このサイトの「湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)をしている医師」にも登録されている内科の李先生からの治療例の投稿です。内科医でもここまでできるというのはすばらしいと思います。
症例は55歳男性で,痛風腎のため人工透析導入となり,現在,週3回の透析をしている。昨年の暮れ,足背の痛風結節が自壊して潰瘍化し,診察した内科の当番医が抗生剤の点滴と消毒を指示した。
なお,第1趾は変形しているが,18年前に同様の「痛風結節の自壊」があり,5ヶ月間整形外科に入院治療した際,下の写真に見るような変形が残ったそうである。
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写真1や2を見ると,恐らく一部で骨膜は露出していたと思われる。腱も剥き出しかな? 通常,こういう状態の創を見ると整形外科医は,「骨露出→骨髄炎併発」を恐れ,抗生剤投与と消毒を始めるが,この例を見ると,それらが不要であることがわかると思う。
つまりこのように,血流の怪しげなところはどんどんデブリードマンし,創面に対しては湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)をするだけで創面は肉芽で覆われ,感染を起こすことなく創閉鎖が得られるのだ。
逆に写真1、2の状態で感染を恐れて消毒するとさらに壊死が進行し,感染を誘発することになる。「消毒すると感染しやすくなる」というと逆説のように聞こえるかもしれないが,これが唯一の真実である。
また上記のように,この患者さんは18年前にも痛風結節自壊を経験しているが,その時は潰瘍自体は小さかったにもかかわらず変形を残している。これは恐らく,骨髄炎を起こし,その治療のために骨の一部を切除したためだろうと思われる。この骨髄炎はまさに「消毒が引き起こした骨髄炎」であろう。
このような症例の局所治療についてまとめると,出血の見られる部分まで十分にデブリードマンを行い,その後はアルギン酸で被覆し,数日後からは「ラップ療法」がいいと思う。被覆材を使うならハイドロサイトあたりだろうと思うが,ハイドロコロイドは初期には使わない方が無難(感染を起こすことがあるため)。また,PGE1(プロスタンディンなど)の点滴投与を併用するのもいいと思う。
(2004/03/23)