今度は深い皮膚欠損創・皮膚潰瘍の治癒メカニズム(ちなみに「深い」とは真皮が全て欠損している場合を指す)について説明。ここでも,乾燥は治癒の大敵である。適度に湿った状態(=湿潤環境)を保っておかないと治癒しない。
前項と同様,色分けによって各組織を現している。
この場合は「浅い皮膚欠損創」と違い,表皮再生の鍵を握っている毛穴も感染も存在しないため,治癒過程としては次の2つの過程を経ることになる。
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この時,創面を乾燥させると肉芽が死んでしまうし,仮に肉芽が覆ったとしてもその表面が乾いていては表皮細胞は移動できない。つまり,このような傷を乾燥させるのは表皮細胞にとって,水も食べ物もなしに砂漠を歩かせるようなものである。どうせ歩くのなら,砂漠よりは川べりの方がいいですよね。
つまり,創表面を乾かさずに「湿潤環境」を保つということは,砂漠でなく川べりを歩こうよ,というのと同じ。
具体的な例を出すとこんな感じ。76歳の男性,外果部(足の外側のくるぶし)の低温熱傷受傷。自宅で様子を見ていたが全く治癒しないために受診した例。
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ちなみに,1の状態の傷を手術で閉鎖しようとすると,かなり大変だと思う。かなり気合を入れて手術をしないと,1回で創閉鎖に持っていくの難しいはずだ。手術をするとしたら "reversed sural arterial flap" と植皮の組み合わせが一番無難かな?
このような症例はもちろん,手術でも治癒させることは可能であるが,患者の年齢を考えたら「手術なしの被覆材のみの治療」の方がはるかにメリットがあると思うが,如何だろうか。
(2002/01/05)