一般向けに売られている商品のうち,「外傷治療用」ではないものの,その実体が立派な「創傷被覆材」であるものが幾つかある。それらは「靴ずれ予防用」として,あるいは「タコ,ウオノメ用」として市販されていて,薬局の「傷絆創膏コーナー」からちょっと離れたコーナーにひっそりと置かれていたり,場合によってはスポーツ店の一角に並んでいたりする。
ここでは実際に筆者が買い求めたものについて,「医学的印象」とまとめて書いてみることにする。あくまでも筆者のポケットマネーで購入したものであり,発売元のメーカーには一切連絡を取っていないことは最初に断っておく。
また,これらは全て「傷や水疱には使わないように」という注意書きが必ず添付されているため,これを傷に使用してみようとお考えの方は,このサイトを十分にお読みいただき,治療原理を十分に理解したうえで,あくまでも自分の判断で使って欲しい。
下記の写真は,実際に薬局で購入したものの写真だが,「皮膚に付ける側」を上にして撮影している。大きさが良くわかるように(?),隣にコンパクトフラッシュを並べておいた。タバコと並べるより,何となく知的な感じがしますよね・・・何となく。
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問題はなぜこれらの商品が,「創傷用・外傷用」として販売されていないかだが,もちろんこれには歴史的経緯が反映されているはずだ。
わが国にハイドロコロイドが初めて紹介されたのは,創傷被覆材ではなく,ストーマ(人工肛門など)用の医療材料,という位置付けだったはずだ。
人工肛門は手術で作るのは簡単だが,便が付着する周囲の皮膚に皮膚炎が付き物で,これが悩みの種だった。それを解決したのがハイドロコロイド(カラヤゴム)だった。皮膚への刺激がなく,密着性がよく,便が皮膚に付着する事を許さないその素材は,まさに人工肛門のためには理想的な材料だった。
その後,「ハイドロコロイドを市販品として売れ」と海外の本社に命令(多分)された子会社としては当然,この「人工肛門のための医療材料」の延長として,その特性をメインに据えた商品を考えたはずだ。それが「靴ずれ予防」だったのだろうと思う。「第二の皮膚」のごとく踵の皮膚になじむハイドロコロイドは,まさに理想的だった(・・・ううむ,適当な想像で書いちゃったぞ。J & Jさん,間違っていたら指摘してね)。
その後,ハイドロコロイドは褥瘡治療という「第二の販路」を得る事になり,広く普及したが,「外傷治療用」という第三の使い方が広く知られるようになったのは21世紀になってからだ。
恐らくこのような経緯から,市販品としてのハイドロコロイドは「靴ずれ予防用」という効能に限定されて発売され,それが現在まで続いているのだろう。そのため「傷や水疱があったら使えません」という,その本質的効用を無視したただし書きが書かれているのだろう。
・・・と思っていたら,Johnson & Johnsonから「出血を伴うキズに」とうたった【バンドエイドクイックヘルプ】という製品が市販されていますが,これはアルギン酸付きのバンドエイドです(成分についてはメーカーに確認済み)。表面が防水テープらしいので湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)に使えるでしょうし,もちろん止血効果もあるはずです。ちなみにお値段は15枚入りで360円だったかな?
(2002/12/30)