ゲーベンクリームを傷につけると痛い・・・という人体実験
我が身を犠牲に(?)してのゲーベンクリームに関する簡単な予備的人体実験をしました。太腿を市販のナイロンタオルで思いっきりこすり,真っ赤になったところを3つに分け,それぞれを「何もしない(=コントロール)」,「ゲーベンクリーム塗布」,「白色ワセリン塗布」にして経過を観察する,という単純な実験です。その結果は以下の通りでした。なお,時間は実験開始からのものです。
- 塗布直後:ほとんど差はない。
- 塗布から3分後:コントロールとゲーベン塗布の部位だけピリピリとした痛みがある。ワセリンの部位には症状なし。
- 10分後:コントロールとゲーベン塗布の部位はさらに痛みが強くなるが,ワセリンの部位は正常部分と同じ。触ってみても,コントロールとゲーベン塗布部位はざらついているのがわかる。
- 45分後:安静にしていても痛いため,ゲーベンを拭き取り,ワセリンを塗布してサランラップで覆う。
- 47分後:痛みが軽くなる。
- 50分後:痛みは全くない・・・というか,ラップをつけていることを忘れていた。
- 60分後:ラップを剥がして就寝。
- 6時間後に起床。ゲーベン塗布部だけピリピリした痛みが残っていて,触ると痛い。コントロール部分は痛みなし。ワセリン塗布部は何もしない部分と見分けが付かない。
痛みを抑えようと思ってワセリンを塗布したが,それでもなかなか痛みが消えない。
- 7時間後:こすった部分の発赤は残っているが,痛みはなくなった。
わかったこと。
- ナイロンタオルで強くこすると痛みがあり,これは角化層損傷モデルとして有用と思われた。
- 自分の体で実験する場合,大腿内側~前面,下腿内側,前腕屈側が実験部位に使えると思うが,私の場合は大腿内側の皮膚が最も薄いらしく,違いが最もよくわかった。
- 痛みはワセリン塗布で治癒した。また,角化層損傷も治癒した。
- コントロール部位も痛いことから,乾燥で痛みが続く。
- ゲーベンクリーム塗布で痛みはさらに増強する。
- 6時間後にコントロールは痛みがなく,ゲーベン塗布部のみ痛みと発赤が残っているため,ゲーベンは角化層の損傷をさらに深くする効果があった。
「ゲーベンクリーム人体実験」ですが,ピリピリした不愉快な痛みは耐え難いものだということを改めて実感しました。こんなものを創面に塗りたくられる熱傷患者さん,どれほど痛い思いをしているんだろうと,心が痛みます。この予備実験を受けて,きちんと写真を撮りながら本番の実験をする予定ですが,この痛みがまたあるのかと思うと,ちょっと憂鬱です。
ゲーベンクリーム大好き先生,ゲーベン大好き熱傷専門医先生は,是非この人体実験をしてみてください。実験そのものは簡単ですから・・・。
患者にゲーベンを使う前に,まず自分に使ってみて,自分の体で安全性を確かめようよ。患者にゲーベンを使うのはそのあとだと思うよ。
あなたはまだゲーベンクリームを熱傷患者さんに使いますか?
あなたはまだ,ゲーベンクリームで熱傷治療する医者で治療を受けたいですか?
(2008/01/17)