洗髪問題:その2


 シャンプーの使用に関して前回書きましたが,次のような質問をいただいた。それへの私の解答です。


【洗髪後にはヘアーリキッドなどの油は使わないのでしょうか。使わないとパサパサしますが・・・】

 こういう問題を考える際には,「シャンプーをして何も塗らないとパサつくので・・・」というような「常識」はすべて忘れ,そもそも皮膚とはどういう臓器なのか,どういう機能を持っているのか,というあたりから攻めていく必要があります。

 皮膚は皮膚常在菌が生息する生態系で,皮膚から皮膚常在菌を除去することはできないし,除去すると感染が起こり,皮膚の状態は悪化します。つまり,皮膚とは皮膚常在菌あっての臓器,皮膚常在菌は皮膚あっての生物であり,常在菌なしの皮膚,皮膚なしの常在菌はありえません。人間と常在菌は共生体というのはこういう意味です。

 その皮膚常在菌の唯一のエネルギー源は皮脂で,これは毛孔から分泌されます。
 シャンプーや石ケン,あるいは化粧クリームやローションが怖いのはこの皮脂を強力な界面活性剤で洗い流してしまう点にあります。その後にヘアリキッドをいくら塗っても,これは常在菌の栄養源になりません。

 もちろん,ヘアリキッドを塗ればそのときはパサつきがなくなったように感じますが,それは所詮,見せ掛けです。頭皮にとってヘアリキッドは意味がない油であり,頭皮の健康(しつこいようですが,健常な皮膚常在菌がいて初めて皮膚は健康な状態を維持できます)を障害します(皮膚常在菌に役立たないから)

 温水洗髪に切り替えてみるとわかりますが,最初の数日は髪の毛がパサつきますが,その後は自然な感じになり,パサつきはなくなります。要するに,洗髪後のパサつきはシャンプーを使ったための結果であり,シャンプーをやめるとパサつきはなくなります。
 温水で洗うのは皮脂を洗い流し過ぎないようにするためです。

 また,動物を見てもわかるとおり,頭皮の汚れで水で落ちないものはありません(界面活性剤を使っている野生動物はいません)。人間の頭皮の構造は哺乳類の頭皮の構造と基本的に同じで,人間だけが特殊な頭皮をしているわけではありません。だから,界面活性剤は不要です。


【ヘアトニックはアルコールだから刺激があるし、乾燥するからよくないと思いますが、いかがですか。】

 アルコールは消毒に使われるくらいですから,生体障害性を持っています。当然,皮膚には悪いと思います。


【抜け毛は、脂漏性皮膚炎があるからより抜けやすいからだと皮膚科医に説明されました。皮脂が多すぎるのが脂漏性皮膚炎の原因と思われますので,やはりシャンプーで多すぎる皮脂は洗い流さなければ抜け毛は防げないのではないでしょうか?】

 これも本当なんでしょうか? もしかしたら脂漏性皮膚炎という病名自体が「界面活性剤で洗髪する」という人類特有の生活習慣が病因だったという可能性はないでしょうか。要するに,(一部の)抜け毛は単なる生活習慣病であり,脂漏性皮膚炎自体が生活習慣病ではないかと・・・。
 「皮脂が多いから脂漏性皮膚炎になった」と「皮脂を洗い流すからかえって皮脂分泌が多くなり・・・」というのでは,全く話しが違ってきます。


【洗髪後に油を使うということは、傷にワセリンをつけると同じことだから、やはり少しはつけたほうがよいのでしょうか。】

 洗髪後の油は,傷のワセリン,皮膚の保湿用ワセリンとはまったく違います。洗髪後の場合は皮膚の健康に必要な脂(=皮脂)が界面活性剤で除去された状態ですから,ここに付加する脂分は皮脂でなければいけないはずです。皮脂でない油は皮膚常在菌にとって食料源とならない無意味な油分であり,結果的に人間にとっても無意味な脂分でしかありません。

 しかし,皮膚の保湿用ワセリン,傷のワセリンでは「界面活性剤による皮脂除去」がないため皮脂は温存されています。だから,その上にワセリンを塗っても害はありません。皮膚常在菌のエネルギー源である皮脂が存在していて,ワセリンはむしろその皮脂の保持を助けているのかもしれません。


【 1週間も10日も洗髪しないと、皮脂が多量にたまる。多量にたまると、それ自身が汚れて皮膚に刺激をあたえて皮膚炎になるものか。あるいは、常在細菌以外の細菌も繁殖して皮膚炎になり、抜け毛が増えるのか、なんて素人的に考えるのですが、いかがでしょうか。】

 日本人が日常的にシャンプーで洗髪するようになったのはいつからだとお思いですか。せいぜい昭和30年代からだったと記憶しています。それ以前は体を洗う石鹸で一緒に洗っていたはずですが,それが一般的になったのはせいぜい明治の末か大正になってからで,それ以前の日本人はシャンプーで洗髪していません。では,その時代の日本人に頭皮の皮膚炎が頻発していたかというと,そのような記録は残されていません。
 それでは,現在の地球で日常的に洗髪している,あるいは洗髪できている人間は世界にどれだけいるでしょうか。実は多くありません。日常の飲み水にすら事欠いている人間が世界には10億人います。人間の生存に最低限必要な水は一日50リットルといわれていますが(50リットルといえば多く感じますが,それだけで料理を作り,皿や鍋を洗い,顔を洗い,口をすすぎ,床を拭き・・・と考えると,どれほど少ないかがわかります),それに達していない国が1988年の国連統計で世界で55カ国です。現在はこれより多くなっているといます。それらの国では当然,洗髪にまわす水はありません。恒常的に渇水状態だからです。
 しかし,そういう国々に暮らす人たちの映像を見ても頭が禿げているわけでもなければ,頭皮に感染を起こしている様子も見えません。恐らく,彼らの皮膚も頭皮も極めて健康でしょう(栄養不良になれば話は別ですが)

 また,野生動物は洗髪をしませんし,むしろ,ネコ科の動物のように水を嫌う動物が少なくありません。しかし,これらの動物は抜け毛に悩んだり皮膚炎にかかっている様子はありません。むしろ,人間が飼っていて恒常的にシャンプーや石鹸をしている動物では抜け毛や皮膚のトラブルが起きていると聞きます。
 人間とその他の哺乳類の皮膚の構造は基本的に同じです。動物は洗わなくても大丈夫だが,人間は頭や皮膚を洗わないと病気になる,なんてことはありえません。

 つまり,現実の世界では,日常的にシャンプーができる人間は全人類のうちの少数であり,その人たちにしてもシャンプーを始めたのはせいぜい100年くらい前なのです。それ以前の人類はシャンプーなしで生活してきて,何も困っていなかったのです。シャンプーができないからと言って頭皮の感染が起きていたわけでもなく,人間はシャンプーなしでも健康な頭皮を保ち続けて生きてきたのです。シャンプーは,人間が頭皮のトラブルに悩み,その解決法として発見したものではないのです。

 洗髪しないといろいろトラブルが起きる,シャンプーを使わないと頭皮は汚れて不健康になるといっているのは誰でしょうか。そういう情報を国民に伝えているのは誰でしょうか。そういう情報を流して利益を得るのは誰でしょうか。
 そういう情報を発しているのはシャンプーや石鹸のメーカーです。そういう情報をあなたは無批判に信じますか。利益を得るものが流す情報は常に正しい情報だと思いますか。

(2007/12/04)

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