両手(低温)熱傷と思われた症例(投稿)

国立病院機構別府医療センター 心臓血管外科 武内謙輔先生


 武内先生から非常に面白い経過をたどった症例の投稿をいただきました。「点滴を入れるために両手をお湯につけただけなのに,熱傷の症状が発症した」という症例です。


 症例は2歳。嘔吐下痢症で近医を受診。点滴を入れるために両手をお湯につけたが,その後,両手指全体の水疱形成を認め,SSSS(表皮ブドウ球菌感染症)疑いで上記病院を紹介された。
 お湯につけている間,母親がそばにいたが,子供は特に熱がる様子もなかったということだった。
 アレルギー性疾患の既往はない。皮膚も特に弱いわけではない。


発症2日目左 2日目右 4日目左 4日目右

発症8日目左 8日目右 10日目左 10日目右

治癒後左 治癒後右


 同院に入院となり,武内先生が創部の治療を行うこととなった。治療は微温湯での洗浄,ワセリンのたっぷり塗布,手指全体を食品包装用ラップで巻くのみとした。当初は,前医でのガーゼによる治療がよほど痛かったと見えて処置を嫌がったが,数日もすると痛みがないことを子供も理解し,嫌がらずに処置をさせるようになり,手を洗う際は自分から手を出すようになった。

 処置は一日一回とし,表皮剥離部の切除は特に行わなかった。外用抗菌薬は一切使用していない。

 10日目には退院となり,外来通院となった。瘢痕拘縮は全く認められない。


 以下,武内先生のコメントです。

この症例で学んだことは、従来の治療法でも最終的には治ったと思う。しかし処置時の子供への苦痛は計り知れない。この症例はある意味医原性である。それをさらに医師が苦痛を与えるようなことはしてはならないと思う。

 「熱傷治療において,医原性疼痛を与えてはならない」という武内先生のコメント,素晴らしいと思います。


 さてこの症例ですが,初診時の状態を見ると,これは紛れもない熱傷水疱に思われます。問題ななぜこれが発症したかです。前医はSSSSを疑っていますが,年齢的にこれはちょっと考えにくいと思います(SSSSは通常,新生児期に発生する)。しかも患者さんは健康な2歳児であり,アレルギー性疾患の既往もありません。となると,やはり原因はお湯なんでしょうか?

 発症原因について,何かコメントをいただけたらと存じます。

(2006/02/23)

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