カテーテル刺入部の消毒について


 この話題は以前も書いているが,イラストでもう一度,説明することにする。


皮膚,血管,カテーテルの関係を示す。紫のが皮膚表面の細菌ですね。

「カテーテル刺入部を消毒しないとカテーテル感染が起こる」ということは,このがカテーテル外壁沿いに深部に侵入することが前提として必要である。
でも,皮膚表面の細菌(ほとんどが好気性菌)が組織深部(嫌気性の環境)にそのまま進入するのは,ちょっと大変な気が・・・。

となると,カテーテル沿いに膿瘍を形成したとか,カテーテル沿いにバイオフィルムを次々作りながら,深部に入り込んでいくしかルートがないような気がする。

でも,膿瘍を形成していたら,放置しておく人なんていないよね。
血管外壁周囲まで細菌が到達できたとして,このが血管内に入らないと,カテーテル熱を起こしようがない。
しかし血管壁は「水も漏らさぬ」ようになっているから,細菌が「血管壁から」進入するのは不可能。
となると,カテーテルが血管壁を貫いている「脇」を通って,血管内に入るしかないはず・・・この図のように・・・。
細菌の大きさは大体1μm,つまり10のマイナス6乗メートルくらい,一方,水の分子(つまり血液の液体成分)は1オングストロームくらい,つまり10のマイナス10乗メートルである。両者を比べると細菌は桁違いに大きいのである。その比率はちょうど,ゾウとアリのサイズの違いと同じくらいである(実際には,水は分子1つで行動するわけじゃないけどさ)

ということは,「カテーテルと血管壁の間に細菌が通れるような隙間」があったら,細菌が入るより先に,出血しているはずなのだ(しかも,静脈といえども静脈圧は組織圧より高い)

逆に「細菌は通れるけれど,血液の液体成分は通れない」というのは,「ゾウは軽々と通れるけれど,アリは通れない穴を作れ」というのに等しく,これは一休さんのトンチ話の世界である。
さらに,細菌の身になって考えると,左図の@とAではどちらが居心地いいだろうか?
@は流速も早いし栄養分もそんなに多くないが,Aは流速は遅いし,高カロリー輸液なら上流から栄養たっぷりの液体は流れてくるし,細菌にとっては天国みたいなものだろう。
ということは,「アリは通れない穴をゾウは通れるようにする魔法」を使って血管壁をすり抜けた細菌は,安住の地を目指してカテーテル外壁を移動し,
カテーテルの先端を乗り越えることで,なんとか約束の地,安住の地,エデンの園(?)に到達できることになる。
これはかなり無理矢理な状況設定である。
既に点滴のルートに上流から進入した細菌がいて,カテーテルの中を流れてどこかにくっつき,そこで繁殖した,と考える方が素直な理解だと思うんだけどなぁ・・・。

(2003/01/06)

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