人の不幸が飯のタネ


 医者と弁護士,消防士,警官には共通しているものがある。さて,何だろうか。

 答えは,「他人の不幸が飯のタネ」。何らかの原因で人が「不幸」になった時がこれらの業種の出番だ。いわば,「人の不幸」を前提にしている職業と言っていい(先日,あるお坊さんと雑談をしている際にこの話をしたら,是非その中に坊主も加えてくださいと言われてしまったぞ)

 すべての人が健康で怪我もせず,争い事もなく,事故も火事もなかったら医者も弁護士も消防士も警官も,おまんまの食い上げだ。
 しかし現実には,病気に苦しんだり,怪我をしたり,人との争い事があとを絶たない。だからこそ,医者も弁護士もとりあえず,失業の心配をする必要が無く,安穏としていられる。人の世に「不幸」がある限り,これらの業種の飯のタネが無くなることはない。


 「医者は,人の不幸を飯のタネにしている職業だ」という事を,医者,医学生は銘記すべきだと思う。医者なんて所詮,「不健康」という患者の弱みに付け込んで,それで金をせしめているだけのことだ。

 こんなことを書くと「病気を治して健康にしている職業ほど立派なものはあるか」と反論する医者が必ずいる。しかしいくら一生懸命に治療しても,医者にできるのはせいぜい「病気になる前」の状態に戻すことぐらいだ。どんなによくても現状維持でしかない。どう頑張っても「病気にならない」状態にできるわけではない。


 医療は本質的にサービス業である。お客さん(=患者さん)が病院に来てくれて,初めて成り立つ職業だ。客が来てくれないことには,それこそ,商売が始まらない。その意味で,医者が威張りちらし,患者が医者の言いなり(・・・というか,判断のすべてを医者に任せている)のは,本質的に間違っていると思う。サービス業であることを忘れてしまっている。

 もちろん,病気を治せるというのはすごいなことだ。膨大な専門知識を持っていて初めてできることだ。しかし,そうであっても,「人の不幸を前提にしている」という本質に変わりはない。
 患者さんは病気や怪我をしたため仕方なく,否応なしに病院に来ているだけだ。そういう「お客さん」を前にして,医者が威張り散らしているのはやはり狂っていると思う。


 日本の医療も最近になってようやく,インフォームドコンセントだ,患者への説明義務だと言うようになってきたが,患者さんが完全に理解できるように,患者さんの理解力や生活環境などにより表現方法を変えて説明しているのか,実際にはどうなんだろうと思う。

 最近,「患者の苦痛に鈍感な医者が多すぎる」ことが気になってしょうがないのだが,「この治療は痛いのが当たり前だから,お前は我慢すべきだ」という態度からは,サービス業という感覚は全く感じられない。

(2002/10/29)

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