となると,傷に黄色ブドウ球菌(MRSA)が定着している状態でいいではないか,気にするからおかしくなるのではないか,という発想が出てくる。実はこれには根拠がある。
黄色ブドウ球菌やMRSAが検出される肉芽は,大体トラブルなく治っているのである。こういう細菌が検出される肉芽は,いわゆる「健康な肉芽」なのである。そして,いわゆる「不良肉芽」,つまり水っぽくてブヨブヨしてくると,黄色ブドウ球菌以外の細菌が検出されることが多くなるような印象がある(あくまでも個人的な観察)。
であれば,MRSAだろうと黄色ブドウ球菌だろうと,それが定着していることは悪い事ではないし,むしろ望ましい状態なのではないだろうか。
これを細菌側から考えると,黄色ブドウ球菌(MRSA)が好む肉芽とは,水分量が多すぎず少なすぎず,彼らが育ちやすい条件になっていて,しかもそれが,傷の治癒(に関与する細胞)にとっても良好な状態なのではないかと考えられないだろうか。
そして,黄色ブドウ球菌がうまく定着できない肉芽とは,水分量が多すぎるなどのために緑膿菌などが好む環境になっている肉芽であり,多分それは,創傷治癒に関連する人体細胞にとっても最適の環境ではないのかもしれない。これについては,さらに後ほど,ある仮説を提案する。
(2005/10/04)