汎発性腹膜炎術後の創離開:プラスモイストによる治療例


 30代男性。8月22日,急性虫垂炎による汎発性腹膜炎で緊急手術となったが,術後,創感染から創離開を起こし,8月30日,当科紹介となった。


1: 初診時(8月30日) 2: 3:

  1. 初診時の状態。縫合創の頭側は治癒しているように見えるが,尾側は傷が開いている。創面に2本の筋膜縫合糸が露出していたため,これを切除した。

  2. 治っているように見える創の最頭側に小さな瘻孔があり,ここからゾンデを入れたところ,離開部に通じていた。つまり,皮下トンネルのような形になっていた。

  3. トンネルの部分を全長に渡って切開することも考えたが,ドレナージが効いていれば大丈夫だろうと判断し,長さ7センチほどの2-0ナイロン縫合糸10本ほどを,頭側と尾側から挿入してドレーンとし,ハイドロサイト(吸水力の強さから選択)を貼付した。
    翌日診察し,ポケットが狭くなっていることを確認。一日おきの外来通院が可能ということで,9月1日に退院となった。退院後はプラスモイストの貼付のみとし,自宅でシャワーを浴びる際に自分で交換してもらうこととした。


4: 9月6日 5: 9月8日 6: 9月17日

  1. 9月6日。創全体が肉芽で平坦となった。

  2. その2日後。急速な創収縮が起こっていることがわかる。この頃,職場に復帰した。

  3. 肉芽は幅1センチ程度になった。


7: 9月24日 8: 10月4日

  1. 9月24日。肉芽が一部盛り上がりすぎ,上皮化がストップしたため,リンデロンV軟膏をプラスモイストに塗布してから覆うことにした。

  2. 10月4日。肉芽はさらに収縮してきたため,定期的通院は終了とし,「2週間たっても治らなかったら受診するように」と説明したが,その後は通院していない。


 写真2のように皮膚はくっついているものの皮下がトンネルになっている場合,切開するかどうかを迷うことが多い。非常に薄い皮膚(瘢痕?)でしか繋がっていない場合は思い切って切開した方が治癒が早いが,この症例のように,比較的しっかりした皮膚で覆われている場合は,上記のようなドレナージ法はかなり有用と思われる。

(2006/03/16)