創縫合前後の消毒は危険だ!


 外科系の診療科の皆様,手術が終わり,最後の仕上げの皮膚縫合の直前,あるいは縫合直後に「傷を消毒」していないでしょうか? 私の見たところ,かなりの医者,診療科,病院で,皮膚縫合の前後に消毒をしているようです。半ばルーチンワークとして行われているようです。

 しかしこれは無意味というならまだしも,「傷が治らないように」「術後,傷がくっつかないように」「傷が開くように」としている行為です。それは医療行為の名前を借りた傷害行為です。
 術後,縫合創が時々開いて困っている,と思っている外科系医師の皆様。もしも皮膚縫合の前後に傷を消毒しているのでしたら,直ちにお止めください。恐らく,「創離開」の数はぐんと減るはずです。


 「消毒薬は毒」で解説したように,イソジンを例に取ると,殺菌効果をもつのは10%イソジン溶液のみで,1%に希釈されると殺菌力はほとんど期待できなくなる。しかし,0.1%に希釈されたイソジンは,創治癒に最も重要な細胞(線維芽細胞,上皮細胞,好中球など)全てを全滅させることが可能なのだ。
 まして,血液や浸出液などの有機物があると,イソジンの遊離ヨード(これが殺菌力を作り出している)は急速に減少し失活する。

 従って,創面をイソジンで消毒した場合,「細菌は殺せない程度に失活しているのに,傷が治癒するのに必要な細胞だけを選択的に殺しまくっている」ということになっているのだ。これでは縫合した傷がくっつくことを期待するほうが無理である。


 創縫合の前後に「傷を消毒」している医者は,その消毒という行為によって「術後,傷が治らずに,早く開くように」しているわけである。医者がいくら無知とはいえ,実に恐ろしい行為をしている,としか言いようがない。

 恐らくこういうお医者様は,一生かかっても自分が間違ったことをしているなんて,気が付かないんだろうな。こういう医者にかかった患者さんは,不幸と諦めるしかないんだろうな。


 「消毒しなければ傷が化膿する」というのは単なる思い込みである。傷が化膿するには,細菌の存在は必要条件であるが十分条件ではないのだ。細菌がいくらいても,異物や壊死組織がなければ化膿なんて起きないのである。

(2001/12/01)

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