CDCの術後創感染(SSI)対策に効果はあるのか
−敵は外にあり,という発想−


 CDCの術後創感染対策を素直に読むと,創感染を起こした感染起炎菌が「いつ・どこから」侵入するのかについて,CDCがどのように想定しているかは明らかだ。一言で言えば「病原菌は外からやってくる・感染起炎菌は術中に創部から侵入する」である。それは例えば,次のような記述を見れば明らかだ。

 要するに,「敵(細菌)は外にあり,敵は外からやってくる」「手術創の術後感染を起こす細菌は,術中・術後に手術創から侵入する」という発想であり,これはなにやら,「テロリストが外からアメリカに攻撃を仕掛けてアメリカの平和を壊そうとしている。だから,外にいる敵を潰さなければいけない」というブッシュ政権の考え方に一脈通じるものがある。


 あらゆる術後の創感染が,術中に創部から侵入した細菌によって起きているのであれば,上述の対策は術後創感染予防に有効だろうし,このような対策を完璧に行えば術後創感染はそもそも発生しないはずだ。もしも本当に「病原菌は外からやってくる・感染起炎菌は術中に創部から侵入する」が正しければ,これでいいはずだ。だが,現実はどうだろうか。術中の無菌操作を完璧に行い,手術室の掃除を完璧に行い,術前に禁煙させ,血糖コントロールを行い,術後の創処置も完全に無菌操作を行っている病棟では術後創感染は起きていないだろうか。

 そうではないだろう。あれほど無菌操作に気を使い,場合によっては無菌室で手術をしている心臓外科の開心術や整形外科の人工関節置換でも,術後縦隔炎や創感染は一定の確率で起きているはずだ。


 なぜ,完璧な無菌操作をしているのに術後創感染が起きるのか。それは,感染起炎菌の侵入タイミングは術中だけではないし,感染起炎菌の侵入経路は創部だけからではないからである。だから,いくら術中の細菌侵入を完全に阻止したとしても,術後創感染が起きているのだ。

 要するに,無菌操作と無菌的術後処置で防げる創感染と,防げない創感染がある以上,後者を無視して「術後創感染対策ガイドライン」を作ってもそれは最初から不十分なものでしかないからだ。

(2007/12/07)

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