皮膚の構造


 皮膚損傷の治療過程を理解するためには,皮膚の構造を知らないと話にならない。といっても,非常に簡単な知識で十分である。まず,皮膚の断面はこういう風になっている。

 上から「表皮」「真皮」「皮下脂肪」であるが(上図の右端を参照),通常「皮膚」と呼ばれているのは表皮と真皮である。ちなみに表皮は垢となってやがて剥がれ落ちる運命にある。


 挫傷や擦過傷(すりむき傷)や熱傷などの「皮膚損傷」では,損傷が真皮までなのか,真皮より深い皮下脂肪まで損傷されているかで話が違ってくる(ちなみに,皮膚損傷では表皮が再生することが「傷の治癒」ということになる)。わかりやすく言うと,

 つまり,損傷が真皮までか,真皮より深いかが傷の治癒にとって分かれ道なのである。


 ついさっき,「皮膚損傷では表皮が再生されることが治癒」と書いた。しかし本来,表皮と真皮は発生学的に異なった組織で(表皮は外胚葉,真皮は中胚葉由来)で,真皮からは表皮は再生しないはずだ。しかし,実際には真皮から表皮は再生する。なぜ,真皮から表皮が再生するのか?
 それは上図に鍵が隠されている。鍵を握っているのは毛包(つまり毛穴)汗腺・汗管である。

上図をみると,毛穴のところで表皮の表面(角質層)が毛に沿って深部に入り込んでいるのがわかる。つまり,毛穴や汗管(そして汗腺)は表皮の連続なのである。
 従って,真皮の真ん中の深さで横断してみると,そこには毛穴や汗管が顔を出すことになる。これが表皮再生の鍵なのである。

(2001/10/01)

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