重要な情報ですが,かつての医療の世界に起こったパラダイムシフトをこの観点から分析すると,いろいろ見えてきます。
というわけで,お盆休みもなく,なにやら暑苦しい文章を書いては光文社新書の編集者に送る毎日です。
2008/08/14
- 「プラスモイストP取り扱い薬局一覧」が更新されていました。
- ひどい日焼けが受診する季節ですが,ワセリンを塗布したラップが著効を示します。これで赤くなっている部分を覆うと,痛みがすぐになくなるようです。
- Laticoのボストンバッグを買っちゃいました。これ,いいです。
- 光文社新書の原稿,さらに書き進めています。昨日は,「熱傷治療,褥瘡治療に使用されている軟膏がインチキ薬剤ばかりなのはなぜか? インチキ薬剤をなぜ医者は疑問も思わずに使っているのか? なぜそのような薬剤ばかり売られているのか? 皮膚科学,形成外科学がそのようなインチキ軟膏使用を推奨し続ける構造的欠陥」なんてあたりについて書いています。ううむ,そこまで書くか?
2008/08/13
- 画家のクリムトの生涯を幻想的に描いた作品,《クリムト》について。映像は極めて華麗で,マルコヴィッチの重厚な演技には圧倒されますが,当時のウィーンとパリの芸術,政治,そしてクリムト周囲の人間関係がわかっていないと,何が何だかわからない映画です。クリムトの大ファンという人にのみお勧めします。
- 最近,全くの初診の患者さんでキズパワーパッドを傷に張った患者さんやラップを傷に当てて受診する患者さんが週に数人いらっしゃっています。いずれも,インターネットで治療を知ったとか,周囲の人から治療を聞いたという人です。また,幼稚園のお母さんたちの間では,「トビヒは○○皮膚科の治療では治らないから行かないほうがいいよ。行くならこの病院」というクチコミ情報も広まっているようです。ありがたいことです。
- 光文社新書の原稿,着々と進行。昨日書き上げた分までで原稿用紙にして120枚を越えたくらいでしょうか。
- それに伴い,掲示板に目を通す時間がなくなり,まして,掲示板の書き込みをログとして保存する時間が取れなくなってしまいました。
2008/08/12
2008/08/11
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,香川県高松市の高松赤十字病院 整形外科 三代卓哉先生,山口県下関市のあめやまクリニック 飴山 晶先生にもご参加いただきました。ありがとうございました。
- 以前紹介した「殿部~大腿外側~鼠径部の広範全層皮膚壊死」の5年後の写真が患者さんから送られてきましたので,これを追加しました。
これほどの面積の全層欠損でも,植皮は不要であり,保存的治療でも運動障害を起こさない事がよくわかります。要するに,従来の形成外科の常識は全く通じません。
- 先週木曜日は下関市医師会 園医部会で講演でした。もともと小児科医で集まってできた部会のようですが,今回は通常の同会の講演会参加者をはるかに越える240名が集まり,満席状態でした。多数ご参加いただき,ありがとうございました。
その後は3人の小児科の先生方と懇親会。「今まではヤケドなんて怖くて手が出せなかったし,出そうとも思っていなかったけれど,実際にラップで治療して見るとあっけなく治っちゃうから,ビックリですよ。これまでの治療だったら怖くて手が出せないけど,この治療なら小児科医でもできますよ」とか,「この治療が普及したら,熱傷治療は形成外科や皮膚科の独占物でなくなりますね。むしろ,大学で治せない熱傷が町の開業医で治せる時代になるわけですよね」ということで話が盛り上がりました。
- 柔道の谷選手の次の二つの記事である。一つは今年4月,もう一つは先週のものだ。
たとえたに選手本人が直接望んだことでなかったにせよ,彼女のために,正当な理由がなくオリンピック代表からはずされた選手がいたという事実は消せない。であれば,「銅メダルしか取れず,川岸選手に合わせる顔がない」の一言があってもよかったのではないだろうか。
そして同時に,予選会での勝者である川岸選手を無理矢理落とした日本柔道連盟は「ママでも銅」の事態に対し,何らかの表明をすべきではないかと思う。
ちなみに,彼女は「YAWARAちゃん」と呼ばれている。もちろん,浦沢直樹の名作,「YAWARA」の主人公の名前から来ているが,実はマスコミにデビューした時に彼女が自分で「私をYAWARAと呼んで下さい。私がYAWARAです」と言ったのがきっかけだった,というのは有名だ。
- 「グルジア戦火拡大、2000人死亡か ロシア空爆続く」
北京オリンピック開幕に合わせたかのように,グルジアで戦争勃発。このあたりの地理と歴史を見ると,これは簡単に解決しそうにないな,という気がする。
もともとグルジアはソ連の一部だったが,ソ連崩壊後にグルジアとして独立した。住民の多くはグルジア人でグルジア語を公用語としている。この国の北部にオセチア人の住む地域,南オセチアがある。今回の紛争の舞台はここだ。南オセチアに住むのはオセチア人で伝統に従いキリル文字を使っている。
ここで問題をややこしくしているのは,グルジアはロシアと国境を接し,南オセチアに接する部分にオセチア人の住む地域があるという点にある。そして当然のごとく,南オセチアはロシアの北オセチアと民族も文化も同じなのでグルジアからの独立を願っている。
一方で,グルジアはロシア支配を嫌い,EUへの加盟を最優先課題にしているのだ。ところが,グルジアはロシアにとってカスピ海原油パイプラインの最短距離という地政学的要衝にあたるから,ロシアはグルジアが自陣から離れることは絶対に困る。
このような理由から,今回の紛争はロシア軍が南オセチアに加勢し,それとグルジア軍が衝突するという複雑な(?)様相を呈している。まさにゴチャゴチャである。
- 「COURRiER Japon」9月号をパラパラめくっているが,いつもどおりに面白い記事が満載。
- 石油が枯渇したら世界はどうなるのか/石油埋蔵量はどのくらい残っているのか
石油はどのくらい残っているのか,という極秘情報に迫っている特集記事だ。
- 「グーグル化」でヒトはバカになる
- 以前は長い文章を読んでその中から情報を見つける作業が必要だったがクリックするだけで欲しい情報が得られるようになった。
- 長い文章を読む機会がなくなった/長い文章が読めなくなった,という人が実際に増えている。
- 文章を読む能力は完全に後天的なもので,長い文章を読む週刊は印刷術が普及してから人類が獲得した能力。
- 北京オリンピックに備えて北京の街角には「北京を訪れる外国の友人たちに快適で広い道を提供するため,できるだけ外出を控えよう」という標語が掲げられている。これは日本占領時の「中国人と犬,渡るべからず!」という屈辱的標語とどこが違うのだ,という香港の新聞記事の紹介。
2008/08/07
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,福岡県北九州市の佐藤医院 佐藤公一先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- クズ・スパイ映画として有名な(?)《嵐の中で輝いて》を紹介。ジョーク映画かと思うほどツッコミどころ満載です。
- 今日は10時半まで外来診療をして,それから11時の電車で上野に向かい,羽田から北九州空港に移動して下関で講演です。山口県で2度目の講演です。
2008/08/06
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,熊本県天草市の中村こども・内科クリニック 中村英一,中村弓美先生,十万山クリニック 中村弓美先生にもご参加いただきました。ありがとうございます。
- 来年3月14日,北海道ニセコで開かれる第15回 救急整形外傷シンポジウムで講演することが決まりました。
- 外来通院中の96歳のスーパー爺ちゃんを紹介。
- 夏といえばトビヒの季節です。治療についてはこちらをご覧下さい。本当に簡単に治りますよ。ちなみに亜鉛華軟膏は最悪です。もしかしたら,トビヒを悪化させる特効薬じゃないかと思います。
そして夏といえば日焼けですが,当院の医師・看護師たちは日焼けしたところをワセリンを塗布したラップで覆っています。すぐに痛くなくなり,赤味もすぐに引くため非常に好評です。
- またもしょうもないピアノネタ。YouTubeでちょっと面白いピアノデュオを見つけました。演奏もアレンジも素晴らしいです。
「美しき青きドナウ」はシュルツ・エヴラーの名編曲をベースに連弾用にさらに華麗にアレンジしたものです。しかも,若い二人が街で偶然出会い,恋に落ち,愛し合うようになる・・・というドラマ仕立てになっていて,二人の物語とアレンジが見事に合っています。この二人の作曲らしいですが,豪華絢爛な演奏技巧が次々と示される様は圧巻です。
お互いに見詰め合って演奏する場面は,ちょっと見ていて恥ずかしいけど・・・。最後に二人でワルツを踊るシーン,もっと恥ずかしいけど・・・。
彼らの公式サイトです。
ちなみに,彼らがお手本にしたと思われるシュルツ・エヴラーのアレンジはこちら。一番最初に聞いたとき,2本の手でなんでこれほど多くの音が弾けるんだろうとびっくりした編曲です。私を「超絶技巧的ピアノ編曲の世界」に引きずり込んだ1曲です。
さらに,ヨハン・シュトラウスつながりでアニメの「トムとジェリー」。
前者は「王様のワルツ」という邦題で放映されたもの。「美しき青きドナウ」などのシュトラウスのワルツの素晴らしいピアノソロ用アレンジが楽しめます。後者は「ニャンガリアン・ラプソディー」のタイトルで放映されたもので,リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」をトムさんが熱演。トムの指の動きがナイスです。
2008/08/05
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,東京都中野区のやまもと消化器内科クリニック 山本 尚先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
ちなみに,先日外来見学にいらっしゃった先生です。
- 「白血病の患者が怪我をして化膿すると命取りになります。それでもあなたは消毒は不要と断言しますか?」という質問に対する回答を追加。
- 光文社新書の「消毒薬について」という項目を書いていて,次のようなことに気がついた。
- 抗生剤
- 細菌の細胞壁合成に影響を与えて殺菌,静菌する。
- 抗生剤が効くスピードは細菌の細胞壁合成速度に依存し,細胞壁合成の遅い細菌ほど抗生剤が効果を発揮するまでに時間がかかる。
- しかし,確実に殺菌,静菌できる。細胞壁合成という細菌に特有の現象をブロックしているから。
- 消毒薬
- 速効性を求められて作られた薬剤である。つまり「傷口に降りかけると傷口が無菌になる」という効果である。
- しかも,細菌についての知識が不十分な時代に作られた薬剤である。
- そこで,「膿に降りかけたら膿の臭いが消えた,膿に振りかけたら膿の色が消えた,降りかけた後に細菌の数を数えたら少なくなった」という薬剤が求められた。
- つまり速効性が求められ,それは膿の臭いや色で判断された。
- 上記の効果は実は殺菌とは関係ない。消臭剤や色素でも効果が出る。生物学的効果でなく,化学的効果がありさえすれば上記の効果が得られる。
- しかも細菌は環境が変化すると「生きているが培養できない状態」になって休眠状態になる。これは休眠状態なのでまた後で環境がよくなれば目を覚まして分裂を始める。
- しかし,「培養できない」ので,培養すると細菌数は少なくなったように見える。つまり,「細菌を培養して細菌数を調べる」している限り,表面上は殺菌効果があるように見える。もちろん,本当は細菌は死んでいない。
要するに,私たちは消毒薬に「速効性」を求めているために,速攻で消臭効果があり,速攻で膿の色が消えるという薬剤をあたかも「殺菌をしている」,「殺菌のみ行っている」と勘違いしただけじゃないだろうか。つまり,二重,三重の勘違いである。それらの薬剤は殺菌もしていなければ,細菌だけ殺しているわけでもなかったからだ。
2008/08/04
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,東京都武蔵野市の武蔵野陽和会病院・外科 佐野正行先生にもご参加いただきました。感謝いたします。
- 11月1日(土)に青森市で開催される総合医学術集会で講演することが決まりました。
- 湿潤治療が日本国内に普及したときに何が起こるかをシミュレートしてみた。恐らく,熱傷学会と褥瘡学会の存続が難しくなるのではないだろうか。光文社新書に書こうと思っているネタでまだ内容はまとまっていないが,箇条書きにするとこういうことになる。
- 50年前に全国組織として発足した学会なのに,現在老衰死を迎えようとしている学会がある ⇒学会には寿命がある。
- 脳神経外科手術を内科医がしないのはなぜか?
- 脳神経外科学会が必要な理由とは?
- 湿潤治療が普及すると,内科医でも精神科医でも熱傷治療できるようになるが,そういう状況になると誰が一番困るか?
- 褥瘡治療は褥瘡専門家にしかできないものか?
- 褥瘡のラップ療法が広まって一番困るのは誰か?
- 学会は何のために存在するのか。
- 学会が存続し続ける条件は何か ⇒新規入会者が確保されること
- その光文社新書の原稿,着々と進んでいます。この週末も休まず執筆し,原稿用紙にして25枚ほど仕上げました。
- 病院医局の半径2メートルくらいで漫画の「 聖☆おにいさん」がプチブーム。マスコミでも話題になっているので今更ながらの話題ですが,これまでに例のない分野にギャグを求めた姿勢が素晴らしいです。キリスト教,仏教,ユダヤ教あたりの基本知識がないと,全てのギャグの意味がわからないのがちょっとあれですけど・・・。
2008/08/01
- 11月21日の八王子医療センターでの講演への問い合わせ先情報を追加しました。
- 『テキストエディター「WZ EDITOR」が5年ぶりに更新、v6.0のプレビュー版を公開』なんてニュースがありました。大多数の人にとっては,WZって何? 程度の話題だと思いますが,私にとっては大ニュースです。なぜかというと,私が日常で最も頻繁に使っているソフトがWZ Editorだからです。本の原稿を書くのも,ホームページのHTMLファイルを作るのも全てこのソフトです。テキスト・エディターはテキスト入力するためのソフトですが,WZの前身であるVZ Editor,さらにその前身のEZ Editorの時代から考えるともう20年近いお付き合いで,体の一部になっているような感じです。
このエディターはHTMLファイルを読み込むと自動的にHTMLタグ自動的挿入機能がオンになるため,HTML入力マクロを組み込んだWZ Editor 4.0は私にとって最強のエディタでした。その後,5.0にバージョンアップしましたが,HTMLソース入力がシームレスでなかったため,また4.0に戻した経緯があります。それほど4.0は使いやすく,完成度の高いものでした。
とは言っても,WZ Editor 4.0はWindows 3.1アーキテクチュアをベースに作られたものであり,Windowsのバージョンアップが進めば早晩使えなくなることは明らかでした。その意味で,最初からXP/VISTAアーキテクチュアをベースにしたWZ Editorが登場したことは朗報です。
早速,ベータ版をダウンロードして使ってみようと思っているところです。
それにしても,EZ Editor,VZ Editorの頃の話しを始めると止まらなくなります。
フリーソフトとして産声を上げたEZ Editor 0.98はテキストエディターとしてのあらゆる機能を持ちながら,ファイルサイズが極限まで切り詰められていたために動きが軽快で,MS-DOS 2.11の乏しいメモリ環境でも高速で動きました。当時主流だったNECのPC-9801の型数字を元に,プログラムサイズを9801バイトきっかりに収めたプログラマ魂になによりしびれました。当時,パソコン(=PC-9801)用のワープロソフトとして管理工学研究所の『松』とジャストシステムの『一太郎』が普及し始めた時代でしたが,あの頃のワープロソフトは動作が重く,気の効いた文章書きはEZかMiffesで文章を書いていたんじゃないでしょうか。
そして,市販ソフトのVZ Editorが誕生します。当時としては画期的な常駐機能を備え,しかも超強力なマクロ機能を備えていました。しかも値段はその他のエディタの半額以下!
このマクロはBasicライクな構造化言語の強力なプログラム機能を持ち,付録にこのマクロで作ったゲームの「テトリス」が添付されていたことからも,そのプログラミング能力の高さがわかりました。
私はこのマクロに魅せられました。何しろ,ファンクションコールまでマクロでできるのですからできないことがありません。しかも,コンパイルしているわけでもないのに高速でプログラムが動きます。もともとプログラミングが好きだったこともあり,このマクロで,論文作成用のアウトライン・プロセッサのマクロ(引用文献の番号の自動振り付け機能,引用文献の自動配列機能など,論文作成に必要な機能は全て盛り込みました)を皮切りに,ゲームソフト・マクロ(マイン・スウィーパーやトランプゲーム),データベースソフト,スクリーン・セイバーを次々に作り,挙句の果てに,「日本形成外科学会認定医問題・自習用マクロ」なんてものまで作ったのを記憶しています。それほどこのマクロは強力で魅力的でした。
当時,VZ Editorの発売元,ビレッジ・センター社のパソコン雑誌(当時はまだインターネットがなく,パソコン雑誌全盛時代だった)があって,ここにマクロ投稿欄がありましたが,ほとんど毎号,私の投稿マクロが掲載されていたことを懐かしく思い出します。
そういえばあの頃は,『The Basic(通称「ざべ」)』という雑誌があり,VZ Editorのソースコードの解析やらマクロの裏技やらの記事が満載で,私にとっては毎号毎号が宝物で,「ざべ」の最終号は涙なしには読めなかったです。一度だけ「ざべ」に投稿が掲載されたことがあり,舞い上がる思いでした。医学雑誌に論文が掲載されるよりはるかに嬉しかったからです。
そしてMS-DOS⇒Windowsへの転換に伴い,VZ EditorはWZ Editorにバージョンアップします。かねてから定評のあったファイル管理機能を独立させ,メーラー機能も備え,grep検索もデフォルトで装備し,エディタとしては依然として最強の存在でした。しかしこの頃から,マクロ機能はより高機能化を目指し,その結果として,マクロ言語はC言語ライクになります。
その頃,インターネットが普及し始め,個人でホームページを持つ人がポツポツで始めます(その一人が私)。しかし当時,ホームページ作成ソフトにろくなものはなく,私は手作業でHTMLタグを打ち込んでサイトを作っていました。そこでWZ Editorは「HTML作成用マクロ」で対応します。これは本当に使いやすく,現在もこのサイトの更新は「WZ 4.0+HTMLマクロ」で行っています。