密封していると膿みたいなのが・・・


 創傷被覆材で密封療法をしていると,被覆材の下に「いかにも膿」みたいなのがべっとり溜まったりします。色はもろに黄色だし,臭いだってします。被覆材の治療に慣れていないと,「これは膿だ! 化膿している! すぐに消毒して抗生剤だ! 密封なんて即刻止めろ!」と大騒ぎになることでしょう。
 実例で言うと,こんな感じです。

1 2

  1. ハイドロコロイドを貼付した例。眉毛上部の部分が「まるで膿みたい」ですよね。
  2. ハイドロジェルをフィルムドレッシングで密封した例。フィルムの中身は黄色でドロドロ,ほとんど膿に見えます。


 もちろんこれは間違いです。膿でも化膿しているわけでもありません。例えばハイドロコロイドですが,これは浸出液に触れるとゲル化し,溶けて黄色のドロドロになります。
 なぜこれらが「膿」でないかというと,「感染症状(炎症症状)」がないからです。

 下に,ドレッシングを剥がし,「膿状物質」を濡れたガーゼで拭き取った状態を示します。


3 4

  1. ハイドロコロイドの下の状態。非常にきれいに治癒していることがわかります。発赤などの感染症状はありません。
  2. 溶けたハイドロジェルを拭き取った状態。傷はまだ大きいものの,周囲皮膚に発赤は見られません。化膿とは無縁の状態ですね。


 「膿みたい」と「膿そのもの」には大きな差があります。それなのに被覆材で密封療法をしていると,被覆材の下に溜まっているものは「膿」に非常に似ています。
 しかし,両者の違いはあくまでも「炎症症状」の有無です。周囲の皮膚に発赤がなければ,どんなにドロドロしていようとそれは膿ではありません。

 傷の状態をきちんと科学的・医学的に判断すること,それが,新しい創傷治療の基本です。

(2002/03/25)

左側にフレームが表示されない場合は,ここをクリックしてください