《オープン・ユア・アイズ abre los ojos》 (1997年,スペイン)


 数年後にハリウッドで《バニラ・スカイ》というタイトルでリメイクされた作品です。ちなみに《バニラ》の主演はトム・クルーズ,ヒロイン役は《オープン》と同じペネロペ・クルスでした。

 原題の "abre los ojos" はスペイン語で「目を開けなさい」という意味だったと思うが,なぜか邦題は英訳してそれをカタカナ表記にしている。

 それなりに面白い映画だし,設定もよく考えられているんだけど,見ている方に多大な想像力と推理力と解釈力を要求している映画なんで,とても疲れる作品となっている。とにかく,夢(悪夢)と現実が頻繁に入れ替わり,何が現実なのか,どこからが夢なのかが,観客に悟られないように工夫してあるため,2時間近い映画に最後までお付き合いしても,ラストの解釈はこれでいいのだろうか,全体像の解釈はこれで間違っていないのだろうかと不安になってくる。まあ,確かに,途中で何度も「冷凍技術で人間を保存し,後の世に蘇らせる」というシーンが挿入されるため,もしかしたらこれが種明かしか,と思っていたら・・・という感じでした。


 とりあえずストーリーを紹介しようと思うんだけど,それがすごく大変。もちろん,場面場面を文章で説明するだけなんだけど,それでは何がなんだか・・・。

 主人公はセサール。彼は殺人罪の罪で逮捕されたんだけど,精神病ということで病院に収容され,精神科医の診察を受けているところで始まる。彼はなぜか顔にぴったりしたシリコン性の仮面をかぶっている。彼は常に悪夢を見ているらしく,その夢について説明するようにと精神科医が問いかける。

 セサールは資産家だった父親の遺産を受け継ぎ,どうやら莫大な財産を持っている。そして若くてハンサムで黙っていても女が寄ってくるようなやつだ。現在付き合っているヌリアもそろそろ別れようと思っているが,彼女はなかなかそれに応じない。

 そういうある日,セサールは自宅で誕生日パーティーを開催。親友のペラージョは黒い瞳が印象的なソフィアを伴って登場する。当然セサールはソフィアにターゲット・オン! 程なく仲良くなり,彼女の部屋で一晩過ごす(このときはまだエッチなし)。しかし,彼女のアパートを出たところをヌリアが待ち構えていた。彼は彼女を疎ましく思うが,どうしても断りきれずに彼女の車に乗り込む。そして「あなたの夢は何?」という言葉を発したかと思うと猛スピードで崖っぷちのガードレールに突っ込む。無理心中を図ったらしい。

 ヌリアは死に,セサールは一命を取り留めたものの顔に大怪我を負う。度重なる形成術を受けるが,元の顔には戻せない。現代医学の限界だと医者は告げ,マスクを付けて生活するように勧める。自分の顔を返せとセサールは荒れ狂い,自分の顔を正視できない。そして泥酔して路上に眠り込むが,翌朝,ソフィアに起こされる。そこから色々あって,二人は付き合い始める。

 そして,さらに色々あって,医者達は今度は「君の顔を元に戻せる技術が開発された」と次げ,治療を受けることになり,彼は元の顔を取り戻す。ソフィアの愛を得て二人はベッドイン。ところが夜中に目が覚め,鏡を見ると顔は醜い状態に戻っていて,しかも隣に寝ているのはソフィアでなくヌリアであった。

 ヌリアがソフィアをどこかに連れ出したとセサールは考え,警察を呼ぶが,警察では,「君がヌリアと呼んでいる女性こそがソフィアで,君がソフィアと呼んでいる女性は存在しない」と説明される。混乱したままソフィアのアパートに向かうが,部屋に貼ってあったソフィアが写っている写真の全ての顔はヌリアに変わっていた。また,色々あって,本物(とセサールが考える)ソフィアが登場し,エッチシーン突入。しかしその途中で,ソフィアの顔がヌリアに変わり,彼はヌリアを絞殺する。同時にセサールの顔も醜い状態に後戻り。

 そしてさらに色々あって,時は西暦2145年に飛び,ビルの屋上からセサールが飛び降りて映画はエンドロールへ。


 これじゃ,何がなんだか判らんぞ,という人,あなたの感覚は正常だ。実際,映画上の出来事を消化するまもなくどんどんストーリーだけが先に進むからだ。もちろん,途中で伏線と思われる映像(特に,冷凍人間を未来に甦らせる会社の宣伝)とか,冷凍されているときには夢を見てもらうことになっているという説明があるし,いたるところで会話の中に「夢」「悪夢」という言葉が挟まれ,これらがこの映画の全体像を理解する鍵であることは容易に類推できる。

 要するに,150年間の時空を越えて記憶と悪夢が交錯しているだけのようです。それ以外は○○だったわけね。それなら彼の顔が元に戻ったのも理解できるし,ソフィアとヌリアが頻繁に入れ替わるのも何となく理解できる。また,親友のペラージョのセサールに対する態度,言動が首尾一貫していない部分があったり,セサールに都合のよいものに変化したりするのも,わかりやすい。

 しかし,そういう事情が映画を最後まで見てもわかりにくい原因の一つは,西暦2145年の世界がちっともそれっぽく見えない点にあるんじゃないだろうか。150年後という,20世紀末とは大きくかけ離れている(であろう)世界が舞台になるのなら,少なくとも映像でもそれを示して欲しかった。アレじゃ普通の20世紀末の世界だもんね。


 それと全体の構成として,最後のほうでの悪夢と現実が次第に収斂していくスピードがちょっと遅かったような気がする。それにL.E.社社長(?)の説明がかぶさっていたら,もう少しわかりやすかったんじゃないだろうか。

 セサール役の俳優さん(名前,忘れちゃった)はいい演技してましたね。大金持ちで女にもてて,親友のガールフレンドまで奪っちゃうという本当に嫌な奴なんだけど,それがよく描かれていた。特に,「現代医学の技術では君の顔はこれ以上戻せない,これ以上手術をするのは危険だ」と理論的に説明する医者達に,「医者なら元に戻すのが仕事だろう! 医者のくせに手術しないのか。金ならいくらでも出すから,さっさと元に戻せ!」と難癖をつけるシーンは,本当に嫌味たっぷりで傲慢で,殴りつけてやろうかと思うくらい。

一方の,ヒロイン役のペネロペ・クルスは見事な脱ぎっぷり! たっぷりと美乳を見せてくれます。エッチの最中にいきなり止まり,「コインを入れなきゃ動かないの」とパントマイムをしちゃうシーンは可愛かったな。


 というわけで,全体の仕掛けがわからないうちは色々深読みしてしたくなる映画ですが,全体像がわかってしまうとちょっと・・・という感じかもしれません。最初見たときは何が何だかよくわからず,もしかしたら○○だったのかな,と気がついてもう一度確認のために見直すけれど,3回は見ないな,という映画じゃないでしょうか。

(2008/08/12)

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