CDCの術後創感染(SSI)対策に効果はあるのか
−その1−


 さあ,そろそろCDCの術後創感染(Surgical Site Infection, SSI)についての私の考えをまとめておこうと思う。CDCのSSI対策はこちらを御参照いただきたい。膨大にして網羅的,何でも書いてあるガイドラインであるが,多分,術後創感染を減らす効果は微々たる物だと思う。大山鳴動してネズミ一匹分の感染を減らすのが関の山だろう。


 実際,「CDCに基づいたサーベイランスを毎月行っているが術後創感染は全く減っていない」というタレ込みメールを複数病院(その中には,院内感染対策で有名な病院も含まれます)のスタッフからいただいている。これが「CDCのSSI対策には効果がない」という何よりの証拠だ。もちろん,「毎月サーベイランスをしているから術後創感染が増えていないのだ」という解釈も可能だが,その病院の術後創感染発生率は決して低くないのであれば(実際,低くないらしい),毎月のサーベイランスは全くの無駄ではないか,と考えるが常識というものだろう。

 ちなみに上記の病院では「毎月のサーベイランスは本当に必要なんだろうか? もしかしたらCDCのSSI対策は意味がないのではないか?」というのは御法度らしい。なぜ術後創感染が減らないのかと訊ねても「まだサーベイランスの方法が完全でないからです。CDCのガイドラインの理解が足りないからです。もっとしっかりとCDCガイドラインを読みましょう」という答えしか返ってこないからだとか。もうこうなると宗教だね。


 なぜ,CDCのSSI対策に意味がないと談じるのか。それはこのSSI対策が非科学的だからである。科学的根拠を持たない,思い込み(信仰とも言う)と先入観に基づいたガイドラインだからである。このガイドラインほど非科学的なものを私は知らない。CDCのSSI対策ガイドラインが非科学的だという理由は次の通り。

  1. 術後創感染の定義自体が曖昧。
  2. 術後の時間で創感染かどうかを分けるのは根拠がない。
  3. 創感染がまず発症したものと,創縁壊死が先行して二次的に創感染になったものを区別していない。
  4. そもそも infectioncolonization を区別しているかどうかも不明(一応,発赤や圧痛があったものとしているが,現実に治療している医者を見ると,MRSAが創から検出されたからMRSA感染,と考えている医者が非常に多い)
  5. 感染起炎菌がどこから,いつの時点で侵入したのかを問題にしていない。
  6. 感染初発部位(細菌が増殖した場所)がどこにあり,なぜ増殖場所ができたのかも追求していない。

 この中で特に問題なのは5と6である。細菌がいつどこから侵入し,どこで増えて感染症状を起こしたのかがCDCガイドラインではまるっきり考慮されていないのである。創感染の本質に踏み込んだ議論が全くないのである。
 術後創感染という細菌感染を論じるのであれば,まずこれらを明らかにするのが当たり前だと思うが,どうやらCDCにはそういう発想すらないらしい。だから,CDCガイドラインは非科学的と断言できるのだ。CDCは膨大なデータ・論文から分析したと言い張るかもしれないが,クズデータを集めてクズしか集まらないし,クズデータを分析してもクズ結果しか得られないのだ。


 CDCガイドラインを素直に読めば,こういう基本的な欠陥があることは誰にだってわかると思うし,それが見抜けないようでは研究者としての資格はないと思う。それが見抜けず,ただただCDCガイドラインをお経のように唱える連中がいくら集まったところで何事も解決できないのは当たり前だろう。

 CDCガイドラインを読むだけなら誰にもできる。問題は,それが正しいかどうかを判断することだ。

(2007/12/06)

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