1)抗生剤
とりあえず,創部痛や発熱などの創感染症状が見られたら抗生剤を投与する。もしかしたら,ある面積以上,ある深度以上の場合は受傷直後から抗生剤を投与すべきかもしれないが,これも将来の検討課題とさせていただく。
2)超早期の創面の被覆
これについては「高吸収性で創面に固着しない,あまり乾燥させない」ものがあればベストだろう。超早期ではこれを頻回に取り替えることで,細菌の増殖スピードに対処するしかない。もちろん,水疱膜や創表面を覆うゼリー状のフィブリン膜(?)をこまめに切除することも重要。
現時点ではポリウレタンフォーム,アルギン酸塩被覆材,ハイドロファイバーが最も理想に近いが,保険病名に熱傷がなく,高価である点が難点である。エクスドライは吸水力は高いが,創面への固着がひどく疼痛が強いのが欠点だ。「穴あきポリ袋+紙おむつ」はかなり有用であるが,やはり超早期には頻回の交換が必要だろう。
3)今後の研究の方向性
では,熱傷を湿潤治療していて発生する感染症についてはどうしたらいいのだろうか。究明されるべきは以下の項目だろう。
これらを明らかにした上で初めて,私たちがとるべき対処法が明らかになるが,いずれにしても,まず治療を始めてみない限り,何が起こるのかは判らないのである。
「過去の常識は新しい治療では通用しないかもしれない」ということは常に念頭に置く必要があるだろう。「消毒と乾燥」による治療と,「湿潤と洗浄」による治療では,創面で起きている現象は全く異なっていると考えられるからだ。
(2007/06/12)