エロとグロと残虐シーンが連続する連続殺人鬼一家を描いたシリーズの第2作目にあたります。前作はロブ・ゾンビ監督の初めての映画ということでセンスのいいシーンと稚拙なシーンがアンバランスな感じでしたが,これはとてもよくできたロード・ムービーになっています。音楽のセンスは前作同様に抜群ですし,シーンの切り替えも非常に工夫しています。つまり,より普通の映画(といっても内容はひどいけど)っぽくなったというか,まともな映画になったという感じでしょうか。とはいっても,18歳未満お断りというか,子供には見せたくない映画ベスト10入り確実な映画なんで,良識ある方は見ないほうが無難かと思います。
で,映画の内容ですが,完全に第1作の設定を引き継いでいますので,おそらく,この第1作目を見ていない人には登場人物が全然わからないと思います。ですので,これを見ようという物好きな人は,まず前作から見たほうがいいです。
主人公はテキサスのド田舎で連続大量殺人を好き放題繰り返してきたファイアフライ一家。この一家をついに突き止めた警察が一家の家をぐるりと囲むところから始まります。そして,母親は捕まりますが,兄のオーティスと妹のベイビーは辛くも逃げ出します。そしてもう一人弟がいるんですが,こいつは前の晩に家を抜け出して人殺しを楽しんでいて,最後の最後に登場します(このあたりはやはり,前作を見ていない辛いです)。そして兄妹は父のキャプテン・スポルディングに連絡して合流し,バンドマンたちを殺しながら逃避行を続け,ついにキャプテンの古い知り合いチャーリーの経営するいかがわしい店にたどり着きます。
一方,この一家に兄を殺された保安官のワイデルはこのクズどもを抹殺することが自分の使命と考え,復讐に燃えて執拗に追跡してきます。そしてついにキャプテンのつながりからチャーリーを割り出したワイデルは,チャーリーを痛めつけ,キャプテン一家を罠にかけ,コカインと酒でヘロヘロになっている一家を捕まえます。そしてついに,ワイデルの報復が始まる・・・・というストーリーです。
とにかくすごいのは,保安官のワイデルが動けないように椅子に縛り付けた一家の一人一人を痛めつけていくシーン。法を守るべき保安官の立場を忘れ,狂ったように釘を両手に打ち付けていくワイデルの姿は,この一家の狂気が乗り移ったかのような異様な迫力です。ほとんど狂っています。しかし,このスポルディング一家の無法をさんざん見てきた観客としては,「もっとやれ! こんなことで許しちゃだめだ。もっと痛めつけろ!」という気分になってくるのは否定できないでしょう。この一家の一人一人が悲鳴を上げるシーンは,それだけでカタルシスを覚えてしまったことは否定しません。
しかし,ワイデルにちょっと残っている良心のためか,痛めつけはするものの,最後のとどめは刺しません。こういうゴキブリよりしぶとい連中は,心臓が止まるまで気を許しちゃだめなんだということがよくわかります。「情けは人のためならず」という言葉は,「情けをかけるとやがて自分に災厄が降りかかってくるぞ」ってな意味だったっけ,という気分になってきます。
最後の最後もいろいろな考えがあるでしょうが,私はこれでよかったと思います。こうでなければこの映画は終わらないでしょうし,爽快です。ま,往年の名画のラストに似ているといわれればそれまでですが・・・。そして,このシーンで流れる音楽がまた最高でした。
このようなエロ・グロ・残虐映画に拒否的感情を持っていない映画ファンなら,見て損はないと思います。
(2007/08/30)