痛風結節の自潰の治療例(李先生よりの投稿)


 このサイトの「湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)をしている医師」にも登録されている内科の李先生からの治療例の投稿です。内科医でもここまでできるというのはすばらしいと思います。


 症例は55歳男性で,痛風腎のため人工透析導入となり,現在,週3回の透析をしている。昨年の暮れ,足背の痛風結節が自壊して潰瘍化し,診察した内科の当番医が抗生剤の点滴と消毒を指示した。
 なお,第1趾は変形しているが,18年前に同様の「痛風結節の自壊」があり,5ヶ月間整形外科に入院治療した際,下の写真に見るような変形が残ったそうである。

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  1. 自壊から3日目,ナースが撮影した写真。

  2. 自壊から5日目,李先生が診察し,デブリードマン開始。仕事の関係で休みが取れないとのことで,外来通院で治療することとなった。

  3. 自壊より7日目でデブリードマン前の状態。数日で結節はほぼ切除され,深い組織欠損となった。このため主治医より「今後の治療は李先生に任せます」と全権委任。
    以後,水道水洗浄し,「オプサイトを貼り付けた 母乳パッド」を創部に貼付。その後2週間ほどは「絞れば尿酸のドロドロが奥から出て2日でパッドはドロドロ」という状態が続いたが,次第に少なくなった。

  4. 自壊より36日目,まだ壊死組織は残っているが感染症状はない。表面のモヤモヤが気になり切除をしたが,透析でヘパリンを使用しているため出血することがあり,それ以上は切除せずに残しておいた。
    自壊より70日目頃からハイドロコロイドの貼付に切り替えた。

  5. 自壊から74日目,創はほぼ上皮化した。
    ちなみに患者は18年前の痛風結節自壊した際に整形外科に入院して治療を受けているが,非常に痛い処置が毎日続き,毎日の回診が恐怖だったそうだ。
    またさらに付け加えると,今回の自壊に比べ,前回の方がかなり小さかったそうである。


 写真1や2を見ると,恐らく一部で骨膜は露出していたと思われる。腱も剥き出しかな? 通常,こういう状態の創を見ると整形外科医は,「骨露出→骨髄炎併発」を恐れ,抗生剤投与と消毒を始めるが,この例を見ると,それらが不要であることがわかると思う。
 つまりこのように,血流の怪しげなところはどんどんデブリードマンし,創面に対しては湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)をするだけで創面は肉芽で覆われ,感染を起こすことなく創閉鎖が得られるのだ。

 逆に写真1、2の状態で感染を恐れて消毒するとさらに壊死が進行し,感染を誘発することになる。「消毒すると感染しやすくなる」というと逆説のように聞こえるかもしれないが,これが唯一の真実である。

 また上記のように,この患者さんは18年前にも痛風結節自壊を経験しているが,その時は潰瘍自体は小さかったにもかかわらず変形を残している。これは恐らく,骨髄炎を起こし,その治療のために骨の一部を切除したためだろうと思われる。この骨髄炎はまさに「消毒が引き起こした骨髄炎」であろう。


 このような症例の局所治療についてまとめると,出血の見られる部分まで十分にデブリードマンを行い,その後はアルギン酸で被覆し,数日後からは「ラップ療法」がいいと思う。被覆材を使うならハイドロサイトあたりだろうと思うが,ハイドロコロイドは初期には使わない方が無難(感染を起こすことがあるため)。また,PGE1(プロスタンディンなど)の点滴投与を併用するのもいいと思う。

(2004/03/23)

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