無駄な医療を排して経費削減をしよう


 以前から,消毒や創処置に関する無意味な医療行為について糾弾してきたが,それをまとめてみることにする。こうやって考えてみると,実に多くの「病院の日常業務」が無駄の連続であることがわかる。
 現在,厚生労働省は医療費をいかに抑制するか,いかに削減するかに全力(?)を傾けているが,以下に論じる「無駄な医療行為」をなくすだけで,どれほど経費が削減できるか具体的な数字はわからないが,中規模病院で年間数百万円の経費削減になるはずである(・・・多分)。あとは,私の考えを信じるかどうかですね。


消 毒
現在行われている「消毒」のうち,99%以上は無意味である。「無菌化できるもの,できないもの」で論じたように皮膚も創面も消毒で無菌化することは困難であり,無菌化したとしても一時期に過ぎない。
消毒が有効・有用なのは局面とは
この二つだけだろう。これ以外の皮膚や創面に対する消毒はしても無駄であり,むしろ有害である。
従って,現在病院で使われている消毒薬は手術室や内視鏡室など,ごく限られた場所での使用に限定すべきであり,一般の病棟,外来から追放してもなんら問題は生じないと結論する。

酒精綿
注射の前の酒精綿消毒の無意味さについては,既に論じてきた。しかも,薬液缶に作っておいた酒精綿はアルコールが蒸発し,有効な殺菌力がないことは以前から指摘されている。
酒精綿の使用は点滴のルートの消毒などに限定すべきであり,皮膚の消毒はする必要がない。
また欧米では糖尿病の自己注射は「消毒せずに衣服の上から注射」が常識になっている
現在,先進的な病院では「薬液缶に作り置きの酒精綿」を廃し,「一枚パック」の酒精綿に切り替えているが,かえって経費削減になっているらしい。これは必要な分だけを使うようになったことと,廃棄される分がなくなったためらしい。

滅菌ガーゼ
手術創,あるいは,あらゆる外傷創に「滅菌ガーゼ」を用いるのは無意味。根拠は次の二つ。
従って,縫合創に用いるガーゼは,術後48時間までは滅菌済みのもの(理論的には未滅菌ガーゼでもかまわないはずだが)を使ってもいいが,それ以降は滅菌ガーゼでなく「きれいに洗濯されたガーゼ」で十分である。
腹腔内に通じているドレーンを覆うガーゼについても,ドレーン周囲の皮膚に常在菌がいることを考えると「滅菌ガーゼでなければ感染してしまう」,あるいは「滅菌ガーゼなら感染を防げる」という理屈は成り立たないだろう。
滅菌ガーゼは「本来,無菌状態の部分(腹腔,関節腔,髄液腔などですね)への操作」に限られるべきと考える。 この無駄な「滅菌ガーゼ」を作るために,病院で一日に費やされる費用はどれほどになっているのだろうか?

各病室前の手指消毒用の洗浄液,衣服消毒用のアルコール・スプレーなど
MRSA感染予防対策として,全国どこの病院の病室にも置かれているものだが,CDCの感染予防ガイドラインではまったく言及されておらず,日本だけの珍風景らしい。
常識的に考えてもわかるが,霧状になったアルコールがMRSAなどを死滅させることは不可能であり(菌が死滅するアルコール濃度になっていないから),白衣の上からスプレーするのは金をどぶに捨てるようなものだろう。
入院患者の褥瘡のようにMRSAの常在化が必発の創を処置する場合,「処置をする前からディスポの手袋をつけて処置し,一人の患者の処置が終わったら手袋を廃棄し,すぐに水道流水で手洗いをする」のが,院内感染においてもっとも有効である。
これらは病院全部の病棟に配置されているし,消費される消毒薬の量もかなりになるはずであることから考えると,これらを廃止することで莫大な経費が削減されるはずだ。

手術室の手洗い用滅菌水
これは既に論じた通り
水道水は確かに無菌ではないが,飲料水である以上,細菌数は極めて少ないし,まして,流水中の細菌が手指に付着するとは到底考えられない(たとえて言えば,華厳の滝に落ちた人間が,落下中に途中の岩肌を掴むようなものだろう)。要するに,滅菌水だろうと水道水だろうと,洗浄効果に違いはないと考える。
また,たとえ少数の菌が付着したとしても,どうせ滅菌手袋をつけるわけであり,「滅菌手袋表面」に細菌が付着するわけがない。
この装置も,装置自体も安くないが,日々のランニングコストはそれ以上にかかっているはずだ。

(2002/05/28)

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