どうも,いかにして手抜きな治療,楽な治療をするかばかり考えているのがミエミエなんで気が引けるが,今回は「小児の指裂傷も縫わなくてもいい」というお話。
まずは症例。1歳半の男児。自宅で遊んでいて転倒し,おもちゃ箱の中に手を突っ込み,何かで右小指を切ったとのことで受診。抱いてきた母親の服は血だらけだった。
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ちなみに昨年,指の多発裂傷で,他院から「全身麻酔下での手術が必要」と紹介された1歳児がいた(残念ながら写真は取っていないが・・・)。傷をきちんと縫合するだけで大変だろうな,という状態だったが,これもアルギン酸だけで治療した。完治までに2週間かかったが,創縁は案外きちんと「もとのあるべき位置」に戻っていて,特に瘢痕拘縮も起こさなかった。こういう例を経験すると,無理に縫合するより,とりあえず被覆材で保存的に治療してもいいのではないか,という気がしてくる。
もちろん,神経や腱の損傷の有無を調べるためには全身麻酔をかけてきちんと観察する必要があるが,そういうのは指の裂傷のごく一部であり,大多数は皮膚・皮下組織のみの損傷にとどまっている。
まして,縫合するのも大変なくらいに複雑な切れ方をしている場合は,よほど手の手術に慣れているのでなければ,被覆材で保存的治療をしたのと,さほど結果に違いはないような気がするがどうだろうか?
・・・と書いたら,つい最近,そのような内容の論文が出されていることが判明。エビデンスがないと信用できない,とお考えの方はこちらをご覧下さい。
Suturing versus conservative management of lacerations of the hand: randomised controlled trial. BMJ 2002;325:299 ( 10 August )
(2002/10/09)