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2006/05/31
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,福島県会津若松市の会津中央病院 形成外科 橋本 聡先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 先週,「傷の治療センター」の見学にいらっしゃった青木先生は理学部を卒業して一般企業に勤めた後,医学部を受験し,医者になったという異色の(?)経歴の方でしたが,医者になってみてびっくりしたことが幾つかあるそうです。
- 雑誌に投稿した論文が必ず採用され,掲載されること。
- 雑誌に,論文に対する批評が書かれていないこと。
- 論文を引用する際,その論文に書かれていることは正しい,その実験は正しい,ということが前提になっていること。論文を批判的に読まないこと。
- 論文の「考察」に,著者自身の考察が書かれていないこと。他人の論文の引用することが「考察」となっているらしいこと。
- 論文のMethod(どのようにして行われた実験なのか,統計なのか)を読まずに,結果だけしか読んでいないこと。
こういう話で,すっかり盛り上がってしまいました。
- 掲示板の方にも書き込みましたが(【[967]陥入爪の治療】というスレッドです),恐らく画期的と思われる陥入爪(巻き爪)の治療を紹介するサイトを教えていただきました。 http://www.d1.dion.ne.jp/~birdy/etc/maki.htm
素人の方が「痛くなく,爪の食い込みを治せないか」と自分で試行錯誤してたどり着いた治療法のようですが,実に理に適っています。確かに,爪の陥入部分の内側を薄く削ってしまえば圧力で爪が広がってくることは容易に予想できます。
本来なら,この治療法を考案された「とりさん」の許諾を得てから紹介すべきなのですが,メールで連絡が取れないのでとりあえず,本人の承諾なしの紹介とリンクしています。もしもこの方をご存知の人がいらっしゃったら,何らかの形で連絡を取ってみていただけないでしょうか。
2006/05/30
2006/05/29
- 来年1月19日(金)に坂戸鶴ケ島医師会(埼玉県)で講演を行うことが決まりました。
- 先週金曜日は,同じ長野県内の浅間総合病院で講演でした。大きな病院ではありませんが,会場は満員で後ろの方には立っている人がかなりいたようです。質問も幾つか頂きました。お集まりいただき,ありがとうございます。
その後は,市内のお洒落なお店で,4人の先生方と懇親会。後半の方は,医学とは関係のない数学方面の話に暴走してしまいました。遅くまでおつき合いいただき,ありがとうございました。
- 大お勧め漫画『もやしもん』(石川雅之,講談社)の第3巻が出ていましたね。今回も細菌をめぐるさまざまな話題がありましたが,とりわけ,お酒をめぐる話がとても面白いですよ。
ちなみに,表紙をめくると,あの伝説の「世界で最も臭い食品」,シュールストレミングのお姿を拝めます。これだけでも見る価値があります。
- ジャワ島自身で既に死傷者が4000人を超えているようで,多数のけが人が出ているようです。もしも,救援活動に参加される方がいらっしゃいましたら,あらゆるタイプのケガ(擦過創,挫創,熱傷など)に治療効果を持つZNCを無償提供しますので私にご連絡下さい。これなら薄くて軽いため,100人のけが人1週間分の治療に必要な分でもリュックに入れて運べます。是非,多くのけが人を助けてあげてください。
- 抱腹絶倒のコメディー・ゾンビ映画の大傑作,《ショーン・オブ・ザ・デッド》について。これは面白い映画です。いろんなところに笑いがあり,しかも笑いは品が良く,一種の成長物語であり,友情物語であり,おまけにスプラッターシーンも満載。
最後の方で,ゾンビについて感染症として考察しています。
ちなみに,「こういう珍しいDVD,近くのレンタルショップで見つかりません」という連絡をいただくことがありますが,私はネットで借りられるレンタルサービスを利用しています。私の場合は,dmm.comを利用しています。少なくとも私が紹介した映画はここで見つかります。
2006/05/26
- 「ZNC治療例」に「接触性皮膚炎と思われる症例」を追加しました。三草会クラーク病院 整形外科の高橋大介先生よりの投稿です。この病名でいいのかどうかすら不明ですが,とにかく治りました,とのことでした。高橋先生,ありがとうございます。
- 8月19日の長崎保険医協会での講演,10月6日のけいゆう病院での講演の問い合わせ先について追加しました。
- 掲示板の【[962]止血のキモ】というスレッドの止血の原則,多くの人にとっては「目からウロコ」ではないでしょうか。つまり,動脈穿刺部やカテーテル抜去部は強くおさえるほど止血しにくい,軽くおさえたほうが止血する,ということです。
- 時々,「まめに読んだ本の感想を書いていますね」というメールをいただきますが,私の場合,本の感想とか解説を書くのは,その本を捨てるためです。何が書いてあったか,どういう本だったかを記録しておけば本が捨てられるからです。でないと,ただでさえ狭い部屋が本で埋め尽くされてしまいます。それを避けるためには本を捨てるしかありませんし,本を捨てるためにはその内容をどこかに残しておくことが必要になります。
- 今日は昼まで仕事をして,その後,長野県佐久市に移動し浅間病院で講演です。
2006/05/25
2006/05/24
- 8月19日(土)に長崎県保険医協会で講演を行うことが決まりました。
- 伝説的B級ホラー映画としてその名も名高い《案山子男》について。ここまで○○な映画とは! 私の想像をはるかに凌駕していました。こういう映画を作ろうと企画を出した人たちがいて,それに金を出す会社があり,しかもそれが映画館で上映されたという事実に驚きます。
- 一昨日,昨日とトヨタ記念病院から3名の方が見学に来ていらっしゃいました。
2006/05/23
- 高橋脳神経外科病院の井上道夫先生が「傷の閉鎖療法(湿潤療法)~デュオアクティブETの使用法~」という説明書を作ってくださいました。非常に良くできていますので,患者さんの説明用に有用と思われます。ご自由にお使い下さい,とのことです。
なおこのファイルですが,「被覆材」,「実際の治療例」からもダウンロードできます。
- 今読んでいるのが『共生という生き方 -微生物がもたらす進化の潮流-』(ウェイクフォード,シュプリンガー・フェアラーク東京)。まだ最初の部分しか読んでいませんが,面白いですよ。
特に,微生物学の父,ルイ・パスツールが「バクテリア=病原菌」と考えたことが諸悪の根源ではなかったのか,という指摘が面白かった。
パスツールはバクテリアを,恐ろしい病気をもたらす悪の権化と考え,人間の病気や不健康の原因はバクテリアだと考えていた。また彼は,政治的には保守派であり,彼は大衆 -革命時に王を殺し,貴族に対して恐怖政治をそそのかした- を恐れていた。彼は,平和を破壊した大衆をバクテリアになぞらえた文章をかなり残しているらしい。
・・・ってことは,パスツールは実験手技に関しては比類なき研究者にして開拓者だったけれど,単なる不潔恐怖症,強迫神経症だったんじゃないか? パスツールと同時代の学者には「病気の発生には栄養状態とか居住環境とか,そっちの方の影響が大きいと思うんだけど・・・」との疑問(もちろんこちらの方が正しい)に対し,パスツールは「病気の原因はバクテリアに決まっている」と頑としてはねつけた,というあたりも,強迫神経症くさいな。
パスツールの呪縛から細菌学が決別したのが20世紀後半。しかし,医学界ではいまだにパスツールの呪いにかかった状態で「創感染」とか「感染症」とか「院内感染対策」を考えているのではないだろうか?
そういえば日本にも,どう見ても不潔恐怖症,強迫神経症としか思えない「院内感染対策の専門家」がいますよね? パスツールの遺伝子を受け継いでいるんだな。
2006/05/22
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,和歌山県みなべ町の本多内科 本多康之先生,東京都新宿区の社会保険中央総合病院 外科 伊地知正賢,万代恭嗣先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 「ZNC治療例」に「指末節部の皮膚軟部組織欠損」を追加。このくらいの面積の欠損では,特に問題なく治りますので,「指の外科の専門家」でない先生たちも,自信をもって治療してみてください。
- 先週金曜日(19日)は千葉西総合病院で講演。この病院で3度目の講演ですが,今回がもっとも聴講者が多かった感じです。質疑応答も活発でした。
講演後は副院長の大森先生(以前から知り合いです)+前期・後期研修医の10数名の先生方と宴会。これも楽しかったです。ちなみに,宴会終了後に北松戸のホテルに移動しましたが,土砂降りの大雨でした。
- 画像はものすごく格好よくて凝っているんだけど,ストーリーがとても判りにくいのが唯一の欠点である(オイオイ)《MONSTER[モンスター] COLD & DARK》という映画について。「この新しいMP3プレーヤー,すごく格好良くてオサレでクールなんだけど,使い方が覚えにくくて,いつもマニュアルを持ち歩いているんだ。それさえなければ,いいプレーヤーなんだけどなぁ・・・」って感じ。
- 超ローカルネタです。松本駅がようやく自動改札になりました。これで,Suicaが使えるようになったらもっといいんだけど・・・。
2006/05/19
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,徳島県阿波市のさかまき整形外科 酒巻忠範先生にも加わっていただきました。ありがとうございます。
- 今日は昼まで外来で仕事をして,昼過ぎに松本を出発して千葉に向かい,千葉西総合病院で講演です。同院ではこれで3年連続,春に講演していて,年中行事化しています。
2006/05/18
- 「外傷を湿潤治療している医師」に,東京都中野区の能戸クリニック 外科 能戸保光,皮膚科 能戸知子先生,滋賀県草津市の若草診療所 整形外科 宮原健一郎先生にもご参加いただきました。ありがとうございます。
- 「掲示板」の方にも書きましたが,「トレチノインの短時間接触の糖尿病性潰瘍に対する効果 "The effect of short-contact topical tretinoin therapy for foot ulcers in patients with diabetes. Arch Dermatol. 2005 Nov;141(11):1373-7."」という論文ですが,メディカル・トリビューン誌に掲載されている論文の要約を読むと,意味がないというか意味不明の珍妙な実験としか思えません。もちろん,これでトレチノインの効果があると結論付けるのは無理です。
何より,ここでカデキソマーヨウ素ゲル(カデックス)を使っている意味がわかりません。しかも,トレチノインを作用させたのは4週間で,それ以降はカデックスを単独で塗布し,おまけに効果判定はカデックスしか使っていない16週目です。なぜこんなに不自然な実験系にしたのでしょうか。
気になって,PubMedで論文を検索し抄録を読んでみましたが,ここではカデックスについての記載は一切ありません。
そこでお願いなのですが,元論文の "Arch Dermatol. 141(11):1373, 2005." をお読みになった方がいらっしゃいましたら,なぜカデックスを使ったのか,本当にカデックスを使っていたのか,使っていたとしたらなぜ使ったのか,なぜ効果判定をトレチノインを使用していない16週後に行ったのか・・・について,論文ではどう言及しているかを教えていただけないでしょうか。よろしくお願い申し上げます。
- いつも晩御飯を食べている中華薬膳のお店(外来見学にいらっしゃった先生方にはご存知のお店ですね)で,「アボガドのてんぷら」を食べました。サツマイモのてんぷらにちょっと似ている食感で,それよりちょっとねっとりしていて甘みが強く,非常に美味でした。また食べてみたい味です。
こういう料理をさりげなく出してくれるので,また行きたくなるお店です。
2006/05/17
- この映画もよかったぞ。《リンダ リンダ リンダ》。女子高生4人が組んでバンドを作り,学園祭で演奏するという内容なんだけど,最後の演奏場面は大迫力! 途中のいろいろなエピソードも泣かせます。
- 現在,三輪書店から出す予定の本の執筆に取り掛かっていますが,日中は全く時間が取れないため(研修医の教育とか,見学の先生方への説明とか),「朝5時ちょうどの起床し,ホームページの更新やメールの返事書きをして,余った時間で原稿書き」生活がずっと続いています。早起きは三文の得,ってやつですが,実は単に,歳をとって早起きになっただけのことかもしれません。ちなみに,現在,朝5時53分です。
2006/05/16
2006/05/15
- 先週金曜日は静岡県浜松市での静岡県保険医協会で講演でした。静岡では5回目の講演ですが,浜松市では初めてとなります。広い会場で8割ほどの席が埋まり,講演後もたくさん質問を頂きました。多数お集まりいただき,ありがとうございました。
講演後は6人の先生がたと懇親会。ここでも美味しい魚とお酒を楽しみながら,さまざまな話をさせていただきました。楽しかったです。また来月,静岡で講演が予定されていますが,すでに宴会の予定が入ってしまいました。
翌朝,新幹線こだまに乗って東京駅に向かいました。こだまに乗るのは久しぶりですが,静岡県の広さ(というか長さ)を思い知らされました。走っても走ってもまだ静岡県,何度駅で停車してもまだ静岡県。
以前,羽越本線の特急で新潟県から秋田まで移動したことがありましたが,新潟県も「走っても走っても新潟県」でしたが,それを思い出しました。
- この一年で見た映画の中でベストの作品,《シンデレラマン》を紹介。この映画は本当に素晴らしいです。見ていて何度も涙がこみ上げてきました。涙をこらえることができませんでした。
そして,この映画に関連して,沢木耕太郎とヘミングウェイの短編も紹介。キーワードは "The Undefeated" です。
2006/05/12
- 先日,マスコミで有名になった「ニューヨークのマジシャン,1週間水中生活への挑戦」ですが,「手や足の皮膚がふやけて痛々しい」という声がありましたが,結局,水から上がったらすぐに治ったようです。
ということは,「傷のない健常な皮膚を1週間水に入れておくと,ふやけることはあっても損傷されることはなく,皮膚の変化は可逆的であって心配することはない」,ということを証明しているわけですね。この点は評価してあげようと思います。つまり,「密封すると皮膚は浸軟して損傷される」という記述は嘘っぱちだということを彼が身をもって証明してくれたわけです。偉いぞ,ディビット@マジシャン君。
- 寄生虫パニック映画,《パラサイト 殺人寄生虫》について。寄生虫がウジャウジャいる牛肉を住民たちがパクついているシーンが,「みんなでかかろう狂牛病」みたいで怖いです。もしかしたら,「アメリカの牛肉を食うのは危ないよ」というアメリカ発の告発映画なんでしょうか。だとしたら,アメリカ映画,偉いぞ。
- 今日は昼間で通常の外来診療,その後,名古屋経由で浜松に移動し,静岡県保険医協会で講演です。
2006/05/11
- 「ZNCの利用例」に「臀部膿瘍切開後の治療」を追加。感染性粉瘤もそうですが,周囲の発赤などの炎症症状が激しい場合,傷を縫合できないために開放創として治療することになりますが,こういう場合,アルギン酸塩とZNCの組み合わせが有用です。
2006/05/10
- 最近,微生物関係の基礎的知識を仕入れていますが,次に読もうと思っているのが『微生物生態学入門 -地球環境を支えるミクロの生物圏-』(日本微生物生態学会 教育研究部門会 編著)です。勉強すればするほど,自分がいかに微生物学や生物学の基礎すら知らないかを思い知らされます。「己の無知を知るための勉強」ってとこでしょうか。
- おどろおどろしいタイトルとジャケットのわりには,内容は宗教映画だったりする《ダーク・チャイルド 血塗られた系譜》について。こういう宗教どっぷりの映画に登場するトンデモナイ教え(・・・私からすれば・・・)をまともに信じている連中は,単なるアホにしか見えません。多分こいつらは,自分の脳味噌で考える,という習慣がないと思われます。神の言葉を伝えるより先に,自分の考えを言え,と言いたくなります。
2006/05/09
- あまりに理路整然と作られたため,関心はするけど感動しないというホラー映画,《スケルトン・キー》について。テーマそのものはいいし,作り方次第では傑作になったはずなんだけど・・・。
- 昨日は連休明けということもあり,外来はかなり混み,治療について十分に説明する時間も取れないほどでした。年中行事といえばそれまでですが,外来診療という視点からすると,今回のような3日以上の連休はあまりうれしくありません。患者さんにトラブル(例:出血,血腫形成,感染など)が起きたとか,事態が急変したときに対処できないからです。今までも何度も,「長期連休中のトラブル」で苦汁を舐めました。もちろん,連休中に出てきて診療すればいいだけのことなんだけど・・・。
2006/05/08
2006/05/06
2006/05/05
- 〔悪魔崇拝系オカルト〕+〔竜巻パニック〕映画,《デビルズ・ストーム》について。こういう悪魔崇拝系,「聖書は真実が書かれている」系の映画はどうも苦手というか,アホ映画の方が余程楽しめます。
- 『培養できない微生物たち -自然環境中での微生物の姿-』(学会出版センター)を読書中。とても面白いです・・・ちょっと難しいけど。
2006/05/04
- モンスターの着ぐるみがあまりに雑で唖然とするモンスター映画,《キラー・シャーク 殺人鮫》について。ヒロインがちょっと井上和香ちゃんに似ていて,それがこの映画唯一のとりえです。
- ああ,また一つ歳をとってしまった。あと365日で50歳になっちまうってことだな。カウントダウン,はじまり,はじまり。
2006/05/03
- 「少年写真新聞」の5月8日号に『きずが早く治る治療ってどうするの?』が掲載されました。小学校の保健室などに張ってある新聞見開き大の壁新聞で,わかりやすい説明と写真で治療が説明されています。病院の待合室などに張っておくと効果的かもしれません。ご興味をお持ちの方は,少年新聞社に連絡してみてください。
- 『ゴッドハンド輝』の作者,山本航暉先生の公式サイトで拙書『さらば消毒とガーゼ』(春秋社)を紹介していただきました。山本先生,ありがとうございます。
- 最近,ちょっとピアノネタが続いていますが,とりあえず
中国の暴走パンダ,ランラン君がホロヴィッツ編曲の「ハンガリー狂詩曲第2番」を豪腕で演奏しています。かなり暴走気味です。上半身の動きがカンフーしています。
この編曲を一度聞いたらもう,リストの原曲がやけに簡単な曲に見えてきますよ。ホロヴィッツ自身の演奏もすごいので,ぜひ,探して聞いてみてください。
- さて,連休中ですが,B級アホ映画の感想などで更新を続ける予定です。
2006/05/02
- これまで登別の病院で「外傷の湿潤治療」を行っていた和田先生が同じ北海道内の今金町国保病院に移動されたため,登録病院を変更しました。
同様に,これまで長崎県で活動されてきた山口先生が福岡県の久恒病院病院に移動されたため,こちらの情報も修正しておきました。
- クズ映画の宝庫,アホ映画の殿堂といえばアルバトロス。そういう期待(?)を裏切らない一作,《人間蟲》。「だから人間蟲って何なの? それってどういう形をしているの? どうやって人間に寄生するの?」という幾多の疑問に意地でも答えてくれない姿勢がナイスです。
- 雑誌「サイゾー」5月号でライターの山形浩生さんが面白いことを書いていた。安楽死と人工呼吸器の問題である。その文章を一部引用させていただく。
「その患者たちは,もう回復の見込みはなく,機械に生かされているだけの状態だった。だったらもうその人たちの生の可能性は尽きている。その人たちがこの世でできることはもう終わっている。(中略)
ある人は(中略)自然に死ぬのを待つのが正しいという。でもそれを言うなら,その人たちの生は,もはや自然ではなかったということも考えるべきだろう。(中略)だから,その自然な死というのも自然じゃない。機械による補助を乗り越えて,さらに頑張って死ななくてはならないわけだ。(中略)機械がつけたハンデを乗り越えて自然死よりさらに数段徹底して死んで見せないと死ねないことになる」
まさに正論だと思う。頑張らないと死なないんだよね,機械が死ぬのを邪魔するから。
今回は,人工呼吸器をはずすことの是非が議論になっているが,それを問題にするなら,それ以前に人工呼吸器をつけることの是非を問題にしなければ,議論のバランスが取れないと思う。
多分,現時点で一番いい解決方法は,呼吸が止まりそうになったら家族に「人工呼吸器をつけますか?」と聞き,Yesならつけ,Noならつけない。人工呼吸器をつけても回復の見込みがないと判断されたら,とりあえずはずしてみる。はずしてみて呼吸が止まりそうだったら,また家族に「人工呼吸器をつけますか?」と判断を委ねる。このように単純化するのが,最もトラブルがないと思うのだが,いかがだろうか。
2006/05/01
- 先週金曜日は群馬県高崎市医師会で講演でした。会場は満員状態で「高崎にこれほど医者がいたの?」という声が医師会の先生からあがるほどで,160人を超える医療関係者の方々が参加されたそうです。講演後の質疑応答もたくさん質問をいただき,ありがとうございました。
その後は場所を移して懇親会へ。医師会の先生2人,協賛のキッセイ薬品の方2名と地酒なんぞを飲みながら,いろいろな話をさせていただきました。中でも,キッセイ薬品のMRさんがもともと物理や化学が得意ということで,数学系の話や物理系の話で盛り上がって(?)しまいました。
講演にお集まりいただいた方々に感謝いたします。
- 微生物学系の本に興味があり,本屋さんを見ていて気がついたが,医学書コーナーに並んでいる本は「感染症の起炎菌としての微生物」という視点で書かれている物ばかり,一方,生物学系コーナーの本は「自然界における細菌の微生物,生態系を支える微生物」という視点で書かれているものが多いのだ。要するに,医学書での微生物は「人間に病気を起こす厄介者,人類の敵」という視点の物が多いのに対し,生物学書での微生物とは「生態系を支えるもっとも重要な一員」という視点である。
多分,正しいのは後者だと思う。
- さらに先日,バイオフィルムについての本を読んだが,そこで「生きているが培養できない微生物」という言葉,"viable but nonculturable" (VBNC) に出くわした。多分,微生物学の専門の方々にはもう既に一般的な概念かも知れないが,少なくとも私は初めて目にした。私の野生の勘が「この概念は多分,感染症とか消毒をめぐる問題の次の突破口になるんじゃない?」と言っている。これは学ばねばいけない。
というわけで,本屋さんで見つけました。『培養できない微生物たち Nonculturable Microorganisms in the Environment』(R.Colwell,学会出版センター, \7,000)。最近,医学書を全く買わない私にとっては,7000円はかなりの高額本である。
まだ,最初の数ページを読んだだけだが,VBNCという状態はあらゆる環境の微生物に普遍的に見られるもので,自然界で生活している微生物はむしろ,この状態の方が普通らしい。要するに,特殊な状況ではない。
そういえば,先日読んだバイオフィルムの本にもあったが,コレラは流行期には生きているコレラ菌が水の中から見つかるが,非流行期では全く見つからず,この時期のコレラ菌はどうやって生きているのか(死んだら生き返れないからね),全くわかっていないらしい。これがVBNCである。
ということは,病原菌が病原性を発揮するのは常に病原菌が有している能力のためなのか,あるいは,何か普通でない状態になったために病原性を有するようになってしまったのか,ということになりそうだ。
山勘だが,このあたりは多分,人体常在菌にも大いに関わりがあるんじゃないかと思う。
- 先日,Adam Golkaというピアニストの演奏が聞けるサイトを紹介したが,同様の物凄い演奏が画像付きで聞けるサイトを教えていただいたので,ちょっと紹介。ご興味をお持ちの方はご覧下さい。
前者ではVolodos自作の編曲「ラフマニノフのイタリアンポルカ」が凄まじい爆演です。ぶっ飛んでいます。そして楽しいです。その証拠に,聴衆たちがノリノリ状態です。
後者ではHamelin作曲の「ハンガリー狂詩曲第2番のカデンツァ」が聞けます。冒頭から2/3くらいまでは優等生の演奏をしていますが,後半のカデンツァで大暴走し,超絶技巧を駆使して長大かつ凄絶,前代未聞,空前絶後のカデンツァを聞かせます。私は楽譜を見て,右手と左手で別々の調性で演奏する部分があり,おまけに難技巧部分の連続だったため,弾くことを諦めました。
また,Horowitzで検索すると,ホロヴィッツ自身が演奏するスクリアビンの『炎に向かって』が見られます。ちなみにこの曲は私も以前よく演奏していた曲で(もちろん,今はぜんぜん弾けないけど),古今東西で最も優れたピアノ曲の一つだと思っています。
同様に,Cziffraを検索すると,あの大傑作「熊蜂の飛行」を聞くことができます。
VolodosやHorowitzのアレンジを演奏するピアニストが次第に増えていて,上記のサイトでも若手ピアニストの演奏が聞けますが,やはりVolodosやHorowitzには敵わないというか,ぶっ飛び方が「常識レベル」なんですね。特に,Volodos自身による「イタリアン・ポルカ」は,大見得を切っては「どおだぁ,まいったかぁ」というオーラを撒き散らしての演奏ですが,こういう曲を弾くときはお行儀よく弾いちゃ駄目なんですよ。