大腿部・足背熱傷の症例(プラスモイスト使用例)

三代内科循環器科 院長 三代 裕一郎先生


 70代女性。2月6日,熱湯で左大腿部と左足背に熱傷受傷。翌日(2月7日),三代内科を受診した。ちなみに治療はすべて外来通院で行っている。


 まず,足背熱傷の経過である。

2月7日
初診時の状態
水疱膜を除去してハイドロサイトで被覆
2月9日
足趾背部まで熱傷が及んでいた。
これ以降はワセリンを塗布したプラスモイストで被覆


2月14日
疼痛はまだ強いが,
周囲から上皮化が進行
2月18日
第3趾のみに痛みを訴えるが
上皮化はさらに進行
2月22日
痛みがなくなり,
上皮化が一気に進む


2月27日
上皮化が完了した
3月1日
通院終了とした


 三代先生もメールに書いておられましたが,熱傷はある時期から一気に上皮化が進みます。この症例でも2月18日から22日にかけて,加速度的に上皮化が進んだことがわかります。

 「足背熱傷は3度熱傷になりやすい」というのは熱傷の教科書に必ず書かれていますが,これは恐らくインチキだと思います。医者の治療(=消毒して軟膏ガーゼやソフラチュールで治療)が2度熱傷を3度にしてきただけのことです。



 続いて同じ症例の大腿部の経過です。

2月7日
水疱膜をすべて切除し,
ハイドロサイトを貼付した
2月10日
少し痛みがある程度。
ワセリンを塗布したプラスモイストを貼付
2月14日
痛みはほとんどなくなり,
上皮化が一気に進み始める


2月17日
上皮化が完了する
2月24日
治療終了から1週間後


 2月14日から17日にかけての変化が劇的ですね。まさしく,加速度的に治る,フルスロットルで加速,という感じです。


 なお,三代先生の撮られた写真を見て,幾つか気になった点があります。皆様にも参考になると思いますので,あえてここに書きます。

 まず感心した点は,きちんと背景に無地の布を置いて撮影している点です。このため,背景に余計なもの(例:衣服,ベッド,椅子,医者や看護師の手,カーテン,床など)が写っていないため,非常に見やすい写真になっています。これは是非,見習ってください。
 ただ,改善すべき点も幾つかあります。大腿熱傷の写真ですが,これだけ見ると体のどの部分なのかがわかりませんし,仮に大腿部だとしてもそれが外側なのか,前面なのかが写真からは判断できません。後で症例写真を見直したときに,部位がわからないとカルテをひっくり返すことになり,煩雑です。最初の1枚だけでいいから,もっと遠くから足全体(この場合は,ソケイ部から膝くらいまで)を写したアングルの写真を撮っておくべきでしょう。
 足背の写真も非常にきれいなのですが,カメラの横長の画像が生かされず,両脇が無駄になっています。この場合は足背全体を写すように,つまり足背の長軸(第3中足骨)が画面の長辺になるように撮影したほうがいいと思います。また,指先が切れている(写っていない)写真もありますが,これはやはり,指尖部まできちんと撮影したほうがいいでしょう。

(2006/04/03)

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