爪周囲炎が爪の湾曲で起こるわけでないこと,爪の湾曲が強くても深爪しなければ炎症が起きないこと,爪が湾曲していなくても深爪すれば爪周囲炎が起きることは既に説明したとおりである。つまり,陥入爪という病名は病態を誤解させるもとなので,「深爪性爪周囲炎」,あるいは「深爪習慣病」という病名にすべきだということも説明した。
そこで,素人でも家庭でできる爪周囲炎の治療法だ。用意するのは爪ヤスリ(爪切りの裏がヤスリになってますよね)とテーピング用の絆創膏(粘着力が強いもの)だけ。この二つを組み合わせると,かなりの症例で痛みがなくなるはず。
【爪ヤスリのかけ方】
下図は足の第1趾,ベージュ色の部分が爪甲と思っていただきたい。
要するに,深爪して痛みがある側の爪の湾曲部分を,長軸方向にヤスリで薄くするわけである。風呂上りだと簡単に削れるようだ。
加重すると,薄くなった部分の外側の爪に押し上げるような力が加わり,結果として爪が平たくなって食い込みが軽くなる。
【テーピングの方法(・・・多分,決定版かな?)】
テーピングのコツは数本の絆創膏を使うこと。まず1本目の絆創膏を横方向(指の長軸方向)に張り,爪郭皮膚を足底側に引っ張り下げて深爪した爪先端が露出するようにする。
続いて,この深爪した部分の絆創膏の上から2本目の絆創膏を,1本目絆創膏と直行するように張り,さらに爪先端を露出させる。さらに2本目に平行に3本目を張る。2本目,3本目は指の根元に向かって張るが,指の循環(血の巡り)が悪くならないように注意する。
大体これでいいが,不足しているならさらに数本張り,さらに,全ての絆創膏の間を絆創膏でブリッジして剥がれにくくする。多くの症例は,テーピング終了時に既に痛みがなくなっているはずだ。
爪をヤスリで削っているところ | テーピング終了の状態 |
【肉芽形成がある場合】 この場合は,局所麻酔下に肉芽を切除し,切除部にアルギン酸塩被覆材(ソーブサン,カルトスタット,アルゴダーム)を充填し,フィルムで密封する。肉芽は十分に深く切除したほうがよい。さらに爪を十分に削る(局麻が効いているから一気に削ろう)。この場合は,テーピングはしなくていい(・・・というか,出血や滲出液ではがれてしまい,効果がない)。
【その後どうするか】 これでほとんどの例は痛みがなくなる。あとはひたすら爪を切らずに伸びるのを待つだけだ。深爪だけは絶対にしてはいけない。爪が十分に伸びたら,その部分だけをちょっと切る程度でよい。
なお,爪周囲炎は肥満気味の人に多く,肥満気味の人は治りにくく,いったん治っても再発しやすいようだ。
(2007/10/09)