創傷被覆材で密封療法をしていると,被覆材の下に「いかにも膿」みたいなのがべっとり溜まったりします。色はもろに黄色だし,臭いだってします。被覆材の治療に慣れていないと,「これは膿だ! 化膿している! すぐに消毒して抗生剤だ! 密封なんて即刻止めろ!」と大騒ぎになることでしょう。
実例で言うと,こんな感じです。
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もちろんこれは間違いです。膿でも化膿しているわけでもありません。例えばハイドロコロイドですが,これは浸出液に触れるとゲル化し,溶けて黄色のドロドロになります。
なぜこれらが「膿」でないかというと,「感染症状(炎症症状)」がないからです。
下に,ドレッシングを剥がし,「膿状物質」を濡れたガーゼで拭き取った状態を示します。
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「膿みたい」と「膿そのもの」には大きな差があります。それなのに被覆材で密封療法をしていると,被覆材の下に溜まっているものは「膿」に非常に似ています。
しかし,両者の違いはあくまでも「炎症症状」の有無です。周囲の皮膚に発赤がなければ,どんなにドロドロしていようとそれは膿ではありません。
傷の状態をきちんと科学的・医学的に判断すること,それが,新しい創傷治療の基本です。
(2002/03/25)