膿瘍切開後の創処置についてもさまざまな方法を行ってみたが,最近,これで良さそうという方式に辿り着いたので紹介します。
まず,症例を提示。20代男性で右臀部の皮下膿瘍で受診。
1 | 2 | 3 |
4 | 5 | 6 |
「膿瘍切開後はガーゼドレーン」が常識だと思われるが,この症例のように切開直後からハイドロサイト(ピンクの皮膜を取り除いたもの)を膿瘍腔に入れてみたり,切開直後からティエールで被覆してみているが,どれも良好な経過である。これまでに5例ほどこのように治療しているが,感染が悪化した症例は一例もなかった。
ハイドロサイトもティエールも水分吸収能が高い被覆材だが,同時に「一度吸い込んだものを後戻りさせない」という性質も有していたと思う。おそらくこのため,膿を吸い込んでくれ,創の感染症状を急速に改善したのではないだろうか。おそらく,アルギン酸塩(カルトスタットやソーブサンなど)でもハイドロファイバー(アクアセル)でも同様の効果が得られるのではないだろうか?
問題は完全密閉にしてもいいかどうかであるが,多分大丈夫ではないかと思われるが(ティエールで閉鎖しても大丈夫だから),まず穏当なところでは,「ハイドロサイトやカルトスタット,ソーブサンを膿瘍腔に入れ,その表面はガーゼで覆う」という方式がいいと思う。どうせ,膿や浸出液が多いのだから,ガーゼで覆っても創面は乾燥しないはずだ。
被覆材なら何でも使えるのか,というとそういうことはなく,ハイドロコロイド(デュオアクティブなど)のような水分吸収能が高くない被覆材は使うべきではない。
また,皮膜を有する皮下膿瘍(いわゆる感染性粉瘤)の場合は,皮膜は完全に除く必要があることは言うまでもない。上記のような治療をするのであれば,皮膜は完全に取り除いてから行うようにすべきである。
それにしても,ハイドロサイトもまさか皮をはがれるとは思っていなかっただろうな。メーカーも,まさか剥ぐやつがいるとは思っていないだろうな。
(2003/04/21)