「大きな皮膚欠損の治療例はないのですか?」という質問も時々来るので,ちょっと派手な例を紹介。
症例は70代半ばの女性。慢性腎不全のため,10年前から人工透析を受けている(週3回の透析)。自宅で転倒し下腿に受傷。直ちに救急車で病院を受診。下の写真を見てもわかるとおり,下腿外側に裂挫傷があり,筋肉が広範に露出。また長年の人工透析のため,皮膚は非常に脆弱で,普段からちょっとぶつかるたびに裂傷を繰り返していた。受傷前日に人工透析を受けていたため創全体から出血が続き,当直医(整形外科)が止血のため創を縫合したがそれでも染み出すような出血が止まらず,皮膚欠損もあるため当科紹介となった。
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ご存知のように,長期間にわたり人工透析を受けている患者さんの皮膚は薄っぺらになり,ちょっとした外力で大きく裂けてしまう。また,人工透析中は抗凝固剤を使うこともあり,一旦出血するとなかなか止まらない。つまり,通常の「消毒してガーゼ」では治癒させることはかなり難しいと思う。
こういう患者の皮膚欠損創はやはり,創傷被覆材の独擅場ではないかと思う。アルギン酸の止血能力,脆弱な皮膚へのポリウレタンフォームの保護作用など,被覆材に助けてもらった思いがする症例だ。
写真5の状態で植皮を考えるかどうかだが,この症例のように皮膚が薄くて脆弱な場合,分層皮膚を採取することはほぼ不可能であり,採皮部まで全層皮膚欠損になってしまう。また,週3回の人工透析をしているため,手術の日程を組むのも大変。
結果的に完全上皮化に80日以上を要したが,患者さんの基礎疾患,皮膚の状態を考えれば,これがベストの選択だったと思っている。
(2002/11/01)