ある先天異常症候群との出会い


 私は最近,形成外科らしい仕事は全くしていないが,元々は形成外科医である。形成外科といえば美容とか再建手術がメインだが,体表先天異常の治療,つまり口唇裂とか外耳の形態異常などの治療も重要な分野である。そのため,大学にいると年に一例くらい,○○症候群と名前が付いている多発先天異常の症例にぶつかることになる。

 その中の一例は,外胚葉と中胚葉の形成不全を合併する症候群で,当時,日本国内の報告症例は30例くらいだったと思う。ちなみに,外胚葉異常の症状としては「薄い毛髪,爪の欠損,歯牙の欠損,皮疹」などがあり,中胚葉異常としては「長管骨形成不全(遠位部ほど短縮する)」があり,さらに正中唇裂も合併する。これだけで診断名が判る人がいるかな?


 このような先天異常症候群の症例があったら,学会で報告し,症例報告の論文を書く(書かされる?)ことになるが(・・・特に大学では),私が担当し,学会報告して論文を書くことになった。

 このようなまれな先天異常症候群の場合,教科書にも詳しく書かれていなかったりするため,症例報告の論文を探し,自験例を過去の文献と比較し,過去の文献例をまとめれば一丁上がりである。ちょろいものである。私もそうするつもりで,日本国内の論文を見つけてはコピーすることから始めた。自験例の症状の組み合わせはその症候群の典型と思われ,論文もすぐに書けるはずだった。


 ところが,ここから私は診断名という迷宮に入り込んでしまったのである(こういう重箱の隅にこだわる方もこだわる方だが・・・)

⇒次に続く

(2006/01/05)

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