褥瘡治療に被覆材は使いにくくなる?


 「数年以内に褥瘡の処置料が『まるめ』られることになりそうだ」という噂(情報?)が医療現場の裏側で飛び交っています。高齢者医療費の抑制を金科玉条とする厚生労働省が,褥瘡の治療に矛先を向けてきたためです。つまり「褥瘡の治療は○○点までしか認めない」という方針であり,褥瘡治療に使える費用の上限が決められることになります。
 となると,値段の高い医療材料を使って治療すればするほど病院側は赤字になるわけで,創傷被覆材のような高価な材料は使いにくくなることが予想されます。事実,私が知っている被覆材メーカーは,強い危機感を持っているようです。

 せっかく,褥瘡治療の分野から「傷は乾燥させてはいけない」「消毒する必要はない」という知識が普及し始めたのに,このままでは「前・被覆材時代」に逆戻りし,「消毒と軟膏とガーゼ」時代に逆戻りしかねません。


 となると,褥瘡の治療現場で鳥谷部先生の「褥瘡のラップ療法」は有力な手段となるはずです。何しろ,家庭用ラップででき,理論的にも正しい治療ですから,これはおすすめ。


 そこで,被覆材メーカーに提案。
 「粘着剤付きのフィルムドレッシングで,未滅菌のロール状の製品」を,「褥瘡閉鎖治療用」を全面に押し出して販売するのです。これまでもこういう「未滅菌のロール状フィルムドレッシング」はありましたが,あくまでも「バンソウコウの替わり」という位置付けでしたので,それほど売れていなかったと思います。

 しかし,近い将来,褥瘡治療が「まるめ」られた場合,このような商品が褥瘡治療の主役に踊り出るチャンスです。「家庭用ラップ」よりは使いやすいからです。また滅菌処理をしていない分,値段はかなり安くなります。
 従来は,「滅菌していないから使えない」という意識が医療サイドにありましたが,「褥瘡処置には無菌操作は不要だ」という最新の知見を武器にすれば,「未滅菌」はマイナスポイントにはならず,むしろ,値段の安さがプラス要因になります。

 さらに,PL法から考えても,家庭用ラップで褥瘡治療をしていて何らかのトラブルが起きた場合,家庭用ラップの製造業者に責任を問うことは難しいのですが(何しろ,医療用に使うことは想定していない商品ですからね),上記の「未滅菌のロール状フィルムドレッシング」は本来,医療目的の製品ですから,何かトラブルが起きてもメーカーに文句が言えるわけです。これは,医療側からすると大きなメリットになります。


 さらに言うと,この「フィルムドレッシングのみ」では浸出液のコントロールが難しくなるのが難点ですが,それに合わせて,「ポリマーを入れた袋状のドレッシング,未滅菌」のものを抱合せ販売しちゃう,というアイディアも浮かびました。要するに,紙オムツのポリマーを利用するだけなんですが,これで「浸出液の多い褥瘡」対策もバッチリ。

 要するに,褥瘡治療では無菌操作,滅菌物の使用は意味がない事を前面に出せば,安い製品が作れるわけで,「まるめ」が実施されても生き残れます。


 以上のアイディア,全ての被覆材メーカーに無料で提供します。これを実用化して製品化しても結構です。早い者勝ちですね。
 褥瘡治療に被覆材が使いにくい(使われにくい)時代は,まもなく到来します。手は早めに打っておいた方がいいと思いますよ。


 さらにメーカーに提案。
 「被覆材は褥瘡治療専用」という意識は捨てるべきだと思います。いつまでも「褥瘡」にしがみついていても,先は見えています。先細りです。小さなパイの取り合いをしていても未来はありません。

 被覆材の生き残る道は「新鮮外傷」です。これは以前から私が提唱していることですが,褥瘡と新鮮外傷では,患者数は100倍以上です。この分野に使ってもらえたら,パイの大きさは一挙に拡大します。
 しかも新鮮外傷はほとんど,2週間以内に治癒するため,「連続使用2週間」という保険診療の制限を気にする必要もありません。まさに願ったり,かなったりです。


 このようなアイディア,いくらでもあります。危機感を持っているメーカーの相談,いつでも受け付けております。

(2002/02/21)

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