褥瘡は細菌培養しなくていい・・・と思う


 以前にも「感染していない褥瘡は細菌培養する必要はない」と書いたが,今回はさらに敷衍し「感染している場合を含め,あらゆる状態の褥瘡は細菌培養しなくていい」ということを立証してみる。


 まず,感染を伴っていない褥瘡,つまり "colonization" の状態では細菌培養は必要ない。たとえMRSAが検出されようと緑膿菌が出ていようとそれは「患者に無害」であり,抗生剤などで除去する必要はない。
 したがって,細菌培養検査の結果によって治療法が変わるわけでなく,細菌培養によって得られるデータは治療にも予後にも全く無関係。だから,培養するのは無駄である。

 ただ,処置の際には「MRSAが存在」していることを前提に,ディスポの手袋をつけながら処置することが必要になる。その患者さんには無害なMRSAでも,他の患者に移動するのはまずいからだ。


 次に,感染を伴っている褥瘡。要するに,黒色壊死が覆い,その下には膿が溜まり,周囲の皮膚に炎症症状が見られ,全身性の発熱を伴っている。こういう褥瘡に対しては,デブリードマンを行い,ドレナージを図るのが普通だろう。デブリードマンをしないで細菌培養だけする,という選択枝は無いはずだ。

 というわけで,デブリードマンをして,ついでに細菌培養をしたとして,その結果がわかるのは4日後だ。ドレナージがうまく効いていれば,その頃には発熱は治まっているはずだ。後はドレナージを続ければ,自然に赤色期に移行するはずだ。この場合,抗生剤投与は必要なく,当然のことながら,細菌の種類がわかってもそれは治療に影響を及ぼさない

 では,4日たっても発熱が治まっていない場合はどうだろうか。デブリードマンが不十分で排膿が不十分であることを意味する。あるいは開放されていない膿瘍が残っているかもしれない。このような症例に対し,感受性のある抗生剤を投与したとして,それで発熱が治まり,膿が出なくなるだろうか。常識的に考えれば,多分無理だろう。
 このような場合,抗生剤を投与するヒマがあったら,CTなどで残っている膿瘍がないかどうかを探ったほうがよほど意味があるはずだ。


 このように考えると,すべての病期の褥瘡では細菌培養する必要がない,という結論が導き出せる。

(2003/06/24)