前腕骨折固定時に血疱を併発した症例(プラスモイスト治療例)

尾道市立市民病院 整形外科 木浪 陽


 症例は50代男性。アルコール性肝硬変(GOT55,GPT25,LDH272,γGTP188,コリンエステラーゼ99,Total Bil. 2.9,Dir.bil 1.7, TP7.8,Alb2.9,Hb11.8,Ht33.4,血小板6.3万,凝固系ギリギリ正常範囲内)があるが,無治療で朝から「小原庄助さん」を実践なさっている方である。


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 受傷直後のレントゲン写真と,整復後のレントゲン写真を示す。受傷後すぐ当院整形外科を受診。局所麻酔下に整復し,肘から手までU字シーネ固定し帰宅させた。


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 1週後再来時,手関節3/4周をしめる巨大血疱を生じていた。直ちに血疱膜を除去し,生食で洗浄。


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 皮膚欠損部全体から、じわじわ持続する出血あり。このため,カルトスタットし、その上をプラスモイストで覆い,その上から再びシーネ固定した。


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 ギプスを撒きなおしてから1週間後に再診。写真11,12はギプスを開けた直後のプラスモイストの状態。出血の漏れはない。写真13,14はプラスモイストとカルトスタットを剥がしたところ。既に上皮化している。
 患者さんもそれを見て「びっくりして酔いが醒めそうだ」とおっしゃられた。

 ちなみにこの間も日本酒の内服は毎日行い,24時間アルコール血中濃度は飲酒検問で感知器使用しなくても間違いなく引っかかるほど維持していたようである。


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 2週間後のレントゲン写真。骨折の転位もない。


以下,木浪先生の感想です。

 このような症例は、整形外科のDrは絶対に出会いたくない症例だとおもいます。骨折と皮膚を同時に治さなくてはいけませんから。しかもシーネの固定力で整復位を保持しなければならない初期の段階ですので、頻回の処置は骨折に対して不利になります。もちろんこんな症例にはメスを入れることもイヤです。

 ということでこの症例に求められる条件は以下のように考えました。

  1. 出血傾向あっても止血できる止血力。
  2. 1週間は浸出液を保持してくれる吸収力(低アルブミン血症で多量が予想される)。
  3. 湿潤環境を適度に提供すること。
  4. シーネの固定力を損なわないような薄めのドレッシング。
  5. 1度に広範囲をカバーできること。

ということで、カルトスタット+ZNCを使用し、見事にはまりました。

(2006/03/21)

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