小児の頭皮裂傷


 これは以前,当サイトの掲示板でも話題になっていたが,小児の頭皮裂傷の簡便な治療法についてである。ここでは,創縁周囲の頭髪を交差させて創縁を引き寄せ,生体接着剤のダーマボンドで創を閉鎖する方法が紹介されていた。原著は次の論文などのようなので,ご興味をお持ちの方は読んでいただきたい。

  1. Hock MO, Ooi SB, Saw SM, Lim SH.: A randomized controlled trial comparing the hair apposition technique with tissue glue to standard suturing in scalp lacerations (HAT study). Ann Emerg Med. 2002 Jul;40(1):19-26.
  2. Brosnahan J.: Treatment of scalp lacerations with a hair apposition technique reduced scarring, pain, and procedure duration compared with suturing. Evid Based Nurs. 2003 Jan;6(1):17.
  3. Weick R, Stevermer JJ.: Hair apposition technique is better than suturing scalp lacerations. J Fam Pract. 2002 Oct;51(10):818.

 極めて簡便であり,痛みもないし,画期的な方法である。


 私の病院ではダーマボンドがなかったので,代わりにノベクタンスプレーを使ってみた。これなら,どこの病院にも転がっているだろう。

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  1. 1歳男児の初診時の状態。1時間ほど前の受傷で出血は止まっていた。もしもまだ出血しているようなら,圧迫止血する。

  2. 傷の左右の髪の毛を引き寄せて皮膚をしっかりと閉じたことを確認してから,引き寄せた頭髪にノベクタンスプレーをかける。
    ノベクタンは傷に入ると痛いので,傷からちょっと離れた部位にかけたほうが良いと思われるが,私のこれまでの経験(数例だけど)では,傷さえしっかりと閉じられれば,傷直上へのスプレーでも大丈夫そうである(子どもが痛そうにしていないから,多分大丈夫でしょう)

  3. 翌日の状態。しっかりとくっついていることが判る。

 なお,ノベクタンは乾くまでに時間がかかるため,ヘア・ドライヤーをあらかじめ準備し,スプレーすると同時に温風を当てると早く乾くので,これは外来に常備しておいた方がよさそうだ。
 また,シャンプーは,受傷翌日に見て異常がなければ,「今晩か,明晩からシャンプーしても大丈夫だよ」と説明している。

(2004/03/26)

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