目 次

頭部・顔面外傷指・趾外傷爪の外傷全層皮膚欠損熱傷低温熱傷動物咬傷術後創離開皮膚科疾患

  1. 頭部・顔面外傷
    1. 顔面皮膚損傷
    2. 擦過創
    3. 縫合しないで頭部裂傷

  2. 指・趾外傷
    1. 局所麻酔(園畑法)
    2. 治療の基本的考え方
    3. 小児指裂傷は縫合しなくていい
    4. ドレッシングの工夫
    5. 指は再生する
    6. DIP関節背側の手術法

  3. 爪の外傷
    1. シーネの作り方
    2. 爪甲剥離
    3. 爪根脱臼,爪甲裂創
    4. 爪下血腫

  4. 全層皮膚欠損
    1. 手背
    2. 示指基節部
    3. PIP関節背側
    4. 前額部
    5. 上腕
    6. 前腕屈側
    7. 手背伸筋腱露出
    8. 殿部~大腿外側~鼠径部
    9. 下腿打撲後血腫⇒皮膚壊死
    10. 前脛骨筋腱露出
    11. 踵部の全層皮膚欠損
    12. 会陰部ガス壊疽(フルニエ壊疽)

  5. 熱傷
    1. 治療フローチャート
    2. 熱傷の局所治療
    3. 熱傷創感染を防ぐために
    4. 78歳の広範3度熱傷
    5. 乳児の胸背部,顔面熱傷
    6. 前額部の3度熱傷
    7. 乳児顔面熱傷
    8. 高温の油による前腕~手熱傷
    9. 手掌熱傷(1歳3ヶ月)
    10. 手掌3度熱傷(1歳9ヶ月)
    11. 手背熱傷(11ヶ月)
    12. 下肢熱傷
    13. 大腿部熱傷
    14. 下腿全周性熱傷
    15. 96歳の下腿熱傷治療例
    16. 1歳幼児の足背3度熱傷
    17. 成人の足背3度熱傷
    18. 足背熱傷
    19. その他
      1. ティファール電気ケトル熱傷
      2. ゲーベンクリーム性Ⅲ度熱傷
      3. 〔イソジン+ガーゼ治療〕と被覆材の違い
    20. 熱傷標準治療の惨劇
      1. これが肥厚性瘢痕だ
      2. 手指への皮膚移植
      3. 網状植皮の25年後
      4. 顔面熱傷と上肢への網状植皮

  6. 低温熱傷
    1. 治療フローチャー
    2. 低温熱傷はなぜ深くなるのか?
    3. デブリのコツ
    4. 症例
    5. 素人が自力で治療

  7. 動物咬傷
    1. 治療フローチャート
    2. 治療方針
    3. 感染のメカニズム
    4. 咬傷のドレナージ
    5. 縫合するならドレナージ
    6. 上眼瞼の犬咬傷
    7. 広範な上口唇組織欠損の治療例
    8. 手背の広範囲皮膚軟部組織欠損

  8. 術後創離開
    1. 基本的な考え方
    2. 脳外科術後創離開
    3. 項部手術創離開
    4. 胸骨正中切開縫合創離開の治療
    5. 汎発性腹膜炎手術後の創離開1
    6. 汎発性腹膜炎手術後の創離開2
    7. アキレス腱術後1
    8. アキレス腱術後2
    9. 慢性骨髄炎に対する考え方
    10. これは慢性骨髄炎なのか
    11. プレート露出

  9. 皮膚科疾患
    1. 慢性湿疹
    2. 専門医からさじを投げられた顔面湿疹
    3. 激しい接触性皮膚炎症例
    4. 広範接触性皮膚炎
    5. 10年治らないアトピー性皮膚炎
    6. 数10年間治らないアトピー
    7. 主婦手湿疹の治療法
    8. 主婦手湿疹:治療例


  10. 顔面の深い挫創の被覆

    「顔面,特に鼻や眼瞼周囲の深い挫創の閉鎖で困っています。傷が深いためにデュオアクティブだとすぐに溶けてしまうし,ソーブサンとフィルムにしてもすぐに液が漏れ出してしまいます。ハイドロサイトだと創面に密着せずに浮き上がってしまいます。ガーゼをあてて液漏れに対処していますが,何かいい方法はあるでしょうか?」

     このような質問をいただきました。同じような疑問をお持ちの方もいらっしゃると思いますので,ここで回答しておきます。


     解決法は極めて簡単です。患者さんに薄いハイドロコロイド(デュオアクティブETなど)を渡し,「これは傷の部分が次第に溶けてきて,それで治療効果を発揮する治療材料です。傷があれば必ず溶けてきますから,流れ出す前に剥して傷と一緒に顔を洗い,新しいものを貼ってくださいね」と説明するだけです。傷が深い場合は一日に3度でも4度でも取り替えてもらえばいいし,傷が治ってくれば一日1回の貼付で大丈夫になります。
     要するに,患者さんに交換の時期を判断してもらい,実行してもらえばいいだけのことです。


     ここで重要なのは「ハイドロコロイドは傷があると溶けるようになっている。解けるから傷にくっつかないので,剥す時に痛くない。しかも溶けたゲル状の液が傷を軟らかく覆ってくれるので,傷は速く治ります」ということを,十分に説明することです。

     要するに,患者さんにも治療に参加してもらうのですよ。患者さんにとって,顔の傷がきれいに治るかどうかは一大事です。だから治療原理と治療手段について理解できれば,治療に積極的に参加してくれるはずです。
     医者がすることは,治療原理について説明することと,治療に参加する手段(=ハイドロコロイド)を提供することです。

     たったこれだけで,患者さんは快適な「治療ライフ」を送れるようになるはずです。

    (2003/04/07)

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    頬のひっかき傷の患者さん,そして瘢痕形成術について

     頬のひっかき傷の治療は簡単だ。受傷直後にハイドロコロイド(デュオアクティブ(R),キズパワーパッド(R)を張っておけば,次の例のように翌日か翌々日には跡形なく治ってしまう(ちなみにこの例は自宅の猫に左頬部を引っ掻かれた10代女性)。つまり,知識さえあれば素人でも傷一つ残さずに治療できる。

    12月27日 12月29日

     しかし,湿潤治療を知らない医者にかかると,せいぜい軟膏を処方されればいい方で,普通は消毒してガーゼを張っておしまいとなる。だから,傷跡が必ず残ってしまう。いわば必然の結果であり,顔面の擦過創においては初期治療を正しく行ったかどうかで,その後の経過が大きく分かれてしまう。要するに,初期治療が全てである。


     傷が残った場合,問題は二つある。

    • 目立つ場所に傷跡が残る
    • このようなひっかき傷の傷跡を消す方法が実は無いに等しい。

     もちろん,患部に紫外線が当たらないように遮光を続けておけば,数年後には多少は目立たなくなってくるが,逆に言えば方法はそれしかないのである。リザベン(R)を内服させようが,ヒルドイド軟膏(R)を塗ろうが,遮光以上に効果のある治療はないというのが私の印象だ。


     傷跡を目立たなくするにはZ形成術などの瘢痕形成術があり,形成外科医なら誰でもできる基本手技の一つである。だがこれは「傷跡を目立たなくする手術」であって「傷跡をなくす手術」ではないのである。というか,「傷跡をなくして傷つく前の状態に戻すこと」は原理的に不可能なのだ。

     瘢痕形成術は下の写真のような派手で目立つ傷跡ほど効果がある。それこそ劇的と言っていいと思う(ちなみにこの症例では,Zの入れ方がちょっとまずい場所があります。専門医の皆様,見なかったフリをしてください)

    術前 手術終了 3ヶ月後

     ところが,頬を爪でひっかいてできた傷跡の修正にはあまり効果がない。ひっかき傷の傷跡はもともと,それほど派手な変形ではないからだ。

     これはテストで10点の人がちょっと頑張って50点取れるようになったら劇的に頭が良くなったように見えるが,90点の人がすごく頑張って92点取れるようになったとしてもほとんど成績が上がって見えないのと同じだ。

     頬のひっかき傷は放っておいても90点くらいには治るものだ(だからこれまで,治療の対象にすらなっていなかったのだ)。一方,瘢痕形成術というのは92点とか95点を目指す手術であり(傷跡がなくなるのを100点とすると,傷跡が残らないということは絶対にないから100点にはならない),90点の傷に瘢痕形成術をしてうまくいっても95点だから,効果はあまり感じられないわけである。


     湿潤治療のない時代だったら,頬のひっかき傷はそもそも治療対象ではなかったし,傷跡が残っても誰も気にしなかったと思う。

     しかし,湿潤治療が始まった時,頬のひっかき傷は傷跡をほとんど残さずに治せる時代になった(点数で言えば,素人が治療しても98点くらいにはなる)
     当然,そういう治療結果を見て,「昔の傷跡を湿潤治療で治してほしい」という患者も受診することになるが,実はこういう患者が受診するのがもっとも辛いのだ。「最初にデュオアクティブ(R)でも張っておけば傷は残りませんが,古い治療でこのように傷跡が残ってしまったら効果的な治療法はありません。数年経つと今より目立たなくなるので,それまで我慢して下さい」と説明するしか言葉がないからである。患者さんはこの説明に泣いてしまうが,説明する方も泣くしかないのである。

    (2011/01/12)

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    小児の頭皮裂傷

     これは以前,当サイトの掲示板でも話題になっていたが,小児の頭皮裂傷の簡便な治療法についてである。ここでは,創縁周囲の頭髪を交差させて創縁を引き寄せ,生体接着剤のダーマボンドで創を閉鎖する方法が紹介されていた。原著は次の論文などのようなので,ご興味をお持ちの方は読んでいただきたい。

    1. Hock MO, Ooi SB, Saw SM, Lim SH.: A randomized controlled trial comparing the hair apposition technique with tissue glue to standard suturing in scalp lacerations (HAT study). Ann Emerg Med. 2002 Jul;40(1):19-26.
    2. Brosnahan J.: Treatment of scalp lacerations with a hair apposition technique reduced scarring, pain, and procedure duration compared with suturing. Evid Based Nurs. 2003 Jan;6(1):17.
    3. Weick R, Stevermer JJ.: Hair apposition technique is better than suturing scalp lacerations. J Fam Pract. 2002 Oct;51(10):818.

     極めて簡便であり,痛みもないし,画期的な方法である。


     私の病院ではダーマボンドがなかったので,代わりにノベクタンスプレーを使ってみた。これなら,どこの病院にも転がっているだろう。

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    1. 1歳男児の初診時の状態。1時間ほど前の受傷で出血は止まっていた。もしもまだ出血しているようなら,圧迫止血する。

    2. 傷の左右の髪の毛を引き寄せて皮膚をしっかりと閉じたことを確認してから,引き寄せた頭髪にノベクタンスプレーをかける。
      ノベクタンは傷に入ると痛いので,傷からちょっと離れた部位にかけたほうが良いと思われるが,私のこれまでの経験(数例だけど)では,傷さえしっかりと閉じられれば,傷直上へのスプレーでも大丈夫そうである(子どもが痛そうにしていないから,多分大丈夫でしょう)

    3. 翌日の状態。しっかりとくっついていることが判る。

     なお,ノベクタンは乾くまでに時間がかかるため,ヘア・ドライヤーをあらかじめ準備し,スプレーすると同時に温風を当てると早く乾くので,これは外来に常備しておいた方がよさそうだ。
     また,シャンプーは,受傷翌日に見て異常がなければ,「今晩か,明晩からシャンプーしても大丈夫だよ」と説明している。

    (2004/03/26)

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    手指の麻酔,ばね指のステロイド局注

    【手指のブロック麻酔】
     詳しくは
    こちらをご覧頂きたいが,オリジナルは佐賀大学整形外科の園畑教授が開発・発表された方法である(日本手の外科学会雑誌18巻4号 Page476-479,2001)。下図のようにMP関節掌側のシワの真ん中にキシロカイン(もちろん,エピネフリンの入っていないもの)を皮下注射するだけという極めてシンプルにして効果的な方法だ。
     Tipsをまとめると次のようになる。


    【ばね指のステロイド局注】

    (2010/09/27)

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    指尖部損傷・切断指の治療方針(試案)

     指尖部損傷,切断指の処置について総合的立場から説明した本はまだあまりないと思うので,勝手に作ってしまった。考え方としては,次のような流れになる。


    1. 骨露出がない場合。野菜のスライサーで指をスライスしちゃった,なんていうのがこれに当たる。多くの指尖部損傷はこれだろう。この場合は,直ちにアルギン酸(カルトスタットやソーブサン)で創面を覆い,翌日からは「水仕事をしなければいけない人はハイドロコロイド(デュオアクティブETなど)」,「力仕事系ならポリウレタンフォーム(ハイドロサイト)」に変更。
      なお,受傷直後に創面を無理に洗う必要はない。痛いだけである。どうしても洗う必要性があると判断したら,きちんと局所麻酔をしてから洗うこと。

    2. 関節軟骨が露出している場合。軟骨が露出しているといくら湿潤治療でも創閉鎖は望めない(軟骨表面に肉芽が上がらないから)。この場合は局所麻酔下に軟骨と骨を削ってからアルギン酸貼付で湿潤治療にしてもいいが,軟骨を削る操作で結果的に創縫合(つまり断端形成)できる場合が少なくない。そういう場合はさっさと創縫合して閉鎖したほうが,治療期間を短縮できるだろう。
      関節軟骨が露出している場合,創面には必ず屈筋腱(深指屈筋腱)が露出しているが,この状態で湿潤治療を続けていると,まれに化膿性腱鞘炎を起こすことがあるので,どうしても湿潤治療を行うのであれば,屈筋腱を引き出して切除した方がいいようである。安全性を考えれば,「関節が露出している場合は断端形成して創を縫合する」のがいいかもしれない。

    3. 軟骨でない骨が露出していて,指をできるだけ長く残して欲しいという希望がある場合。この時はそのままアルギン酸で覆い,その後は型の如く湿潤療法を続ける。もしも骨が突出していたら,その部分だけ切除する。骨は創面より数ミリ短い程度にするだけでよい。屈筋腱については上記のような理由から,できるだけ引き出してから切除すべきだろう。

    4. 軟骨でない骨が露出していて,できるだけ早く治して欲しいと希望がある場合。この時は骨を削って短縮して創を縫合する。つまり通常通りの断端形成。


     屈筋腱が創面に露出している場合の処理であるが,受傷早期であればあまり気にする必要はないが(つまり,腱を短く切る必要はない),受傷から時間が経っている場合は腱表面が常在菌で汚染されている可能性が高いので,長く引き出してから断端形成するか,断端形成せずに開放創面として湿潤治療するかのいずれかになる。
     「どのくらい時間が経過していたら危ないでしょうか?」という質問もあると思うが,これについては全くデータがないので不明。

     だが,受傷から数日を経過している場合は,どのように注意しても,腱をどのように工夫して処置しても,化膿性腱鞘炎の発生を防げない場合があることは確かである。

    (2005/04/13)

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    小児の指裂傷も縫合しなくていい

     どうも,いかにして手抜きな治療,楽な治療をするかばかり考えているのがミエミエなんで気が引けるが,今回は「小児の指裂傷も縫わなくてもいい」というお話。


     まずは症例。1歳半の男児。自宅で遊んでいて転倒し,おもちゃ箱の中に手を突っ込み,何かで右小指を切ったとのことで受診。抱いてきた母親の服は血だらけだった。

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    1. 受診時の状態。出血は止まっているが,指は血だらけ,どこをどう切っているのかも良くわからない。

    2. しょうがないから,ちょっと血を拭いただけにして,出血部位も確かめずそのままアルギン酸で被覆。大暴れする子供(というか赤ちゃんだな)でなかったため,きれいな写真が撮れた。

    3. 翌日の状態。アルギン酸を除去し,水道で手を洗わせたが,傷はもうちょっとで治りそうな気配だった。
      明日から子供を連れて家族旅行で実家にも寄ってくるため,病院には1週間後しかこれないということだった。そのため,ポリウレタンを渡し,処置法を教えて,旅行中は病院を見つけて通院する必要はないよ,1週間たっても治らなかったら,またおいで,説明。
      ちなみに,その後受診していないので,恐らく,治ってしまったのでしょう・・・多分。


     ちなみに昨年,指の多発裂傷で,他院から「全身麻酔下での手術が必要」と紹介された1歳児がいた(残念ながら写真は取っていないが・・・)。傷をきちんと縫合するだけで大変だろうな,という状態だったが,これもアルギン酸だけで治療した。完治までに2週間かかったが,創縁は案外きちんと「もとのあるべき位置」に戻っていて,特に瘢痕拘縮も起こさなかった。こういう例を経験すると,無理に縫合するより,とりあえず被覆材で保存的に治療してもいいのではないか,という気がしてくる。

     もちろん,神経や腱の損傷の有無を調べるためには全身麻酔をかけてきちんと観察する必要があるが,そういうのは指の裂傷のごく一部であり,大多数は皮膚・皮下組織のみの損傷にとどまっている。

     まして,縫合するのも大変なくらいに複雑な切れ方をしている場合は,よほど手の手術に慣れているのでなければ,被覆材で保存的治療をしたのと,さほど結果に違いはないような気がするがどうだろうか?


     ・・・と書いたら,つい最近,そのような内容の論文が出されていることが判明。エビデンスがないと信用できない,とお考えの方はこちらをご覧下さい。
    Suturing versus conservative management of lacerations of the hand: randomised controlled trial. BMJ 2002;325:299 ( 10 August )

    (2002/10/09)

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     比較的広い指の皮膚欠損の治療をする際のドレッシング,結構難しいです。今回紹介する症例のように,デュオアクティブだとすぐに解けてしまいそうな深さだとハイドロサイトかティエールくらいしか使えません。
     しかし,ハイドロサイトだと厚すぎて指全周を巻こうとするとグローブみたいになってしまいますし,ティエールだとサイズが初めから決まっていて,それが難点です。

     というわけで,こういう時は薄くて柔軟で浸出液も吸ってくれるプラスモイストの出番です。ここでは,指に合わせたプラスモイストの切り方の工夫をちょっと紹介。


     症例は60代後半の男性。作業中に機会のチェーンに右手を巻き込まれ,環指と小指を切断。直ちに救急外来を受診し整形外科医が創縫合を行ったが,創縁の挫滅がひどく,また,小指の皮膚欠損もあったためカルトスタットで創面を被覆し,翌日(2月28日)に当科を受信した。

    2月28日の状態 2月28日 2月28日

     環指はかなり縫合できているが,小指は完全に全層皮膚欠損であり,中節部にも皮膚欠損を認めた。プラスモイストを使用することにして患者さんに説明し,同意を得てから使用したが,次に示すようにした。
     ちなみに,カルトスタットとフィルムで処置し,翌日見るとこのように皮膚が白っぽくなっている。これを見て「皮膚が浸軟した。皮膚が死ぬ」と思い込んでいる人も多いようだが,全くの杞憂である。


    プラスモイストの状態(下図参照) まずこのように絆創膏固定し 最後はこうなる

    ちなみに実線は切るところ,破線は(適当に)折るところです。


    3月10日 3月16日 3月23日

     ちなみに,2月28日と3月10日の小指橈側をみて,潰瘍面が拡大したのではないか,やはり皮膚が浸軟した結果ではないか,と考えられる方もいらっしゃると思うが,これも間違い。小指橈側の縫合部の皮膚が内反状態で縫合されていたため,抜糸と同時に傷が開いただけのことである。浸軟で皮膚が死なないことは,それ以外の部分の皮膚が壊死していないことから明らかだ。


    3月30日 4月3日


     まだ治療中のため完治とはいえないが,4月12日現在,小指は小さな肉芽を残すのみとなっていて,環指は3月30日で上皮化が完了した。

    (2006/04/13)

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