市販されている創傷被覆材・・・として使えるもの


 一般向けに売られている商品のうち,「外傷治療用」ではないものの,その実体が立派な「創傷被覆材」であるものが幾つかある。それらは「靴ずれ予防用」として,あるいは「タコ,ウオノメ用」として市販されていて,薬局の「傷絆創膏コーナー」からちょっと離れたコーナーにひっそりと置かれていたり,場合によってはスポーツ店の一角に並んでいたりする。

 ここでは実際に筆者が買い求めたものについて,「医学的印象」とまとめて書いてみることにする。あくまでも筆者のポケットマネーで購入したものであり,発売元のメーカーには一切連絡を取っていないことは最初に断っておく。

 また,これらは全て「傷や水疱には使わないように」という注意書きが必ず添付されているため,これを傷に使用してみようとお考えの方は,このサイトを十分にお読みいただき,治療原理を十分に理解したうえで,あくまでも自分の判断で使って欲しい


 下記の写真は,実際に薬局で購入したものの写真だが,「皮膚に付ける側」を上にして撮影している。大きさが良くわかるように(?),隣にコンパクトフラッシュを並べておいた。タバコと並べるより,何となく知的な感じがしますよね・・・何となく。

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  1. これはJohnson & Johnsonの【マメ・靴ずれブロック レギュラーサイズ】。成分はハイドロコロイドであるが,コロプラスト社のコムフィールと製品の質感,手触り,辺縁が薄く細工されている様子など,全く同一であり,同じ製品である(と思う)
    サイズが大きく(4.2cm×6.8cm),これが4枚入って700円くらいだった。これくらいの大きさがあれば,少々の傷は完全に覆えそうだし,手足や顔面(特に額や頬部)には威力を発揮しそうだ。しかし,厚みが結構あるのと,柔軟性にやや乏しいため,指尖部などに使うのは難しいかもしれない。
    いずれにしても,病院で使っている創傷被覆材と同一であり,湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)には十分使えるはず。

  2. (株)エスエスエル ヘルスケア ジャパン「ドクター・ショール」という商品シリーズの一つで【靴ずれ・まめ用ジェルプラスター 手指/足指用】。これもハイドロコロイドである。
    特徴としては,ハイドロコロイドの両脇に超薄型透明フィルム(写真では支持用の紙を剥していないため白く見えるが,この紙をはがすと透明なフィルムになっている)が付いていて,固定力を増している点。このフィルムは明記されていないが,ポリウレタンフィルムと思われる。
    これは「指用」のためハイドロコロイドは小さいが,「かかと用」はもうちょっと大きいと思われる(商品としては未確認)。「指用」は5枚入って600円,「かかと用」は700円。
    もちろんこれも十分に「創傷被覆材」として使えるはずだ。

  3. 三進興産(株)の【ソルボバン レギュラータイプ】。もちろんこれも「靴ずれ用」。販売元会社のホームページを見ると「人工筋肉・ソルボ」とあり,成分が何か明記されていないが,私が購入した「ソルボバン」の包みを見ると「ソルボ(ポリウレタン)」とある。となると,被覆材のポリウレタンと同じかが問題になるが,触ってみた感じでは被覆材のポリウレタンより硬い感じである。恐らく,水分吸水能などは違っているのではないかと思われるが,創面にあてても固着しないような印象だ。
    被覆材としての問題点は,ポリウレタンの表面を「水に強く,通気性,伸縮性に優れた」テープで覆っていること。すなわち,「家庭用キズ絆創膏」と同じ構造をしているため,これでは「湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)」にはならないのが惜しい(もちろん,一般向けの商品だから「通気性」をうたうのは,戦略上は正しい)
    同社のサイトを見ると「ソルボバン フリータイプ」と言うのがあり(100×150mmが1枚入って700円),これと「市販用の水を通さないフィルム」を組み合わせると,立派な湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)ができそうだ。


 問題はなぜこれらの商品が,「創傷用・外傷用」として販売されていないかだが,もちろんこれには歴史的経緯が反映されているはずだ。

 わが国にハイドロコロイドが初めて紹介されたのは,創傷被覆材ではなく,ストーマ(人工肛門など)用の医療材料,という位置付けだったはずだ。
 人工肛門は手術で作るのは簡単だが,便が付着する周囲の皮膚に皮膚炎が付き物で,これが悩みの種だった。それを解決したのがハイドロコロイド(カラヤゴム)だった。皮膚への刺激がなく,密着性がよく,便が皮膚に付着する事を許さないその素材は,まさに人工肛門のためには理想的な材料だった。

 その後,「ハイドロコロイドを市販品として売れ」と海外の本社に命令(多分)された子会社としては当然,この「人工肛門のための医療材料」の延長として,その特性をメインに据えた商品を考えたはずだ。それが「靴ずれ予防」だったのだろうと思う。「第二の皮膚」のごとく踵の皮膚になじむハイドロコロイドは,まさに理想的だった(・・・ううむ,適当な想像で書いちゃったぞ。J & Jさん,間違っていたら指摘してね)

 その後,ハイドロコロイドは褥瘡治療という「第二の販路」を得る事になり,広く普及したが,「外傷治療用」という第三の使い方が広く知られるようになったのは21世紀になってからだ。

 恐らくこのような経緯から,市販品としてのハイドロコロイドは「靴ずれ予防用」という効能に限定されて発売され,それが現在まで続いているのだろう。そのため「傷や水疱があったら使えません」という,その本質的効用を無視したただし書きが書かれているのだろう。


 ・・・と思っていたら,Johnson & Johnsonから「出血を伴うキズに」とうたった【バンドエイドクイックヘルプ】という製品が市販されていますが,これはアルギン酸付きのバンドエイドです(成分についてはメーカーに確認済み)。表面が防水テープらしいので湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)に使えるでしょうし,もちろん止血効果もあるはずです。ちなみにお値段は15枚入りで360円だったかな?

(2002/12/30)

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