化膿するということ


 「傷が化膿する」とはどういう現象をいうのだろうか? まずこれを説明する。

 医学的に言うと「傷口(創面)が細菌により炎症症状を起こしている状態」が化膿である。炎症症状とは外科の教科書の最初の方に書いてあるが,患部の「腫脹・疼痛・発赤・局所熱感」を炎症の4徴候と呼び,これらが4つ(のどれか)があると「炎症」と診断される。

 「炎症」はさまざまな原因でおこるが,細菌によってこれらの症状が引き起こさるものを「感染症」と呼ぶ。ここでは皮膚の外傷の治癒について取り上げているが,皮膚や皮下組織に細菌が繁殖し,炎症を起こしていることを指して「傷が化膿している」と呼んでいる。

 つまり,細菌が傷口に入ったために,「傷の周囲が腫れあがり(腫脹)」「傷やその周囲に痛みがあり(疼痛)」「傷周辺の皮膚が赤くなり(発赤)」「傷の周囲に触ると熱い(局所熱感)」という症状(のどれか)があれば,これは「傷が化膿している」と判断できる。
 またこれらに加え,傷口から膿が出ていたり,膿が溜まっていたりすれば,もう確実に「化膿している」といえる。


 「そんなの当たり前じゃん。何を今更説明しているの」って言わないで欲しい。重要なことは,「感染していれば炎症の4徴候が見られる」ということの裏返しが,「炎症症状がなければ,感染していない」となることだ。
 つまり,「感染しているかどうか」は「細菌の有無」でなく,「感染症状の有無」なのだ

 簡単なことに思われるかもしれないが,この基礎的な事実を大半の医者は忘れてしまっている。だから,傷の治療,褥瘡の治療でトンデモナイ間違いをし,頓珍漢な治療をしている。

(2001/10/11)