ヘパリン生食ロックについての
(超いい加減な)物理的考察


 点滴ルートのヘパリン生食ロックについては,RCTによる研究や動物事件から必要性がないということで結論が出ているようだ。

 実際私も以前,このヘパリン生食ロックの研究を例に出してEBMによる医学の進歩を説明する講演を聴いたことがある。なるほどなあ,と思った反面,何もこんな面倒な実験をしなくても証明できるんじゃないか,と思ったのも事実である。その頃の私は万事控え目だったため,講演の質疑応答で敢えて質問することはしなかったが,この疑問はずっと持っていた。以下は,その時思いついた簡単な実験・証明法である。

 なお,いくら私が物理が好きといっても,素人の下手の横好き程度なので,もしかすると間違っているかもしれないし,用語の使い方が間違っている可能性もあることは最初にお断りしておく。


 ヘパリン生食でロックしたカテーテルが血管内に入っている様子である。カテーテルはロックされているので,皮膚側が盲端,血管内の端は開放されている。


 そして血栓でカテーテル先端が詰まっている状態。

 つまり,カテーテル先端に血液が入り込み,そこが凝固して血栓になったのが「カテが詰まった」状態である。この予防のためにヘパリン生食でカテーテル内腔を満たしておくのがヘパリン生食ロックである。


 では,血管内のカテーテル先端ではどういう現象が起きているだろうか,というのが次の図。拡散と乱流である。

 要するに,カテーテル先端のヘパリン生食が血液と置き換わるのだから,ヘパリン生食と血液が接している部分(界面)で起きているのは拡散現象である。となると,どのくらいの血液がカテーテルに入るかは次の因子で決まってくるはずだ。

 拡散ではこれだけであって他の因子は介在しないはずだ(・・・多分)。あっ,この場合,カテーテルの断面積は関与してこないかもしれないな。粘性についてはよく知らないけど,ま,書いておこうっと。

 さらに,血管内の血液は流れているから,カテーテル先端部分で乱流が形成され,これもカテーテル内部のヘパリン生食を外に出すように作用する(・・・はず)。これには血液の流速とカテーテルの厚さ,そしてカテーテルの材質が絡んでくると思うが,さすがに流体力学は学んだことがないので,これ以上はよくわからないが,大まかな考え方としては間違っていないと思う(・・・根拠の希薄な山勘だけど)

 そういうわけで,カテーテルの断面積,生理食塩水の拡散係数と乱流だけの問題となり,恐らく,流体力学を学んでいる大学生くらいなら,経時的にどのくらいの血液がカテーテル先端から入り込むかが計算から出せるはずだ。

 ここまでくると,あと必要なデータは「ヘパリン生食の入った盲端の管にどれだけ血液が入り込んだら血栓を作るか」,「生食の入った盲端の管の場合はどうか」だけである。それと上記から得られた結果を組み合わせ,「断面積が●mm2のカテーテルの場合,●時間後には血栓形成に十分な量の血液がカテ先端部に入り込み,血栓を作り始める」ということが明らかになるんじゃないかと思う。

(2007/12/05)

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