症例は20代後半の男性。作業中に右足に重い機材が落ちてきて受傷。直ちに作業所近くの病院を受診。入院となり,翌日,第4趾,第5趾の骨折観血的整復術およびワイヤー固定術を受けた。しかし次第に第4,第5趾が壊死し,足背の皮膚壊死も増悪してきたため,自宅に近い当科を紹介された。
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このような症例では,植皮すべきかどうかが問題になる。通常は植皮だろうが,私は以前にも書いたように,この治療手技は他の手段がない場合に選ぶべきであり,安易に行う治療ではないと思っている。湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)に比べ,植皮術には患者さんにとってメリットがないと思うからだ(・・・もちろん,病院の収入という面からは十分にメリットがあるけどね)。
この症例で最初から植皮を行ったとしても,その後の瘢痕拘縮は避けられないため,どこかの時点で瘢痕拘縮形成術が必要になる(遊離皮弁,有茎皮弁なら瘢痕拘縮はかなり避けられるだろうが・・・)。つまり,足背などの動きが要求される部位に植皮をすると,手術の回数は最低2回は必要になるはずだ。
となると,最初は保存的治療でなるべく上皮化させ,その後の経過を見て瘢痕拘縮形成をしたほうが,結果的に手術回数が1回少なくなる。
私が患者だったら,後者の方を選びたい。その結果,後で瘢痕拘縮が起こったところで諦めがつくというものだ。最初から植皮をして,その後また手術というのは納得できないないと思う。
この症例は最初,デブリードマンをメインに,軟膏とフィルム材での閉鎖にした。当初は「ハイドロジェル+フィルム」でいくか悩んだが,壊死組織が取れるまでに2週間以上かかりそうな気配だったため,「軟膏+フィルム」にしたが,これも有功だったようである。
(2002/11/06)