傷の治療センターでの熱傷の感染率と分析


 2007年4月から外来(傷の治療センター)で治療した熱傷患者を可能な限り記録し,創感染とその病態をまとめてみましたその他の外傷症例はこちらです。対象患者は,

  1. 傷の治療センターで初期治療を行い,治癒まで観察した患者
  2. 相澤病院救急室で初期治療を行った患者で,センターで治癒まで観察した患者
  3. 発熱,創部痛があるものを「感染」とした(CRPなどの検査結果での判定はしない)
としました。初期治療を当院で行い,その後,他院に紹介した患者は除いています。
 熱傷(熱傷,低温熱傷)には軽微なものもかなりの程度の熱傷も一緒くたにしています。

 なお,既に感染した状態で受診した患者については,感染症状が悪化したり改善しないものを「感染」にカウントしています。


【2007年4月1日から5月15日までの熱傷症例】
24例中3例に感染を発生。感染率は12.5%。

  1. 10代女性。熱湯で左足背全体の熱傷。同日救急外来受診しワセリンとプラスモイストで処置。翌日,当科受診し,水疱膜の切除を行い,。この時点では痛みも発熱もなかった。受傷3日目,37.3℃の微熱と軽度の創部痛を訴えた。残っている水疱膜があり,その周囲にごく軽度の発赤を認めたため,水疱膜を徹底的に除去し,創面を覆っているゼリー状の膜も切除,その上でプラスモイストで被覆した。抗生剤は投与していない。翌日,平熱に戻り痛みもなくなった。10日後,完治した。
    微熱と創部痛があり,残っていた水疱膜と創面を覆うゼリー状膜を除去しただけで症状が治まった,恐らく感染例と思われる症例。

  2. 30代女性。3月14日,天ぷら油による顔面熱傷(右前額部,上眼瞼,頬部,上口唇,右頸部,右手)。デュオアクティブで治療。翌日夜から軽度の発熱(37.5℃くらい)があり,16日からセファメジン点滴。これで解熱した。4月3日に上皮化。
    創感染のための発熱だったかは微妙ですが,抗生剤で解熱したので感染と思われます。創周囲の発赤などは著明ではありません。

  3. 60代女性。3月26日,天ぷら油で左前腕と顔面に熱傷。面積2%。3月28日に軽度の痛みがあり抗生剤(セフゾン)処方。翌日,痛みがなくなる。4月5日治癒。
    治療開始3日目に軽度の創部痛があり,抗生剤内服で痛みが治まっています。恐らく創感染でしょう。

【熱傷と無関係の発熱があった症例】

  1. 右大腿部熱傷の2%の2度熱傷。受傷して2日後に39℃台の発熱があり,小児科を受診しウィルス性腸炎の診断を受け,一日のみ入院をしてもらい補液治療。抗生剤投与はしなかった。翌日には解熱して元気になり,退院となった。17日目に創部は完全に上皮化。創部の発赤もなかったので,創感染ではなかったと思われる。

【2007年5月1日までの低温熱傷】
5例中,感染例なし。

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