傷が治っていく様子のマクロ写真

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 Pentaxのコンパクトデジカメ,Optio W90には強力な接写機能があり,これで「治りつつある創面」の状態を撮影している。浅い傷では毛孔の周囲だけ先に上皮化する様子もわかるし,深い傷では周辺から上皮化が進む様子もよくわかり,非常に興味深い。現時点では,数10ミクロン〜数100ミクロンサイズの世界で,創傷治癒がどのように進むのかを記録した研究はまだないようなので,安物デジカメで精一杯追っていこうと思う。そのうち何か新しいことが分かるかもしれないし・・・。




14) 20代男性。2月10日,溶接の作業中に衣服に引火して背部全体に熱傷。某病院皮膚科入院。3月11日に皮膚移植の予定だったが知人から当科の治療のことを聞き,3月1日に当科を受診。

3月1日   毛孔は生き残っているように見える
3月4日 急速に上皮化した
3月8日 ここでも島状に上皮化が始まった




13) 45歳女性。5月1日,ロウソクの炎が衣服に引火して右上腕〜前腕に熱傷受傷。TKI大学病院形成外科で治療を受けていたが,5月13日に皮膚移植が必要と言われて心配になり,ネットで検索して当科を5月16日に受診。

5月16日 毛孔からの上皮化が起きていることがはっきりわかる。

 ちなみにこの症例で面白いのは日付である。5月1日に受傷し,5月13日に皮膚移植が必要と主治医から宣告されているが,ちょうど2週間目であることに注目してほしい。この主治医はなぜ5月13日に「皮膚移植が必要」と説明したのだろうか。それは5月13日が「受傷から2週間目」だからだ。
 教科書には「2週間で上皮化しない熱傷は皮膚移植しないと治らない」と書いてあるから,既に毛孔から上皮化が始まっている熱傷なのに「皮膚移植しないと治らない」と機械的に判断したわけである。
 つまり,この主治医は,創面を見ないで教科書だけ見て治療をしていたのだ。




12) 70歳男性。7月21日,ドラム缶が左下腿にぶつかって受傷。直ちに当科を受診し,プラスモイストで治療。

7月26日:毛孔からの上皮化




11) 24歳男性。2月3日,熱湯で左前腕にヤケド。直ちに救急車で近くの病院に搬送され,ラップとアズノール軟膏による治療を受けた。その後,知人から当科受診を薦められて,2月7日に当科受診。

2月7日 島状の「毛孔からの上皮化」がはっきりと分かる。きちんとラップで乾燥を防いで
いれば,どこの誰が治療してもうまく治療できることがこの写真からわかる。
もちろん患者さんには,「前の病院で正しい治療をしていたので助かりましたね」
と前医へのフォローしておいたことは言うまでもない。

2月14日 早急に治癒した部分と,治癒が遅れている部分が混在していることがよくわかる。




10) 62歳女性。3週間前に熱湯で左下腿に熱傷。自宅で様子を見ていたが治らないため,ネットで検索して11月16日に当科初診。

11月19日 見事なまでの「毛孔からの上皮化」の様子!
毛が生えている部分だけ白く上皮化していることがわかる。
教科書に載せたいくらいの決定的な証拠写真である。




9) 26歳女性。10月12日,仕事中に機械(120℃)に左腕を挟まれて熱傷。近くの総合病院皮膚科で治療を受けていたが治癒せず,主治医の説明も要領を得ないために不安になっていた。会社の同僚から当科を受診するように薦められた。11月10日に当科初診。

11月10日 深い潰瘍の中心に白い「皮膚の島」が出現した。




8) 20代男性。10月5日朝,熱湯で右前腕〜手背に熱傷。直ちに近くの病院を受診。その後,ネットで検索し,当科を受診。

10月8日 均一に見える創面もマクロで見ると均一でないことがわかる。
皮膚付属器の分布密度の違いだろう。




7) 50代男性。10月11日,熱湯で左足背熱傷。直ちに当院救急外来を受診し,ラップで治療。12日,13日は順調に経過したが,14日に終日,立ち仕事をし,その直後から激痛が出現。15日に受診したが,すでに全層壊死となっていた。

10月18日 肉芽表面に皮膚が伸びていく様子がわかる。




6) 18歳女性。6月6日,転倒して下腿外側挫創を受傷。近くの病院で治療を受けていたが,バイト先の整骨院の先生から「その病院の治療は古くて駄目だ。もっといい治療をしている病院が近くにある」とアドバイスされ,当科を受診。当科ではプラスモイストで治療。

6月10日の状態 縞状に上皮化しているところと遅れているところが混在。
なぜ縞状になっているのかは不明




5) 18歳男性。11月20日に熱い油で両側下腿後面,左大腿後面に熱傷受傷。近くの総合病院皮膚科で治療を受けていたが,治療をする医師が毎日変わり,そのたびに説明が異なるために心配になってきた。12月初旬,入院して手術が必要と言われ,心配になってネットで検索して当科を12月9日に受診。前医ではエキザルベアクトシン,デルモゾール軟膏が処方されていて,痛みがひどかった。
 当科ではプラスモイストで治療。貼付直後から痛みがなくなり,楽になったと感謝された。

12月10日の下腿後面 毛が生えている部分に一致して上皮化が起きていることがよくわかる




4)  87歳女性。認知症。1月19日,食事のシチューが右大腿にかかり熱傷受傷。翌日,家人が気付き当科受診。その後も体調不良で1週間ドレッシング交換ができない時期があったりして深い熱傷になった。写真は3月2日の状態。

3月2日の状態。 創縁から離れたところに白い「皮膚の島」が出現していることがわかる。
つまり,高齢者の大腿部(=皮膚が薄い)の深い熱傷でも毛穴は生き残って
いる。つまりこれはV度熱傷ではない。




3)  30代男性。9月16日に熱湯で右足にやけど。プラスモイストで治療。

9月24日の状態 中央から周辺に,上皮化が進む様子がわかる1枚

 このように,プラスモイストで深い創を治療すると,最初に「うろこ状の肉芽」が形成され,皮膚付属器から上皮化が始まり,肉芽が平坦になりつつ上皮化が進み,最後に平坦で正常の皮膚に戻ることがわかる。




2)  50代女性。9月15日に熱湯で右足背内側中心にヤケド。

9月21日の状態 毛孔が残っているところで「出島」のように上皮化している(黄色の矢印)。
写真中央には「皮膚の島」も出現(緑の矢印)。




1)  9月9日,熱湯で右前腕に熱傷。9月15日の状態と一部の拡大写真。

創の全体像 ピカピカしているところは上皮化完了。
中央はあと1日で上皮化するはずだ。

(2011/06/20)

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