40代男性。数日前より左臀部が腫れてきて痛みが出てきたため,4月11日,当科を受診。臀部膿瘍の診断で診断で直ちに切開を行った。
4月11日:初診時の状態 | 切開後,アルギン酸を充填 | さらにプラスモイストで被覆 |
4月12日の状態。局所麻酔下に切開を行ったが,皮膜はなかった。切開創の長さは6cmだった。切開後は膿瘍腔にアルギン酸塩被覆材を充填し,絆創膏で固定。さらにその上をプラスモイストで広く被覆した。
通常,アルギン酸塩はフィルム材で被覆するが,感染創であるために完全密封したくなかったため,吸収力のあるプラスモイストで「準密封」することとした。プラスモイストの上にガーゼを当てたが,翌日,ガーゼへの染み出しはなかった。
4月12日:アルギン酸を除去したところ | 4月12日 | 4月18日 |
翌日,アルギン酸を除去した。発赤は消え,圧痛もなくなった。出血がなかったため,プラスモイストを貼付するのみとし,入浴も許可した。以後は,自宅でプラスモイストを交換してもらった。1週間後にきてもらったが,創は肉芽で平坦となっていた。
5月2日 |
1cm弱の線状肉芽を残すのみとなった。自分でプラスモイスト交換することとして,通院終了とした。
膿瘍切開,感染性アテローム切開後の処置であるが,通常はガーゼの充填が行われるが,ガーゼの網目が食い込むため,翌日ガーゼを除去する際には痛みを訴える患者がほとんどだ。この点,アルギン酸は創面に固着しないし,自重の20倍の水分を吸収できるため,膿瘍内を充填するのに効果的である。
問題は,その上をどうするかである。膿瘍が大きい場合,浸出液が多量に出ることが予想される場合は,直接紙オムツを当てるが,通常はプラスモイストを貼付し,その上に薄くガーゼを当てるのみとしている。このくらいのサイズの膿瘍だと,プラスモイスト単独でも大丈夫なようである。
また,切開翌日からは,プラスモイスト単独貼付で十分である。
(2006/05/11)