新しい創傷治療 −顔面挫傷例−

 ここでは筆者が実際に治療した顔面挫傷の症例を提示する。恐らく,従来からの治療法しか知らない人には,信じられない治療成績だろうと思う(特に医療関係者にはショッキングだろう)。素人目から見ても,その効果は一目瞭然。ほとんど魔術的ですらある。

 創傷被覆材は従来,褥瘡の治療用に発売されてきた経緯がある。しかし,使ってみると褥瘡よりも新鮮外傷,とりわけ挫傷,擦過傷(すりむき傷)に著効を示す。


 30代男性。交通事故でフロントガラスに突っ込み(シートベルトをしないとこうなる,というよい見本),右前額部を中心に表皮欠損を伴う挫傷が認められる。

初診時の状態。日付は3月27日午前11時。見るからに痛そうですね。
こういう状態で「消毒」するのは拷問同然ですね。そして消毒している医者は言うんですよね,「我慢しろ」って。そりゃ,あんたは痛くないだろうさ,患者さんじゃないから・・・。
で,こういう症例が来たとき,私はどうしているかと言うと,まず,ガーゼを水道水で濡らして絞り,それで傷周囲の血液や汚れをしっかりと落とし,傷の中に異物(泥や砂など)が入っていなければ,そのまま(もちろん消毒せずに)アルギン酸塩被覆材で覆い,表面をフィルムドレッシング(ラップみたいなやつ)で覆うだけです。止血操作も特にしません。
しつこいようだけど,消毒薬は一切使いません。
そしてこれが3月28日午前9時半の状態。信じられますか? 医者(特に外科系),看護婦なら「嘘だろう」って叫んでいることでしょう。
小さな擦過傷はほとんど治っていますし,裂傷部の出血も止まっています(アルギン酸塩の極めて強力な止血作用のためです)
この時点で直ちに顔を洗わせます。もちろん,「傷にしみる」なんて事はなく,患者さんはごく普通に顔を洗っています。頭もシャンプー可ですね,この時点で。



 こちらは34歳女性。自転車に乗っていて転倒し,右頬部に受傷

初診時の状態。12月9日です。
以後の処置の方法は,最初の症例と全く同じです。
しつこいようだけど,これを消毒されたら,痛いなんてもんじゃないだろうなぁ。
12月13日の状態です。傷は・・・傷はどこに行った?
患者さんに自分の顔を見せると,魔法みたい,って感激される瞬間です。
12月14日の状態。これで10日後のクリスマスもバッチリだね・・・傷のない顔で。



 最後が小学4年生。11月26日夕方,サッカーをしていて転倒,左頬部をすりむきました。その日は自宅で様子を見ていたものの,傷跡が残るのが心配,との事で形成外科を受診。

11月27日の状態です。受傷から半日以上経過していたため,傷にはカサブタ(専門用語では「痂皮」と呼びます)が付いています。
こういう場合は,カサブタを創傷被覆材で覆って乾かないようにすれば,翌日には軟かく溶けて自然に取れます。
ちなみに,カサブタは「傷が治らない」からできるものであって,「傷の治癒が停止した状態」です。決して,正常の治癒過程でなく,また「傷が治る過程でできるもの」でもありません。カサブタは傷の治癒を遅らせ,感染源になるため,このように除去するのが正しいのです。
そしてこれが11月29日の状態。しつこいようですが,きれいでしょう?
創傷被覆材で密封するだけで,人間の体というのは驚異的な回復力を見せるのです。



 これら創傷被覆材を挫傷や擦過傷(すりむき傷)に使うメリットは,驚異的な治癒の速さだけでない。何より「治療に伴う痛み」が皆無なのだ。これらの素材はガーゼのように創面に固着することがないため,創処置(ガーゼの交換)は全く無痛で治療できる。

 この結果を見てもまだ,「傷には消毒とガーゼ」の考えを改められない医者は,勇気がないか,理解力がないか,新しいことをするのが余程面倒か,患者を苦しめるのが好きか,そのいずれかであろう。

(2001/10/01)

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