筆者の外傷治療法
さて,筆者が日々行っている外傷の治療法について説明する。旧来からの治療法しか知らない目には,恐らく,トンデモナイ事をしている医者だ,と映ることだろう。だが,実際にやってみるとわかるが,この通りにすると,信じられないほど速く,しかも全く痛みのない治療が可能になる。
外傷患者が初めて受診した時(=受傷時)
- 擦過傷・挫傷の場合
- 明らかな異物混入がない場合
- 傷周囲の皮膚を水道水で濡らしたガーゼで血液や土などを完全に拭き取る。
- 多少出血していても,止血はしない。
- 水気を拭き取ったら,直ちにアルギン酸塩被覆材(カルトスタットやソーブサン)を傷にあて,その上をフィルムドレッシングで覆い,密封する。
- フィルムドレッシングの上をさらにガーゼで覆う(フィルムの端から浸出液が漏れ出すことがあるため)。
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初診時の状態 |
血腫を取り除き,カルトスタットで被覆。 |
5日目の状態。創はほぼ,上皮化している。 |
- 異物混入が認められる場合
- 直ちに局所麻酔をする。通常は 1% Xylocaine E を使用(キシロカインは血管拡張作用を持っているため,単体のキシロカインで麻酔すると,かえって出血が多くなる)。
- 歯ブラシや手洗い用のブラシで,創面を徹底的にブラッシングし,異物をできるだけ除去する。多少出血するくらいでないと,十分なデブリードマンとはいえないようだ。なお,創面の洗浄は生理食塩水でも,水道水でも構わない(Cost-Performanceからいうと水道水がよい)。
- 創周囲の水気を拭き取ったら,直ちにアルギン酸塩被覆材を当て,フィルムドレッシングで密封。
- フィルムの上をさらにガーゼで覆う。
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受傷1日たってから受診した状態 |
局所麻酔下にブラッシングをして異物を除去 |
5日後の状態。創は完全に上皮化している。 |
- 裂傷を伴う皮膚欠損創,単純な裂傷の場合
- 直ちに局所麻酔。
- その後,水道の流水で創部とその周囲を十分に洗浄。
- 創周囲の皮膚を簡単に消毒(無理にしなくて良い)。
- 創を縫合。
- 縫合後,創部を水道水で洗う(何しろ,局所麻酔が効いているから痛いわけがない)。
- 水気を拭き取ってから,創表面をアルギン酸塩被覆材で覆い,フィルムドレッシングで密封。
- 熱傷などの場合
- 創面,及び創周囲の汚れを水道水で濡らしたガーゼで落とす。
- 創面にポリウレタン(ハイドロサイト),乾燥豚皮(アロアスクなど),キチン被覆材(ベスキチンなど)などをあて,その上をガーゼで覆い,包帯固定。
翌日からの治療
- 包帯,ガーゼ,アルギン酸塩被覆材を除去し,創部を水道の流水で洗う(疼痛は通常,全くない)。消毒は厳禁!
- 創部の状態に応じて,被覆材を選択。
- 出血が続いていたらアルギン酸塩被覆材。
- 出血がなく,浸出液が多そうだったらポリウレタン・ドレッシング(ハイドロサイト)。
- 浸出液が少なく,乾燥気味の創だったらハイドロジェル(イントラサイトなど)か,ハイドロコロイド(デュオアクティブ)。
- 顔面などの露出部なら,薄いハイドロコロイド(デュオアクティブET)。
- 指尖部損傷ならポリウレタン(ハイドロサイト)。
- 軟部組織欠損が大きく,創が陥没している場合はハイドロポリマー(ティエール)。
- 頭部裂傷で縫合している場合は,翌日から洗髪を許可・・・というか,積極的に洗髪を勧める。この場合,傷の消毒は禁止し,創部にガーゼをあてる必要もない。ちなみに筆者は,「傷は髪の毛の中に隠す」ように指導し,創部はガーゼ無しの,全くの開放状態にしている。
- 患者さんが頻繁に通院できない場合は,ポリウレタン(ハイドロサイト)を多めに渡し,創処置の方法を説明し,1週間後に受診してもらうことにしている。
(2001/11/03)
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