「表皮剥脱」というのが病理学的に正しい病名かどうか自信がないが,他に表現しようがないのでこのままで行くことにする。
下の例に示すように,老人によく見られるものだ。つまり,紙のように皮膚が薄くなった患者さんの皮膚が,わずかな外力(ちょっとぶつかった,とか,バンソウコウを剥がそうとしたら皮膚も一緒に,とか)で切れ,ペロリとはがれてしまった外傷だ。高齢者にはよく起こる外傷であり,しかも極めて治りにくい。
こういう「表皮剥脱」だが,創傷被覆材での治療が極めて有効であり,あっけないほど簡単に治ってしまう。
このタイプの外傷で最も使いやすいのがポリウレタン(ハイドロサイト)である。
77歳の女性。転倒した際に受傷し,翌日,当科受診。皮弁状に皮膚が剥がれていたがかなり汚かったため,これを切除した後,治療。
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このように感染の危険性がまったくない創では,毎日ドレッシングを交換する必要はなく,4〜6日間放置してよい。
また,周囲の皮膚が脆弱な場合,ポリウレタンを無理にバンソウコウ固定せずに直接包帯を巻くだけでも十分である。
60歳男性(脳梗塞後の半身麻痺あり)。車椅子に移動する際,前腕外側を何かに引っ掛け,擦過傷となった。
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83歳女性。自宅で転倒し受傷。左前腕伸側に広範な皮膚剥脱を認めるが,皮膚欠損はなかった。
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78歳男性の手背の裂傷。
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この症例のように,裂傷部の皮膚が脆弱な場合,無理に縫合せずに「開放創でもいいや。あとは被覆材の役目」くらいに思ったほうが,結果的にきれいに速く治癒する。
なお,抗生剤の使用であるが,上記の例全てで全く投与していないか,投与しても経口剤で2日程度である。恐らく,抗生剤の投与は必要ないと考えている。
(2001/11/22)